「人の気持ちも音楽も、大きな波になる」
実力全面発揮の3rdアルバム『WAVE』リリース!
1月からは全国ツアーがスタート!
NEIGHBORS COMPLAINインタビュー&動画コメント
2014年に大阪で結成し、自ら作詞作曲、プロデュースも行うセルフ・コンテインド・バンドNEIGHBORS COMPLAINが1月8日、3rdアルバム『WAVE』をリリースした。4人のプレイヤーとしてのアビリティを前面に押し出した前作2ndアルバム『BRIDGE』を経て、今作は内面のパーソナルな部分にフォーカスし、悩みや葛藤もさらけ出して4人の人間らしさを表現した作品となった。持ち前のグルーヴ感、ドライブ感を発揮しつつ、HIP HOP、R&B、New Jack Swingなど、ブラックミュージックへのリスペクトと愛情を、彼らだからこそできるオリジナル楽曲に昇華している。気鋭のラッパーJinmenusagiをフューチャリングしたり、トークボックスを使った歌唱、日本語詞の良さを確認した上でのフル英語詞への原点回帰など、新たな試みも詰め込まれた至高の1枚。一体どんな課程でできあがっていったのか、4人に話を聞いた。1月16日(木)からは大阪BIG CATを皮切りに全国9箇所でツアーがスタートする。『BRIDGE』で架けられた多くの橋に、NEIGHBORS COMPLAINの音や感情の『WAVE』が届くことだろう。
“悩んでることも歌にしてしまえばいいんじゃない”って
――作品としては前作『BRIDGE』からちょうど1年ですね。前作を経てどういう作品にしようと思いましたか?
Oto(vo)「『BRIDGE』の時は4人の歌と鍵盤、ギター、ベース、ドラムの個性が面で見える作品になったんですけど、今回は曲の中身をより濃くした作品になったと思ってます。特に今作と前作で1番違うのは、歌詞の部分ですね」
――どういうふうに変わったんですか?
Oto「僕自身のパーソナルな部分に重きを置いたというか。僕が歌って説得力があること。僕がどんなことを考えてて、悩んでて、どんなことが好きなのか」
Gotti(g)「今までパーソナルな部分を出すのはあまりよくないんじゃないかと思ってたんですね。それは世の中にあまり共感されないかなと。僕たちミュージシャンは、一般の人と起きる時間も寝る時間も違うよねとか。そんな個人のことを深く歌詞にしても、多くの人に伝わらないんじゃないかという気持ちもどこかにあって。でもよく考えたら、たとえば僕たち尾崎豊さんがすごい好きなんですが、“ああ、すごいなあ。尾崎さんこういうこと考えてるんや”って憧れたりしてるんですよね」
――盗んだバイクで走り出したり……。
Taka(ds)「 “俺もそう!”とかじゃないけどね!」
Gotti「だから、そんなに深く考えず、ナチュラルに自分たちのことを表現したらいいだけじゃないかという思いに行き着いたんです。聴いてくださった方に、それを単純にこの作品で伝えたかったんですよ」
Taka「程よいリアリティがあった方が入りやすいのかなと」
――歌詞はOtoさんが書かれたんですか?
Oto「流れは僕が書いたんですけど、メンバーそれぞれコライトしたり、書いてる曲もあります」
――確かにリアルな心情を歌う曲が多いですね。
Oto「特に1曲目の『Continue..?(feat.Jinmenusagi)』は、R&Bもヒップホップもブラックミュージックというカテゴリではシーンは同じなんですけど、僕らだけじゃカルチャーをなかなか発信していけない。じゃあ皆でカルチャーを発信していこう。誰かと力を合わせたいと思っていたところ、Jinmenusagiのラップを聴いた時、彼の持ってるワードセンスや説得力に衝撃を受けて。何を考えてこういう歌詞になるんだろうとすごく興味が湧いて、実際にライブも行って。すごくアーティスティックだけど、弱い部分も全部さらけ出してるところがカッコ良いなって。それで彼とコラボレーションしたいという想いで作り上げたのがこの曲です。曲を作る時に“プライベートでいろいろ話したいです”とメールを送ったら、“僕の地元紹介しますよ”と言って案内してくれて、1日中“ここ昔からよく行く喫茶店でー”とか、“高校大学の頃このゲームセンターに通ってたんですよねー”、という話をして、そこで一緒に2人でゲームしたりして」
――へえー!
