2.5次元コスプレダンスユニット・アルスマグナがアルバム『アルスミュージアム』をリリース! そして多彩なテイストの楽曲が並ぶこの新作を引っ提げて“学園祭”(ツアー)もスタートさせる。そんな多忙な学園生活を送る彼らを、幸運にも大阪でキャッチ! メンバーを代表して、神生アキラと榊原タツキの2人に取材をお願いした。ほかにはない視点から生み出すアルバムの制作秘話はもちろん、榊原タツキのゆるふわなキャラも堪能できます。
――10月3日に『アルスミュージアム』が発売されました。ロシア民謡からユーロビートまでを収めたバラエティ豊かな仕上がりですが、今作のテーマとは?
アキラ「僕たちはダンスグループなんですけど、ダンスってなかなか見に行こう!ってならないじゃないですか。それでこれまで、じゃ歌をやってみよう!とか、いろんな作戦を取ってきたんです。で、今回のアルバムでも“いろんな入口”を作って、どうやってこれをライブでやるの?とか、疑問を持ってもらいたかったんですね。僕らを知らない人にも聴いてもらって、この曲ならハマるな!とか、“いろんな入口”から僕たちのHPや動画を見てもらって、じゃライブも見てみよう!って…。そういう期待感や不安感をごちゃ混ぜにしたかったんですよね。だからいろんな角度からの曲がそろいました。それとメンバーの個性も強くて、グループを代表する1曲っていうのには収まらない。どうしてもこぼれるんで、だったらいろいろな曲を作りましょう!って、バラエティ豊かになったんです」
――では先に、こんなダンスを見せたい!というのがあったんですね。
アキラ「そうですね。もともと僕らはボカロを使ってダンスをやってたんです。ボカロのいいところは人間ではできないキーとかスピード感とかで、高速ダンスとかもやっていたんですけど、これを生身でやったらもっとおもしろいよねってなって……。じゃ次は本人が歌って踊ったらいいなっていうので、今作の『フロリダ』という曲ができました。あとは次のツアーのテーマが学園祭だったので、だったらこんな曲があったらいいな!とか、そういう感じでしたね」
――学園祭がテーマのツアーを見据えて作られたんですね。
アキラ「僕らはほかのアーティストと違って、こういう思いを伝えたい!って曲を作るんじゃなく、例えば2時間のライブになった時、あんな曲があったらいいなとか、そこから作るんですね。で、そこでの大きな核は楽しかったら……楽しんでもらえたらOKっていう。そしてその楽しみっていうのは、僕らを好きな人だけが見て楽しいのではなくて、例えば隣にいる他人とも共有できる思い出とか、そういう他人が他人じゃなくなる瞬間。ほら、テーマパークで並んでる時間とかも並んでる人はみんな思いが一緒じゃないですか。しかも実際に一緒にアトラクションに乗って笑って写真に映る。ああいうのがいいなって。思いが届いた!とか、あの曲で感動させたい!とかも大事ですけど、もっと広いところですよね。だから、変な言い方をすると、当然ライブは100%で、どれだけ楽しんでもらえるかを追求してやるんですけど、必ずミスとかハプニングって起こるじゃないですか。でも、それが起きた時にごまかさないっていうのをルールにしてるんです(笑)。歌詞やダンスを間違えるとネガティブになるでしょ。お客さんも見ちゃいけないものを見てしまったみたいな……。でもそうじゃなくて、それも思い出として持って帰ってくれたらいいって。だから(間違いの申告は)挙手制です(笑)」
――なんだか観客とメンバーの距離が近いですね(笑)。
アキラ「そうですね。僕もなんですけど、ダンスをよく知らない人は、スーパーダンサーとちょっとうまいダンサーを見た時って、その差がよくわからなくないですか? 歌もそう。ま、確かに違いや差はわかるところもあるけど、実際に何を求められているか?ってなった時にダンスや歌の技術を見せるのではなく、こんな風に音にのって楽しいんだよ!っていう……。だからミスもミスじゃないんだよって。一生懸命やった時の結果が成果として残んなくていいと思ってるんです。結果に至るまでの過程は自分しかわかんないじゃないですか。だからその努力の過程もみんなで共有しようよ!って」
――お客さん目線での楽しみどころ。アルバムもそういう視点から作っているんですね。
アキラ「ただ、最初は不安が大きいですけどね。ライブでこんな曲が欲しいって言ってはみたものの、大きな景色は見えてるけど細かい景色まではやっぱり……(見えない)。特に僕はボーカルをやっていて、歌い方とかイメージとか全部考えるんですけど、実際にメンバー5人でやった時はどんな絵になるんだろう?って」
――メンバーとイメージを共有する必要がありますよね。それはどのようにするんですか?
