「俺たちの共通点はたった1つだけ。音楽が好きやねん!!!」
大好きな仲間たちとの忘れられない忘年会
空きっ腹に酒 Presents『クアトロインザハウス』ライブレポート
2020年5月1日、クアトロでワンマンライブ決定!!
去る12月22日(日)、梅田クラブクアトロで空きっ腹に酒主催の『クアトロインザハウス』が行われた。昨年に続き2度目の開催となる今回はAlaska Jam、SPARK!!SOUND!!SHOW!! 、tricot、キュウソネコカミ、空きっ腹に酒の5組が出演。空きっ腹に酒と付き合いの長い顔ぶれで、同窓会とも言えるイベントだ。事前に田中幸輝(Vo.)とシンディ(Ba.)の2人にインタビューした際、“全バンドリスペクトしてる。最高の組み合わせ”と語っていたが、バンド同士の愛情と友情の強さがそこかしこに垣間見えた一夜だった。各バンドの持ち時間は45分のロングセット。約5時間半に及ぶ長丁場で、各バンド10曲以上は演奏していたが、トリまであっという間だった。どのバンドも全心全力のステージを見せてくれた。この日、オーディエンスに向かって“今日がお前たちの素敵な1日になりますように! 今日の主人公はお前らや!!”と何度も口にしていた幸輝。昨年自主レーベルを設立し、スタッフ業務も自分たちでこなすようになってから、お金と時間を使ってライブに足を運んでくれるリスナーに対して、感謝の気持ちがより強くなったという。その想いが表れた言葉だろう。その気持ちを受け止めるように『クアトロインザハウス』は終始最高の盛り上がりをみせた。彼らが12年間の活動で培ったパフォーマンス、そして紡いだ縁が集結した素晴らしい夜だった。その様子をレポートしよう。
12月の雨の日。冷たい雨で気温がグッと下がり、薄着でいると思わず身震いするほどの寒さだ。開場時刻が近づき、Tシャツ姿にタオルを首に巻いたライブキッズたちが入場列をつくる。オープンすると各々小走りで会場に駆け込み、客席が最前列から埋まっていく。
ドリンクカウンターの隣では、前回も出店していたノムソンカリーがチキンカレーとズワイガニキーマを販売。客席内にもカレーの良い香りが流れてきていた。
定刻を少し過ぎ、ギュウギュウになったフロアの客電が落ちる。1番手は
キュウソネコカミ。SEが流れると同時にクラップが起こり、登場したメンバーに沸き立つ客席。ヤマサキセイヤ(Vo.&Gt.)が“アーユーレディー!?”と叫び、『良いDJ』のイントロが鳴り響く。ヨコタシンノスケ(Key.&Vo.)が縦横無尽に動き回り、オカザワカズマ(Gt.)とカワクボタクロウ(Ba.)が思いっきり弦をかき鳴らし、ソゴウタイスケ(Dr.)がビートを叩き込む。サビでは一斉に手があがり、のっけからハイテンション! 間髪入れず『メンヘラちゃん』『ファントムヴァイブレーション』『KENKO不KENKO』と立て続けにドロップ、会場は一瞬でお祭り騒ぎ状態に。続いて“好きな曲やりまーす”と空きっ腹に酒のカバー『天女下』を披露。これにはファンも大興奮。ヤマサキのシャウトと3人の生み出す轟音がうなりをあげる。熱量のすさまじさに空きっ腹に酒への最大限のリスペクトが伝わってくる。“クアトロインザハウス呼んでもらってありがとうございます!”とMCを挟み、『ただしイケメンに限らない』へ。続く『TOSHI-LOWさん』ではオカザワのギターソロから“物理的にコミュニケーションしようや!”と客席にダイブするヤマサキ。客の頭上を転がりながら歌うヤマサキに負けず劣らず、ステージ上で一心不乱にプレイするヨコタ、カワクボ、ソゴウ。ものすごい熱を孕んだまま『KMDT25』へ。“クアトロってさ、全員で一緒にダンスするとすげえ揺れるらしい。盆踊りしませんか?!”とヨコタの呼びかけにフロアにはサークルが出現。全員で踊りまくり、床が波打つように揺れる。メンバーは満足そうに笑みを浮かべてMCへ。ヤマサキとヨコタが“今日は笑いの採点する奴がおる(笑)”と、他のバンドメンバーたちが見ていることに触れ、“俺たちは出会った頃から何も変わっていない! それを曲で証明する!”と友情を叫んで『ビビった』を投下。懐かしさと切なさを感じる『わかってんだよ』では、1つ1つのフレーズに想いを乗せてステージから放つ。ラストは『The Band』。“またいつでも出会おうぜ! 音楽はお前らが聴いてるだけで続きますからよ!”とヤマサキが叫ぶ。キュウソ節を炸裂させ、最強のエンタメをかましてステージを後にした。
