10周年を飾る“挑戦の一枚”を携え2つのツアーを開催 TSUKEMENインタビュー
バイオリン2本とピアノから成るインストゥルメンタルユニット・TSUKEMENは今年、結成10周年を迎え、この大切な節目を記念したアルバム「X(テン)」をリリースした! 次のフェーズへの第1歩となるこの作品には、彼らだからこそできたオリジナルナンバー全12曲を収録。“TSUKEMEN初体験”の人も楽しめる1枚に仕上がっている。また、同作を引っ提げたリリースツアー「TSUKEMEN LIVE 2018 “X”」を現在開催中で、そのあとには全国5か所で10周年記念のスペシャルライブツアー「TSUKEMEN-NEWXT LIVE TOUR」も控える。そんな多忙な3人に、10周年のことアルバムのこと、たっぷりと話を聞いた。
――まずは10周年おめでとうございます! 10年振り返ってみていかがですか?
TAIRIKU 「まずは続いていることに驚きがありますね。そしてマンネリすることなく年々良くなっていて、常に更新できている気がします。今が一番いい状況ですね」
SUGURU 「初期の頃は、受身なユニットでいわゆるメッセージ性が弱かったんです。でも少しずつやらせてもらって、10年でいろんな経験をして人と出会って、こうなりたいとか、こう伝えたいとか、自分たちの音楽が固まってきましたね」
KENTA 「徐々に話し合う機会も増えました。コンサート後の反省会とか、次どういうことをやりたいか?とか……。ちょこちょこ集まって、時には延々としゃべることもありますね」
SUGURU 「スロースターターだけど、今、ググッとディープインパクト(名馬)のような追い込みです(笑)。まだ第3コーナーぐらいかもしれないですけどね」
TAIRIKU 「そうですね。まだ最後の直線は見せてないですね(笑)」
――そしてアルバム『X』をリリース! 10周年記念の作品となれば、いろいろな楽曲を入れたくなると思いますが、今回はクラシックの名曲やカバーはなしの全オリジナル曲。しかもバンドを加えたナンバーもあります。
TAIRIKU 「TSUKEMENの音楽を世の中のみなさんに知ってもらうために幅広くもやりたいんですけど、今回はどちらかというと絞っていって、自分たちのやりたいことをドンドン明確に打ち出し、3人が同じ意思を持ってさらに前に進めるようにしました。10年目といういい起点になったのではないかと思いますね」
KENTA 「“今後”(に向けて)ですよね。今年下半期、来年に向けてTSUKEMENを1歩、2歩と先へ進ませたいから、僕たちがあまりやってこなかったバンドを使ったサウンドを開拓して、もっと新しいリスナーの方と出会って、TSUKEMENを知ってもらいたいなって。(クラシックとして)やりたいことを突き詰めるのも大事にしつつ、親しみやすく“クラシック、クラシック”していない面も出せたらなと思ったんですよ。それでいろんなつながりが増えて、いろんな人たちともコラボして、“シーン”を自分たちで作っていけたらなと思います。そのチャレンジ精神で、前向きに間口を広げた、親しみやすいアルバムです」
――その言葉どおり、今回TSUKEMENさんの音楽を初めてお聴きしたのですが、“クラシック、クラシック”していませんでした。
TAIRIKU 「クラシックのスタイルをベースにホールで(コンサート)やっていて、実際にクラシックの曲もやるんですけど、自分たちではクラシックとは思ってないですね」
――クラシックとポップやロックの懸け橋的存在ですよね。
KENTA 「中間的なね」
TAIRIKU 「そういう“見る人によって感じるジャンルが違う”っていうのは、ほかにやっている人もいないので客観的に見ても強みなのかな。でもそれがもっと確固たるイメージで“TSUKEMEN”というジャンルになったらいいなと思うんですよね。ただ、なんとなくの雰囲気ではなく、がっちり“TSUKEMENしかできないよね”って……。ま、それには時間も必要だし、認知度とかこれからの活動とか、いろんな要素があって熟していくのかなと思いますね」
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――『X』では、バンドを擁した最初の3曲と、そのあと3人の編成になった4曲目『Volcano』に境目を感じませんでした。これもTSUKEMENならではですよね。
TAIRIKU 「それはうれしいですね。曲を並べる時、3曲目から4曲目のところは、3人も聴いてこのままいけるなって思ったんです」
SUGURU 「すごくフラットに聴いてもらえているんだと思います。なかには(バンドの音が入ると)3人の音が聴こえ難くなるのはイヤという方もいるので。例えばバンドなら“ボーカルが聴こえ難いな”とかですよね」
――そういう意見は理解できますね。
SUGURU 「やっぱり生の音って本当にいい音なんですよ。CDもテレビもラジオも一回マイクを通した音だから、(生音と)違うんですよね。だから一度、ライブで生を聴いている人はその違いを知っていて……。そうなるとなかなかやりたいこともできなかったりもしてたんです」
――ライブで生音の良さに触れたお客さんからは、どうしても生音……CDだったとしてもライブで生音として聴くことができる3人での音を求められるから、バンドを入れた曲を作るのに躊躇するということですね。
SUGURU 「でも、今回はそれもやって“俺らがやりたいからやる”っていう意思を見せようという。もっと自分たちの趣味も出しながら、なんだったらフェスとかにも出られるようになりたいですよね。でもそれには、音響のスタッフさんを探すとか、なんなら“マイクってどうやってつけるの”とかから始まって……(笑)」
KENTA 「僕ら、もともとクラシックの音大生ですからね(笑)」
SUGURU 「アンプって何?とか(笑)。でもそうやって少しずつ慣れていってチームを作って、フェスじゃなくて対バンでも出られたら、もっと世界が広がっていくんじゃないかと思うんですよね」
