日々進化する10代の姿をパッケージしてメジャー進出 山﨑彩音インタビュー&動画コメント
現在19歳のシンガーソングライター・山﨑彩音が、7月25日にメジャーデビューアルバム『METROPOLIS』をリリース! これまでは歌+ギターというようなシンプルなスタイルで作品を作ってきた彼女だが、今作ではバンドを招いての制作に挑戦し、全10曲を通してさまざまな表情を見せてくれた。そんな作品のカラフルさの理由を探るべく行った今回の取材でも、作品同様、今を生きる19歳の言葉は飾らずみずみずしい! まずは、そのちょっと珍しい音楽的背景から話はスタートする。
――「ぴあ関西版WEB」初登場ということで、まずは少しプロフィールについて。関ジャニ∞さんが好きでギターを始めたと聞きましたが…。
「最初は関ジャニ∞……ジャニーズが(ギターとは関係なく)好きでした。初めは森田剛さんのファンで、その後いろいろ変わって最終的に関ジャニ∞に行き着きましたね。ファンクラブに入ってコンサートに行ったりしてました」
――そこからどうやってギターを始めることに?
「好きだったから関ジャニ∞に入りたい!って思ってギターを始めたんです。今思うと女の子だから(無理)……って思うんですけど、当時それもわからなくて(笑)」
――ちなみに誰が好きなんですか?
「錦戸君です。メインボーカル&ギターですね」
――で、ギター……。ほかのメンバーのファンだったらギター以外の楽器をやっていた?
「それはあるかもしれないですね。でもギターを始めて最初に弾いた曲は関ジャニ∞じゃないです(笑)。スピッツでした」
――それはどんなきっかけで?
「ギターをやっていたお父さんに勧められて。当時は関ジャニ∞のコードとかがネットにもなかったんですよね。で、ギターを始めた頃、錦戸くんが雑誌で斉藤和義さんを推していて、しかも何年かしたら、斉藤さんが(関ジャニ∞に)楽曲提供をしたんです。で、お父さんに聞いたら、お父さんも斉藤さんが好きで、すぐに(楽曲を)聴くことができて、自分でも好きだなって思ったんです。そこから段々ジャニーズ(一辺倒)という感じでもなくなって……でも、今も大好きです(笑)!」
――今、自分がミュージシャンになって改めて感じる関ジャニ∞の良さとは?
「関ジャニ∞に限らずジャニーズってすごいと思います。デビュー一枚目からコンセプチュアルで、グループで役割がちゃんと決まっていたり……。あと、聴いたり見たりすると、シンプルに頑張ろう!って思いますね。特に関ジャニ∞は下積み時代が長いので、自分もまだまだ頑張らないと!って」
――そして斉藤和義さんから次は?
「いろいろ同時進行で聴いて…。パソコンが好きな小学生だったので、椎名林檎さんとかBUMP OF CHICKENとか、どんどん日本のロックを聴くようになりました」
――その後、The Birthdayさんや浅井健一さんが好きになるんですよね。アイドルとは対極な気がしますが……。
「そうですね。アイドル好きでキラッと過ごしていた時もあったんですけど、基本的に常に悩んでたし、小さい頃から一人で戦っている感じだったので」
――何と戦っていたんですか?
「何がそんなに辛かったのか……もう思い出せないです(笑)。だから、関ジャニ∞に憧れてた時も、同時に村上春樹さんが好きになって、小説とかに走ったりもしてました。やっぱりあるじゃないですか? 中学生くらいって、わけもなく“ふざけんな”みたいなの。よくあるやつだと思います」
――今は落ち着きました(笑)?
「いや(笑)。今は落ち着いても仕方ないかなって感じです。最近はストレスためちゃいけないから、ふざけるな!って言ってた方が楽しいかなって思います。逆にそういうタームに入ってますね」
――そんな日々揺れ動くティーンエイジャーの感じは今作『METROPOLIS』からも感じられますね。
「本当にびっくりするくらい毎日(自分自身が)変わりますよね。みんなそうだと思うんですが、中学から高校へっていうのでも変わったし、ライブハウスでライブを始めたのも高校1年の夏で、そこから高校生活は欠落していって(笑)、その代わり音楽の活動が広がって、マネージャーさんと出会って今こういう感じに。そういう変化する姿を記録するっていうのが今作の目的でもありました」
――メジャー第一弾というのを意識したところもありましたか?
