“人とやった方がよっぽど自分がわかるんだなと思った”
HAWAIIAN6・安野勇太とのコラボ曲『クジャクとドラゴン』を
語る、フルカワユタカインタビュー
2018年6月にリリースしたthe band apart(以下バンアパ)ベース・原昌和とのコラボシングル『ドナルドとウォルター』から半年。フルカワユタカが新たな両A面シングル『クジャクとドラゴン/インサイドアウトとアップサイドダウン』をリリースした。前作に続くコラボ作品となる今作は、盟友・HAWAIIAN6の安野勇太と、POLISICSハヤシヒロユキをフューチャー。ボーナストラックには2018年9月26日に下北沢440で行われたアコースティックライブ『僕はこう弾き語った』の音源をたっぷりと収録している。ソロ活動を始めて5年が経ち、昨年1月28日には新木場STUDIO COASTで初の主催フェス『5 x 20』を大成功で終了。今のフルカワは本当に楽しそうに音楽活動を行っているように見える。今回筆者は約2年ぶりに彼にインタビューを行ったのだが、葛藤と苦しみを抜け出した2年前よりも、さらに柔和な雰囲気を纏っていた。しかも“たまたま暇してたから”という理由で、HAWAIIAN6・安野勇太も同席! 安野とのコラボ曲『クジャクとドラゴン』のことはもちろん、現在の状態、今後のことについて話を聞いた。
自分で背中は見えないけど、“そこ良いところだよ”って背中を見てもらえる
――今日はSTUDIO COASTでの主催フェス『5×20』からちょうど1年ですね。
フルカワ「『5×20』が嵐のツアータイトルと被ってたって、俺ビックリしましたよ」
――私もフルカワさんのインスタストーリーを拝見して驚きました。
安野「タイトルが被ってたの?」
フルカワ「そう。あんなことがあってさ、ニュースで“ファイブ バイ トウェンティー”って言ってるから、“何言ってるんだろう”と思ってたら」
――読み方も同じなんですか?
フルカワ「全く一緒です。調べたら10周年の時に『5 x 10』をやってるみたいです(笑)」
――あっ(笑)。
フルカワ「後出し感は全然俺の方があった(笑)」
安野「10年遅いってことだ」
フルカワ「そう。まさかの嵐と被るっていう(笑)」
――(笑)。フルカワさんにはこれまで、別媒体にはなるんですが、2度お話しをお聞きしてるんですよね。今思うと、ミニアルバム『I don’t wanna dance』の時は、インタビューでの表情も少し暗かったといいますか。
フルカワ「ヤバい中のヤバい時ですね。事務所戻って2年ぐらい何もしてなくて、成算が立たないんでDOPING PANDA(以下ドーパン)の曲でしかライブやらせてもらえなくて。だから矛盾と葛藤と、でもお給料はもらってるし、みたいな(笑)。でも確かその時に、“こっから俺は無敵!”みたいなこと言ってません?」
――“レジェンダリーな音楽家になりたい”とおっしゃってました。
フルカワ「言ってますよね! 震えますね!(笑)」
安野「消えきってたの?」
フルカワ「消えきってた。何やっていいか見えてない時だ。だから強烈な負け犬の遠吠えだよね」
安野「消えきってるんだったら、まあいいんじゃない? 希望的観測じゃん」
フルカワ「消える前が1番ヤバいか(笑)」
――そして2年前の2ndアルバム『And I’m a Rock Star』の時は、ベボベ(Base Ball Bear)のサポートをキッカケにアルバムを制作して、前を向いている感じでしたが、今では本当に明るくなっていらっしゃって。
フルカワ「皆言うけど、自分はあんまりわかってないんですよ(笑)。自分は地続きで生きてるんで、急に明るくなったわけじゃないんで」
――(『ドナルドとウォルター』のジャケットを見ながら)でもジャケットのこの笑顔は(笑)。
フルカワ「はははは(笑)」
――ソロ活動6年目ですが、今のフルカワさんの状況はどうなのかなとお聞きしたく。
フルカワ「楽しいですよ。でも“雇われ”という言い方はおかしいですけど、契約で会社にいるんで、そこが逆にリアルになってきたというか。前はよくわかんないままお金もらってるけど、音楽活動してるのが良いのか悪いのかもわかってなかったんで罪悪感もなくて。去年コーストやったくらいまでは“楽しい楽しい!”ってなってて、そこからの2018年も楽しかったし。年またいだら急に変わるものでもないですけど、今年はちゃんと会社に恩返しできるようにしなきゃなと考えてはいますね」
――それは2019年の抱負ですか?