Oto「で、ゲーム画面に“Continue..?”が出てきて、すごく良い言葉だなって。“これからも続いていくけど、続けるか?どうする?”みたいな。で、2人で“これはタイトルにすごく良いね”となりました」
――その場で決まったんですね。
Oto「そうなんですよ。でもとにかくその時期は、何を書けば相手に伝わるのかわからなくて、言葉で伝えるのも下手くそなんで、どうしたらいいだろうとすごく悩んでて。そしたらメンバーから、“悩んでることも歌にしてしまえばいいんじゃない?Jinmenusagiくんと出会ったことも、そのまま曲にしようよ”と言われて」
Gotti「どうしたら伝わるのかを考えて書くって、絶対違うなと思ったんですよね。“これが響くかな”とかじゃなく、悩んでるなら悩んでる、それでいい。何も難しいことじゃない」
Oto「それを彼に伝えて、悩んでることや彼と出会った時のことを歌詞の1番に込めて、それを彼に投げて返ってきたのが2番の言葉だったんです。その時彼に救われた気分だったので、そこにアンサーじゃないですけど、3番は“仲間でこれからもやっていきたい”という想いを込めて書きました」
――ストーリーがありますね。Jinmenusagiさんに救われたというお話はされたんですか?
Oto「しました」
――その時何ておっしゃってました?
Oto「“ありがとうございます”って。“R&Bの方がこっちに寄り添ってくれることはほんとにないんで、すごく嬉しいです”と言ってくれて」
――では『Continue..?(feat.Jinmenusagi)』が出来てから、他の曲の制作を始めたんですか?
Kash(b)「いや、制作は並行して進めてました。初めに4人それぞれがトラックや歌詞を作って持ち寄って、“この曲いいね”とピックアップするんですけど、その中にもちろん『Continue..?(feat.Jinmenusagi)』もあったので、全曲同じ流れでは作りました。仕上げや細かいニュアンスを4人で変えていって、改めて“歌詞誰が担当する? この曲は誰々がやった方がいいかも”、みたいなやりとりをして、固める感じですかね」
――音作りでもパーソナルな部分を出すことを意識されたんですか?
Taka「前作は個々で作ってきたものをスタジオに入って練り直してたんですけど、今回はほぼ全曲を4人で、デモの段階でギターもビートも鍵盤も歌も入れて、一緒に作り上げてきた感じですね」
Kash「Otoだけじゃなくて全員のパーソナルな部分を合わせていく感じというか。無理矢理ハメるんじゃなくて、言葉1つ、音1つを組み合わせていく」
――今作は原点回帰の作品ということですが。
Taka「原点回帰でいうと、フル英語詞ですね。デビュー前は4人とも英語詞しかやってなかったんですよ。でもやっぱり日本で活動するし、言葉としてストレートに伝わる日本語を取り入れて。けど元々の理想は洋楽の英語のニュアンスだから。で、もう1回チャレンジしてみようということで」
――『Shine On』(M-2)ですよね。作詞する上で意識したことはありますか?
Kash「最初は日本語詞で、僕が英詞で書き換えたんです。単純にもっとリズミックな方がカッコ良いなと思ったんですよね。皆で喋ってる時に、“これ英語にした方がカッコ良いと思う”って」
Taka「どこかで日本語でと思っていたんですよ。でも曲によっては英語でいい。そういうこだわりも全部捨てて、自然にやろうと」
Kash「英語だと言葉もダイレクトになる。日本語の美しさはちょっと遠回りに言うところかと思うんですが、遠回りな言葉で言われても伝わらないなら、ダイレクトな方がいい」
Oto「本当に僕ららしいことができたんじゃないかなと思いますね」
Kash「もうすぐMVが公開されるんですけど、僕たちが昔アメリカでレコーディングした『Makes You Move』を彷彿とさせる、すごく自由なMVになってて。それがまた原点回帰感がある。見てもらえたら嬉しいですね」
今回のアルバムは10年後くらいに振り返ったら
“この1年色々あったな”って懐かしむと思う
――先ほどおっしゃっていたように、Otoさんがお悩みの様子が歌詞にも顕著に出ていて。
Oto「もう、めちゃめちゃ悩んでましたね」
Taka「全部新曲で、制作中に歌詞も変えたりしてたので、その時のマインドが出るんですよね。だからそういうラインナップが多くなったんじゃないかと(笑)」
Kash「めちゃくちゃリアルだからね!」
Oto「めっちゃリアル(笑)。なかなかメンバーがゴーサイン出してくれなくて、“これどう?”“うーん”、“じゃあ何書けばいいんだろう”、“そのままでいいよ”、“そのままって何!?”みたいな(笑)」
Kash「ちょっとカッコつけるんですよ」
Oto「それはありますね(笑)」
――でも『Overnight』(M-4)では特に素直な気持ちを感じました。
Oto「これはほんとに僕の心情や見た景色を書いています。いま、横浜でラジオ番組やらせてもらってて、大阪から深夜バスで行って、朝着いて、夕方くらいに収録してそのまま夜行バスで帰ってくるんです。バスの中でもいろんな想いやストーリーがあるなと思うんですね。“ディズニーランド行ってきたのかな”とか、“この人は今から仕事かな”とか。“もうちょっとうまく喋れて、もうちょっとうまくいったら、新幹線移動になったらいいのになー”とか(笑)。そんなことを考えてて、歌詞にしました」
――希望と不安がすごく表れてますよね。あとライナーノーツを見ると、Gottiさんも悩んでらっしゃったような。
Gotti「僕がというよりも、バンドがですね。どういうものを作ったらいいかわからなくなった時期もあり、でも色々悩んだからこそ、答えが見つかった時に今までよりも強くなれた感じです。今回のアルバムは多分10年後くらいに振り返ったら、“この1年めちゃめちゃ色々あったな”って懐かしむと思う」
Taka「泣いてるかも(笑)」
Gotti「すごいネガティブになってた時期もありましたけど、ネガティブでいると周りにハッピーな人が集まってこないですよね(笑)」
――ああ、わかります!
