危機的状況を乗り越えて、リスタート! 2年振りのニューアルバム『Andante』を携え 「Andante TOUR」が9月1日から幕を開ける HOWL BE QUIETの竹縄航太(vo&g&p)にインタビュー
前作『Mr.HOLIC』から2年ぶりとなるニューアルバム『Andante』を7月31日にリリース。悲劇も喜劇に変えてしまう痛快なオープニング曲『覆水盆に返らず』に始まり、胸いっぱいの愛が心にまっすぐ届く新たなる名曲『fantasia』、羽生まゐごと作詞をコラボして4月にデジタル配信された意味深な『ヌレギヌ』や竹縄航太(vo&g&p)がSexy Zoneに提供した『名脇役』のバンドアレンジによるカバーなども含まれ、絶望の夜を超えていく感動作『Dream End』まで全8曲が収録。危機的状況を乗り越え、リスタートした新生HOWL BE QUIETが送り出す今作は「いろんなドラマが詰まったドキュメンタリーみたいなアルバム」となった。新メンバー加入後のバンドの進化、推進力ある新曲が生まれてきた背景など、フロントマンの竹縄航太(vo&g&p)に詳しく語ってもらった。
音楽への向き合い方が180度変わりました
――前作から2年の間にいろんなことがあったようですね。
「前の『Mr.HOLIC』がもうホントに最後のアルバムぐらいの感覚だったので…。実はそのアルバムツアーで(前の)ベースが脱退する予定だったんですけど、その後にライブが決まったりして、タイミングを逃してて。バンドの中もぴりぴりしてたし、もうここが潮時だなと思ったこともありました…」
――それを乗り越えられたのは?
「一人じゃなかったというのもあるし、やっぱりファンのみんなが励ましの言葉をくれてたのが嬉しかったですね。これだけ待ってくれている人がいるのに、この人たちにちゃんと返せるものを返したい!と。それで、“HOWL BE QUIETを続けよう!”“しっかりリスタートして何か返しに行こう!”っていう気持ちがバンドとして固まっていったんです」
――新メンバーとなるベースの松本拓郎さんはどういう経緯で加入されたのですか?
「前のベースがやめるって決まってから、ライブハウスに足を運んだりして新しいベースを探していた中で、ギターの黒木がたまたま見つけたんです。去年の4月ぐらいですね。それから、一緒にスタジオに入って、正式メンバーになったのは初ライブをした10月。そこから新生HOWL BE QUIETがスタートしたんです」
――拓郎さんは最年少になるんですね。
「そうですね、6歳下なので。でも、そんなに年齢差は感じないですね。音楽的な見地や知識は一番上っていうぐらいいろいろ知っていますし、ぼくらもそれに助けられることがたくさんあります」
――新生して、バンドとして一番変わったことは?
「音楽への向き合い方が180度変わりました。特にライブでは勢いだけじゃなくて、細かいところまで、一瞬一瞬、しっかり意識してバンドのグルーヴを合わせるようになりました。そういう意識を変えてくれたのが(松本)拓郎だったんです。キメとかグルーヴに関して、細かくチェックしたり、ディスカッションするようになったし、そういうことを積み重ねていくことで昔よりも演奏面への意識は変わりましたね」
――なるほど、拓郎さんがバンマスのような存在に?
「そうですね。拓郎はずっとスタジオミュージシャンをしてきてるので、場数は僕らの10倍100倍踏んできてて。経験値は彼が一番あるので、いつも彼の意見を聞いてディスカッションしてますね」
この4人になって初のアルバムに初期衝動を詰め込む
――新作の『Andante』はいつ頃から制作されていたのですか?
「本格的にアルバム制作に取り掛かったのは今年に入ってからですが、去年の7、8月頃から曲は作りだしていて。今年になってゼロから書き下ろしたのは『fantasia』と『Reversi』です」
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――先行で配信された『ヌレギヌ』や、竹縄さん自身がSexy Zoneに提供された『名脇役』のカバーを含む全8曲で、フルアルバムとしては曲数が少ないかと思いきや、どの曲にも存在感があって、聴き終わった時の満足感はすごく大きいです。ちなみに、アルバムとして意識したのはどんなところですか?
