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Age Factoryが地元・奈良から見据える景色
清水エイスケが語るデジタルシングル3部作

スリーピースロックバンド Age Factoryは、全国のライブハウスを爆発的なエネルギーで揺らしても尚、地元・奈良を離れることはない。聞けば、生まれ育った場所に留まるからこそ、その音楽性は研ぎ澄まされるのだという。彼らが3作続けて配信したデジタルシングル『CLOSE EYE』『HIGH WAY BEACH』『nothing anymore』では、清水エイスケ(vo&g)の体験や記憶が時に淡く、時にくっきりと作品の中に切り取られている。この3部作と、バンドがこれから迎えるフェーズについて、清水に話を聞くことができた。

――今年9月から10月にかけてAge Factoryは初めてのワンマンツアーを回られましたが、バンドの地元・奈良公演が行われたEVANS CASTLE HALLは、8月にオープンした新しいライブハウスだそうですね。
 
「そうなんですよね。バンドがワンマンライブをやるのはAge Factoryが初めてだったみたいで。リハーサルの段階から音が良かったです。やってる感覚としては梅田のTRADに近かったですね。1階はスタンディングのフロアで2階には座席があって、500人くらい入るみたいです。外装にはキャッスル感がありますよ(笑)」
 
――そのワンマンツアーの少し前、8月にはゆかりの深い奈良NEVER LANDでイベントも開催されていますね。
 
「僕の弾き語りワンマンライブと対バンライブを1日でやりました。Age Factoryのメンバーのナオティー(b&cho西口直人)もnerdwitchkomugichanとしてDJで参加したりして、NEVER LANDで1日中踊れる感じにしました。こういうイベントをきっかけに、バンドマンがいろんな音楽シーンにアプローチできるということを提示していきたいと思っています。」
 
――自身の音楽が全国に着実に浸透していく中で、東京に拠点を移すことを考えるアーティストも多いと思いますが、Age Factoryのみなさんが地元奈良を離れないのはなぜでしょうか。
 
「自分に刺激を与えてくれる友達がみんな東京にいたら、僕も上京するかもしれないけど、たまたま僕は生まれ育った奈良にそういう人たちがたくさんいます。奈良に居続けないとこういう音楽性にもなっていなかったと思うので、今後も出るつもりはないし、なんなら最近は“もう永住しようかな”と本気で考え始めました。取材を受けるために東京に行くことはあるけど、普通の会社員が出張に行くくらいの頻度で行ければ十分ですね。僕らの生きてる時代は東京に行かなくてもMacBookやiPhoneを握ってりゃ最先端だから、別に場所にこだわらなくていいと思います」
 
――8月から9月にかけては、配信シングルが3作続けてリリースされました。ジャケットにはこれまで同様清水さんが写っておられますが、どこか抽象的な質感が新鮮です。
 
「今回は3曲出すことになったので、ジャケットにも3作の共通性をもたせようと思ったんですけど、これがけっこう難しくて。どんな場所でどんな写真を撮ればどんなふうに曲を想像してもらえるのか、よく考えて話し合った上で撮りました。あとは、いかにも“バンドっぽいジャケット”にはしたくなかったというのもあります。配信シングルのジャケットって画面でしか見ないものなので、画面のサイズで見たときにいい見えかたをするように、文字でタイトルを入れたり工夫をしました。『CLOSE EYE』のジャケットに使ったフォントはなかなか使う人がいないと思いますが、曲を聴いた人が“なんでこの曲にこのジャケットなんだろう?”と気になってくれると嬉しいですね」
 
――なるほど。それぞれがどこで撮影されたのかも気になります。
 
「『CLOSE EYE』のジャケットは、詳しくは言えないんですが俺の家の近くで撮りました。『HIGH WAY BEACH』は、(奈良県生駒市にある)壱分インターチェンジで。『nothing anymore』のジャケットだけは東京のとある橋の下なんですよね、けっこうタイトなスケジュールの中で頑張って撮りました」
 

 
――3作連続リリースの第1弾だった『CLOSE EYE』は、Age Factoryらしい骨太なロックサウンドと、清水さんが淡々とラップをするヒップホップ的要素が掛け合わされた斬新な1曲です。
 
「『CLOSE EYE』はヒップホップから影響を受けていて、初めて“(ラップを乗せる)トラック”的感覚で曲を作りました。僕らからすれば不慣れな音楽性だからこそ、凝ったことはせずにストレートに作ったので、曲自体のメッセージと相まって面白いものになりました。一見関連性のわからない単語を並べた歌詞は、頭が空っぽの状態で街を歩いていると入ってくる情報や、よく誰かの口から耳にしたり目にしたりするけどリアリティのないものを集めて羅列しています。そして、そういったものには何の意味もないんだというアンチテーゼの象徴が、サビで繰り返している“CLOSE EYE”という言葉です。聴いたひとに“何なんだろう?”“どういうことなんだろう?”と思ってもらうのが狙いなので、何も考えずに聴くタイプの曲ではないと思います。どの曲にもライブで演奏するときに一番ぶち上がるポイントが存在していて、この曲の場合はイントロの部分だったりサビだと思うんですけど、そういう沸点みたいなものを明確にパッケージできたので、今まで出した曲の中でもライブで演るときのアドレナリンは一番なんじゃないかと思います」
 

 
――清水さんは、ヒップホップをどのような音楽として捉えていますか?
 
