Curly Giraffeの世界観こそが“夢の味” 5年ぶりのニューアルバム『a taste of dream』を手に 待望のバンドセットでのライブを開催! Curly Giraffeインタビュー&動画コメント
5年ぶりとなるニューアルバム『a taste of dream』を4月24日にリリースしたカーリージラフ。これまでにも交流のある高橋幸宏、ハナレグミ、藤原さくらというゲストを迎えた豪華デュエットナンバーを含む今作。セルフプロデュースによる自宅スタジオでのレコーディングスタイルから、余計な加工をしないシンプルな音色でタイムレスな心地よさが味わえる。今まで英語で歌われてきたこともあり、海外アーティストのような雰囲気もあったが、今回新たに日本語のナンバーにも挑戦。英語と日本語、両方の語感が絶妙に活かされた洒脱な雰囲気、アコースティック感漂う穏やかなサウンドの中にいつまでも浸っていたくなる。これがミュージシャンとして30年のキャリアを刻んできた彼の“夢の味”。アルバム制作中の(高橋)幸宏さんとの意外なやりとり、微笑ましい私的なエピソードも含めて、作風そのままのリラックスした口調で明かしてくれた。
自分でデュエットグループを想定して、何曲か作曲していた
――新作『a taste of dream』はニューアルバムとしては5年ぶりになりますが、いつ頃から準備されていたんですか?
「きちんと音源を作ろうという気持ちになったのが去年くらいですね。ただ、デュエットソングに関しては、自分で勝手にデュエットグループを想定して作曲していたのが何曲かあったんです。それは、この5年の間に作った曲です。でも、その存在を自分でも忘れていた感じなので、他の曲と時期が全然違いますね」
――そのデュエットソングは書いていたころから、誰とデュエットしようかというところまで考えて?
「いやいや、そこまでは考えていなくて。基本僕はハーモニーが大好きだから、ハモっているユニットを組めたらいいなっていう。せっかく想像したから曲も作っちゃおうかなって曲を作っていたんですよ。今回のアルバムを作るときにそれを急に思い出しまして。一応聞きなおしてみたら、あ、これ結構いいなって。しかもそれぞれ違う人に歌ってもらったほうがおもしろいんじゃないかなと思って。交流のある人の中から選んでみたのが今回のお三方です」
――藤原さくらさんとの『LA feat.Sakura Fujiwara』(M-6)はなんともいえない優しい雰囲気があって。親子のような…といっていいでしょうか?
「さくらちゃんのお父さんと僕、歳が近いですからね。だから本当に親子みたいな感じなんだけど(笑)」
――高橋幸宏さんとハナレグミの永積さんとはどういう雰囲気で録られたんですか?
「もともとカーリージラフを始めた当初から、幸宏さんに声が似ているって言われたことがあって。そのあと幸宏さんとバンドでご一緒させてもらって、一緒に歌ってみるとやっぱり似ていたので。カーリージラフの曲を歌ってもらったら絶対ハマるなっていうのはなんとなく思ってたんです。幸宏さんぐらいの人をゲストに呼ぶとなると、豪華なオケでという発想になりがちじゃないですか。それよりも僕はシンプルに声を聴いてほしいから、『break the mold feat.Yukihiro Takahashi』(M-5)はアコギ1本の曲って決めていたんです」
――そういうアイデアは事前に幸宏さんにお話しされて?
「いや、特に話はしていないです(笑)。幸宏さんにカーリージラフでやってもらいたいんですってメールしたら、やるやるって。そういうやりとりも、ラインスタンプで会話するみたいな感じ(笑)」
――永積さんとの『one feat.hanaregumi』(M-10)はどうですか?
「前に永積君のアルバムで、一曲プロデュースさせてもらったんです。もともと永積君の声がすごく好きで、いずれ一緒にできたらいいなって漠然と思ってたので、今回お願いして。家に来てもらって録ったんです。永積君は最初、僕の歌の雰囲気に合わせようとしていたので、途中からあまり僕に合わせなくていいよっていって。(永積)崇君の普段の歌い方で歌ってもらいました」
――すごく自然にお二人の声が合わさってますね。
「そうそう、もう想像以上の混ざり具合っていうかね」
――レコーディングは全てご自宅のスタジオで行われているんですか?
「そうですね、自宅スタジオで。今回のデュエットで歌ってもらってるゲストも全員来てもらいました」
――そういうリラックス感みたいなものも感じられます。
「そうですね、なんかスタジオで改まって録ったものではないので、エンジニアも僕がやっているんで」
一曲だけ音楽をやっている娘のアレンジをそのまま採用した
――演奏やアレンジも、ご自身がされているそうですが、何か新たな試みなどはありましたか?
