暴れられるか、暴れられへんか……それだけ FABLED NUMBERインタビュー&動画コメント
EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)とバンドサウンドを一つにし、ラウドロックのシーンで異彩を放ってきた大阪発の6人組・FABLED NUMBER。そんな彼らが6月20日、自身初となるシングル『I Bet My Life(or Death)』をリリースした! いつにも増して切れ味の鋭い同作の持つ意味とは? まずはここから話はまじめにスタートする……が、終盤には笑いの連続に!! N'Taichi(b)、N'Eita(vo&g)、Ikki-Rodriguez(samp&prog)にインタビュー。
VIDEO
――ニューシングル『I Bet My Life(or Death)』は、超が付くキレッキレ具合。なぜここまで振り切った仕上がりになったんですか?
Ikki-Rodriguez 「今回は原点回帰的な意味合いがありますね」
N’Eita 「メンバーにキーボードやプログラミングがいるなかでバンドをやってきて、ダンスミュージックや電子音楽的なところが強くなってきたんですよね。もちろん自分も好きでダンスミュージックを聴くし、去年のサマーソニックに出た時も、ミドルテンポのそういう音楽の方が盛り上がって一体感が生まれるなと思ったし、自分たちの高揚感もあったと思います。でも実際に自分たちがライブしているラウドミュージックのシーンだと、もっと攻撃的でBPMが速めな曲の方が、受け入れてもらいやすくて伝わりやすいっていうのがどうしてもあるなっていうのを感じたんです」
――ライブで観客が求めるものと自分たちのやってきたことに少しズレがあったと……?
N’Eita 「自分たちが通って来た道(ラウドなシーン)と、自分たちがやりたい音楽がマッチはしてるとは思ってない状態でした。そもそも“シーンのなかで唯一無二の立ち位置に立つには、ダンスミュージックを(ラウドな)バンドサウンドで鳴らさなければならない”みたいなこだわり、もっと言うととらわれが自分たちにあったかなと…。しかも、それをしていることが“すごい”って思う人たちは、その道には少なかったんですよ。だからもう一度、ラウドミュージックを好きな人たちが好きになれるような曲を!と思って。最近は特にこういう曲がなかったので、自分たちの来た道にいる人たちにこういうのを再度聴いてもらって、改めてどういう印象になるんか?っていうのも知りたかったですね。これまでダンスミュージックをバンドでやることによって上げてきた技術……アレンジとか足していく音とか、そういう面だけでも今は十分に個性が出せるんじゃないかって思うし。ベーシックなサウンドはもっとアップテンポにラウドっぽくして、自分たちが培ったものを乗せるだけでも(OK)って思ったんです」
――ラウドなバンドサウンド+EDMという新しい音楽にこだわって挑戦し続けてきたけれど、今回はもう一度自分たちがホームとするシーンに向けて投げた直球という感じですね。
N’Taichi 「それと(もっと多くの人に聴いてもらえるようになる)現実的な道のりや時間を考えた時に、そんなに長い時間こだわって挑戦し続けても、だんだんと聴いてももらえなくなるんじゃないか……そんな恐怖心みたいなのもあったんですよ。ラウドでもいろいろ(な種類が)あって、そこのなかで俺らはエレクトロな音楽。まずはそこにしっかり好かれることができないと“話にならんわ!”って…」
――実は今回初めてFABLED NUMBERさんの音楽を拝聴したのですが、今の話とは異なり、むしろ今作の第一印象は意外と間口が広いものにも聴こえました。
N’Taichi 「それはなんでそうかと言うと、俺たちのライブを見てないからなんですよ。まさに今回は今まで俺らのライブに来てくれてたヤツ目線。それなんですよ。FABLED NUMBERのライブの人気曲って何や?って考えたら、究極このテンポ感やったらOK!っていう話やったんですよ。EDMがどうとかを抜きにしても……。いろいろ言ったけど、ただテンポが違うだけ。それだけっす。アップテンポかミドルテンポか」
――ライブで暴れられるか……。
N’Taichi 「……暴れられへんか。若いヤツらがモッシュ、ダイブできるテンポなんかっていうそれだけです。単純。もちろん細かいこともあるんやけど、今回の起点は曲が速いか遅いかですね」
N’Eita 「それで言うたら、メロコアでもギターロックでも速い曲は速い。そのなかでのエレクトロなラウドにおらないといけない」
N’Taichi 「だから今までやってきたEDMの音色作りとかサウンドの構成とか、そういう好きなもんは、全部詰め込んでます。それはこの曲でも突き詰め続けてます」
――ブレないEDMの音。でもテンポは速くと…。今回こうやって原点回帰のシングルを“地固め”的にラウドシーンに響かせたあと、目標としているものはありますか?
