ホーム > インタビュー&レポート > 「いい曲作って、いいライブをやる。それが楽しくて バンドやっているから」 怒髪天・増子直純、結成35周年記念イヤーを振り返る
――2019年は怒髪天結成35周年でした。
(2013年の)30周年は武道館やったりとか、10年刻みは割と大きくやってるけど、今回は5年刻みだからね、中くらいのものをちょっとずつやっていこうということで、浅草で2デイズの『怒髪天 オールタイムベスト~愛されたい夜~』をやって。あとはツアーだね。年明けまでが35周年のツアーで。
――ツアーは2月1日の東京・新木場が一旦千穐楽で、2月8日・9日が恒例の沖縄ですね。今年リリースされた『怒髪天』の1曲目、「シン・ジダイ」は初のお披露目はいつだったんですか?
『シン・ジダイ』は5月に録音して、6月23日の『大怒髪展』からやり始めて。
――こちらは王道の、ザ・怒髪天ですね。
今回、『シン・ジダイ』を作るにあたって、新しい時代の幕開けに際して俺が思うことということで作って。結局、自分次第よってことなんだよね。時代が変わろうとも。ただ、(上原子)友康(G)がどうしても「乾杯」っていうワードを入れてほしいって。珍しくオーダーしてきたんだよ。じゃあ、分かったって。どこで俺の想いとの落としどころつけるかっていうのがあって、こういう感じかなっていう。乾杯しないでもないという(笑)。乾杯の曲、結構ない!?っていう話だったんだけど、でも「これは乾杯の曲にしたい」って。いいよ、分かったって。
――怒髪天は乾杯の曲だけでアルバム1枚、できそうですよね。
そうだね。随分あるから。また乾杯するの!?っていうね。それも面白いかなと思って。何回乾杯しとんねんと。でも人生で乾杯は1回でも多い方がいいからね!
――MVも素敵ですよね。増子さんはリーゼントしていない時は帽子をかぶっていることが多かったと思うんですけど、MVではそのままを映している感じで。
それは監督の意向というか、「自然な感じで。帽子もかぶらないで」って言われたから。じゃあ、分かったって。監督の思う我々怒髪天の魅力というか、いいところがほしいっていうことで。そこは自分じゃ分かんないからね。実際見るとすごく良かったね。素の部分も出てるし。
――友康さんのギターの傷も、怒髪天の35年が出ているというか。35年ずっと使い続けているわけではないでしょうけど…。
そうだね。そういう歴史が刻まれてるよね。
――2019年は令和カウントダウンが京都・磔磔でも行われて、まさに新時代を迎えて。
あれから随分経った気がするけど、そうでもないんだよね。恐ろしいな~。もう平成はめちゃめちゃ前みたいな感じだもんね。怖いわ~! ただ、新元号を乾杯して迎えるというのはすごくいいと思うよ。昭和から平成に変わる時は日本中が沈んでいたからね。平成から令和に変わるあの感じは正しいと思うね。
――実際どうですか? 元号が変わって。
まあ、年が明けるのと一緒で、気持ちのリニューアルがわずかにあるぐらいだね。そんな変わんないよね(笑)。
――日付を書くのも、平成と書かずにすんなり令和と書いている自分もいまして…。
そう。割とみんな適応能力があるよね。そんな不具合もないしね。そんなに大ごとじゃなかったね。全然地続きだった。
――ただ、ちょうど35周年の年に当たって、記憶としては残りますよね。
そうだね。本当、お祭りがあったみたいな感じだったね。
――そして2曲目の『やるイスト』ですが。
とてもいいよ! すごくいい! 軽薄なノリで最高の曲だよ! これアホのリズムだもん。すっごい軽薄だけど、人をけしかけるというかね。この時代に大丈夫か!?という(笑)。でもすごくいい曲。もう、テンションが。過去曲のテンションの中で一番、限界突破してる。レコーディングの時、死ぬかと思ったよ。とにかく苦しい(笑)。もう本当に苦しかった(笑)。後半は本当、苦しかった、勢いついちゃって。
――これは一発録りだったんですか?
何回も録ったんだけど、何回も録れないぐらいテンションの高い曲。楽しいよ! 要は今まで生きてきた人生の中で、ずっと「やるか、やらないか」っていう選択肢から選んできたわけじゃない。結果、やった方がいいなという心理に辿りついて。それを説くというか。
――増子さんは、やらない後悔はありましたか?