「自由の象徴だし、あれほど個々のキャラクターが濃く反映できる現代的な表現方法は他にないかなと思います。ストリートの人たちが生活水準や階級を超えながらメイクマネーして登りつめていくストリー性や、ファッション性もロックバンドとは大きく違います。ただ、ヒップホップを含むどんなジャンルにももちろん魅力がありますけど、僕はロックを続けてきた身としてロックバンドこそ最も気高き存在だと思いますし、そうなっていかないとこの先ロックバンドが生き残っていけないんじゃないかとも思います」
 
――普段、プライベートではロック以外の音楽も多く聴かれるのでしょうか?
 
「エレクトロやテクノが多いかもしれません。どちらもトラックメイカーなんですけどロンドンのTourlistや、ノルウェーのCashmere Catを聴いています。どんな音楽も“自分の音楽にはどう活かせるのか”という興味を持って聴くので、何も考えずにリラックスしながら聴いて“最高~!”と思える音楽はあまりないかもしれないです。打ち込みの音楽でもサンプルで使われている音に“こんなの使ってるんだ”と思ったり、気になるポイントはどんどん増えていきます。ナオティーから勧められたThe Chemical Brothersの『Go』を聴いたときに、“なんでこのジャケットなんやろう? ミュージックビデオもライブも気になるな。”と思ったんです。興味を持った曲についてはとことん知らないと気持ち悪いし、知ったら知ったでそこから学習しなきゃと思っちゃうのでしんどいんですけど(笑)、好きだからつい探求してしまいます」
 
――なるほど、今後もジャンルをクロスオーバーさせたAge Factoryの作品が楽しみです。連続リリース第2弾『HIGH WAY BEACH』は、地元奈良の情景を描いた楽曲なのですね。
 
「これは、曲自体はずっと前からあったんですけど、初めて歌詞を友達と一緒に書きました。以前は誰かに歌詞を書いてもらうことに少し抵抗があったんですけど、誰かの力を借りていいものができちゃうと、認めざるを得ないですね。同じ奈良でARSKNというバンドをやっているRY0N4というやつの家が、高速道路の入口の近くにあるんですけど、RY0N4の家で夜通し一緒に曲を作っていると、深夜3時くらいになったら車がほとんど通らなくなって、音が少なくなるんですよ。ある日“この静けさ、海みたいやな”という会話から俺が発した『HIGH WAY BEACH』という言葉をRY0N4が覚えていて、別の日の同じ時間帯にまた二人で曲を作っていたときにこの言葉をRY0N4が挙げてくれて。そこから2〜3時間で一気に歌詞を書きました。朝方まで誰かと遊び尽くしたりして、この時間に僕と同じようなことを感じている人たちに向けた、世代に関わらずこの感覚を知っている人たちだけがわかる合言葉のような、そんな意味を持たせた曲です」
 
――第3弾『nothing anymore』には佐藤千亜妃さんがコーラスとして参加されましたが、佐藤さんとAge Factoryは古くからの仲なのでしょうか?
 
「僕が高校1年生くらいの頃にクガツハズカム名義の作品で佐藤千亜妃さんを知って、彼女がボーカルを務めるきのこ帝国と赤い公園とtricotのスリーマンライブをナオティーと神戸に観に行ってからずっと好きだったんですが、仲良くなったのは去年キネマ倶楽部で行った僕たちの自主企画にきのこ帝国を対バンで迎えたときですかね。『nothing anymore』には女性のコーラスを入れたいと思っていたんですが、誰かが“佐藤さんがいいかもね”と言った瞬間に“絶対そうだ!”と思って、一気に歌詞を書き上げました。高校生あたりの思春期から、20代に入った現在までの自分の生活や環境を描いているんですが、当時日本のバンドで最も好きでよく聴いていたのがきのこ帝国でした。過去にも女性ボーカルに入ってもらった曲はあって、それらはどちらかというと声やサウンドを重視して入れたいと思ったんですが、この曲は佐藤千亜妃さんに歌ってもらうこと自体に意味を感じてお願いしました。佐藤さんの歌の魅力は、どんな曲でも彼女の声が聴こえた瞬間に毎回ドキッとするところだと思います」
 
――時間の移ろいを素朴な描写で効果的に表現する歌詞が素敵でした。
 
「歌詞に登場するキャスターは僕が初めて覚えたタバコなんです。“懐かしいキャスター”と“屋上の煙”はどちらもタバコを吸っている描写なんですけど、“懐かしいキャスター”のほうがキラキラしていて“屋上の煙”は少し汚く感じるじゃないですか。そういう移り変わりをこの曲では美しく表現できたと思います。僕の母親は“懐かしいキャスター”と聴いて“(ニュースキャスターの)安住さんのこと?”って聞いてきましたけどね。そのキャスター違うわ!って(笑)。“川沿いの光”も都会にはないんだろうなと思いますし。」
 
――清水さんの書く歌詞はどのように浮かんでくるのですか?
 
