自分が決めた道を突き進む人へ シングル『Only One』リリース! iriインタビュー&動画コメント
2月にリリースされた2ndアルバム『Juice』がiTunesヒップホップ/ラップチャートで1位、Apple Musicのアルバムランキングで最高位2位を獲得、リリース後のツアーは全公演ソールドアウト。6月にはフランスのフェス『La Magnifique Society』で初の海外公演を果たし、大盛況となる。スポーツ、ファッション、アパレルなど各方面からのオファーが殺到するなど、現在大注目のシンガーソングライター、iri。8月29日に、ニューシングル『Only One』がドロップされる。表題曲は、国際ファッション専門職大学(仮称)のTV CMソングとしてオンエア中。国際ファッション専門職大学は、55年ぶりに国が作る新しい大学制度のもと、国際社会で活躍できる人材を育成するための日本で唯一のビジネスの専門職大学で、2019年春に開学を目指す。「世界の先へ」というコンセプトをイメージして制作にあたったという彼女。カップリングにはYaffle(Tokyo Recordings)、ESME MORI(Pistachio Studio)、Kan Sanoがクリエイターとして参加している。シンプルながらもグルーヴィで、どこか温かみを感じる、バランスの良い4曲に仕上がっている。今作への想いをiriに聞いた。また、12月には東名阪で初の自主企画イベントも開催される。
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未来に残るものだからこそ、自分らしいものを作っていきたい
――国際ファッション専門職大学(仮称)のCMソングタイアップは、どういう経緯で決まったお話しだったんですか?
「今までの私の曲を聴いてくださってお話をいただいた感じです」
――選ばれた時どう思いましたか?
「シンプルに嬉しかったですね。以前、NIKEさんキャンペーンの曲は作らせてもらったことがあったんですけど、TV CMは初めてだったので、嬉しかったです」
――iriさんはテーマを決めずに曲を作ることが多いと過去のインタビューで拝見しましたが、今回のようなタイアップは、明確なテーマがありますね。
「そうですね。でも“こういうふうなメッセージ性で書いてほしい”という決まりはあまりなかったので、割と今の自分の心境を重ねながら書いた曲にはなってます」
――具体的にどういう心境を重ねられましたか?
「ファッションの専門職大学なので、ファッションを通して自分を表現したい方が行かれるんだなという想像をしていたら、自分も音楽を通して自分を表現しているなと。作品に残したものたちが未来に繋がっていって、誰かしらに影響を与えたりする。それはすごい先になるかもしれないけど、ほんとに未来につながっていくなと思って。だからこそ、その時のリアルな気持ちや、自分らしいもの、素の自分を表現することを心がけていつも曲を作っています。未来に残るものだからこそ、自分らしいものを作っていきたい、みたいな感じです」
――お話しに出たNIKEのキャンペーンソング『Watashi』はすごくパワフルな曲で、今作の『Only One』は包まれるような優しさを感じる曲です。どちらも背中を押すという意味では同じだと思いますが、熱量が違うといいますか。
「『Watashi』を作った時は、結構テーマが決まっていて、“女性の背中を押すような曲を作りたい”みたいな感じだったんですけど、今回は誰かの背中を押すテーマで作ったというよりは、割と自分ごとというか、自分に問いかけてるような感じで作りましたね」
――最後の“二人で望む明日を”というリリックが印象的でした。もちろん協力者がいて叶う夢もあると思うのですが、基本的に夢は1人で動いて叶えていくものかなと思っていたので、2人なんだ、と思って。iriさんは言葉を大切に書いていかれるとのことですが、この詞に込めたものはあったんですか?
「自分と向かいあって歌詞を書いていて、でも最後の方に、この曲を通して誰かの背中を押せたらいいなという気持ちがやっぱりちょっとあったので。自分もそうですけど、まだチャレンジできてない人や、うまくいかないことがある人が隣にいて、一緒に進もうというイメージですかね」
――一緒に未来を見てくれる人がいる。
「そうですね。それは個人的にはリスナーの方というイメージです」
――かねてから音楽で人を救いたいという気持ちで活動してこられているそうですが、それは今も変わっていない?
「応援したいというよりは、自分がその時に感じたことや、上手くいかない夢、嘆き的なものを歌詞に残していって、共感できればいいというか。個人的に“頑張れ”とか“頑張ろう”みたいな曲はあんまり好きじゃないんで(笑)。カップリングの『stroll』(M-2)とかもそうなんですけど、ちょっと愚痴っぽいけど、自分のリアルな内面とかプライベートも歌詞にしていって、それを聴いたリスナーの人が、“こういう不満を感じてるのは、自分だけじゃないんだな”って、共感してくれたらいい。それで“明日も頑張ろう”と思えるような曲が書けたらいいなと思います」
――うんうん。ちなみに嘆き的なものというと……? 今までうまくいかないな、と思う時はありましたか?