俺はほぼない。何でもやってきたから。やるか、やらないかで、やっちゃえ!と思ってやってきたから。やらないで後悔するのは、やっぱり、一生残ると思うね。
――そういう、やるか、やらないかという岐路に立った時は、どんな感じですか? ええい、ままよなのか、石橋を叩くではないですが、ものすごく考えるのか…。
ものすごく考えるよ。でも結局、考えても「やる」を選ぶんだけどね。考えても、考えなくても。
――なるほど。そして『オトナノススメ~35th 愛されSP~』ですが、個人的に、今までもこの明るい『オトナノススメ』で泣けてくることがあったのですが、今回も最高ですね。
最高だね。嬉し涙だね。俺らも『大怒髪展』の時までMVは観れなかったから。完成版も、公開の2時間前にやっと観れて。すごい嬉しいよね…。今までやってきたことの集大成なんだなって。ただ、ミュージックビデオを観て思ったのは、最後にちょっとぐらい俺らも出ときゃよかったなって…。一切出てないから(笑)。潔いぐらい、0%だからね、俺ら。最後に「ありがとう」って言ってるところでも入れときゃよかったなって。ゼロだもん。
――声もないですよね。
声もない。100%いない!
――この計画はいつからだったんですか?
2018年から。25周年の時にトリビュートライブしてもらったじゃない。あの時の音源が残せなかったから、今回は残せるものが欲しいなっつってやったんだけど。壮大だよ! だって1曲録るのにアルバム2枚分の予算を使っちゃって、ディレクター真っ青だもん。どうしましょうっつって。このままじゃ1曲で8000円くらいになりますけどって。マジかよ~って。だから、出来る限りのものをつけようぜっつって。アレだったんだよね、みんなほら、出演料とか、ギャラとかはないから。ありがたいことにご祝儀で、お祝いだっつって。でも、スタジオ代とエンジニア代はご祝儀関係ないからね。前代未聞だね。この予算を聞いたら、同じことやる奴いないだろうね。恐ろしいから! 後にも先にも、多分、やらないと思うよ。時間もこんなにかかると思わなった。8カ月くらいかかってるから。
――1曲に繋げるのも、すごいですもんね。
すごいよね。あれは大変だったと思うよ。レコーディングスタッフが大変だったと思う。カオスだったと思うよ。もうカオスもいいとこだよ。この人も出るの!ていう顔ぶればっかりだからね。
――柴山俊之さんのパートも、歌う人によってこうも違ってくるのかと目からうろこでした。
あそこは重いよ、本当(笑)。
――ボーカリストはそれこそパフォーマンスに特化されていて、ギター、ドラム、ベースのプレイヤーの皆さんは職人の顔ですし…。
そうそう。今回、ミックスが違うバージョンを入れたでしょ。歌を入れちゃうと、歌に神経持っていかれるから。それがなかったら、ギターとか、ベース、ドラムスもすごくよく聴こえるからね。それはね、バンドやってる人とか、音楽好きな人にはたまらんものがいっぱい入ってるから。特にドラムとベースがすごいのは、バンドだと後ろにあるものじゃない、基礎だから。今回、それぞれ短い小節の中で自分を出さなきゃいけないっていう気持ち、爪痕を残してやろうっていう気持ちもあるから、みんなめちゃくちゃ弾いてるんだよね、叩いてるし。ものすごいグイグイ来てるから、あれもぜひ聴いてほしいね。あれ、自分のバンドじゃ絶対やんないよ。
――普段はそういう作り方はされないんですか?
しないね。ものすごいから! ドラムなんかも、それぞれのクセがあるから。
――増子さんのなかで一番のツボはありますか?