「生意気ながら、私にはそういうのは関係ないって思っていて…。そういうの(メジャー第一弾を意識した作品作り)をする人はたくさんいて、そういうことをやったうえで戦っているんだろうけど、私はやんなくてもいいかなって、ポケーッとした感じでした(笑)。もちろんメジャーデビューはうれしいです! 多くの人に届く可能性が広がるので、そういう面もあって、今までは歌とギターとちょっとの音数が入ったもの(作品)だったんですけど、今回はバンドサウンドにしました」
――大きな変化です。
「最近気付いたんですけど、なんか静寂とか空気感とかそういうの(音楽)が得意分野というか……好きなんですけど、もうちょっとノリがよかったり、つかみやすかったりっていうのを入口にするのも大事なのかなって。そういう風に思ったんですよね」
――今作での挑戦ですね。
「そうですね。一人でやる時は当たり前に速いテンポの曲とかができなくて。でもバンドにしたら、いやでもっていうか、速くなれる。今まで歌のメッセージや世界観を突き詰めてきたけど、そこを飛び抜けた……突き抜けた感じが必要だったんですよね。だからバンドでやろうってなりました」
――いい意味で聴く人を意識したわけですね。大人です(笑)。
「そういう部分と幼稚な部分と両極端なんです(笑)」
――山﨑さん、つかめないですね(笑)。
「わからないですよね~。私もわからない(笑)! でも、なんかうれしいですね。ナゾの女(笑)」
――では今作の曲の話も。個人的には浮遊感のある『メェメェ羊とミルクチョコレイト』や『ナイトロジー』の2曲が好きですが……。
「もともとの(音楽性)ですね。得意分野。好きなラインですね」
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――かと思えば、若さや衝動を感じる曲もあります。
「『ロング・グッドバイ』や『Nobody Else』ですよね。『ロング・グッドバイ』とかは本当にウソがないというか、ストレートに書いたっていう実感がありますね。ちょうど2年前に『FUJI ROCK FESTIVAL』に出たんですけど、その後にできた曲で、その時の心境を記録した曲になってます」
――ではこのストレートな感じは“素”に近いのでしょうか?
「自分で言うのも……なんですけど、結構男っぽいところがあって。かっこいいロックに影響を受けているので、そういう面もありつつですね。でも、何かを作るという意味で、歌詞を組み立てるとか練るとかいうのもやりたいという理想があって。たぶん欲張りなんですよ(笑)。好きなものを全部入れたい!っていう。やりたいことがたくさんあるから、とりあえずやってみよう!っていう感じなんです」
――そこは若さがあふれます(笑)! そして『ロング・グッドバイ』は、先程話に出たようにバンドじゃないと!……という曲ですね。
「実は弾き語りでライブをしてた頃に既にできてた曲なんです。でもずっとこれはバンドをやるためにできたなって思ってて。だからある意味、この曲があったから、今回バンドをやりたいと思えたんですよね。若い人も含めいろんな世代の人に聴いてもらえる曲になるのかなって思ったから、バンドの方がいいなってなりました」
――ちなみに『ロング・グッドバイ』に対して『Nobody Else』の方は、少し抽象的というか観念的というか……。
「そんなに重くなり切らないというか、なよってますよね。最近はそういう気分になってます。」
――根の明るい面が出てきた(笑)?
「はい。根はポップです(笑)。最近、やっとそれがいろいろなところで追い付いてきてます。インタビューとかでも明るい面を出すことをやってますね(笑)」
――と言いつつ、浮遊感や世界観ある曲が得意というのが幅の広い(笑)。
「もう、わかんないですよね(笑)。そこは文学とか芸術からも影響があるのが大きいかもしれないです。ポップだけど、それとは別に自分の中にある世界を音楽にしたり、またそこを探し出したりするのも好きなんだと思います」
――そういう文学などの刺激はどういう風に選んで取り入れていますか?
「最初は勧められたりとかだったんですけど、最近は勉強って意識でいろんな本とか映画とか展示とかを見てます。私が努力できることってそのくらいなかなって思って。だけど、そういうのが楽しいんです。だから好きでやってるんですけど、結構まじめに図書館に行って調べたりとかしてます。今はそういうのが一番楽しいですね」
――自分の好みの傾向はわかってきました?
「ロマンチックなのが好きですね。でも恋愛とかじゃないやつです。最近観た映画だったら、『グッバイ・ゴダール!』が学ぶことが多くておもしろかったですね。ゴダール(世界的な映画監督)の妻のアンヌの目線で描いた、ゴダールの自伝みたいな話で、当時のパリの五月革命を描いていて……。学校でちゃんと勉強しなかったから全然知らなくて、“ちゃんと勉強しよ!”“学校も大事だったんだな”って思いました(笑)」
――すごい勢いでいろいろ吸収しているんですね。ちなみにそんな今の山﨑さんの目標とは?