「それはたくさんあります(笑)。想像してたように進まないことや、現実的なこと。ずっと夢見ていた音楽の世界に入って、いろんなことをやってもなかなか自分の思った通りにはいかない。でも、だからこそ味が出て深みが出るっていう感じなのかな」
――それは制作のことでしょうか。
「制作のこともそうですし、恋愛もそうです(笑)。音楽やってるとか関係なく、普通の一般人として(笑)」
――今回、2ndアルバムの『Juice』の次の作品ということで、どういう心持ちで制作に臨まれましたか?
「『Only One』に関しては、ほんとCMありきで書いたので、幅広く聴いていただける曲ができたらいいなという感じですかね。他のカップリングに関しては、次の作品に向けての布石になるものというか。今までは結構ダンストラックというか、ハウスっぽいサウンドや、ヒップホップのトラックが多かったんですけど、今後もう少しバンドサウンドというか、生っぽい音を入れたいなと思っていて。それはデビュー前の弾き語りでやっていたスタイルなんです。原点に戻るじゃないですけど、それに向けて実験的な曲を作ったという感じですね」
――なるほど。原点に戻ろうと思った理由は?
「もともとずっと弾き語りでやっていて、トラックに合わせて歌ったり、トラックに自分の歌詞とメロディーをのせるということにも慣れていなかったので、試行錯誤でやってたんです。で、一通りチャレンジしてみて、ある程度作品を作っていく中で、自分で聴く音楽もそうですけど、自分の好きなサウンドがわかってきて。次はどういう作品を作りたいかと思った時に、生音と打ち込みのバランスがうまく取れた曲が作れたらいいなって。“ザ・バンドサウンド”にしたいっていうわけではないんですけど、どういうバランスがいいかな~と考えてます」
――Tokyo RecordingsのYaffleさんとは初期の頃から一緒に制作をされてますが、今回はいかがでしたか?
「今回の曲に関しては、ピアノのコードがあって、歌詞とメロディーが結構すぐ出てきたので家で歌入れして、Yaffleくんに聴いてもらって、どういう感じのトラックがいいか決めてもらったという感じです。Yaffleくんは1stアルバムから『rhythm』という曲を作っていただいていて、新しいサウンドを取り入れつつも、私の好みもわかってくれているので、すごく信頼して制作ができるんです。だから今回も“こういうサウンドにしてほしい”という感じではなくて、割とお任せして作っていただきました」
――とても優しく寄り添ってくれる曲ですね。『Only One』のMVはフランスで撮影されたんですね。
「監督さんも大変だったと思うんですけど、朝の5時くらいからメイクして、6時スタートみたいな感じで。ほんと人のいない時間帯に撮りたいっていう感じでした」
――道路の真ん中で撮ってらっしゃいましたね。
「そうです(笑)。でも何とか良いMVが撮れました。すごく貴重な体験でしたし、建物がほんと綺麗なので、どこで撮っても絵になる感じでした(笑)」
――フランスのフェスにも出演されましたが、いかがでしたか?
「すごく楽しかったです。フランスに行ったのも初めてだったので、結構緊張もしつつ(笑)。海外のフェスに出させていただくのも初めてで、“モチベーションちゃんと保てるかな”とかいろんな不安もあり、楽しみな面もあり。ライブしてみたらいつも通りにできたので、楽しめました。お客さんもすごい踊ってくれてて、一緒に盛り上がった感じがありましたね」
――海外に活動の幅を広げたり、海外で活動するということは、iriさん自身はどう考えていますか?
「うーんそうですね、基本的には日本で広く自分の曲が広まったら良いなと1番に思っています。それで海外の人が聴いてくれて、徐々に海外にも聴いてくれる人が増えればいいなというぐらいですかね。そのために英語で歌詞を書いて、というのはあんまり今は思わないです」
自分の好きなアーティストや、今注目してる人と一緒に、良い夜を過ごしたい
――先ほどお話しにも少し出ましたが、カップリングの『stroll』と『Come Away』(M-3)は、iriさんの日常からうまれた曲という感じがしますね。
「はい、そうですね」
――2曲ともESME MORI(Pistachio Studio)さんと作ってらっしゃいますが、どういうお気持ちで作られましたか?
