「紆余曲折あったこと、挫折したことが、このバンドをより強くした」 シーンに消費される音楽ではなく、流行りに迎合する歌でもなく ドラマストアが目指す“僕らのポップス”とは――? 波乱のツアーに捧ぐ『swallowtail』インタビュー&動画コメント
4人組のギターロックバンド、というシーンに蔓延するフォーマットは、リリース、ツアー、サーキット&フェス出演、そしてメジャーデビューという分かりやすいほどに御膳立てされたルートへの期待と不安、数えきれないライバルにまみれる玉石混淆の世界を前にいつだって翻弄され、いつだって自ら始めた音楽がその意義を問いかける。‘14年に大阪で結成以降、ヒットポテンシャルを湛えたポップなメロディを礎に、メンバーの脱退や加入、手術や喉の不調による一時離脱とバンドを襲う多くの困難と向き合いながらも、着実にステップアップを遂げてきたドラマストアとて、その例外ではない。そんな彼らから届いた渾身の最新作『swallowtail』は、“関西発・正統派ポップバンド”の看板に偽りなしの珠玉のポップソング6曲を収録。リードトラックとなった名曲『秘密』を筆頭に、明らかにバンドの舵を切った意欲作にして代表作と言える1枚に仕上がった。シーンに消費される音楽ではなく、流行りに迎合する歌でもなく、ドラマストアが目指す“僕らのポップス”とは――? リリースツアー初日には髙橋悠真(b)が正式加入し、ついに役者が揃ったドラマストアが語る、全員インタビュー。
この作品を世に出せてよかった
――ドラマストアは関西のシーンで着実にステップアップはしてるけど、何かこう順風満帆とも言い切れないというか、メンバーの入れ替わりも含めていろいろありましたけど…ここにきて素晴らしい作品ができたんじゃないかと。
長谷川(vo&g) 「うわぁ〜! うわぁ〜! うわぁ〜!」
松本(ds) 「えっ!? ホンマに言うてるんですか?」
――グッドメロディやけどよくいるギターロックバンド、みたいなところから明確に舵を切った、間違いなく現時点での代表作だと思いました。
長谷川 「もう奥さん(=筆者)からその言葉をもらえただけで、今日は終わってもええかもしれへん(笑)」
鳥山(g&key) &髙橋(b) 「(笑)」
長谷川 「正直、今までとは結構違った流れでできた1枚やったから、いつも通りのドラマストアではなかったんですよね。なので、いいものを作ったつもりやけど、全力を出したつもりやけど、最初は不安というか…。ただ、ファンの方の耳に届く前に、こういったインタビューでも嬉しい言葉をいただく機会が今回は多くて、自信につながったところがあるんですよね。僕は去年末に喉を壊してしまった中での制作やったんで、(松本)和也くんとトリ(=鳥山)を中心にしたセッションに僕がメロディを後乗せしたりしたのがうまく作用して、チーム力につながったというか。本当に紆余曲折があって、ファンの方が離れるタイミングもいっぱいあったでしょうけど、それでもなお支えてくれる方たちがしっかり増えてるのは、この作品を世に出せてよかったと感じられた要因かなと」
松本 「リリース日にTwitterを見てても、“今が一番いい”ってみんなが言ってくれてて、すごく嬉しかったですね」
――他のバンドとの差別化も含めて、シーンの中でみんなが同じような音楽をやっててもね。そういう意味では、何か1つ抜けたというか、ドラマストアの戦い方の1つの形と思える作品になって。具体的には何が一番変わりました?