続いて登場したのは
SPARK!!SOUND!!SHOW!! (以下、スサシ)。キュウソで温まった会場に、もう1つ熱々の石が投げ込まれる。1曲目は『黒天使』。“ブーンブンブン”というノリの良いビートとラップで初っぱなから一体感がすごい。“空きっ腹に酒の悪い友達、SPARK!!SOUND!!SHOW!!”という自己紹介のあと『GODSPEED』をドロップ。いきなりタナカユーキ(Vo.)がフロアにダイブ! チヨのベースがテンション高く唸りをあげる。サビの“ウォーオーオー!”では会場全体がシンガロング。“踊れる?”という一言でさらに会場の一体感が増す。イントロから歓声が上がった『かいじゅうのうた』ではタクマのキーボードが火を吹き、ユーキが咆哮する。続く『ヘビーローテーション』では幸輝をステージへと招き、2人でラップを披露。高速ラップに合わせて客席もプチョヘンザ。ゴリゴリに男らしいパフォーマンスを見せてくれた。『BRUSH UP』ではユーキが挑発的に煽り、フロアへイン! そのまま2階の手すりによじ登る。さらには3階席まで到達し、1階ではチヨがダイブ! オーディエンスのテンションは急上昇、クラウドサーフも見られた。ユーキはピンスポを浴びて歌いながら会場を思いのままに一周する。ユーキが客席にいる状態で『ドカーン!』『感電!』『無愛愛』を立て続けに投下。“お騒がせしてます。もっとお騒がせしますから!”とイチロー(Dr.)。マイクを通して電話番号を言ったり、ステージを行ったり来たり、とにかく自由なユーキ。『SCAR』でフロアにはサークルモッシュが現れ、ぐるぐると渦を巻いて走り回る。強烈なパフォーマンスと圧倒的熱量で客席もステージにしてしまう、気付けば一緒に踊っている。それがスサシのライブだ。“スサシは性格以外悪いなって言われるけど、幸輝も音楽好きなとこ以外全部クズやと思ってます。長い付き合いになりそう!”と愛情のこもったMCを挟み、ポップな『アワーミュージック』、メロウでエモーショナルな『good sleep』、冒頭のリリックが印象的な『MARS』をプレイ。ラストは『南無』で再び一気に沸点を上げる。とにかくエネルギッシュでやんちゃたっぷり。13曲を全力で披露した。
折り返しとなる3組目は
Alaska Jam。SEに乗せて小野武正(Gt.)、石井浩平(Ba.)、山下賢(Dr.)が登場。最後に森心言(Vo.)が現れ、4人で手を合わせる。『ALASKA FUNKY 4』からライブがスタート。森のよく通るラップに触れて自然と体が揺れる。“クアトロこんばんは、Alaska Jamです!”と挨拶し、アップテンポな『スーパースパイシー』を投入。小野のギターテクが光る。次に『PUMP IT UP』『MY CONVERSE』とグルーヴのきいた2曲を披露。クラップで一体感が増したところに『MY VINTAGE』。ベースとギターのアンサンブルが最高に気持ち良い。ギターソロの後ピッチが上がり、客席はダンスフロアに早変わり。MCでは“ライブが楽しい!”と笑顔の森。Alaska Jamもこの日が2019年ラストライブ。スサシの余韻を引き継いで電話番号を言う場面や、森がタラちゃんとマスオさんのモノマネを披露する場面も見られた(笑)。『Just Living』に続いては忘年会らしく『Champagne』『焼酎』とお酒の曲をドロップ。山下のドラムソロや、石井の奏でる心地良いビートに身を任せ、プチョヘンザで応じるオーディエンス。森が軽やかにステップを踏む。続いてアーバンな『FASHION』『GOOD FOOT MONKEYS』をドロップ。“今日初めて見た人はよく覚えて帰れ!!”という森の言葉を合図に『東京アンダーグラウンド』のイントロが聴こえると、歓声とともに一斉にクラップが起こる。スカのリズムで会場全体が揺れる。ラストは『少年と樹』。どこかけだるそうに、時に熱っぽくリリックを吐き出す森の色気に魅了される。オーディエンスも引き込まれ、“まだいけんじゃねえの!?”に応じてフロアはダンスの嵐。上質なグルーヴに包まれて最高潮の盛り上がりを見せた。
