二度の南アフリカツアーを経て
約3年振りのニューアルバム『Kabo Wabo』をリリース!
国境を越えて進化するメンバー全員インタビュー
ジャンルを超えた多彩なエッセンスを取り入れたインストゥルメンタルバンド、Sawagi。前作リリースツアーで初の海外公演となる南アフリカツアーを敢行。4人が生み出す変幻自在なバンドアンサンブルはより高度に進化し、国境を越える自由なグルーヴを獲得してきた。そんな彼らが約3年ぶりとなる待望のニューアルバム『Kabo Wabo』を5月23日にリリース。今作では共同プロデュースに松田“CHABE”岳二を迎え、ゲストミュージシャンとして元浅草ジンタのSeasirがトランペットで参加。ダンスミュージックというテーマの下、鍵盤主体の軽やかで親しみやすい音像を描き出し、五感を刺激する人力ビートミュージックの最高傑作となっている。多種多様な活動を続けながら、バンドとして幸福に歩み続けるメンバーがマイペースに楽しく語ってくれた。
――前作『Starts to think?』をリリースしたのが2015年で、その後に南アフリカツアーにも行かれましたね。1stアルバム『hi hop』をリリースした頃から、「世界を目指したい!」っていうことをお聞きしていたので。ついに実現したかと思って嬉しかったです!
nico(ds)「有言実行してますよね。その行った先が南アフリカ(笑)。普通、アメリカとかヨーロッパ行くやろ?って感じですよね」
――でも、ヨーロッパとかより、アフリカの方が自由な空気を感じるし、Sawagiに似合っている気がします。そういう経験が楽曲作りに反映されたりは?
nico「向こうに行って、ライブのやり方とかを考えるうちに、こういう曲必要やなって気づいて、そういう曲作りをするようになったところもあると思うんですけど。今のところ楽曲制作より、ライブのやり方とか強さとか、そういう面が変わった気がします」
コイチ(key)「確かに、何か影響は受けてるとは思うんですけど、直接的に作品に反映させるというより、ライブに対する影響の方が大きいですね」
観音(g)「アフリカの後に、タイやフィリピンにも行かせていただいたので、どんな場所でも俺たちはできるんだ!ということが実感できて。現場での対応力という点で、経験値は上がったと思います」
雲丹亀卓人(b)「南アフリカのツアーでは、1ヶ月間、メンバーとずっと一緒に過ごしたので。ファミリー感というか、繋がりやグルーヴ感というのは確実に生まれましたね。それでバンドが成長したなと思えたし、初めての海外遠征先が南アフリカで、そこですごい盛り上がって、海外でもこんな風に喜んでくれる人がいるんだっていう成功経験の一つとして、すごく自信がつきました。Sawagiってカッコイイんや、やってきてよかったっていう風には思えました」
――では、先頃リリースされたニューアルバム『Kabo Wabo』の制作自体はどのように?
コイチ「今までやってきたことを踏まえつつ、一回、ダンスミュージックっていう枠を決めて表現してみようと。今回初めてそういうテーマのもとで制作しました」
――もともと、ダンスミュージックの要素はあったと思いますが…。
コイチ「ダンスミュージックではあるんですけど、今までいろんな方向性があって。ちょっと北欧のジャズっぽいニュアンスがあったり、USインディみたいな雰囲気の曲があったりとか、僕らのルーツ的には、ファンク、ジャズ、ブルース、90年代のマイケル・ジャクソンとか、そういう影響が結構大きくて。その中で、もっと統一感を出してダンスミュージックやっていこうかなと」
nico「今回はコイチさんが中心になって作ってくれたから、アルバム通しての統一感がしっかり出たのが良かったと思います」
――全体的に鍵盤主体の音色が軽やかでリズミックな印象が強いと感じました。
コイチ「最初に『Vanguard』(M-6)と『POND』(M-3)ができて、あとはピアノ一台で作るようにしたんです。それをバンドに持っていって、セッションして曲を組み上げて行きました」
――スタジオでセッションしていく中で、どんどん曲が進化していってんですね。
nico「そうですね。僕らは基本的に最初に曲のアイデアを発案した人がその曲の指揮を取るんです。それをどういう方向に持っていくのか、メンバーと合わせてみて、また全然違う方向に発展していったら、それが良い方向に転んだりしてて。結構今は家で完結して曲作りができちゃうんで。それをただ単に生で再現したらどうなるか、スタジオでやるだけみたいなことが多いんですけど。もっと違うよさを出したいなって、レコーディング当日に思いついたやり方で急遽それでやってみたりもしてて。それが『Hunt』(M-5)ですね」
――『Hunt』は今までにない新境地的なジャズ・ファンクチューンですね。