長谷川 「元々アレンジは和也くんが力を貸してくれてたんですけど、ゼロからの発信をトリがするようになったのが今回は結構大きくて。それこそ『三文芝居』(M-1)とか、トリッキーな感じの曲はある程度トリが上げてくれて、“何か難しい曲が来たでこれ〜”みたいな(笑)」
――『三文芝居』は明らかに今までとは違うと思わせてくれる曲で、こんなにピアノを弾くバンドやったんやって。
松本 「1曲目はインストっぽい感じで始まって、“え? これがドラマストア!?”って言わせたくて。2曲目にはいわゆるギターロックが間髪入れずにあって、ポップス、バラードみたいに、今回はまず6曲の役割分担をしたんですよ。そこに、今ある曲を当てはめて、足りひん曲をスタジオで合わせて作っていったんです」
長谷川 「今回は非常にビジョンが明確でしたね。ちゃんと先を見据えて、足りないパーツを僕とトリがどこまで作れるか、みたいなところはあったので」
松本 「あと、全曲ギター押しやったらトリがせっかくピアノも弾けるのにもったいないし、かと言って全曲ピアノもちょっと違うし、1曲の中でスイッチするにしても、音源なら当たり前でもライブで観せると変わってくるじゃないですか。ギターと鍵盤をどの割合で入れるかは結構考えましたね」
――そういう意味では、『三文芝居』は思惑通りの役割を果たしてくれて。楽器も入り乱れて、イントロを聴いてたら“→Pia-no-jaC←か!”っていうぐらいに弾きまくってる(笑)。
松本 「そこだけのためにカウベル買いましたもん(笑)」
――“サヨナラ バイバイバイ♪”と畳みかけるところも、すごくポップス的というか。
鳥山 「あそこはリフが先にあったのに、すごくうまく締めてくれました」
長谷川 「和也くんが1曲目にドラマストアっぽくない曲を置く意図を、めっちゃ考えたんですよ。もう4枚目のミニアルバムっていうのもあるし、ただただ真面目な歌詞を書くんじゃなくて、逆にチャラい感じというか、フットワークが軽い感じ。僕にそういうイメージはあんまりないとは思うんですけど(笑)、そういうテイストを曲にうまくはめ込めないか挑戦してみようと」
松本 「あと、次のMVはどんな曲がいいかと考えたときに、“これぞポップス”っていう曲にしたかったんで、『秘密』(M-3)でMVを撮ろうと。だからって、『秘密』以外の曲は知らんしっていうのはイヤなんで、全曲A面というか、捨て曲がないようにはしたつもりですね」
――今までは、“何曲目にはこういう曲”みたいな作り方ではなかったよね?
松本 「そうですね。それこそ、前作『白紙台本』(’17)はめちゃくちゃ納得して作った作品ですけど、そういうことまではちゃんと考えられてなかったんで。『白紙台本』を出した直後の反省会の第一声は、“全曲ギターソロあるな”でしたから(笑)。だからこそ今回は、『秘密』はど直球のポップスにして、他の曲との棲み分けをちゃんとせなあかんなとか、まず曲を整理するところから始めたんですよね」
ピンチをちゃんとチャンスに変えられた
――いつもと違う制作体制に不安はなかった?
長谷川 「和也くんも去年耳の手術をしてるし、“気にすんな、大丈夫やから”みたいに言ってくれたんですけど、“うわ〜僕がスケジュールを遅らせてるんやろな”とか、申し訳ない気持ちはやっぱりありましたね。でも、一番凹んでた時期にBrian the Sunの森(良太・vo&g)くんにメシに連れて行ってもらって、“レコーディングも押しててホンマ病みそうです”みたいな話をしたら(笑)、“俺も全然声が出なかったこともあったけど、そういうときはそういうときで、今の自分を全力で表現できるかどうかが大事なんじゃない? それはそれで素敵やで”みたいに言ってくれて…。だからこそ、“よし、今やれることをしっかりやろう!”と思えたし、メンバーのすごさにも気付けたんで。頼っていいんやっていう安心感も含めて、すごく充実した制作でしたね。ピンチをちゃんとチャンスに変えられたというか」
――『流星群』(M-2)は(長谷川)海くんが以前やっていたバンドで同名の曲があって、その曲が好き過ぎた和也くんから、同じコード進行の曲を作ってくれみたいな提案が(笑)。