タツキ「基本的に歌で世界観を表現してくれるのがアキラ君で、そこにパフォーマンス…動きで世界観を作るのが振り付けを担当する先生(九瓏ケント)なんです。歌とダンスがあって、そこからもっと“ぽい”ものにするのがアキラ君と先生以外の僕ら3人。だからその流れで自然と1つの作品ができあがる感じです」
アキラ「そうしてみよっか!で、形になってくことが多いかもしれないですね」
タツキ「とりあえずやってみよう!って」
――みんなのアイデアが詰まっているんですね。
アキラ「あとさらに、僕らのライブって演出家さんも入るんですよ。自分たちでも演出はするんですけど、もっとちゃんと演出家さんを入れる」
――ライブにも台本があるんですか?
タツキ「あります」
――では、アルバム制作時から演出もある程度は見えていたんですか?
アキラ「見えてますね。ただ、僕らだけだと一つの作品に対しての愛が強過ぎちゃうんで、演出家さんに俯瞰で見てもらうっていうことがすごく大事。そして今回なら学園祭というツアーのテーマをまず決めて、こういう風にしよう!って……。でも、それをツアー以外のライブでやる時は、また違う見せ方にするという感じです」
――なるほど。今作はボーカルが曲によって質感が違ったので、曲に引っ張られて変わったのかなと思いましたが、今までの話だと、そうではなく最初から見せ方や演出が頭にあって、それで歌声も変わるということですね。
アキラ「あ、でもそれはケースバイケースですね。僕らは生で見てもらってなんぼのグループなんで、どういう人が歌ってるのかな?とか、そういうハテナを引き出したいっていうのがあるんです。でもまずは、一生懸命にふざけてるなとか、背伸びしてるなとか、まずはそこを伝えたい。曲に応じての主人公の立ち位置というかを……。だから僕らはアーティストというか、ちょっと役者っぽい感じかもしれないですね。アルスマグナというキャラを伝えるために声で表現しているっていう感じです」
――ボーカルと言えば、今作にはタツキさんのソロ曲も!
タツキ「コンちゃん(コンスタンティン。タツキが抱えているウサギのぬいぐるみ)と一緒に歌わせていただいてます。昨年は(朴)ウィト君と一緒に『キミドリクエスト』という曲を歌わせていただいたんですけど、それはアップテンポな曲だったので歌えたんですが、今回はコンちゃんと一緒で、しかもバラード。緊張しましたね」
――とてもスイートでしたよ。
タツキ「歌わないのに、アキラ君がレコーディングに携わってくれて……」
アキラ「ブースまで入りましたもん。その時、僕がちょうど夏休みで……。忘れもしない8月8日いや、8月10日? 忘れてる(笑)」
タツキ「カラオケで音程がわかるバーがあるじゃないですか。あれをアキラ君が、僕が歌ってる最中に全部横でやってくれたんです。音程が上がるんだったら手を上げて、下がるんだったら手も下げて、伸ばすところは腕を伸ばすみたいなことをずっとやってくださって……」
アキラ「もともとは遊びでやってたんですよ。でも、それをやると意外と(タツキは)歌が歌えるなって思って。この子は音を目で認識してるんだってわかったんです(笑)。だから最初の音だけ覚えさせて…」
タツキ「あとはもう、アキラ君のリードで(笑)」
――斬新(笑)。逆にタツキさんからボーカルについてアイデアや意見を言うことはあるんですか?
