「いい曲に出会って歌っていく作業をこれからも続けていきたい」 小西康陽との17年ぶりの新録『東京は夜の七時』ほか 豪華共演も収録した究極ベスト『野宮真貴 渋谷系ソングブック』! 野宮真貴インタビュー&動画コメント
‘13年から渋谷系とそのルーツの名曲を歌い継ぐ『野宮真貴、渋谷系を歌う。』と題したプロジェクトをスタートさせ、毎回違うテーマを設定した公演と共に5枚のアルバムを発表してきた野宮真貴。10月31日に発売されたそのベスト的内容の2枚組『野宮真貴 渋谷系ソングブック』には、新旧洋邦の豪華なゲストを迎えて録音されてきた名曲の数々や最新ライブの音源に加え、小西康陽との17年ぶりのレコーディングとなった新録による『東京は夜の七時』(‘93)や故・ムッシュかまやつが飛び入り参加しての『中央フリーウェイ』(‘76)のライブ音源といった貴重な初出テイクも収録。“渋谷系スタンダード化計画”の集大成と呼べるベスト盤と、11月20日(火)に迫ったビルボードライブ大阪でのライブについて話を聞いた。
ピチカート・ファイヴを解散してから17年ぶりに
小西くんと一緒にレコーディングをしたことも
このアルバムでは大きい出来事になりました
――今回の『野宮真貴 渋谷系ソングブック』は、’13年から取り組んできた一連の『野宮真貴、渋谷系を歌う。』プロジェクトのベスト盤ということで。
「そうですね。今までの5年間に“渋谷系を歌う”と宣言して出してきたアルバムからの究極のベスト盤ということで、“渋谷系って何なのか?”がホントに分かるアルバムになったと思います。選曲の面ではそれが最も分かりやすく伝わることを意識して、5年の間にたくさんのゲストにも参加していただいたので、ゲスト参加曲をなるべく多く収録するというのもセレクトの基準としてありましたね」
――こうして集約してみると、クレモンティーヌやスウィング・アウト・シスターのコリーンから、カジヒデキや渡辺満里奈といったリアルタイムでの渋谷系の立役者、その影響下に独自の世界を切り開いたCKBの横山剣や、鈴木雅之、村井邦彦らの大御所までと。世代的にも国籍的にも、ここでしかありえない顔ぶれが豪華に並んでいますよね。
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「あとは、ただのベスト盤ではなくて新録も入っていて。今年は『東京は夜の七時』(Disc-1/M-3)がリリースされて25周年ということもあったので、このアルバムを出すにあたって小西(康陽)くんにリミックスをお願いしに行ったんですよね。そうすると彼の方から“いいアイデアがある”ということで、彼が今気に入っている少林兄弟というバンドがいて、私とやるとすごくいいんじゃないかと提案してくれて。で、少林兄弟のライブを観に行ったんですけど、そんなに若いバンドではなくて(笑)、メンバーは40代くらいでそれぞれにキャリアのある人たちだったんですけど」
――僕も今回の件で初めて知って調べてみましたが、明らかにポッと出てきた若手ではない雰囲気を、いい意味で漂わせる人たちでしたね(笑)。
「パーティーバンドというか、本業のバンドはそれぞれにあるんだけど、少林兄弟としてやるときはいろんな人のカバーをロック~ロカビリー的な音でやるような人たちなんですけど。それで、小西さんが『東京は夜の七時』をリミックスではなく少林兄弟とのコラボで新録したいという話になって。ピチカート・ファイヴを解散してから17年ぶりに小西くんと一緒にレコーディングをしたことも、このアルバムでは大きい出来事になりました」
――結果として、意表を突きつつも最近の小西さんの好みもしっかりと反映されたロッキンな仕上がりで、さすがだなと唸らされる出来でしたね。
「『東京は夜の七時』はピチカートの代表曲ですけども、解散してからもずっと、自分の代表曲だとも思いながら歌い続けてきたので。そういうことが2年前のブラジルのパラリンピックの閉会式で使われたことにもつながったと思っているし、小西さんも今回の自分のロカビリーなアレンジがすごく気に入っていて、11月3日のレコードの日には7インチのアナログ盤でも出すことになって。7インチを作るとなるとB面の曲も必要なわけで、どうしようかというところでまた小西くんから、“ロカビリー・アレンジ向きのピチカートの曲でいいのがある”ということで出てきたのが、『ハッピー・サッド』(‘94)だったんです(※CDには未収録)。その2曲のレコーディングは、バンドとの録音も楽しかったし、ピチカートのときにずっと一緒だったエンジニアもマニピュレーターも同じ方が来ていたから、17年の歳月が一瞬にして戻ったような感じでしたね」
自分自身も楽しみながら
“渋谷系ベストライブ”をお届けしようと思っています
――Disc-2には、今年の2月にモーション・ブルー横浜でCKBの横山剣と高野寛をゲストに迎えて行われたライブもフルに収録し、ライブならではの曲も楽しめるコンプリートな内容となっていますが、5年間にわたって渋谷系の新旧の名曲に取り組んできて改めて思われることは?