「ずっと思っているのは嫌味のない、かわいいおばあちゃんです(笑)。嫌味のない女の人って難しくないですか? 本当に気持ちいい人っているじゃないですか、見ててもしゃべってても。そういうかっこよくてかわいい女性になりたいなって思います」
――山﨑さんの音楽にも、かっこよさとかわいさがありますよね。ボーカルの感じも曲によって全然違う。パワフルだったり、艶っぽいファルセットやウィスパーもあったりします。
「今回はすごく変えました。前までは全体的に闇の中にいて辛い高校時代を送ってきたので……」
――え、闇(笑)。
「つまんなかったんですよね、学校。私、独立系……一人だったので、みんなで横一列に並んで“Yeah!”みたいなのとは違ったから(笑)」
――清々しい(笑)。で、ボーカルの話に戻り……。
「闇の中にいて、えっと……今回で3作目なんですが、一枚目の『Yer』は弾き語りのシンプルな音源で、イメージ的には“地下”みたいな感じ。15、16歳とかで、さっき言った何かと戦っている頃で、自分なりのメッセージはあるけどという。で、次が『キキ』という作品で、それは“地上に出て、でもそこは森だった”みたいな。ファンタジーに浸ってる感じです。で、そこまでは歌い方もまだ自分の中だけだから“突き放す”というか、あまり聴いてもらおうっていう気持ちで歌ってなかった。でも今回は、やっと街に出てきたんで(笑)、ちょっと喜ばせたいとか、いいと思ってもらおうとか、サービス精神があったんです。あと単純に楽曲がよくなるには歌い方も変えた方がいいなって……。そういうところまで考えが及ぶようになったんですよね」
――地下から街へ(笑)。
「そこは楽しみたいという気持ちが素直に出てきたのが大きいかもしれないです。戦うことも大事なんだけど、今は楽しみたいなって本当に思う。私は早い段階で、今のマネージャーさんに出会ったりフェスに出られたり、いろんな経験ができたんですけど、やっぱり戦うわけじゃないですか……若いからまだ不安だし。だから以前はライブも楽しんでやるという感じじゃなかった。でも最近は楽しみたい!というターム。ま、別の戦いが待ってはいるんですけど(笑)、でもとりあえず、今回はそういう感じになったのかもしれないです」
――闇雲に楽しい!というより、ちゃんと戦いどころがわかっているのがいいですね。
「前までは与えられたものじゃないですけど、それに対して挑んでいく感じだったのが、今は自分で選んだり、決めたり、選択するっていうのができる。それはそれで大変だけど、でもすごく楽しくやれる理由だなって思います」
――充実しているんですね! そんな充実ぶりを直に感じられるライブも楽しみ。10月27日(土)は東京で「Salon de by Yayavsky」が。Yayavskyとは?
「最近、自分のことをYayavsky(ヤヤフスキー)って言ってます(笑)」
――それで金髪にしたんですか(笑)?
「外国人に憧れて……(笑)。というか、山﨑彩音は本名なんです。なぜ本名で活動しているかと言うと、斉藤和義さんとかに憧れたからなんですけど、最近、少し窮屈だなって思えてきたから、ちょっとキャラクターみたいに何か名前を付けたら気が楽になるんじゃないかなって」
――今はSNSがあって、人格と活動する名がダイレクトだとそう思うのかもしれないですね。あとソロで活動しているから……。バンドだったら一つクッションがあって違いますよね。
「そうなんです。ただ、人に合わせたりとか、我慢ができないから、一人でやる宿命です(笑)。でも、今回のレコーディングは前半と後半で違う2つのバンドとやったんですよ。最初は後半の方でお願いしたバンドだけでやるつもりだったんですけど、曲に合ったバンドの方がいいなってなって。前半の『世界の外のどこへでも』や『ロング・グッドバイ』は、レコーディングも“せーの!”で録って、後半の『ナイトロジー』とかは多重録音で積み上げていくという感じでした」
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――でも大変そう(笑)。
「大変過ぎました(笑)。いやもう、最初は人に思いとか指示を伝えるのが慣れてなくて……。そこで結構ぶつかったりもしたんですけど、でもそういうのも含めて学びましたね」
――そんな成長を、大阪では『Eggs presents FM802 MINAMI WHEEL 2018』で見られますね。もちろんライブはバンド編成!
「3度目の正直じゃないですけど、レコーディングとはまた違うメンバーでバンドを組みます! 今回のレコーディングでは難しいことをしたので、そこを乗り越えたところのバンドって感じですね。音源とは全然違う感じになるんですけど、でも、すごいいいですよ。“あ、進化してる!”って思ってもらえるはず。ぜひ、びっくりしてほしいです!」
text by 服田昌子
(2018年9月21日更新)
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