「一曲だけ音楽をやっているうちの娘のアレンジをそのまま採用しました。『my wings』(M-4)のアコギと歌だけのデモを娘に聞かせたら、“これは鍵盤にしたほうがいい”って(笑)。ガレージバンドを使えるから、それで鍵盤を入れて、しかも途中からストリングスまで入っていたんですよ。娘は音楽が大好きなんですけど、別にプロじゃないじゃないから、頭が柔らかくて僕らが思いつかないようなことをやるんですよ。これは今後使えるなと(笑)」
――今作にはそんな微笑ましいエピソードがあったんですね。そういった娘さんの新しい感覚が活かされていたりして、今の時代だからこそ生まれてくる音楽だなと思います。
「やっぱ今、サブスクで時代も関係なしにいろんな曲を聴く人が多いし、最近の若い子たちはジャンルレスな感覚で聴いているから。カーリージラフも新しい音楽として聴いてくれたらいいなって思います」
――今作は初の日本語詞で歌われている楽曲も新鮮です。
「今までカーリージラフを聴いてくれていた人は、やっぱ日本語詞に結構ドキッとするみたいで(笑)。カーリージラフを始めた頃から、日本語でやったほうがいいよっていう人もいたんですよ。だけど基本、僕は洋楽しか聴かないし、カーリージラフでは日本語で歌わないと決めていたんですけどね。マック・デマルコが細野さんの『HONEY MOON』っていう曲のカバーを日本語で歌っているのを聴いたとき、そのたどたどしい日本語のほうが歌詞の意味を知りたくなっちゃったんですよね。普通に日本人が歌う日本語詞だと流れていっちゃうんだけど。僕は歌詞に意味を求めて音楽を聴いていないし、英語の曲も音として聴いているから、マック・デマルコが日本語で歌った曲を聴いた後に、洋楽みたいに聴けたのですよ。その体験がすごい新鮮で。こういう感じで聴けるんだったら日本語で歌ってもちょっとおもしろいなって。それで今回、半分以上日本語になったんですよね(笑)」
――日本語の歌詞はどのように書かれているんですか?
「基本的に歌詞はタイガーリリーさんっていう人に頼んで書いてもらってます」
――先に曲があって、自由に書いてくださいと。
「そうです、自由に。もうなんの指定もなしに」
――ご自身が歌いたいことっていうのは?
「ゼロじゃないですけど、それを1曲丸々通して伝えたいことはないっていうか。だからこそたぶん日本語で歌っても押し付けがましくないのかな。実は歌っている瞬間は無感情です。歌った後に聞き返していると、だんだんその意味が身体に入ってくるっていうか。だから自分でもちょっと聞き直しておもしろくなるっていうか、聞こえ方が変わってくる」
――低めの声質自体とても魅力的ですからね。
「ありがとうございます(笑)。低い声は鍛えても出ないらしいですよ。もって生まれたものらしくて。高い声は鍛えたら多少はでるそうですけど」
30年ミュージシャンをやってきて、味付けが年々シンプルになってきた
――ところで、このジャケット写真も素敵ですね。どこか70年代のAORのアルバムのような雰囲気もあって。
「僕はビジュアルがあるとすごくイメージが湧くんですよ。逆になんにもないと全然イメージが浮かばない。だから、今回も曲が出揃う前、去年の秋にロスでこのジャケット写真を撮ってきたんです。そこから曲をどんどん作っていった。前回のアルバムからそういう作り方をしてます。前はたまたまハワイに泊まった宿の景色がよかったので、これジャケット写真に使えるかもしれないって、それが意外に合っていてよかったんで。今回もちょっとそれやろうってことで」
――歌詞カードの中で撮影されている風景も印象的です。
「これは、ロスから東に3時間半くらい走ったところにあるサルベーションマウンテンですね。砂漠のど真ん中に作られたアート作品で、いきなりこんな山があるんです。30年くらいかけて1人で作られていて。もう亡くなっちゃったらしいんだけど、ヒッピー流れの人なんですよね。彼の仲間たちが修復しながらこれを守っているんです。もともとここに一回遊びに行ったことがあって。この写真を撮りに行った時が2回目だったんですよ。その後また、ミュージックビデオも撮りに行ってきました」
――そういったビジュアルなどアートワークも含めて、カーリージラフ・ブランドの作品世界にすごく引き込まれます。
「そうですね、そういう発想でやっているかもしれないですね。今はダウンロードしたり、サブスクで聴く人が多い時代だから、ジャケット自体がね、意味があるのかという話もあるんですけど。基本的に僕はビジュアルありきの音楽が好きだから、僕にとってはすごい大事。これも込みでカーリージラフっていう認識なんです。
でも、年齢を重ねるごとにどんどんいい意味でこだわりがなくなってきたというか、悪あがきしなくなってきたっていうのはありますね」
――以前はどういうところで悪あがきされていたんですか?