コイチ「これは、トッド・テリエっていう北欧のディスコ・ファンクのクリエイターがやっているダンスミュージックを生バンドで作ってみたいなっていうざっくりしたイメージがあって…。最初はメロディーがなくて、BPMも結構速かったんですけど。nicoちゃんが、こんな感じでやってみない?みたいなアイデアを出してくれて、テンポを落としたんです。それがめちゃくちゃかっこよくて、この方向で行こうと考えてたら、(元浅草ジンタの)Seasirさんが、タイミングよく声かけてくれたんで、すぐレコーディングに来てもらって、その場でメロディー考えてもらったって感じですね。振り返ってみると、どの曲も最初のアイデアとは違う仕上がりになっていくっていうのが、バンドとして面白いですね」
――『POND』はちょっとリラックスさせてくれるようなテンポがいい感じです。
コイチ「僕は(曲の)情景を見えるのが好きなんで、それをよく考えるんですけど。『POND』は、“池”という意味で、その時思ってる人のことを遠目から見て、池に映ってるような情景が見えたらいいなと思って作ったんです」
――『That Thang』(M-4)は、ちょっと不穏な空気感もあって、その異色な雰囲気に引き込まれていきます。
コイチ「“不穏な空気感”っていうのはギターの感じがデカいのかなと。あれはギタリストからの発想で、面白い感じになってよかったんじゃないかな。結構最後にできた曲ですね。楽曲作りのテーマとして、メロディーもリズムを担ってるようなものを作りたいなと思っていて。この曲の元ネタになったのは、ケニー・ギャレットっていうサックス奏者のライブ動画で見たサックスソロで。それをオマージュしたような曲を作ろうと思って。それで、セッションしながら作っていったんです」
――オープニングからノリの良い『Boogieman』(M-1)はどうですか?
コイチ「『Boogieman』は、北欧のディスコパンクみたいなところからアイデアがでてきてたけど結果的に、スタジオでみんなでセッションしていくうちに、今の形になりました」
観音「レコーディングに関しては今までよりスリリングでしたね。録る10分前にアレンジが変わったり、実際に録ってみないとわからないみたいな曲もあったりして。それを重ねていって、すごいレコーディングも楽しくできました。メンバーの対応力にびっくりもしたし、やっぱりこの人たちとやってて良かったなと実感しましたね。Sawagiの懐の深さが今回の作品に詰め込まれてます。僕ら的にはそういうところもパッケージできたので良かったなと」
――そのあたりは、アフリカでのツアー体験も活きてるのかもしれないですね。
観音「そうかもしれません(笑)」
――インストバンドならではの自由なスタイルですよね。
nico「そうですね。インストゥルメンタルの曲って歌詞がない分、作ってるといじくり続けるんですよ。いろいろやってたら、一曲作るのに、マジで2ヶ月とかかかったりして。カッコイイもんが自分の中でどんどん更新されていくから、永遠にアイデアが出てくるんですけど、それをやってたらいつまでも音源できないですからね。今回はチャーベ(松田“CHABE”岳二)さんに共同プロデュースしてもらって、めっちゃよかったですね。各楽曲もこれでいこうってジャッジをしてもらって、この7曲にしたんです」
――チャーベさんにやってもらおうと思った決め手というのは?
コイチ「今回、誰かにプロデュースしてもらうのも面白そうやなってことで、DJ文化もバンド文化も両方をわかってる人がよくて。すぐ思いついたのがチャーベさんでしたね。(メンバーとも交流があり)仲がいいので」
――ちなみにこの“Kabo Wabo”っていうアルバムタイトルはどこから来てるんですか?
コイチ「“cabo wabo”っていうテキーラがあるんですけど、そのスペルを変えて“Kabo Wabo”にしました」
nico「特に意味は無くて、響きで決めましたね」
――今作を完成させて見えてきたことなどは?
コイチ「今までと違うこともできたんで、次に向けて、別の可能性も見えてきた気がしてて…。まだ整理できてないんですけど、いろいろ楽しみな感じはしています。海外も視野に入れて、できるだけアクションを止めずに、ライブもしていきたいし、音源も作りたいですね」
nico「全員が良いって思える活動ができるのが一番いいですね。メンバー4人が幸せになれたら、なんでもいい。“4人の幸せの中にバンドがある”っていうのが一番いいかなと(笑)。無理にライブの本数を増やしすぎても、誰かがしんどくなってやめちゃうかもしれないし…。無理して活動しようっていうのは絶対にないんです」
――なるほどね。とても幸福なバンドの在り方ですよね。では、最後に、次のライブに向けてメッセージをお願いします。
観音「聴いてくれた人それぞれの、ダンスミュージックを見つけにライブに来て欲しいですね」
nico「このアルバムの曲たちをライブでやった時のお客さんの受け取り方が、俺らにとっては何より重要。実際にライブでやってみたら、僕らが予想もしてないところで盛り上がることもあるので。ライブの楽しみ方は自由ですから」
雲丹亀「このバンドの生のグルーヴを感じてください!」
text by エイミー野中
(2018年7月 3日更新)
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