いや~、これはチバ(ユウスケ)が歌ったところで、やった! これは来たなと思ったね。本当、すごいからね。大体、チバと吉川(晃司)さんはオファーを受けてくれると思わなかったから。でも、すぐ受けてくれて、本当嬉しかった。ちょうどチバが同じスタジオにいて、じゃあ、聞いてみるかってチバに「俺ら、35周年でトリビュートやるんだけど」「ああ、キュウが叩いたやつ?」「そうそうそう、ちょっと一節歌ってほしいんだけど」って言ったら、「いいよ」ってすぐ言ってくれて。で、吉川さんも「俺は人とつるむことはしない男だから、他だったらやらないよ。でも怒髪天だったらやる」って言ってくれて。「ありがとうございます!」って。吉川さんが前に1行目の歌詞がすごくいいって褒めてくれて。「これ、すばらしい歌詞だね」っつって。「本当いいよ!」って言ってくれたから、今回も絶対最初に歌ってもらおうと思って。
――そうなんですね…それは言葉にならないですね。素晴らしいですね。
すごい嬉しいよ! これはもう本当、愛情5倍返しぐらいしないと。何かあったら言ってって。引っ越しあったら坂さん(坂詰克彦/Drs.)貸すし、ご飯余ったら食べに行かせるからって。友康も、シミ(清水泰次/B)も、坂さんも、それぞれに弾いてほしい人、叩いて欲しい人を選んだから。あと、ドラムのスタイルも完全に違うスタイルの人を集めてる。一瞬メタルになったりするから(笑)。これはね、本当カオス。MVも1回見ただけでは情報量が多くて処理できない。
――何回も一時停止しました。
俺も何回も一時停止した。ああ、ここか!って。もう情報量が異常だから。
――声だけで分かる方がいる中で、一方では声を聞いても誰か分からない方もいました。
自分のキーで歌えないからね。俺のキーは高いからね、ボーカルはみんな大変だと思う。俺、基本的に男にしてはキーが高いんだよね、すごく。それでもみんなガシガシ来てるから。面白かったな~、(山本)譲二さんが出てきた時は急にバラエティー感が増して(笑)、最高なんだよね!
――『オトナノススメ』がリリースされたのは10年前なんですよね。2009年11月でしたね。
(マネージャー)年明けの渋谷公会堂で初出しして。
あれはドリフだからね。
(マネージャー)で、ハッピ着て歌ったけど、ヨドバシの店員だったっていう。
そう、全然ドリフ感なかった。完全に。なんか売りに来たのかなって(笑)。写真見たら完全にヨドバシの店員じゃね?って。
(マネージャー)ちなみに、2009年にNHKの『トップランナー』に出て、その後AXでトリビュートライブをやって、年明けに渋谷公会堂でライブをしています。
そうか…。今年、NHKの何か出たかったなぁ…。この『オトナノススメ』の全員で出るとかなぁ! みんなでやったら俺ら出る幕ないからなぁ…、審査員席に出ることになっちゃうな~(笑)。
――それは大晦日の合戦ですね。私も観たかったです。大人になって良かったなと、改めて歌詞を読みながら思いました。学校がつらいという子どもたちにも声を大にして言いたいです。
子どもの時は、世界は学校だけだと思っちゃうから。学校のことなんかも、今になったら思い出すのも大変だよ、忘れちゃって。大人になったら遠い昔の村の話だよ。RPGでいうと始まりの村の話だ。それがいずれ分かるようになるんだけど、なにしろ始まりの村にいるときは分からないから。それをちゃんと教えてあげる大人がいるべきだと思うし。先に歩いてる者としてね。それは務めだと思う。こういうことを聞くと「大人だって大変なことあるし、最高じゃねーよ」って言う人いるけど、それはごもっともよ。そこのやせ我慢も含めよ。それが粋ってもんですよ。いいことも悪いこともいっぱいあるよ。ただ、いろいろ鑑みた結果、総合的に大人はいいなって。これは最高じゃないか?って言えるっていう。まあ、子どもの頃は最高ではないもんな、結局は。自分の金じゃないと使うのが心苦しいものがあるし。大人は責任が増える部分もあるけど、それをぶん投げる自由もあるからね、大人には。
――大人になって良かったなと思えることはありますか?
常に買い物ができるのがいいね。気になった新しいゲームとかさ、やる時間がなくても買えるじゃん。こないだiPhoneを機種変したけどね、16万もするんだよ! 恐ろしくない!? その次の型が7万だっていうから、バカじゃねえかと思って。なんで新型の方が安くなんだよって話だけど。ただ、大人じゃないと16万は買えないね。まあ、分割だけど(笑)。大人じゃないと分割もできない!(笑)。良かったな~っていう反面、大変だなって思うわ。
――ものの値段が高くてびっくりします。
びっくりだよね。こんなの便所に忘れたら大変だよ! ちょっとしたパソコンより全然高いんだから。怖いよ!!
――購入された後に7万の新型が発表されたんですか?