「まず、この4人になって初めてのアルバムなので、初期衝動を詰め込む以外ないだろうと。そこを決して逃さないようにしようと思って。ライブでやってきた曲もあるし、本当に自然にできてきた曲の中で、これが今の俺らだ!と思えるものをどんどん入れていったんです。ただひとつ、みんなの共通認識としてあったのは、暗い曲はやめようと。やっぱり前を向いてるアルバムにしたかったので」
――改めて1stアルバムを作るような気持ちで?
「そうですね。その気持ちは強くて。だからこの曲数でもアルバムって言いたかったというのもあって。ぼくらがインディーズで初めて出したアルバムも8曲入りで。そこに戻ったような、ある種原点回帰じゃないですけど。そういう感覚もありました」
――基本的にHOWL BE QUIETはピアノロックバンドだと思いますが、今作にはギターサウンドもいい具合に入っていて、バランスよく組み合わさっています。
「前回の作品は、どちらかというとポップスとして消化されてる部分があったので、バンドというよりメロディーにフォーカスされてたんですけど。今回はギターをしっかり前にだしていて、そういう部分も意識しましたね」
――リード曲『fantasia』は心にストレートに響いてくる説得力抜群のナンバーで す。
「これは一番最後にできた曲です。他の7曲が決まってから、なんか足りないなと、竹縄らしい歌がもう一曲あるといいよねという話になって、作った曲ですね。自分の中ではとにかくまっすぐ歌いたかったんです。今まではどこか強がる部分、ひねくれる部分、恥ずかしくて隠す部分、いろいろあった中で言葉を綴ってきたなと思うんですけど。2年たって、自分も男として年齢が上がってきたというのもありますし、このタイミングでまっすぐ歌いたいなと。もうかっこつける必要もない、ダサくても、ありのままで言葉を綴りたい、等身大の今の自分の歌を歌いたいというところで、この言葉とメロディーが生まれて、この曲が完成したなと思いますね」
――一番まっすぐなラブソング?
「だと思います。間違いなく自分が作ってきた中では、一番まっすぐに歌った歌だなと思います」
リスタートの決意を込めた曲、『Dream End』
――特に『覆水盆に返らず』は最後の一行まで聞き逃せない内容です(笑)。竹縄さんの中で、歌詞はどのように生まれてくるんですか ?
「歌詞は、自分が思ってることが一番現れやすい。特に恋愛の曲は、実体験だったり、友達の話を聞いたり、ドラマ、映画、漫画、アニメとか、そういうのを観たり聞いたりしたことが、自然と自分の中で蓄積されてて。何か歌おうと思った時に自分の中から出てくるのが多いかな。前回のアルバムは自分に起きたことだけを歌おうというのが頭にあったんですけど、今回は特に意識せず、その時々で歌いたいテーマを書いていきました」
――『ヌレギヌ』の歌詞もインパクトありますが、この曲で歌いたかったことって?
「お客さんへの感謝を歌いたいというのがすごいあって。それを書いてたら、ものすごい文字数になっちゃって…。どうしようってなってた時にボカロPの羽生まゐごさんの力を借りました。自分の歌詞や思いを読んでいただいて、メロディーにしっかり乗る言葉を選んでいくという作業を一緒にやっていって出来上がった曲ですね。すごく楽しかったですし、面白い作品になったなと思いました」
――『バーバラ』はちょっと異色な曲調です。
「このアルバムはサウンドプロデューサーのTAKU INOUEさんに参加していただいているので、特に『バーバラ』はTAKUさんマジックがすごくかかった曲です。TAKUさんがアレンジしてくれたものを聴いた時にめちゃめちゃ面白いじゃんって思って、その方向性で進めていった曲。ある種、このアルバムの中では一番実験的かなと思いますね」
――“愛 命 人生についてより今日はこの胸が騒いでる理由を探してみたいんだよ”という二行にグッときました。この曲はどんなことがベースにあって?