タツキ「……僕は、曲を聴いて感想を述べるだけです」
アキラ「お客さんと一緒(笑)。僕、たまにびっくりしますもん。ライブで何回も歌ってる曲なのに、“あ、この歌ってそういう意味だったんだ”ってボソって言いますから。しかも本番中に(笑)」
タツキ「“知らなかった~”って(笑)」
――でも、そんな曲の捉え方もあるんだ!って思ったりも(笑)?
アキラ「そう(笑)。感心しますよね。どう思った?って聞くと、(その感想は)まったく(自分の予想と)違うんですよね。(曲の解釈としては)正解じゃないんですよ。でも正解にしてもいいかなっていう瞬間はありますね」
タツキ「やった!」
アキラ「でも、何十回とみんなで歌ってるのに……」
タツキ「いっぱい歌ってる!」
アキラ「だからそれまでの俺の気持ちってなると……急には全部ひっくり返らない」
タツキ「もうちょっと届けないと!」
アキラ「ま、確かに隣にいるこいつにも届いてないんだって思うとね、頑張ろうって思いますよ、本当に(笑)」
――心中……。
タツキ「……お察し致します」
アキラ「お前が言うな(笑)!」
――こういうキャラはタツキさんだけですか(笑)? ほかのメンバーは??
アキラ「ほかの人はちゃんと……(笑)。先生は(曲を)理解して振り付けをしますし、泉(奏)はマジメだし、朴も歌が好きなんで歌詞はちゃんと読んでますしね」
――タツキさんが突出しているんですね(笑)。
アキラ「僕ら『マシュマロ』っていうバラードがあるんですけど、この曲に関しての感想で、この歌詞が好きとか、このメロディがグッとくるねとか、そういうのが普通じゃないですか。でもこの子は表面でしか聴いてないんでしょうね。歌い方が好きって言って……。それでも僕の声色をマネするとかならまだいいですけど、僕の立ち様をマネして……小バカにしてるんでしょうね(笑)」
タツキ「パフォーマンスが素敵だなって思って。リスペクト! リスペクト!!(声が裏返る)」
アキラ「これはバカにしてますね(笑)。こないだのレコーディングの時も、アキラ君、僕こういう歌い方がやりたい!って言って、あきらかに僕の『マシュマロ』のモノマネなんですよ」
タツキ「怒られましたね(笑)」
アキラ「本人(アキラ)に響いてないのに、どうやって知らない人に響くんだ!って(笑)」
――それでタツキさんも反省はするんですよね(笑)?
タツキ「はい」
アキラ「いやもっと浅はかですよ。大してレコーディングに本気を感じない(笑)」
タツキ「そんなことないよ~。必死だよ~」
アキラ「そうだね、あの日は必死だったね」
――ちなみに、タツキさんが一番本気になる時とは?
タツキ「本気になる時……リハーサル。フリが入る時って大事じゃないですか。何事も初めての時は集中しないと入ってこないし。本番はバーッて(力を)出すだけなんで、だから集中するのはリハの初日かなって思います」
――人間味があふれ過ぎです(笑)。でもそれが魅力なんでしょうね。
アキラ「そうですね。誰しも“こぼれる瞬間”って魅力的じゃないですか。カッコつけてるヤツのシャツがちょっと出てたりとか。そこが、僕たち2.5次元っていうのの一つの魅力なのかなって思いますね。僕たちにはアニメの世界で9頭身の僕たちがいるんです。でも片や3次元になると、それを度外視する人柄が見えてくる。そうなると、また2次元に戻った時、“あ、(3次元の)こんな子が今、こんなこと言ってんだろうな”って想像も膨らむだろうし、逆に2次元から3次元に戻った時にもいろんな想像ができる」
――今日は2.5次元の楽しみ方がよくわかりました。ありがとうございます。それでは最後に10月8日(月・祝)からのツアー「龍煌祭~学園の7不思議を追え!~」への意気込みや見どころを!
アキラ「学園祭というテーマなので、他校の学園祭に遊びに行くような感覚でもいいし、僕らの学校(「私立九龍ノ主学園」)の生徒になったつもりで遊びに来てもらってもいいですね。エンターテインメント……お芝居だったり歌だったりダンスだったりでアルスマグナを知らない人でも楽しませる自信があります。あとは非日常の時間を提供するというのもテーマなので、それも楽しみに気軽に足を運んでいただけたらたなと思います!」