買う前の前の日に発表されたの。だから安くなってんじゃないかなと思って携帯ショップに行ったら、安くなってないって。何で!?って。まあ、それでも買ったんだけど。でも、さすがに救済措置はあるんじゃないかな~。あると思うんだよね~、救済措置。じゃないとかわいそうだもん、俺(笑)。そしてセッティングが分からず、買った翌日にまたショップに行って。こ、これ、どうなんってんですか⁉って。説明5分ぐらいで終わった。それがちょうど地域のお祭りの日でさ、浴衣着てる店員に5分で教えてもらったわ。「これはこうですね~」って。まさかこんなに簡単に終わるとはね。
――それは何とも…苦味がありますね…。大人になっても、そんなことあるか!?っていうこともいっぱいありますよね。それでいうと坂さんのお顔が真っ先に浮かびます。
そうだね。毎度毎度驚きの連続だもんね。フラカンと東北に行ったとき、坂さん、わんこそば260杯食ったから。俺らが行く前にBRAHMANが同じ店に来ていて、TOSHI-LOWが230杯食ったって。でも、もう動けないくらいだったって。坂さんはそれを30杯、越えたからね。そんで食い終わった時に、その店の社長が「うちはかつ丼もうまいんですよ」って言ったら、「かつ丼!?」っつってたから。かつ丼の小だったら食えるって。「次は蕎麦のあと、かつ丼も食おう」って言ってたから、かつ丼は別腹だよ。坂さんは30代の記録を40代で超えて、40代の記録を50代で超えたから。恐ろしい。ほんと恐ろしいんだよね。わんこそばを食って帰った後、ホテルでカップラーメン食ってたから。じゃあ、もうちょっと記録延ばしてもよかったんじゃないかって。もう入らないんじゃなくて、味に飽きたからやめるってんだからね。
――年齢を重ねても自分で自分を越えていく…素晴らしいですね。そして年が明けると35周年ツアーもいよいよクライマックスです。
何しろせっかくライブに来てくれるんだから、その瞬間しか体験できないことを楽しむのはすごくいいことだと思うんだよね。せめて今だけはっていうかさ。ライブってそういうものじゃない? 明日からまた、別々の場所で暮らして。大変なこともあるだろうけど、今は楽しんで、この思い出を持って、「また、ちょっと頑張ろうや」って、そういうものだと思うんだよね。アニバーサリーで大きいイベントも楽しいけど、いい曲を作って、いいライブをやるっていう日常が楽しくてバンドやってるからね。その気持ちは変わらないね! ライブの一瞬こそ、楽しんでもらいたいね!
取材・文/岩本
(2019年12月28日更新)
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※誰がどこに参加しているかひと目でわかる!「オトナノススメ~35th 愛されSP~ゲスト早見表」封入!
[収録曲]
01. シン・ジダイ
02. やるイスト
03. オトナノススメ~35th 愛されSP~
04. オトナノススメ~35th 愛されSP~カラオケver
05. オトナノススメ~35th 愛されSP~インストver
06. オトナノススメ~35th 愛されSP~GUITAR mainMIX ver
07. オトナノススメ~35th 愛されSP~DRUM/BASS mainMIX ver
[DVD/Blu-ray収録内容]
【1】6/23(日)渋谷TSUTAYA O-EAST / TSUTAYA O-WESTで行われた『大怒髪展』のドキュメント映像、怒髪天メンバーによる「雑エンターテインメントSHOW」をダイジェストで収録。
<雑エンターテインメントSHOW収録詳細>
・増子直純 シャンソンショー『例の紅いドレスで…』
・上原子友康 三味線LIVE SHOW『留萌のカマリ』
・清水泰次 演芸ショー
・坂詰克彦 THE MOVIE
【2】怒髪天、もっと!もっと!愛されたくて35年。極楽元年(予想)四都巡啓
6/24(月)渋谷TSUTAYA O-WEST「~嗚呼!花の東京28年生~」ワンマンライブ映像。さらに、名古屋編、札幌編、大阪編のダイジェスト映像を収録。
▼2020年1月11日(土)18:00
大阪 BIGCAT
前売-4500円 当日-5000円 ※いずれも税込・Drink別
[出演]怒髪天
※終演予定20:00
[問]YUMEBANCHI[TEL]06-6341-3525(平日11:00~19:00)