「『stroll』に関しては、夜、別に目的もないけどちょっとフラフラして考え事しながら歩いてるのをイメージして想像しながら書いた曲になってます」
――私も夜中歩くの好きです。
「ほんとですか(笑)。そういう時に聴く曲としていいかなっていう。最初のベースとなるトラックは自分でイメージがあって、それで作ったものをMORIくんに投げてアレンジしていただきました」
――生音を意識して作られたんですか?
「そうですね、ギターを入れたくて」
――iriさんの“生音を入れたい”という要望に対して、MORIさんはどのようにアプローチされましたか?
「MORIくんは『fruits』(EP『life ep』収録)という曲や、『Keepin’』(2ndアルバム『Juice』に収録)という曲もそうですけども、これまで何曲か作らせていただいてて、制作も細かいところまで一緒にやってくれます。プレイヤーがいて、そこに何を足していったらいいか、ビートはどのくらいの音色がいいか、生音とトラックのバランスをすごく考えてくれてましたね。実験的にこういう曲ができて良かったと思います」
――なるほど。『stroll』も『Come Away』も心地よく聴けるのですが、個人的に『飛行』(M-4)がすごく好きなんです。メロウでとても美しくて。トラックプロデュースはKan Sanoさんですが、Kanさんとの出会いはどんなところで?
「代官山LOOPの対バンライブで呼んでいただいて。その時“1曲作れたらいいね”みたいな話をしてくださってたんです。七尾旅人さんとの『C'est la vie』も大好きですし、もっと前の、Kan Sanoさんがリミックスを作ってらした頃から結構好きで、今回お願いしました。この曲は最初私がギターループの弾き語りで作ったんですけど、ほんとシンプルな感じにしたくて、後半でKanさんのピアノソロが少し入ってきたらいいなというイメージでした」
――Kanさんとの制作はどうでしたか?
「結構Kanさんの曲って、ハッピーな曲が多いイメージがあったんです。七尾旅人さんとの曲も、割とノレるじゃないですか。こういうしっとり系の曲って、Kanさんの曲で聴いたことがなくて。だから“こういうアレンジもされるんだな~”と思って。多分、歌詞がしっかり入ってくるように、音数をなるべく減らしてくれていて、そこも素晴らしいなと思いました。本当だったらもっといろいろ音を飾り付けしちゃいそうなんですけど、歌がシンプルだから、ちゃんとそこをわかってくださっていたんだと思います」
――後半の“please don’t wake me up”の歌い方がすごく綺麗でした。
「ありがとうございます(笑)」
――この曲は、どういうことを言いたくて歌詞を書かれたんですか?
「最近、周りの知り合いや同級生が結婚して、結婚式に行って“うわ、幸せそうだな~”と思って、そういうのを見てて、書きました(笑)」
――それでこんなに美しくて優しいんですね。言葉も詩のようですね。
「個人的にもこれはしっくりきてる曲ですね」
――そして、もう次の作品への道が見えてきている状態なんですね。
「そうですね。前作の『Juice』が結構歌詞ぎっしりという感じだったから、次はもう少し歌が立つようにしたいなと思っていて、プレイヤーを入れて、歌にフィーチャーしてできたらなと思っています」
――12月には初の自主企画イベント『iri presents “Night Dream” 2018』が東名阪で行われます。どういう経緯で開催しようとなったんですか?
「こないだ初のツアーをやってみて、向井太一くんをゲストに迎えてとても楽しかったですし、お客さんとの一体感がすごい感じられたので、またそういうイベントをやれたらいいなと思ってです。自分の好きなアーティストや、シンガー、ラッパー、今注目してる人と一緒に良い夜を過ごせたらと思っています」
――大阪は12月21日(金)、会場は梅田Shangri-laです。
「Shangri-laもすごく好きな会場なんで、楽しみです」
――今後、一緒にやってみたいラッパーさんやシンガーさんはいらっしゃいますか?
「沖縄のラッパーで、Sweet Williamさん。ずっと聴いてて、すごい素敵なリリックだなと思いましたね。あと、沖縄だと唾奇さんとかも結構キテますよね」
――活動の中で、交友関係は広がりましたか?
「ラッパーさんはあんまり……chelmicoくらいですかね。シンガーさんだとSIRUPくんとか向井太一くんですね」
――これから一緒にされる方が増えていくんだろうなと、今後の活躍も楽しみにしております!
「ありがとうございます」
text by ERI KUBOTA
(2018年9月13日更新)
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