Gotti「それに気付いた時、ポジティブにやっていこうよと切り替えて。そういったものを『Good Vibes』(M-6)で表現しました」
――アルバムタイトルを『WAVE』としたのは?
Kash「音楽も、水の雫も、光も揺れますし、何にでも波があって。人の感情の波ってすごい伝播するんですよね。ネガティブな時はネガティブな人が集まってきて、ポジティブな時はポジティブな人が集まってくる。それはすごい感じてて、上げていくのも下げていくのも自分たちなんで。それをタイトルにしようと『WAVE』にしましたね」
――『Virtual Dance Floor』(M-3)では、トークボックスという新たな取り組みをされていますね。
Oto「今までもピアノソロみたいな扱いでトークボックスソロを入れてたんですけど、トークボックスで歌うことがずっと難しくて。今年、僕たち主催のイベント『Block Connection』(2019年8月30日開催)で出演してくれた、関西のトークボックスアーティストのKZYBOOSTのプレイは、言葉がハッキリというか、歌ってるみたいな鍵盤で、すごく刺激受けて“絶対練習しよう!”と思って。そこからこの『Virtual Dance Floor』でチャレンジしてみたいなって」
――ハッキリ言葉が聞こえるように歌うのって、きっと難しいですよね。
Oto「めちゃめちゃ難しいです。KZYBOOSTとスタジオ入ってレッスンしてもらって」
――『Virtual Dance Floor』は聴いててすごく気持ち良いです。
Oto「ありがとうございます。もう、ザップリスペクトですね。トークボックスもサウンドの作り方も含めて昇華できて、新しいNEIGHBORS COMPLAINの味になったんじゃないかなと」
――ちなみに歌詞の元になった映画というのは?
Kash「『レディ・プレイヤー1』です。この曲も元々日本語詞で、トークボックスも使ってなかったんですよ。でもトークボックスにしようとなって、英詞に書き換えようと。せっかくだしちょっとぶっ飛んだ歌詞にしたいと思って『レディ・プレイヤー1』観て、これだと思って。自分の現実世界とちょっと違う世界に潜り込むんですよね。でも嘘ではなくて。その感じを表現できたと思ってます」
――ラストの『Super-Duper HERO』(M-7)ですが、1枚目も2枚目もアルバムのラストに感謝の気持ちを歌った曲を入れておられますが、今回はバラードではなく、違った印象を受けます。
Oto「大切な人に向けた曲です。近いからこそ上手く言えない自分がいるんですよね。Aメロに出てくるのは僕自身で、サビに出てくるスーパーヒーローは大切な人です。“うまく喋れないけど大切なんだよ”ということを最後に伝えたいなと思いました。僕、メッセージ性が強い曲を書くときに、すっごい力の入ったバラードを壮大に書いてしまう悪い癖があるんですけど」
Taka「悪くはない(笑)」
Oto「(笑)。 だけど今回は、メッセージ性は強いものだけど、リズムは自分たちの好きなNew Jack Swingで心地の良いビートに乗せて表現したいなと思って」
Taka「『 Super-Duper HERO』は元々のメロディがラップに近くて、New Jack Swingはラップの要素がある音楽なのでハマりやすいかなと。別に感謝の気持ちを歌うからってバラードにする必要はなくて、今年に入ってJinmenusagi然り、ラッパーとつながる機会も増えてきて。彼らはすごく赤裸々な歌詞を書いていて、そういう人と関わってきたから、影響を受けたのかな」
Kash「サウンドと歌詞の温度感はちょっと違いますけど、それがバッチリマッチしましたね」
弱みを誰かに見せるのは、ネガティブなことじゃない
――『WAVE』が完成して、どう感じていますか?