フルカワ「去年の年末くらいから“来年の抱負どうですか?”って言われたら、“納得のいくライブをやったり、音源を作ったり、結果にちょっとこだわりたい”みたいなことは言ってましたね。結果っていろんな形があると思うんです。良い演奏するのも結果の1つですけど、そうじゃなくて、“ちゃんとできるフルカワユタカをやってんだぞ”って、周りのスタッフに恩を返せるようなライブや音源を作りたいなと思ってます。去年はいろんな人に助けられて支えられて、フックアップしてもらった感覚があるんで。市川さん(LOW IQ 01)とか、もちろんユウタもそうだし」
――ベボベやLOW IQ 01のサポート、3rdアルバム『Yesterday Today Tomorrow』ではTGMXさん(FRONTIER BACKYARD)をプロデューサーに迎えたり、シングル『ドナルドとウォルター』ではバンアパの原さんと共作されたりと、人と関わることが増えましたよね。人と一緒にやるのが良いと思われた?
フルカワ「それはもうほんとに。人とやると、その人の要素が入って、かぶれたり影響受けすぎちゃって、自分らしくなくなると思ってたんですけど、結構逆で。今回もそうだったけど、自分で見えてなかったり気づいてないものがちゃんと見える。自分で自分の背中は見えないけど、“そこ良いところだよ”って背中を見てもらえる。“人とやった方がよっぽど自分がわかるんだな”と思いました」
ユウタとメロコアを作ってみたい
――今回もコラボ作品ですが、このシリーズは原さんとのシングルが始まりなんですよね。
フルカワ「はい。アルバム終わった後、田上(TGMX)さんと作った意味がすごいあったんで、“次は作曲の部分を誰かとやってみたい。それをマーちゃん(原)とやりたい”っていう話を制作会議の時にして。それがスタートでしたね」
――今作では安野さんと、ハヤシさんがフィーチャーされています。
フルカワ「田上さんとやって良かったんでマーちゃんと。マーちゃんとやって良かったんで、今度誰かと。となって、“じゃあ誰とやるのがおもしろいのか”みたいな時に、真っ先に出たのが“ユウタとメロコアを作ってみたい”って話。ハヤシくんはスタッフの中から出てきて。あといくつか名前が挙がってる人もいたんですけど、形になったのがこの2人でした。ユウタは俺が1番最初に提案しましたね」
――安野さんはオファーされていかがでしたか?
安野「おもしろそうだったんで、“いいよ”って」
フルカワ「そこは“いいよ”だったんですけど、“作曲一緒にやろう”って言う前に、ドーパン解散してからあんまり会ってなかったんで、飯でも食いに行きたいと。飲みながらそういう話できたらいいなと思ってたんですけど、共通の後輩、LOW IQ 01のDAZE(山﨑聖之/fam /LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS/The Yasuno N°5 Group)を介しても、俺から直接も、全部断られて」
――断られたんですか(笑)。
安野「だってずっと会ってないんですよ。もちろん昔一緒にやってたし、友達ですけど、DAZEから“フルカワさんがギタリスト飲み会みたいなのをやりたい、そこにユウタさんを誘いたいって言ってるんです”って言われて。この時点で胡散臭いじゃないですか。だから“いや、大丈夫です”って断りました」
――(笑)。
安野「なんか“ギタリスト飲み”みたいなのを、すっごい押してきたんですよ」
フルカワ「でも皆がやってる“ドラム飲み会”みたいなのじゃなくて、ただ単にASPARAGUSの忍さんと、ユウタと、バンアパの荒井とかの飲み会。そこに名前をつけてただけなんですけど」
安野「その感じが気持ち悪いなあと思って、ふたつ返事で断りました(笑)」
フルカワ「普通に久々に会って喋りたかったというか。当時一緒にやってた時って、そんなに喋ってないんですよ。それはマーちゃんもそうなんだけど。マーちゃんやユウタとは音楽の話をちょこっとするぐらいで、がっつり遊んだり飲んだりしてないんですよね。だからメンタル的には、マーちゃんと起こったことを、ユウタともしたくなったんじゃないかと思うんだけど(笑)」
――では、接点はいつ頃持たれたんですか?