「もうちょっと音を足してみようとか、いろいろやっていたんですよ。だけど今回5年ぶりくらいに新曲作ったら意外とちゃちゃちゃっとできたというか。割と思い描いていることを寄り道せずに表現できるようになってきた。といいつつも、やっぱ直そうとしたこともあったんですけど、直す前の方がよかったりするんですよね。ちゃちゃちゃっと、パッションのままでいったほうがグッとくるポイントがあるという。やっぱ無駄なことをするのはやめようと思って。そこからはもうやらないようにしている」
――余計な加工はしていないということですね。
「そうですね。味付けが年々シンプルになってきたというか、味付けで見せようっていう発想がなくなってきたというかね。やっぱ今まで30年間くらいミュージシャンやってきた経験があるからこうなったんだなって。やっぱそれは20代の時はできなかったし。もちろんやろうとも思っていなかったのかもしれないですし。例えば、僕は料理が好きなんですけど、毎日のように作っていたら調味料は目分量でわかるじゃないですか。それと同じで、音楽もこんだけあったらこうなるなってわかるっていうか、ここはこうしなくていいなっていうのがだいぶわかるようになってきたから」
――若い頃って刺激的なものを求めますし、音楽も即効性があってインパクトの強いものを求めがちなんですけど、そういうのって結局飽きていくっていうか、より強い刺激を求めるようになると思うんですけど。今回のカーリージラフのアルバムを聴いていると、最初はちょっと物足りないくらいに感じていたものが聴くほどにすごく馴染んでいく、飽きさせない魅力があります。
「よく食べ物とかで例えるんですけど、毎日食べられるものって大事なのかなって。やっぱ辛いとかさ、すっごい味が濃いとかさ、その時はインパクトがあるじゃないですか。でもそれ毎日は食べられないじゃないですか。だからその、カーリージラフの音楽は僕の理想としてはやっぱりこうずーっと聴いてもらいたいっていうか。自分でももちろんインパクトがある音楽じゃないこともわかっているんだけど、その分すごく長く付き合ってほしいっていうか、その人にとってそういう音楽だったら最高だなって」
VIDEO
バンドでやるのは久しぶり。古い曲もいっぱい演るベストライブにしたい!
――アルバムタイトルの『a taste of dream』=“夢の味”って、どういうものですか?
「まさにカーリージラフの世界観が僕にとっては“夢の味”なんです。要するに夢で描いているものを音にするっていうか。それは当初からですね。小宇宙ってよんでいるんですけど、さっきのデュエットグループも勝手に自分で想像してたものだし、もともとカーリージラフの音楽は、こういう人がいたらいいなという、自分の想像から始まっているから」
――じゃあ、これはもしかしたらファーストアルバムのタイトルでもよかったかもしれない?
「そうですね。ファーストアルバムのタイトルは『カーリージラフ』なんですけど、それには理由があって、僕、実は1枚で終わる予定だったんですよ。思い出作りで1枚ソロを作って終わろうと思っていたからカーリージラフっていう自分の名前をアルバムタイトルにしたんですけど、そしたら1枚で終わらなかったんですよね(笑)。意外と聴いてくれる人がいたし、評判がよかったっていうか(笑)」
――近年シティーポップブームがあったり、いろんな流れがありますけど、そういうところとも自然にリンクしているようにも感じます。
「そうですね。だからやっぱこのタイミングで出せたのはよかったのかなって思いますね。それが、3年前でもちょっと違ったかなって。だからちょっと間が空いちゃいましたけど、そこにはちゃんと意味があったなと。これが大したことなかったらただ時間空いちゃっただけになっちゃうので(笑)」
――これからはどういうペースで作品作りを?
「今回のアルバムを作って、また音楽が楽しくなってきたから、次は5年も空けるのはやめようかと(笑)。なんか違うこともやりたいなっていうアイデアもあるし、より早い段階で発表できたらいいなって思っています」
――この新作に伴うライブは5年ぶりのバンドセットで行われるということで、こちらもとても楽しみです!
「大阪にバンドで来るのも5年ぶりなんです。一応軸はニューアルバムですけど、バンドでやるのは久しぶりなので古い曲もいっぱい演りたいし、ベストライブにしたいと思っています。だから、大阪のみんなも絶対に来てほしいですね!」
Text by エイミー野中
(2019年6月 4日更新)
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