「毎回“ヴァカンス渋谷系”なら夏の曲、“フレンチ渋谷系”ならフランスにまつわる曲をと、テーマを決めてやってきましたけど、私はレコード・コレクターでもないから、音楽プロデューサーの坂口修さんからいろいろなことを教わりつつ、私自身も“渋谷系のルーツにはまだまだいい曲がいっぱいあるな”と見付けながら歌っているような感覚があって。でも、さかのぼって考えてみると、11歳のとき、父親がステレオと一緒に家に買ってきたレコードが、カーペンターズとセルジオ・メンデスと、当時に流行っていたシングルでミッシェル・ポルナレフの『シェリーに口づけ』(‘71)だったんですよ。それを聴いて“世界にはいい音楽がたくさんあるんだな”と思ったですけど、カーペンターズとセルジオ・メンデスはA&Mレーベルで渋谷系のルーツだし、ポルナレフはフレンチで、子供の頃に影響を受けた音楽とすごくつながっている部分がある。洋楽以外でも、村井邦彦さんが作曲していると意識して聴いてはいなかったですけどトワ・エ・モアも大好きだったし、子供の頃は北海道に住んでいたので『虹と雪のバラード』(‘72)(Disc-2/M-15)が札幌オリンピックで街中にかかっていたのを覚えていますし。そういう曲を私が歌うことで若い人たちが知って、他の曲も聴いてみようと興味を持っていただけたらと思って続けていますね」
――今回のベストで聴いて思いましたが、90年代の渋谷系時代に書かれた曲も改めていい曲で、ノスタルジーとして取り上げるのではなくスタンダード化するという、根本的な取り組み方を実感させられたところもありました。
「いいモノは古くならないし、今また90年代や渋谷系の曲も改めて聴かれるようになっていますけど、そういうことにもつながってきたのかなと思いますし、まだまだたくさんある渋谷系とそのルーツにある名曲を歌っていければなと思っています。私はシンガーソングライターではなく歌手ですから、いい曲に出会って歌っていく作業をこれからも続けていきたいですね」
――初出音源ということでは、’15年11月のビルボードライブ東京で行われた公演での『中央フリーウェイ』(Disc-1/M-13)に、客席にいたムッシュかまやつさんが飛び入りで参加して歌ったテイクも貴重です。
「この日にムッシュが観に来ていたことは知っていて、ライブのMCで“この曲はユーミンさんが、かまやつさんのために作った楽曲です”ということをお話ししてから曲に入ったんです。ワンコーラス終わった頃に、私は歌に集中していたので気付かなかったんですけど、いつの間にかムッシュがステージ上の隣にいて(笑)。音源をよく聴いてもらうと私が驚いている様子も分かるし、ムッシュの歌が入ってきてから私が動揺しているのが歌にも出ちゃっていますけど(笑)、ホントにビックリしました。実はレコーディングのときにもお願いしていたのが、ムッシュの体調が悪くてまたの機会にという話になったんで、結果、私にとっては宝物みたいな音源になったので収録しました」
――そんな2枚組ベストのリリースに伴う『野宮真貴、渋谷系を歌う -2018-』の大阪公演が、11月20日(火)にビルボードライブ大阪にて行われます。
「この企画自体がビルボードライブでの公演から始まっていますし、そのきっかけとなった坂口さんとの再会も、ビルボードライブでのバート・バカラックの公演でしたし。今までは毎回違うテーマを決めてやってきたので=毎回全く新しい歌を歌うことになるから結構大変だったですよ。自分の持ち曲だけをツアーでずっと歌っていくパターンではなかったので。でも、今回はどの曲も一度は歌っている曲になるので、自分自身も落ち着いて楽しみながら、“渋谷系ベストライブ”をお届けしようと思っています」
ライター吉本秀純さんからのオススメ!