松本 「僕はホンマに、その前のバンドであるクローバーグローバーの『流星群』をコピーしたいぐらいの気持ちやったんですよ。けど、それはあかんと言われ(笑)、じゃあ作ろうと。最初は『線香花火』っていう仮タイトルやったんですけど、何かちゃうなぁと。“俺は『流星群』みたいに力強いタイトルがええねんけどな~”って言ったら、“じゃあもう『流星群』で”って(笑)」
――どんだけ好きやねんその曲(笑)。
長谷川 「3人が僕のことを本当に大事にしてくれてるのを今回のレコ―ディングでは痛いほど感じたんで、『流星群』っていうタイトルに着地したのも決して折れて付けたわけではなくて。ちゃんと自分の中で消化して、このタイトルにする意味があると納得したんで」
――ただ、前のバンドのギターが結婚するのを海くんだけが知らんかったって、めっちゃイヤやん(笑)。
(一同爆笑)
長谷川 「酔っ払った後輩から、“海くんの元バンドメンバーが働いてる居酒屋で今打ち上げしてるんですよ〜”みたいな電話が夜中の3時にかかってきて(笑)。で、その元メンバーに電話を代わったら、“久しぶり〜あいつ結婚するやろ?”って言われて、“そうなん!?”っていう(笑)。だから、“お前らがどう思ってるかは分からんけど、俺は前のバンドの音楽も全部背負っていくからな!”って。同じタイトルにするきっかけには良くも悪くもなりましたよね(笑)」
ただのラブソングじゃないことが、僕らのスタンダードでなければならない
――そして、『秘密』は今回の制作で一番最初にできた曲ということですけど、本当にいいポップソングを書いたというか、MVも含めて曲の強さと世界観を広げられた楽曲ですね。
VIDEO
長谷川 「まだ今回の構想も全くない時期にメンバーにデモを送ったら、和也くんが“これはもう次のリードに決定やろ”みたいなテンションで話してくれて。だから、『swallowtail』は『秘密』を軸に始まった作品ですね。サウンド面では本当にトリが頑張ってくれて、今までにやったことがないような音の乗せ方もして」
鳥山 「さっき言われてたみたいに、“何でみんな、どのバンドもやってるようなギターロックしかやらないんだろう? 星野源さんとかaikoさんと、何でこんなにサウンドが違うんやろう?”みたいなことをずっと思ってたんですよ。ポップスがやりたいというタイミングで『秘密』ができたときに、この曲ならそれを実践してもいいんじゃないかと思ったんで…頑張りました。“インディーズバンドがヘタに手を出したらあかんサウンドなんかな?”ともちょっと思ってたんで、そう言ってもらえて嬉しいです」
――潤沢な予算があり、今をときめくアレンジャーが参加し、じゃなくても、ポップスとしっかり向き合って挑戦する。ドラマストアがポップスをやっていくという意志は、バンドの創立時からあったのか、どこかで気付いたのか。
松本 「間違いなくトリがきっかけなんですよ。トリがピアノが弾けることは、今の僕らにとって完全に武器で。もちろん、今までやってきたギターロックもできるから『流星群』みたいな曲も作れるけど、ギターロックっていう流行りの音楽だけじゃなくて、シーンにい続けられる道を選んだ方がいいし、このバンドはもっとお茶の間に出ていくべきやから、“関西発・正統派ギターロックバンド→ポップバンド”って表記も変えたんで。ていうか、じゃないともう生き残られへんなと思いました。これやったら勝てるかもしれないって」
――鳥山くんの加入が大きなターニングポイントになって。やっぱり人で変わりますね。
松本 「変わりますね…騙し騙しバンドを続けてたらもう解散してたかもしれへんし、絶対にもっと堕ちてます(笑)」
長谷川 「最初の話じゃないですけど、やっぱり紆余曲折あったこと、挫折したことが、このバンドをより強くした、その証明の最たるところですよね。今が一番カッコいいと思います」
――鳥山くんからしたら、関西で地盤があるバンドにある種の野心を持って入ったときに、乗っかっただけじゃなくて、ちゃんとバンドの力になれてるなら嬉しいよね。それに、『秘密』みたいなラブソングを書くときに、“言えない恋心は男女間だけにあるものなのか?”っていう発想もなかなか思いつかないアイデアで面白いなと。