N’Taichi 「ま、今後これを主軸にしてやるんですけど、視野も求められる楽曲ももっと広がるやろうし、もう一回ダンスミュージックにガンッて戻ることもあるかもしれない。ただ、そんな先ことを今考えてる余裕はないから、一つひとつ絞ってやる。吹っ切れてる感じなんですよ。それぐらいじゃないとできひん」
N’Eita 「ライブハウスのキャパがどんどん大きくなっていって、フェスにも大舞台で出られるようになったら、そこで活きてくるのがダンスミュージックやと思う。例えば1000人ぐらいの会場が(ダンスミュージックの要素ないアップテンポでラウドな要素だけで)えげつないことになって全員が大満足だったとしても、もっとでっかいステージに立ったら、その人数(1000人)しか盛り上がらないと思うんですよ。そこがミドルテンポのダンスミュージックの曲を表現すべき時で、その時にリリースがあればそこに(リリースすべきダンスミュージックが)存在してるんやろうな。もしその時、それでも“FABLED NUMBERはアップテンポの曲の方がいいわ”って言う人がいたら、それをも黙らせられるくらいの音楽でステージに立って、それ(反対の意見)を包み込めるくらいの話(楽曲やライブパフォーマンスなど)がないとっていう気がしますね。でもそれはどんな人でも一緒だとは思いますけどね」
N’Taichi 「だから“大”を取るために、やらなあかんことが絶対あったってことだと思います」
――ちゃんと先を見越しているんですね。しかもそれを楽しめている感じがいいですね。
N’Taichi 「苦しんでこんなことやってられないですって(笑)。しんどかったらやめてる」
――そうですよね(笑)。ちなみにIkki-Rodriguezさんは、今の2人の話を聞いていかがですか? 最初のひと言からお声を聞けていなくて……(笑)。
N’Eita 「今日、京都の時(事前にあった京都でのキャンペーン)、Ikkiくんおもろくて……ラジオで久々に大活躍してた(笑)!」
――ぴあ関西版WEBでも活躍してください(笑)!
Ikki-Rodriguez 「振りが雑(笑)!」
N’Taichi 「彼はバンドのなかで一番、笑いのセンスがあるんすよ!」
N’Eita 「それに彼は僕らのバンドの個性、ラウドにダンスミュージックに足すっていう部分の核の人間なんでね。作曲をするTaiちゃん(N’Taichi)、作詞の僕、そしてサウンドを作る男・Ikkiっていう位置やから! いろいろ聞くなら今ですよ!!」
――そうですね。プログラミング、サンプリングで曲をまとめ仕上げる大事な役割!
Ikki-Rodriguez 「ま、でも、そこはTaiちゃんと一緒にやってるんで…。Taiちゃんがフレーズを考えてきてくれて、そしてそれに対して、こういう音色どうですか?とか出して。で、さらにTaiちゃんのもっとああしてこうしてっていう指示のもと動いて。で、Taiちゃんがかっこいいって言ったらOKなんです」
N’Taichi 「やりやすいんですよ、昔からの直属の後輩やから」
――Ikki-Rodriguezさんもやりやすいですか? 今作の制作はどうでしたか??