「これまでの作品のハイライト的な部分を1枚に凝縮しつつ、ここで少林兄弟をフィーチャーしてきた小西さんの炯眼に平伏するばかりな『東京は夜の七時』のキラーな新録バージョン、故ムッシュの飛び入りでの歌声が涙なくして聴けない初出の音源、コンボ編成でのライブの雰囲気をコンプリートに伝えるDisc-2にも佳曲が多数で、かなり聴きどころ満載な2枚組ベストとなっています。また7インチのアナログ盤は、DJ時に針を落としやすいようにと小西さんの進言で、白と透明は避けてレッドのカラーヴァイナル仕様になったとのことで、こちらもお早目にご入手を」
(2018年11月16日更新)
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Movie Commnet
ベストにアナログにと徹底解説! 野宮真貴からの動画コメント
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Release
渋谷系ベストヒットな楽曲群と ライブをフル収録した2枚組の豪華盤
Best Album 『野宮真貴 渋谷系ソングブック』 発売中 3500円 ユニバーサル UICZ-4432/3 <Disc-1収録曲> 01. ウィークエンド 02. ぼくらが旅に出る理由 03. 東京は夜の七時 04. ラテンでレッツ・ラブまたは 1990サマー・ビューティー計画 05. 大好きなシャツ(1990旅行大作戦) -Marina's 30th Anniversary Mix- 06. 渋谷で5時 07. 夏の恋人 [feat.Smooth Ace] 08. 或る日突然 09. LOVE SO FINE 10. 双子姉妹の歌 11. 男と女 12. 世界は愛を求めてる 13. 中央フリーウェイ (from Billboard Live 2015/11/19) 14. What The World Needs Now Is Love (世界は愛を求めてる) <Disc-2収録曲> 01. Blue Valentine's Day 02. MC01 03. 大都会交響楽 04. ぼくらが旅に出る理由 05. MC02 06. エンゼルはいつでも [森永製菓] 07. ありあけのハーバー [ありあけ] 08. シウマイ旅情 [崎陽軒] 09. チェルシーの唄 [明治製菓] 10. MC03 11. ドレミ 12. MC04 13. 気分を出してもう一度(●) 14. MC05 15. 虹と雪のバラード(●) 16. MC06 17. おもて寒いよね(●) 18. MC07 19. 甘い生活(■) 20. MC08 21. 上海的旋律(■) 22. Winter's tale(■) 23. MC09 24. LOVE SO FINE 25. MC10 26. きみみたいにきれいな女の子 27. 恋のルール・新しいルール ●…with 横山剣 from クレイジーケンバンド ■…with 高野寛
Profile
のみや・まき…ピチカート・ファイヴの3代目ボーカリストとして、90年代に一世を風靡した渋谷系ムーブメントのアイコン的存在として国内外で活躍。ソロとなって以降もコンスタントにアルバムを発表しながら’16年にはデビュー35周年を迎え、音楽活動に加えてファッションやヘルス&ビューティー関連のプロデュース、エッセイストなどでも多方面で活躍を続けている。‘13年から取り組んできた渋谷系プロジェクトのベスト的内容の『野宮真貴 渋谷系ソングブック』の10月31日の発売に合わせ、同26日にはかるた形式による投稿で彼女によるファッションのヒント、人生を楽しむ心構えなどの金言が詰まったSNSでの人気投稿を集めた『おしゃれかるた』を電子書籍化して発売している。野宮真貴 オフィシャルサイト http://www.missmakinomiya.com/
Live
東阪ビルボード公演に続き 新春には関西でのイベント出演も
『野宮真貴、渋谷系を歌う -2018-』
Pick Up!!
【大阪公演】
チケット発売中 Pコード126-926 ▼11月20日(火)18:30/21:30 ビルボードライブ大阪 自由席8500円 ビルボードライブ大阪■06(6342)7722 ※本チケットに整理番号はございません。ご希望の方は発券後、お問合せ先まで要連絡。当日は整理番号順でお席へご案内しておりますが、整理番号をお持ちでないお客様は開場時間の30分後のご案内となります。カジュアルエリアの取り扱いなし。未就学児童及び高校生同士の入場不可。18歳未満は成人の同伴が必要。
【東京公演】 チケット発売中 Pコード126-518 ▼11月22日(木)18:30/21:30 ▼11月23日(金・祝)16:30/19:30 ビルボードライブ大阪 自由席8500円 ビルボードライブ東京■03(3405)1133 ※未就学児童入店不可。18歳未満・高校生は成人の同伴にて入店可。チケット購入後、手元にチケットを用意の上、問合せ先まで要連絡(入場整理番号決定)。
【大阪公演】 『NEWROMAN EXPO'19 -新春味園パビリオン-』 チケット発売中 Pコード127-366 ▼2019年1月5日(土)16:30 味園 ユニバース スタンディング4500円 [出演]野宮真貴/ベッド・イン with パートタイムラバーズ/アーバンギャルド/タカ・タカアキ&ナイトサパーズ from 赤犬/あふりらんぽ/難波里奈(純喫茶コレクション)/菅沼朋香(まぼろし屋台)/mrsOLIVE/Chocolate de Chocolate/味園落語研究会 [DJ]コモエスタ八重樫/グルーヴあんちゃん/ゴーゴー・ジュリー [司会]タカ・タカアキ&ナイトサパーズ newroman.info@gmail.com/■050(6863)8310 ※前売り券が完売した場合、当日券の販売はございません/当日は整理番号順のご入場となります/再入場時は再度ドリンク代(600円)がかかります。
Column
『Winter’s Tale ~冬物語~』 『冬がはじまるよ』にバカラック他 鈴木雅之、CKB横山剣、高野寛、 渡辺満里奈らを迎えた冬の渋谷系 『野宮真貴、ホリデイ渋谷系を 歌う。』インタビュー('17)