長谷川 「めちゃくちゃグレーゾーンなトピックだとも思ったんですけど、歌詞を乗せる前からどう聴いてもラブソングなサウンドが出来上がってたんで、この上でドラマストアが、ひねくれ者の僕が(笑)、普通のラブソングを書くのが果たして正解なのかと。トリだって挑戦してるんやから僕もやらなと思ったところはありましたね。曲を書いてた当時、『隣の家族は青く見える』(‘18)っていうドラマがやってて、それこそ最近は『おっさんずラブ』(‘18)の反響とかもあったわけで。普通のラブソングに聴こえるけど、“あれ? 勘違いしてたかもしれへん私”っていうミスリードがそこに挟めたら、めちゃくちゃ面白くなるんじゃないかなと思ったんですよ。だから、僕の中では珍しく映像的に曲を書きました。初めてMVにも口を挟みましたし」
――でも、ホンマにドラマストアがドラマから影響を受けたんや(笑)。
長谷川 「そうなんですよ(笑)。ただのラブソングじゃないことが、僕らのスタンダードでなければならないなって、挑戦しながら曲を作ってましたね」
――王道のポップスに取り組んだとしても、そこにちゃんとチャレンジを入れてくるのがドラマストアだと。MVもよくできていて、映像とシンクロして切なさが増してるし。
長谷川 「MVの撮影に初めて立ち会わせていただいたんですけど、夜の下北沢で三角関係の3人を観ながら、“え〜バイバイしてほしくない!”って」
松本 「キュンッキュンしてましたね(笑)」
ドラマストアは、もう自分たちだけのものじゃない
――海くんは制作の過程で、“万人に受けなくても僕が僕でいることが大事”だと気付けたということでしたけど、それってポップスの頂を目指す上では一見、対立構造とも思えるスタンスやけど、その辺はどう?
長谷川 「Brian the Sunの森くんからも“お前はアーティスト気質じゃないな”って言われたんですけど、僕は自分の人生に自信があるタイプで(笑)。友達も多いし、信頼とか人望という言葉で評され続けてきた人間なんですよ」
――それ、自分で言う?(笑) 自分で言ったら全部嘘でしょ(笑)。
(一同爆笑)
長谷川 「いやいやいや!(笑) なんですけど、その自信をもらったのは、紛れもなく周りの友達や仲間の声だったんですよね。あと、万人に受けてしまうとそもそも音楽としては成立しないと僕は思ってて。作品として、芸術として、批判がある上で認める声がある。その2つが最終的にその作品をのし上げる可能性を持ってると思ってるんです。だから、100%いい反応=いい音楽じゃないと思うんですよね。絶対に“それは違うやろ”っていうアンチの声が必要なんです。まさにこの『秘密』を書いたときなんですけど、万人に受けるものを作るより、僕が僕らしく歌うことがファンの方からしたら一番嬉しいことで、それがドラマストアなんじゃないかなとふと思ったんですよ。全力じゃないと言われようがベストの体調ではない自分を鼓舞して、“僕の居場所はここや!”って思いながら曲を書いたら、きっと伝わると思ったんですよね。そういう精神面での整理が、この曲を書いたときにできたんです。結果、『swallowtail』はすごく愛らしい作品になったし、100人が100人いいと言わなくても、分かってくれる人をしっかり守れる人間でありドラマストアであることが、“僕らのポップス”なのかなと思ったんですよね」
――あと、気になったのが、『蜃気楼の町』(M-4)みたいな世界観は、どういうところから生まれたのかなと。
松本 「僕が耳の手術で入院してたとき、バンドが止まって見えるのはイヤやから、(長谷川&鳥山の)2人でアコースティックワンマンを東名阪でやってもらったんですけど、その来場者特典に“「かずやくんさえ知らない!」未発表曲収録CD”っていうのがあって(笑)。ホンマに僕も中身について何も知らんままツアーも終わって、退院して(笑)」
長谷川 「CDも渡しに行かんかったもんな(笑)」
松本 「お見舞いにも来てないからね、2人は(笑)。だから、エンジニアのところまで行って聴かせてもらって、“これ、めっちゃええやん!”と思って入れようと」
長谷川 「それこそ前のバンドの後期に、こういうテイストの曲はやってたんですよ。去年トリと2人で特典CDの話をしてるときに、何となくサウンドは明るいけどネガティブな曲を久しぶりに書いてみようかなと思って」
――“明日のために生きてくのは やめにしようよ”っていうのはまさに。