安野「いきなりライブに来たんですよ。恵比寿リキッドルーム(2017年10月)。“今日遊びに行きます”って」
――飛び入りでライブに参加されたとか。
安野「ほんとに久しぶりに来て、皆“おー! フルカワ久しぶりじゃねえか!”みたいになって」
フルカワ「ユウタにだけ行くって言ってたんですよ」
安野「で、たまたま俺アコギ持ってたんで、“お前ちょっと歌ってこい”って、何の打ち合わせもなくいきなり出して。何かむちゃくちゃな空気でしたね、あの時は」
フルカワ「その日打ち上げに誘われたんですけど、打ち上げ出たらはっちゃん(HATANO/HAWAIIAN6)とワイワイ喋って終わっちゃうのがわかってたんで、ユウタといろんな話するのは今日じゃないなと思って。だから軽く“酒飲んでワイワイするだけになっちゃうから今日帰るわ”って言って、その日は帰りました」
――なるほど。その後はどういう経緯で?
フルカワ「その後、北海道のイベント『POWER STOCK』でLOW IQ 01のサポートで行ってて、HAWAIIAN6も出てたんで」
安野「前乗りの日に時間あったんで、飲みに行って。そこで久しぶりにいろいろ喋ったりしましたね」
フルカワ「翌日の打ち上げも朝までいましたから。その2日間結構いろいろ喋れた。その時言ったのかな?」
安野「いやいや、結局俺言われたのはメールだもん」
フルカワ「じゃあ言ってないんだ(笑)」
安野「急に“一緒になんか作んない?”っていう感じでメールがきて」
フルカワ「で、2人でちょっと話して、ドーパンの『Me, Dogs And Mother Mary』ってインディーズの曲があるんですけど、ユウタがすごい好きで、“今のお前のそういう曲書けばいいんじゃない?”ってヒントもらって作曲に入ってった、みたいな流れでしたかね」
――制作はいかがでしたか?
フルカワ「やり取りは今の時代よろしくメールです。音合わせしたのは、新宿のスタジオで1回。アレンジもいじるとこそんなになさそうだし、30分くらいでスタジオ出て、DAZEとタロティ(DOPING PANDA)4人で飲みに行くっていう(笑)」
――メールでのやり取りはどのくらいされたんですか?
フルカワ「それは結構頻繁にしました。最初何曲か送って」
安野「曲を形にしなきゃいけないんで、原曲からアレンジしてどうのこうのってキャッチボールは割としましたね」
フルカワ「良さ悪さあると思うけど、すごい便利な時代だなと思いました」
――ではスムーズにいった感じですか。
フルカワ「そうですね。1個だけあるとしたら、Recで俺のベースがダメすぎて、ユウタにベースを取り上げられた。いや、その時は取り上げられた感覚ないんだけど、実はダメだったから取り上げたんだってことが、Recの飲み会でわかって、笑ってたけど結構ショックでした(笑)」
全員「(笑)」
安野「だってとにかく音もちっちゃいし、アタック感もないし、リズムの感じも全然違うし、“何やってんだコイツ”と思って」
フルカワ「はははは(笑)」
安野「“ちょっと1回弾かしてくんない?”って言って、そのまま録ったんですよ(笑)。ほんっと酷かったねって話したんですけど、認めなくて」
フルカワ「ふふふー(笑)」
安野「“俺はベースはすごい褒められる!”」
フルカワ「そんな意固地にはなってないけどね(笑)」
安野「いやすごかったよほんとに。ずーっと同じこと言ってたもん。“俺のベースは評価が高い”って」
フルカワ「わははは(笑)。そこがちょっと凹んだとこぐらいで、あとはほんとに勉強にもなったし、楽しかったし、良い曲だなと思ってるし」
――人から意見を言われるのに抵抗はない?