tricot
そして、
tricot。中嶋イッキュウ(Vo.)が“よろしくお願いします”と挨拶。ヒロミ・ヒロヒロ(Ba.)のベースラインとドン! という吉田雄介のドラムとともに一気に音が弾ける。1曲目は『おもてなし』。ヒロミ・ヒロヒロはヘドバンし、キダ モティフォ(Gt.)は超絶テクニックを魅せる。美しいハーモニーと変拍子、爆音、演奏力の高さにとにかく圧倒される。『よそいき』『アナメイン』『おちゃんせんすぅす』『あふれる』と、MCもほとんど挟まず、次々曲を披露していく4人。1曲終わるごとに大きな歓声と拍手が贈られる。放たれる音の波に、歌に、予想できないリズムに、照明に、脳がガンガンに揺さぶられる。目の前に迫ってくる音に手を伸ばせば触れられそうな感覚に襲われた。まるで新しいアトラクションを体験しているような感じ。イッキュウの淡々としているようで情熱的な歌唱も印象的。ゆらゆら歌ったかと思えば、力強く躍動する。目の前で起こる緩急ついたパフォーマンスについていくことしかできない。オーディエンスも負けじと食らいつき、フロントの3人が手を挙げると、客席も応える。ようやく挟んだMCでは“楽しいですね”とイッキュウ。“我々は冷ますのがテーマなんで”とのイッキュウの発言に袖から“それはアカンやろ!”とツッコミが入る。“あとで熱いお湯に入れるんで”と言いながら『なか』『potage』で少しクールダウンした後『爆裂パニエさん』を投下。ラストは“かかってこいや!!”とイッキュウが叫び『99.974℃』『MATSURI』と一気に駆け抜ける。会場の熱は急上昇。キダが激しくヘドバンし、ヒロミ・ヒロヒロが挑発的に弦をかき鳴らす。モニターに足をかけたイッキュウが“今年もありがとうございました”とひとこと発し、身を乗り出したかと思えばダイブ! オーディエンスに支えられてサーフする。ステージに戻るとそのまま倒れ込んでキダ、ヒロミ・ヒロヒロと共に3人でステージを転がる。最高潮の沸点に達した状態で最後まで駆け抜け、非常に熱い余韻を残して演奏を終えた。ただただ美しいライブだった。
空きっ腹に酒
そしていよいよトリの
空きっ腹に酒。超満員の客席が今か今かと登場を待つ。サウンドチェックでは小野、ヤマサキ、ユーキ、森が乱入(?)し、チューニングのお手伝い(笑)。SEが流れ、メンバーが登場すると大きな歓声が起こる。幸輝が“本日1番カッコいいのやろうぜ!!!”と、叫んだ後、爆発するように音が弾ける。2019年最後の空きっ腹に酒のライブは『イマ人』でスタート。“お前らに任せたぞ大阪!!”という言葉に呼応して、客席が大きく揺れる。『御乱心』『愛されたいピーポー』と一気にドロップ。アンセムの連続にフロアは大狂乱。サビでは一斉に手が挙がる。ハイテンションになったオーディエンスを幸輝が“跳べ跳べ跳べ!!”と煽る。梅田クラブクアトロは“楽屋まで揺れる”と有名なハコ。元映画館という造りからか、文字通り物理的にものすごく揺れるのだ。この時筆者は今日1番の揺れを体感した。曲が終わると客席から“サイコーやな!”と声が飛んだ。それに反応して幸輝は“どのバンドよりもカッコええやんお前ら!!”とオーディエンスに賛辞を贈っていた。
袖では他バンドのメンバーが空きっ腹に酒のライブを見守る。ヤマサキやユーキに至ってはステージに座り込んだり、体を揺らして歌っているのが客席から丸見え状態。最早、そこは袖ではない(笑)。しかしそんな様子が見れるのもファンには嬉しいものだ。