長谷川 「そこが和也くんと僕が本当に相反するところで、彼は常に遠くを見据えてるリーダーなんですけど、僕は将来設計がすごい苦手で、“明日のために頑張ろう!”みたいな生き方ができないんですよ。そんな自分でもふと、“俺の生活ってこれでいいんかな? もっと違う人生があったんちゃうか? 面白くなくなってきたな”みたいになったときに(笑)、“今笑えへんかったら明日も笑えへんかもしらへんし、今を全力で生きることは先を見据えるのと同じぐらい大事じゃないのかな”って思ったんですよ。それを言い切らず、押し付けず、“もう1回今を楽しもう”ぐらいの感じで仕上げたかったんですよね。『蜃気楼の町』はもう、完全に=僕の生き方ですね」
――“心がぼくらを僕にする”っていう終わり方も面白いですね。
長谷川 「初めて会ったのにすごく優しい言葉をかけてくれる方もいるし、Twitterにいるアンチに、“そんなふうにドラマストアのことを言わんとって!”みたいに僕らの代わりに戦ってくれる子もいるし(笑)、ホンマにいろんな人と出会ってきて。そういう姿を見てると、ドラマストアは、もう自分たちだけのものじゃないんだなって思うんです。みんなの好き、あるいは数%の嫌いが混ざってできてるもんなんやなぁって。そういうところから、“心がぼくらを僕にする”っていう歌詞のイメージが出てきたんですよね」
今はもう間違いないですね
――最後の『未来へのブーケトス』(M-6)は、有り得ないぐらい幸せな気持ちで書けたということでしたけど。
長谷川 「最近同棲を始めたカップルが、いつか結婚したいよねみたいな話をするんやけど、今はまだ生活も安定してへんから、3年後、4年後、5年後も一緒にいられたら、それが一番幸せやねって…壮大なサウンドスケープの中ですごく小さな愛を摘み取って、いつか渡すためのブーケを作るみたいな感覚で書いたんです。これもすごく映像的に書けたんですけど、歌詞をメンバーに送ったら、珍しく悠真からすぐに返信が来て」
髙橋 「LINEで歌詞が届いたのは夜中だったんですけど、歌詞を見ながらその曲のメロディを聴いとったら、思わず海くんに連絡したくなるぐらい、いいなぁと思って」
長谷川 「“泣きそう”みたいな返信があって、次に和也くんからも“めっちゃいいやん”って来て。トリは多分寝てたのか、翌朝の9時ぐらいに“いいですね”って(笑)」
髙橋 「今回の歌詞は全部いいですけど、個人的には『未来へのブーケトス』が一番好きです」
長谷川 「今作は今までとは違う達成感がそれぞれにあったと思うんですよ。僕は弱さを見せても大丈夫なんやなって思えたし、トリなんかは音の分析をした分、達成感があったでしょうし、和也くんは設計図通りにできたそれが絶対あったと思うし。悠真はあったんかな?」
髙橋 「あるある! めっちゃあるよ(笑)」
――制作中にメンバーがそれぞれ変わっていく様を見て何か感じました?
髙橋 「感じたし、僕も変わったなって実感してます」
松本 「そもそも“辞める”って言ってましたからね。もうベースも辞めるって。1回振られてるんですよ、俺ら(笑)」
髙橋 「アハハ!(笑) っていう時期が(笑)」
長谷川 「僕とトリは悠真と大学のサークルが一緒ですし、悠真は和也くんとも趣味が合うんで僕らがついていけへん話を聞いてあげられるし(笑)、3人で“悠真がメンバーになったらええな”みたいに話してたその日に、“今決まってるライブが終わったらサポートを辞めたい。ベースも辞める”って言われて、ポカーンって。でも、そんなに強く引き止めれずにアコースティックツアーが始まっちゃって、その期間に和也くんが」
松本 「たまたま僕が入院してた病院の真下に、悠真の家があったんですよ(笑)。だから、“近っ! お前、見舞いに来いよ”って。全身麻酔の影響で、声もガスガスになっとったんですけど」
髙橋 「今やから言えるけど、ちょっと面白かった(笑)」
(一同笑)
松本 「声は出ーへんし、喋ると疲れてくるし、耳は聞こえへんしっていう中、ガスガスの声で説教してました(笑)」
鳥山 「このバンドは自分で望んでこの船に乗るっていう人じゃないと厳しかったんで、和也くんの対応は意外でした。それだけ悠真くんを必要としてるんだなって」