「ふと思いついたときに書き溜めておくこともありますが、勢いでばーっと書けたときのほうが後々自分でも好きな歌詞だなと思える気がします。昨日NetflixでTravis Scottのドキュメンタリーを観ていたんですが、トラヴィスが友人たちと楽曲制作をしながら部屋で飛び跳ねているシーンを観て、僕らにもそういうときがあるなぁと共感しました。みんなの脳みそがよく動いて考えていることを共有しながら、楽しみながらいいものを作り上げる瞬間はこの上なく興奮しますよ」
 
――そんな瞬間を重ねながらこれからも楽曲がたくさん生み出されることと思いますが、新しい作品の制作は始まっていますか?
 
「この3曲を基盤としたフルアルバムの構想もあって、新しいフェーズに向けて制作を始めています。曲作りにおいてはライブがひとつの指針になっていて、観せるステージと観るフロアが一瞬でコネクトする桁違いの沸点が、たくさんある楽曲を作りたいと思っています」
 
――最後に、今後バンドとして見据えていく大きな目標があれば聞かせてください。
 
「今まで交流のなかった音楽性を持つ人たちとも幅広くやっていきたいですし、それができるだけの能力を僕らが身につけたいです。ジャンルは違っても、僕らが表現したいものを色んなアーティストに理解してもらえるように、濃いものを持っていたいと思いますし。もう一つ具体的な目標を言うと、ONE OK ROCKとツーマンライブをできるようなバンドになりたいです。東大寺に呼びます!(笑) 奈良でフェスも開催したいし、僕らの生まれた場所をますますフックアップしたいです」

text by 河嶋奈津実



(2019年10月28日更新)


Check

Movie

Release

Digital Single『CLOSE EYE』
発売中 250円(税込)
UKDZ-0202
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT

《収録曲》
01. CLOSE EYE

Digital Single『HIGH WAY BEACH』
発売中 250円(税込)
UKDZ-0203
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT

《収録曲》
01. HIGH WAY BEACH

Digital Single『nothing anymore』
発売中 250円(税込)
UKDZ-0204
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT

《収録曲》
01. nothing anymore

Live

『STORMY DUDES FESTA 2019』
チケット発売中 Pコード:161-185
▼11月2日(土) 12:30
心斎橋アメリカ村周辺のライブスペース複数会場
オールスタンディング-4200円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]RAZORS EDGE/Age Factory/ATATA/BURL/CROW DRAGON TEA/DEEPSLAUTER/DUB 4 REASON/FRIDAYZ/MEANING/OVER ARM THROW/SLANG/SpecialThanks/spike shoes/Step Lightly/THRH/クリトリック・リス/FUCK YOU HEROES/NO HITTER/Northern19/PALM/RADIOTS/SPREAD/THE→CHINA WIFE MOTORS/THE SENSATIONS/THE SKIPPERS/THE STARBEMS/タカ・タカアキ/ナイトサパーズ/Day tripper/FIVE NO RISK/GARLICBOYS/GOOD4NOTHING/MUGWUMPS/Paledusk/SHADOWS/SPARK!!SOUND!!SHOW!!
[問]LIVE HOUSE Pangea■06-4708-0061


『SPARK!!SOUND!!SHOW!!』
チケット発売中 Pコード:156-934
KYOTO MUSE
前売-2800円(ドリンク代別途必要)
[ゲスト]Age Factory/他
[問]エイティーフィールド■03-5712-5227


「SiM」
チケット発売中 Pコード:157-582
▼11月21日(木) 19:00
神戸 太陽と虎
オールスタンディング-3800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]Age Factory
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。
※販売期間中は1人1公演4枚まで。
[問]GREENS■06-6882-1224


「Nothing’s Carved In Stone」
チケット発売中 Pコード:157-171
▼11月27日(水) 18:30
U★STONE
▼11月28日(木) 18:30
神戸VARIT.
スタンディング-3900円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[ゲスト]Age Factory
※3歳以上はチケット必要。
※販売期間中は1人1公演4枚まで。
[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888


「G-FREAK FACTORY」
チケット発売中 Pコード:144-276
▼12月1日(日) 18:00
広島Cave-Be
オールスタンディング-3000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[ゲスト]Age Factory/RED in BLUE
※3歳以上はチケット必要。3歳未満は保護者と一緒の場合は保護者1名につき子ども1名まで入場無料(保護者1名、子ども2名の場合は入場不可)。
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]夢番地広島■082-249-3571

チケット情報はこちら


Age Factory presents「NOVA CITY」
▼2020年5月5日(火・祝) 13:00
Creative Center Osaka(名村造船所跡地)
オールスタンディング(一般)-4999円
オールスタンディング(学割)-4500円
[出演]Age Factory/他
※別途ドリンク代
※学割は当日学生証をご持参ください。

★チケット先行の詳細はこちらから


オフィシャルサイト