「フラれること自体すごく悲しい思い出なんだけど、幸せだった時のシーンを、その人と離れてから思い出すのって、なんて残酷なんだっていうことを歌いたかったんです。切なくなったり、悲しくなったり、泣きたくなったり…。あのときは二人でいたのに、なんで今はこうなってしまったんだろうって」
――『幽霊に会えたら』も喪失感がテーマになっているように思いますが、竹縄さんならではの独創的な世界観に引き込まれていきます 。
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「ああ、そういうふうに言っていただけると嬉しいですね。これは、僕の中で脈々とある“うだうだ歌っている曲”で、こういう曲調が僕は個人的に好きなんです。ベン・フォールズ・ファイヴのアッパーな曲とか、ピアノが基軸となりながら軽快な曲っていうのが好きで。これも頭のリフからメロディーとアレンジ自体はすぐできました」
――スウィンギンでライブ向きの曲ですね。
「今年の春のツアーでもライブのアンコールでやってましたね」
――そして、ラストの『Dream End』。竹縄さんの決意がしっかりと感じとれます!
「バンドとしてずっと描いてきた夢が、本当にここで終わるんだっていう瞬間が確かにあって。本当に夢の終わりを見たので。メンバーが抜けるっていうタイミングだったり、この先俺らどうなるんだろうっていう不安もありましたし、このツアーで最後だなとか、このバンドは解散するかなとか。そういうふうにネガティブに思ってしまう時もあったので。そこまで落ちこんだ中で、僕個人でいえば、ひとりじゃなくて、メンバーがいてくれて、応援してくれる人がいるっていう心の支えがあったりして、もう一度リスタートしてみようって思えたので。そういう自分の中の決意を込めて歌ってます」
――タイトルには“END”とあるけど、それを乗り越えて今がある?
「もちろんです。自分の中では、そこまで落ちた中から見た光だったので、“それでも歌っていく!”っていう気持ちを込めて。なので、“この夜も超えていく”っていうふうに歌いたくて。そういう気持ちで書きました」
――今まさに絶望的な状況に追い込まれている人が聴けば、すごく心強い一曲だと思うし、とても胸に迫るものがある作品になりましたね。
「そうですね。自分たちの2年間も本当に、喜怒哀楽、紆余曲折があって、いろんなドラマが詰まっているので。自分たちでも本当にドキュメンタリーみたいなアルバムだなと思います。やっぱ一曲一曲にドラマがあり、背景があるので、歌詞を読んで思い出すこともたくさんあります」
この2年を総括したアルバムができた
――そんなアルバムに『Andante』というタイトルをつけた思いとは?
「音楽用語で“歩くようなスピード”という意味で、自分たちを表してるなと。このバンドを始めて10年たって、まだまだだなと思う部分もあるし、最短距離でアリーナまで駆け上がっていくバンドを横目にしながら、自分たちはうさぎと亀でいえば、亀だろうなと思ったりして。それでも、あとずさりはしなかったなというのは誇れるものだなと。一歩一歩前に進んできたし、そんなぼくらに寄り添ってくれて、応援してくれるお客さんがいて。それは本当にありがたいことだなと思います。そういう人がいるからがんばれるし、一緒にどこまでも歩いていきたいという気持ちもすごくあって。そんないろんな思いを込めてこのタイトルにしました。本当にこの2年を総括したアルバムで、リスタートとして、この上ない名刺代わりの一枚になったかなと。ぼくらとずっと一緒に歩いてくれてる人も、昔聴いてたけど、今はもう聴いてないなという人も、知らなかったという人も、この機会に、この『Andante』というアルバムを、一度でいいから、まずは聴いてほしいなと思います」
――そして、9月1日からはツアーが始まりますね。
「アルバムツアーとしてまわれるので、アルバムを聴いてから来てくれる人も多いわけで、それがなにより嬉しいんですよ。ライブでみんなとキャッチボールしながら一緒に音楽を作っていけるんだなと思うと、今からすごく楽しみですね!」
――今作を聴いていると、竹縄さんがライブでピアノを弾きながら歌っている姿がすごく観たくなりました。アルバムジャケットにはグランドピアノが写ってますが、ライブではどんな鍵盤を使用していますか?
「88鍵のふつうの電子ピアノを使ってます。いつか、グランドピアノでやってみたいですね。生のアコースティックで」
――では最後に、HOWLのライブをまだ観たことがない人に向けて一言お願いします!
「僕は会場に来てくれた全員と目を合わせるぞ!ぐらいの気持ちでいつもライブしてます。そこに敵はひとりもいないし、会場にいるみんなも含めて全員がバンドであり、仲間だと思うので。ぜひ一度、僕らの音楽を生で体感しにきてほしいなと思います」
Text by エイミー野中
(2019年8月20日更新)
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