フルカワ「多分僕人によるんだと思いますよ。だからそうじゃない人に言われたらダメなんだと思うんだけど。マーちゃんなんてもっと酷かったですからね。ギター弾こうとしてましたからね」
――ええっ(笑)。
フルカワ「さすがにそれは止めました。“マーちゃん、俺も20年弾いてきたから。そこは弾かしてくれよ”って(笑)」
安野「自分の作品で“弾かしてくれよ”は強いね(笑)」
フルカワ「メロコアの音作りとバッキングでユウタが全部弾いてくれてるんですけど、すごく良いんですよ。その道は譲れますよ。でもギターはさすがに“お前何やってんだ”って話になりますよね(笑)」
――確かに(笑)。
フルカワ「でもモノ作る人って、そういう立場になると、僕もやっちゃうかもしんないし。そこがやっぱりメインコンポーザーの我の強さであり、良さであり。田上さんは師弟関係っぽいところがあるんで、結構強く言ってくれるんですけど、“職業プロデューサー”の人とかだと、“本人が気持ち良く”みたいなところで落ち着くじゃないですか。それはマーちゃんもユウタもハヤシくんもないんで。だからいろいろ学べたんで、良かったなと思います」
コラムがキッカケで、言葉が伝わるように歌詞を書くようになった
――『クジャクとドラゴン』は、ドーパンのファンもHAWAIIAN6のファンも楽しめるような、どちらのバンドの良さも出ている曲ですよね。ちなみにタイトルの意味は?
フルカワ「これ何回も言ってますけど、昔HAWAIIAN6と廻ってたツアータイトルが『孔雀ドラゴンツアー』なんですけど、うちのベースのタロティが、90年代後半~2000年代差し掛かるぐらいの頃に、オーバーオールにスカジャンでスティングレイを弾いてるっていう、謎のスタイリングだったんですけど、そのスカジャンにクジャクと龍の刺繍が入ってて。それを皆にイジられてて、ツアータイトルにまでされたんです」
――なるほど!
フルカワ「歌詞は“昔から今、今の青春って何だ”みたいな内容じゃないですか。タイトルを詞の中からあてがうのがちょっとむずがゆかったんで、照れ隠しでボケた、ってことですね」
安野「はじめ仮タイトルで“クジャクドラゴン”みたいな感じでメールが来てたんですよ。その当時のノリがあったので、“これそのままタイトルでいいんじゃないの?”って言って。すげえ嫌がってましたけどね(笑)」
フルカワ「最初“peacock and dragon”って送ったんです。そのぐらいボカしてたんですよ。そしたらユウタから“クジャクとドラゴン”で返ってきたんです」
安野「俺が作ったデモの曲名を、勝手に変えたの(笑)」
フルカワ「だからビックリしましたよ。しかも“タイトルこれがいい”ってなってるから、“ええ!?”って」
――嫌だったんですか?
フルカワ「いや、ボケてるのにそこでカッコつける理由ないもんね(笑)」
安野「逆にちょっとツラいよ(笑)」
フルカワ「うん、だから良かったなと思って」
――タイトルのお話を聞いて歌詞を読んでも、内容につながる感じもしますね。
フルカワ「そこは“虹”とか“空”とか、タイトルに引っ張って、ちょっと歌詞を変えたりもしました」
――コラムを3年間書かれていますが、前のインタビューの時、文章を書くことで歌詞に対するボーダーラインが変わったとおっしゃっていて。
フルカワ「変わりました。日本語の歌詞は人に伝わらなくていいと思って書いてたんで、独特の表現でもいいと思っていて。でもコラム書くようになって、皆に“読んだよ”とか言われて欲が出るようになっちゃってからは、やっぱり歌詞もちゃんとやろうと思って。何なら最近は曲作りぐらい悩むようになっちゃって。詞が出ないというのはすごく良い経験でしたね」
――今回はどうでしたか?