MCに続いて盟友・Alaska Jamの森心言が呼び込まれる。披露されたのは昨年会場限定でリリースされた『酔.ep』に収録され、森がゲストボーカルで参加している『Raw Like Sxxt』。幸輝の力の入った高速ラップ。森も応えてリリックを刻む。ステージを動き回りながら息の合ったフロウで魅せる2人。赤いライトが激しくステージを照らし、とんでもないグルーヴが会場全体を包み込み、乱れのないプチョヘンザでウェーブが生まれる。握手しようとする森の手を弾いた幸輝。その姿に、“けなしあいも愛情として受け止めてくれる”、と語っていたのを思い出した。『BooooM』『MOST』と流れるように曲をつなぎ、会場はさらにうねりをみせる。
MCでは幸輝が各バンドへの感謝の気持ちを口にする。照れ臭そうに、でも誇らしげに、友達と自分たちの活動に胸を張って語る姿が男らしかった。
『飽きた』ではキュウソからヤマサキセイヤが登場。サビを2人でシンギング。さらに“俺は誰も1人にしたくないねん! 全員で踊るんじゃ!”と投下されたのは『Pa』。サビの“パーティー! パーティー!”では挙げられた両手が右へ左へ揃って揺れる。コール&レスポンスもバッチリ決まり、シンディと西田がこれでもかとステージを縦横無尽に動き回る。『正常な脳』ではそれぞれのソロパートもしっかり用意され、シンディのベースソロが腹の底に響き、西田のギターソロが冴え渡る。“弾ききった!”と言わんばかりの笑顔でピースを向けた西田に続いて、ドラム・いのまたのソロ! と思いきや……無表情のいのまた(笑)。“やらんのかい!”とズッコケる幸輝。“ピンスポまで当ててもろたのに!”再度、ドラムソロ……! “やらんのかい!!”のやり取りを3回し、結局ドラムソロはなく(笑)、最後は会場全体で“クアトロ!”“インザハウス!”のコール&レスポンス。“インザハウス=今日の主役ってことやから、紛れもなくお前らのことやぞ!”と叫ぶ幸輝の言葉に、客席は大歓声とジャンプで応える。メンバーもステージ上で大きくジャンプ! 渾身の力で最後の音をぶち込んで、本編は終了した。
すぐさま起こるアンコールに応えるメンバー。ここで幸輝から2020年5月1日、梅田クラブクアトロで空きっ腹に酒のワンマンライブが行われることがアナウンスされた。“クアトロが好きだ。これからもクアトロでこのイベントをやりたい。そのために1回俺らが強くならんとあかんと思った次第です。『クアトロインザハウス』でワンマンをやる! ちょっと早いとか言われるかもしれへんけど、どんな時でも音楽があれば楽しいので、あまり気負わずソールドを目指そうと思います”との言葉に、惜しみない拍手が贈られる。
アンコールは『夜のベイビー』。ワンダフルボーイズのカバーで、歌詞をリアレンジした楽曲だ。タクマのキーボードと小野のギターがステージにセットされ、呼び込まれたにも関わらず、弾かずに他のメンバーとじゃれる場面もあり、“弾いてへんし。いつもの俺らや(笑)。我が家へようこそ!”と笑う幸輝。チヨがウイスキーをステージ上のメンバーに飲ませて回ったり、キダがスクーターで遊んだり、自由に過ごす出演者たち。言ってみればカオスなのだが、お互いへの愛情が感じ取れるため、楽しそうなその姿に微笑ましくなる。オーディエンスもあたたかく見守っていた。(そしてなぜかボーカルが皆赤いトップスを着用していた)
フリースタイルパートでは、各バンドのボーカルが順番にラップを披露。お互いにリスペクトと感謝をそれぞれのリリックで紡いでいく。最後はもちろん幸輝。“頭のイかれたやつらばっかり集めた俺たちの共通点、たった1つだけ。音楽が好きやねん!!!”と叫ぶ。会場全体が祝福モードで、この日を迎えられたことを心から喜び、楽しんでいることがありありと見てとれた。“今日が素敵な思い出になりますように! 愛してるぜ!!!”という幸輝の言葉で締めくくられる。最高にエモーショナルで感動的な時間だった。
こうして2度目の『クアトロインザハウス』は大団円を迎えた。きっと5月のワンマンも最高の夜を見せてくれるはずだ。是非彼らの勇姿を目撃してほしい。2020年も空きっ腹に酒の道は続いていく。
text by ERI KUBOTA
photo by 雷
(2020年1月28日更新)
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