松本 「トリは最初から入りたいって言ってくれてたけど、それでも“もっとバンドのことをいろいろ分かってからじゃないと入れへん”って言ってたぐらいなんで。もちろん僕も悠真を入れたかったですけど、何より海くんとトリの居心地がいいのが悠真やと思ったんですよ。ただまぁ僕はその関係性以上に、悠真が筋の通ってないことばっかり言っとったのが腹立ったから、お前ちょっとな…って」
(一同笑)
髙橋 「結構怒られました(笑)」
長谷川 「数ヵ月一緒におって、こいつの口から“やりたい”って言ってもらえなかったんですよね。だから、“ドラマストアとは違う人生設計があるんかな?”って。僕は今まで関わってきたメンバー全員を変えてきた求心力を持ってたはずやのに(笑)、こいつには通じひんかったなっていうところで、結構先に折れちゃったんですよ。でも、和也くんがいやいやちょっと待ってと」
髙橋 「っていうことがあったんですけど、ドラマストアのチームとしての空気感がそこまで掴めてなかったのが、今回の制作を通して3人の人間像も見えたし、それに対して自分自身の想いもだんだん分かってきたんで」
長谷川 「僕らも変わったし、お前も変わった」
髙橋 「うん。今はもう間違いないですね」
自分のキャリアの中ではすごくデカい、大事な日になるんやろうなって
――タイトルの『swallowtail』は、今作が春っぽいあたたかな印象の作品になって、それを初夏から真夏にかけたツアーに運んでいくときにイメージしたのが、ツバメ=“swallow”だったと。そして、“tail”というのはその尾でもあり、物語という意味もあって。
長谷川 「ツバメ=渡り鳥の象徴というか、僕らが春を持って夏に向かって駆け抜けていくみたいなタイトルがいいなっていうところで、『swallowtail』になりました」
――ツアーについてはどうですか? お客さんの期待もひしひしと感じてるとは思いますけど。
松本 「実は全国で2番目に動員があるのがなぜか札幌なんですけど(笑)」
長谷川 「ホントに(笑)。北海道から遠征してくれる子もおるぐらい、すごくハマったんですよね」
松本 「だからこそ、ホンマにライブをちゃんとせなヤバいっすね。それこそ大阪は、東京カランコロンとGOOD ON THE REELと一緒って、もうボコボコにされるんちゃうかと(笑)」
――GOODは昔から憧れの存在だと。
長谷川 「僕がバンドを始めるきっかけになったLOTOっていうバンドと、新宿Marbleで『想音エフェクト』っていうイベントをやってた当時から知ってるんで。僕らはサークル内でGOODのコピーをして仲良くなったところもありますし、自分のキャリアの中ではすごくデカい、大事な日になるんやろうなって」
松本 「カランコロンのライブもかなり勉強になりそうだし、めちゃめちゃ楽しみですね」
――それでは最後に、それぞれに今の心境について言葉をもらいたいなと。
髙橋 「このツアーを通して最終地点=ツアーファイナルにたどり着いたとき、チームの総合力が格段に変わった状態で皆さんにお届けできたらいいなという意気込みと、個人的には制作で自分が変わった心境を、どれだけツアーに盛り込めるかっていうところを目標に、頑張っていきたいと思います」
鳥山 「どんなことをやっていいのか、どんなことをやったらあかんのか、僕が過ごしてきたこの1年をしっかり盛り込んで1枚にまとめられたんで、今後作っていく作品の糧にもなったと思うんです。それをみんなに聴いてもらって、ライブでどう思ってもらえるのか。みんなの表情を見るのがすごく楽しみです」
松本 「とりあえず頭1つ抜けたいんですよね。持ってる武器の使い方も分かったし、あとはそれをブンブン振りまくっていくだけなんで…頑張ります!」
長谷川 「今作はBrian the Sunの森くんにもらった言葉通り、“今やれることを全力で”という感じですね。調子が悪かろうが、ミスしようが、反省はすべきですけど後悔とか落ち込んだりするのは、この作品にはふさわしくないのかなと。最後のTSUTAYA O-Crestまで、しっかり前をというよりはちょっと斜め上を向いて、走り切りたいですね」
(2018年6月20日更新)
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