Oto「僕自身、自分の弱い部分とか今までなかなか言えなかったことも伝えた方がいいなと、今になってやっと気づけました。弱みを見せるってすごくネガティブなことだと思ってて、人に見せちゃいけないと思ってたぐらいなんで。だけど見せてもいいんだって。ちょっと楽になれたと言ったらおかしいですけど、弱い部分も見せた方がナチュラルというか。僕みたいに悩んでる人に聴いてもらいたいです」
Kash「『WAVE』を出したばかりですけど、今後はよりそこにフォーカスできるものが作れていくのかなと感じてますね。『WAVE』というタイトルにできたことも僕らとしては幸せですし、内容も波のように描いていて、すごく緩急ついてると思うんですよ。それが人の琴線に触れたら嬉しい。色んな表現で演奏していますけど、結局は人が作った音楽を人に聴いてもらう。そこも含めて大事に作れた作品なんで、僕たちにとっても次のステップになる作品かなと思いますね」
Gotti「色々悩んだりもしましたけど、乗り越えることができたので、格段に強くなれたと思います。だからこそこのアルバムは自分たちにとって本当に大切なもので、ライブで演奏するのが楽しみです。1月からツアーもありますから、新曲をどういう風にライブで演奏しようかと、今すごく楽しんでるところです」
Taka「今4人の結束が1番強まってる気がします。アイデアとかやりたいこと、挑戦したいものがそれぞれ増えた感じですね」
――1月16日(木)大阪・BIG CATを皮切りに全国9箇所でツアー『TOUR 2020「WAVE」』が始まりますね。
Oto「まさに今日どんなライブ構成にしようかってミーティングしたところで。4人にしかできないことを楽しんでやる。それを共有してもらえるライブになればいいなと思ってます」
Gotti「NEIGHBORS COMPLAINでしかできないものは何だろうと色々考えてます」
Kash「次のツアーほんとに楽しみです。今までより尖らせて、僕らがまず波合わせて、ちゃんと波を届けていく。大きな波にしてスタートするのが大阪が一発目です! よろしくお願いします! (笑)」
Taka「前回のブリッジツアーの時も大阪が初日だったんですけど、初日なのにまるで千秋楽のような感じで、めちゃくちゃ良かったんですよね。だから今回も、毎回が千秋楽という感じで9箇所挑みたいです」
―― 今までのツアーを経てきて、ライブに対する考え方で変化した部分はありますか?
Taka「昔は上手く演奏しなきゃとか、しっかりできてないとと思ってたんですけど、ここ最近は4人がライブを楽しめてる感じにシフトしてますね。今までも常に真剣でしたけど、もうちょっとラフに音楽を楽しもうという感覚になってきてます」
Gotti「間違えずに全員が美しくやるライブって、実はあんまり達成感なくて。トラブルがあるとすっごい面白いんですよね。極端にいうと誰か音出なくなった時に周りがどう対応するか。それが楽しかったりして」
Taka「ブリッジツアーの初日、僕ど頭でSE流すはずだったんですけど、流れなくて、沈黙が数秒続くっていう」
全員「(笑)」
Kash「僕らも前向いてそわそわしてるけど、Takaは後ろだからどうなってるのかわからなくて(笑)」
Gotti「それはほんとに良くない(笑)」
Taka「そうじゃなくて、想定通り終わるのがあんまり面白くないってことね」
Gotti「たとえばドラムから始まる曲を、急にギターからやってみた時の3人の反応だったり。僕ら自身も何かあった時、めっちゃ楽しいんですよね」
Taka「今年はほぼセットリスト決めずに、リハもせず、その場でどうするか作りながらライブをしてましたね。だから急に“じゃあドラム!”って振られるんですよ」
Oto「信頼しあってるからできるというのはありますね。このメンバーは絶対できるんですよ。それぐらいの力量があると思ってる。綺麗にやればものすごく綺麗な字が書けるんですけど、それだけじゃもの足りなくなってきた。自分たちが楽しんでた方がお客さんにもそれが伝わると思うので」
Kash「音楽やる意味というか、本質だよね」
――初日のBIG CAT楽しみですね。
Kash「めちゃくちゃ良い感じになると思います。ハードルあげても全然平気」
Gotti「ほんとに?」
Kash「余裕!」
Gotti「リハと全然違うことやるから」
Taka「俺もう叩かないから」
Kash「俺見とくから(笑)」
Gotti「Otoのソロライブやん!(笑)」
Oto「1人で“ありがとうー”」
全員「(笑)」
Gotti「それはしびれるなー(笑)」
text by ERI KUBOTA
(2020年1月 9日更新)
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