フルカワ「言葉が伝わるように書くようになったんで、昔より意味が伝わる詞にはなったんですけど、僕の悪いクセで、どうしても恋愛っぽくなっちゃうんですよ」
安野「ふふふ(笑)」
フルカワ「田上さんにも怒られたんですけど、まあ、そういう音楽聴いて育ったわけじゃないですけど、やっぱり書きがちなんですよ、どうしても。実は今回の歌詞も、冒頭は“君と僕”的なことになってて、残りが回想で過去から未来への話で、昔の恋人に対する手紙みたいな締まり方してたんですね。実際冒頭に“君が溢れ出る”っていう歌詞をつけてたんですけど、ユウタが最初から引っかかってて」
安野「ふふふ(笑)」
――そうなんですか(笑)。
フルカワ「“リズムのノリが悪いのかな?”ぐらいしか思ってなかったんですけど、Recの直前にタロティと4人で飲んだ居酒屋で、まあまあガチで“あそこだけ俺はほんとにないと思ってる”って言われて」
安野「その部分がなくなると、歌詞として一本筋が通るんですよ。だからずっとつっかえてて」
――なるほど。
安野「最終的にゴールに行った時に、意味合いが変わってきちゃうんですよね。曲の雰囲気もあるし、どっちの方がおもしろいんだろうなと考えた時に、“君と僕なんての、気持ち悪くない?いらないよ”って話をずっとしてて」
フルカワ「田上さんにも言われたんですけど、日本語でパンクロック歌ってる人も、そういう歌詞はほんと少ないし、もし“君”に対して歌ってても、こんなにラブレターみたいな歌詞にはならない。“君”が1個あるだけでラブレターになるってことを、自分でもあんまり気づいてないんですよ。二人称が“君”っていうのを、結構普通にやってきちゃったんで」
――それで削って書き直しを?
フルカワ「結構時間なかったんですけど、本気で悩んで最後出した歌詞が完成形です。今40歳を迎えてますけど、それでほんとに“おっさんが通ってきた道”みたいな歌詞になったんですよね」
安野「うん」
フルカワ「ユウタに歌詞のこと学ぶとは思わなかった。HAWAIIAN6は英詞じゃないですか。ユウタの歌詞も素晴らしいんですけど、日本語の歌詞を学ぶと思ってなかったので、それもすごく収穫でしたね」
ある程度、フルカワユタカらしいところにやっときた
――これからも音楽家としてのキャリアを積んでいかれるわけですが、今後どういうふうにやっていきたいと思われていますか?
フルカワ「ある程度、自分らしいところにやっときたのかなって思ってたりはしますよ。HAWAIIAN6とやってた頃だって、尖るとこは尖ってましたし、若かったからアホでしたけど、“俺、ロックスターでレジェンダリー”とか当然言ってないし。学校のサークルの仲間とか、軽音楽部の奴らとかとも普通だったし、結構自然なとこに戻ったのかなと自分では思ってて。たまに怖くなりますけどね、調子こきなんで、たとえば何かのチャンスがあって、良いステージになったり曲が認められたりして、その時に調子に乗ったらやだなと思いますけど、今は注意してくれる友達が周りにいっぱいいるから、大丈夫だろうと。昔はいなかったんで(笑)」
安野「それデカいよね」
フルカワ「うん。だからこのまんま、いろんなことを極めていけたらいいなとは思ってますけどね」
――ドーパンのフルカワユタカからソロのフルカワユタカになれた、という感覚はありますか?
フルカワ「少しあります、やっとですけど。まあ、まだ“ドーパンやらないんですか?”とか言われるし、そこでウッてなる自分もいますから。やりたくてじゃないですよ、“ああ、やっぱ言われるな”とか。言われて流せない時もあったりもするし。ドーパンやってきたことをなくす必要もないんですけどね。たとえばコーストの“一夜限りのドーパン再結成”って動画がYouTubeに上がってるんですよ。ズバ抜けて再生回数多いじゃないですか。そういう事実を聞いても、“ドーパンばっか人気あってよ~”っていう憎まれ口を、あんまり嫌じゃなく叩けるというか。前は言うのも嫌でしたから。“ソロになったらこういう感じになっちゃうんだ”とか、卑屈なところもあったんで。今は別に、全然良いことやってると思うんで。それはタロティとHAYATOがどうこうじゃなくて、“ドーパン人気あんなー!”みたいなことを笑っては言えるのは、良いことなのかなと思いますけどね。“再結成しろ”って言われてもあんまり嫌じゃないし。しないですよ。しないですけど」
――今の状態がとても良いんですね。
フルカワ「ソロ良いなあっていうのは、やっとたまにあります。バンド良いなあっていうのはずっと思ってて、ベボベとやって“やっぱバンド羨ましいなあ”っていうこの2~3年でしたけど、HAWAIIAN6見てても羨ましいなあって思うし、揉めてるとこ見ても羨ましかったですから。今もそういうとこいっぱいあるし、バンドってカッコ良いですよ。でも、こういうことができるんで、ソロもいいなってたまに思います」
text by ERI KUBOTA
(2019年3月12日更新)
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