――今作2曲目の『雨ノチ晴レ。』は、今話に出たフェスでやったら盛り上がりそうな曲ですね。
SUGURU 「これは自分の大いなる趣味というか、本当にそうなったら幸せっていう(笑)。そういうの(フェスなど)が好きな人は……僕もそうなんですけど、ライブへ行く時は聴き込んでから行くじゃないですか。で、“ここで俺らの番だ!”みたいな感じで盛り上がる。でもクラシックだと、その場で初めて聴くことも多いから、そうならないんですよね。だから“これを事前に聴いてくるとコンサートがもっと楽しいんだよ”っていうのを提示して、さらに身を持って体験してもらおうと思ったんです」
――そうすればファンの人の楽しみも広がると。
TAIRIKU 「ま、そこまで思えなくても、二刀流でいけたらいいなと」
KENTA 「バイオリンとピアノのアンサンブルというちょっとブランド感もある音楽的な要素も大事にしながら、パフォーマンスも大事にしていけたら……。例えば、ただ弾くよりもちょっとかっこいい弾き方とか、3人でフォーメーションを組んだりとか、そういう部分にもこだわりたいですよね。あと、一人ひとりに魅力があったら絶対(ライブに)来てくれると思うんですよ。この人が、この人たちが好きだからって思わせたら、来てくれると思うんで、自分磨きも両立しないといけないなって思いますね」
――確かに。ただ、インストゥルメンタルは歌詞がない分、人間性を伝えることが難しいですよね。結果“この人が好き”と思わせるのも難しい。
SUGURU 「そういう意味では、演奏前のトークもすごく大事になるんですよね。CDなら“こういう思いで作りました”っていうライナーノーツとか」
KENTA 「でも、全曲ライブで説明してたら飽きちゃうしね」
TAIRIKU 「流れもあるからね」
――ではそのライブの話も。まず今作のリリースツアーですが、バンドの音はどうされているんですか?
SUGURU 「これは3人でやってますね」
TAIRIKU 「3人でできるようにアレンジしてあります」
――さすが。現在、ツアーは中盤といったところですが、お客さんの反応はいかがですか?
TAIRIKU 「今までのコンサートと比べてお客さんが参加する曲が多くて…。手拍子とかが大きいと生音が消えちゃったりするので、そんななかを縫うようにあの手この手のアプローチをしながら、今まで以上に演出面にこだわってやってますね。手応え的には、今までよりも引き込まれるって言ってもらえますね」
――手拍子だけでも音がかき消されるんですね。
TAIRIKU 「でも会場によっては、ピアノでやれば消えないなとか考えながら……」
SUGURU 「ホールだとピアノの音は消えないですね」
KENTA 「でも響きの強い良いホールだと時差が生まれるんで、手拍子してもズレができないポイントで手を叩いてもらえるようにしたり……」
SUGURU 「そういうのも考えて曲は作ってますね。いろいろと変えてみて“こういうこともできるんだ”っていうのも新たにわかってきました」
TAIRIKU 「参加曲を生音でやってる人たちっていないんですよね。だいたい弾いてMCしてという内容なので、生音の限界にチャレンジしてます」
――未知の領域なんですね。あ、YouTubeで3人が踊っている動画が! もう楽器は弾いていませんでした(笑)。
SUGURU 「あれは歌いながら踊るという……(笑)」
TAIRIKU 「たまに弾いてないです(笑)」
――そういうのでも観客をのせていくんですね。
TAIRIKU 「最初は弾いてMCして聴いてもらってっていうのから始まったんですけど……」
SUGURU 「徐々に変わってきたよね」
TAIRIKU 「まずは掛け声だったらいけるな。じゃ次は若干歌うか……とか。ちょっとずつ前進してます」
SUGURU 「ほころんでくれればいいなと思って。“やってる、やってる”感ですね(笑)」
KENTA 「伝えたいものを聴いてもらうためには、まずはほぐさないといけないんですよね。僕らは生音でシンプルだし、舞台装置や照明もテーマパークのようにはいかないから、どういう環境でどう物語を作るのかを考えてますね」
――今後のリリースツアーに期待が高まりますね。そして、そのあとには「TSUKEMEN-NEWXT LIVE TOUR」も! こちらはHP上の写真が……。
3人 「(笑)」
TAIRIKU 「何かありました(笑)?」
――革ジャンでした(笑)。
TAIRIKU 「『TSUKEMEN LIVE 2018 “X”』との違いはありますね」
KENTA 「白と黒ですね。ギャップ付け過ぎ(笑)」
SUGURU 「こっちはバンド編成で、突き抜けたものができたらなって」
――どんなライブになるんでしょうか?
KENTA 「手拍子やスタンディングから、もう一歩発散するシーンを作りたいっていう。それこそポップスとかロックが好きな人も聴きやすい感じですね。あと、本能がライブ中に出せるステージにしたいなって……。やっぱり音に集中していると発散することもあるんですけど、自分と対話して内に向かっているようなところがあるんですよ。だから、“オラッ!”っていうのがあるじゃないですか。大声をあげた時にしか発散できない何か。アドレナリンが出るみたいなの(笑)」
SUGURU 「やりますよ、最後にバンッ!って(楽器を破壊する仕草)……ウソ、やらないです(笑)」
KENTA 「ま、それくらいの気持ち良さを僕らも求めたいっていうことです」
――両方のツアーを見るとより楽しめそうですね。
TAIRIKU 「違いがわかるようにしたいですね」
KENTA 「(『TSUKEMEN LIVE 2018 “X”』は)心で伝えて、(『TSUKEMEN-NEWXT LIVE TOUR』は)体で伝えるみたいなね」
text by 服田昌子
(2018年8月 2日更新)
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