Ikki-Rodriguez 「めちゃくちゃやりやすかったですね。ただ、胃に穴が開きそうにはなりましたけど。いかんせん、ああいう作業は大変なんで……詰めて詰めてだから」
N’Eita 「あの人、意外と疲れてるんや(笑)」
Ikki-Rodriguez 「うん。身体的にも精神的にも。だから身を削ったっていう表現が……(ぴったり)。泣きそうですもん」
N’Taichi 「削ってるっす(笑)」
Ikki-Rodriguez 「でも実際そうなんですよ、マジで!」
N’Eita 「ま、必要な引き出しが多過ぎるんすよ。例えばギターの“ちょっとこのエフェクターが……”とかいう話じゃないから」
N’Taichi 「でも、ある程度は具体的に言ってあるから、絞られてはいるから」
Ikki-Rodriguez 「いや、絞られてても……」
全員 「(笑)」
N’Taichi 「ま、確かに普通のロックバンドはあまり経験しないことで、完全にDTM(デスクトップ・ミュージック )側の人がやること。そこを僕らは基盤として進めていってるから」
――ではIkkiさん、どんな苦労があるのか教えてください。泣きたくなる瞬間とは?
Ikki-Rodriguez 「いい意味? 悪い意味??」
N’Taichi 「いい方(笑)!」
Ikki-Rodriguez 「僕ね、今回マスタリングが終わって、帰りの車にポンッて座った瞬間に、“あ、今回の作品、終わったんや”って思ったら、ポロッて涙が……」
N’Taichi 「めっちゃええヤツやん(笑)。大変やったからな」
Ikki-Rodriguez 「ちなみにね、この『I Bet My Life(or Death)』ね、楽器の音以外にもいろんな音が入ってるんですよ。サビもね、ドーンッて聴こえるようにするために、大砲の音が入っとったりするんすよ」
N’Eita 「大砲(笑)」
Ikki-Rodriguez 「あとね、2番のサビ終わりのところは雑踏のザワザワってのが……」
N’Taichi 「雑踏、めっちゃ使いますからね、俺ら(笑)」
Ikki-Rodriguez 「あれもね、ボイスレコーダーを持って鶴橋(コリアンタウンもある大阪の繁華街)まで行って録ったんですよ」
――え! 自分で?
Ikki-Rodriguez 「そうですよ~!」
N’Taichi 「初耳やわ、それ」
Ikki-Rodriguez 「鶴橋の雑踏の音ですよ~」
N’Taichi 「うん。鶴橋じゃないとあかんかった! 鶴橋クオリティ(笑)!!」
Ikki-Rodriguez 「アジアっぽい感じの言語が入ってる方がいいなって思って……」
――本当に?
N’Eita 「うそつけ!って思われてるで(笑)」
N’Taichi 「目突かれますよ(笑)!」
全員 「(笑)」
N’Taichi 「雑踏にもいろいろあるからな。みんなそれぞれに思い入れがあるんですよ」
――大変ですね!
Ikki-Rodriguez 「でしょっ?」
N’Taichi 「でもこれが彼の仕事のやりがい。そういうのを入れてきて“Taiちゃん、どう?”“お、いいやん!”みたいな……(笑)」
――ちなみに辛くて泣いたのは(笑)?
N’Taichi 「俺にめちゃくちゃ怒られてる時やんな(笑)」
Ikki-Rodriguez 「はい。Taiちゃんに死ぬほど怒られた時」
N’Eita 「それよく見ます(笑)」
Ikki-Rodriguez 「でもえらいもんで、最初頃と比べたらだいぶ減ってはきているんですよ」
N’Eita 「成長がヤバいな」
Ikki-Rodriguez 「来年くらいになったら、なくなってるかもしれない」
――しかし、雑踏の音一つでも鶴橋まで集音しに出かけるということは、求め出したらきりがなさそうですね。
N’Eita 「中田ヤスタカさん(CAPSULE)や岡崎体育さんは自分でやったのを自分で納得するまでじゃないですか……もちろんそれも自分のハードルを越えるってことやから、大変やと思うんですけど、でもIkkiくんは、Taiちゃんのハードルを毎回越えていかないといけない。これはすごく大変やと思いますね。しかもtaiちゃんが4トラックという少ない音数でダンスミュージックを作るので(笑)、これをどんどん超えていかないといけない」
N’Taichi 「完成形は俺の頭の中にあるから」
N’Eita 「いかにその完成形に近い音色を出すか?みたいな。でもIkkiくんがそれをやってくれるおかげで、作れる曲数が増えたりするしね」
N’Taichi 「その分、俺が別のことできますからね」
Ikki-Rodriguez 「効率がいいんですよ」
N’Taichi 「ほんまにね、血を吐くような感じやけど、それはいい涙に変わる時がくる!」
Ikki-Rodriguez 「そうなんすよ。かっこよくなるんでね」
――でもN’Taichiさんから怒られることは……。
N’Taichi 「……なくならないでしょ。人間性の問題なんで」
Ikki-Rodriguez 「え、そうなん?」
全員 「(笑)」
――ハードル自体が上がるからかと思ったんですが……人間性(笑)。
N’Taichi 「ま、もちろんいい仕事したら褒めるけど、他人の要望に完璧にこたえられるってないでしょ」
――あ、そういう…。そうですね。人の考えが100%わかることはないですね。
N’Taichi 「大丈夫。限りなく俺の頭の中に近づけてるってことは、このバンドのスピードを上げるっていうことにちゃんと貢献してるから」
――でも怒られ続ける(笑)。
Ikki-Rodriguez 「そうっす。今、ハッキリわかった。むしろすごく気持ちがいいですわ。清々しい!」
全員 「(笑)」
N’Taichi 「でも“Ikkiは俺の腰巾着”っていうのはオフィシャルですからね。お客さんも知ってる。“行け、Ikki!”って言うたら、“はい~っ!”言うてな」
N’Eita 「さっきの京都のラジオはTaiちゃんがおらんかったら、Ikkiくんソワソワしてたんですよ(笑)」
Ikki-Rodriguez 「室内犬が急に外に出されるとソワソワするでしょ。ほんで、変に外をちょろちょろしたら車にぶつかったりとかして…。だからちゃんとつないどいてもらわんと!」
全員 「(笑)」
N’Eita 「ラジオの時、一回Taiちゃんの話が出たんですよ。そうしたらラジオのDJさんがIkkiくんの顔見て“なんか顔つき変わりましたね”って(笑)」
Ikki-Rodriguez 「あん時、首輪が外れてるつもりでおったけど、見たらめっちゃ長くて細いリードがついとって…」
N’Eita 「で、急に“Taiちゃんのために頑張らな!”みたいになって(笑)」
N’Taichi 「ちゃんと話せたん?」
Ikki-Rodriguez 「楽しかったっす」
N’Taichi 「よかった。よかった。それも経験やから」
Ikki-Rodriguez 「……(N’Taichiを見つめる)」
N’Eita 「ほんま、こういう感じっす(笑)」
全員 「(笑)」
N’Taichi 「いや、すべての出来事を糧にしていかんと。やりたいことに還元せなな!」
――なんか、すごい関係性を見た気がします(笑)。では最後にリリースツアーの見どころをお聞きして終了したいと思います!
N’Taichi 「Ikkiさんどうですか? せっかく来てるんやから!」
N’Eita 「いったれいったれ(笑)」
Ikki-Rodriguez 「セットリストもたっぷりになるし、Taiちゃんの腰巾着感が出てる俺が見えるし、何しろしゃべってる俺が見れると思うんで、ぜひ!」
N’Eita 「でもな、Ikkiくん。読んでる人はな、今のも結局は腰巾着が言わされてることになってるよ(笑)」
全員 「(笑)」
N’Taichi 「ま、その方がおもろいで!」
Ikki-Rodriguez 「……ですよね~♪」
全員 「(笑)」
text by 服田昌子
(2018年7月23日更新)
Check