「今聴くとカッコいいから聴いてほしい」 『Mr.サマータイム』から最新のアーバンポップスまで サーカスが語る輝けるデビュー40周年! 『POP STEP 40~Histoire et Futur』インタビュー&動画コメント
日本を代表する男女混成のコーラスグループとして『Mr.サマータイム』(‘78)『アメリカン・フィーリング』(‘79)をはじめとする数多くのヒット曲を放ち、今年でデビュー40周年を迎えたサーカス。35周年を機に叶ありさ、吉村勇一という若い世代のメンバーが加わって新境地を示してきた彼らの最新作『POP STEP 40~Histoire et Futur』は、メンバー自身の選曲で近年のシティポップ再評価な時流にも対応した曲セレクトのよさが光るベスト盤“Histoire”(初回盤)と、武部聡志プロデュースで今のサーカスの魅力を多彩に表現した新録アルバム“Futur”で構成。ビルボードライブ大阪での控える彼らに、世代を越えてまた新たな輝きをみせるグループの今と新作について語ってもらった。
ちょうど同じ曲を聴きながら“いいよね”って言い合える
親子世代なのかもしれない
――『POP STEP 40~Histoire et Futur』は、メンバー自身の選曲によるベスト的な“Histoire”と新録の“Futur”と、デビュー40周年を迎えたサーカスの歩みと現在進行形の両方が詰まった集大成的なアルバムとなっています。
正子 「そうですね。集大成の側面もありますけど、せっかく35周年のときに若い2人が入ってきてくれたので、やっぱりサーカスはこれからも新しいサウンドを発信していくよ、という側面の方が気持ち的には大きいかなと。Historireの方も今の4人で選曲をして」
ありさ 「みんなで今までの40年間の曲を全部聴き直して、候補曲をそれぞれに紙に書き出して選曲を進めました。メンバーで選んだベストって意外と珍しいのかなと思っていて、単にヒットソングを並べるだけではなく、“この曲はあまり知られていないんじゃないか?”という曲も、今聴くとカッコいいから聴いてほしいという視点で選びました」
――確かにお決まりな内容のベストではなく、80年代のシティポップやアーバンなAORなどが国内外で再評価されている今に聴かれるべきサーカスの過去の名曲が数多く選ばれていて、その辺りを掘り返している若いリスナーにも刺さる選曲だなと思いました。
ありさ 「嬉しいです。今はレコードを聴いている方も多いし、同年代でサーカスのレコードを改めて買ったよという人から“『ケッペキにいさん』(’78)、何これ、ヤバくない!?”と言われたりすることもあるので(笑)。そういう若い人たちにももっと聴いてほしいし、そこはサーカスだからこそできる新しさなのかなと思います」
――サーカスの初期のアルバムは、最近のシティポップ名盤ガイドなどでも挙げられることが多いですし、80年代後半も佳曲が多いなぁとHistorireを聴きながら唸らされました(笑)。
正子 「それは、私たちにとっては不思議な感じなんですよね。デビューした頃は“シティポップ”という言葉はなくて“ニューミュージック”という言葉で大きく括られていたし」
高 「当時はやっとサウンドにこだわった時代が始まったという感じでしたね。僕たちは20歳を過ぎた辺りからそういうお洒落さやポップさのあるニューミュージックを聴いた世代で、こっちの若い2人(=ありさ&吉村)は今のニューミュージックを作りたいという世代で、ちょうど同じ曲を聴きながら“いいよね”って言い合える親子世代なのかも」
ありさ 「あとは、今の時代だとできないような贅沢な音の作り方をしている曲も多いので、そこも聴きどころかと」
吉村 「そういう意味では、今だとなかなか思いつかないような衝撃的なイントロから始まる曲なども多くて。そういう観点で選んだ曲もありました」
世代によって刺さる曲が変わってくるような作品にしたい
――作詞/作曲/アレンジに豪華な面々が関わって、いい意味ですごくプロフェッショナルに作り込まれた楽曲を歌いこなしている点もサーカスの魅力ですよね。
ありさ 「やっぱり同世代のミュージシャンだと、自分たちで歌詞も曲も作ってというバンド色が強い人が多いんですけど、強力な作詞家/作曲家/編曲家がいてそこにハーモニーが乗るサーカスのサウンドは、それとは違う世界観や魅力があると思うんです」
高 「デビューした頃はとにかく歌えれば楽しいというグループだったので、逆にアレンジャーやプロデューサーはやりやすかっただろうなと。僕たちは何でも面白がってやっていたし、いろんなハーモニーワークや発想が入った曲を次々と歌えたのはいい勉強になったし、楽しかったですよ。そういう勢いというか楽しんでいる感じは(Histoireに収録された昔の録音を聴いていても)入っていますね」
――そして、新録のFuturの方も、男女混成で親子世代が同居しているという今のサーカスならではの、様々な世代に響く楽曲がバランスよく収められたアルバムとなっています。
吉村 「Histoireはアーバン感とかシティ感を意識してチョイスしたんですけど、Futurでもどの曲にもそのフレーバーがあって、だけど聴かれる方の世代によって刺さる曲が変わってくるような作品にしたいのはあって。そこはプロデューサーの武部聡志さんにもお話させていただいて、まさにそういう選曲/アレンジになったと感じています」
ありさ 「作家陣でも、fox capture planのカワイヒデヒロさんや南條レオさんと、私たち世代の人にも1曲ずつ参加してもらって」
吉村 「その一方で、森雪之丞さんが詞を書かれた『すれ違いのロンド』(Futur/M-5)の世界観とかは、やっぱり正子さんや高さんの世代の方がより魅力的に歌えるというのがあったり。でも、そこにも都会的な感じは匂っていて、僕たちが考える今のアーバンさを1枚にまとめているのがFuturになっています」
踊れる曲もあるし、みんなで歌える曲もあるので
いろんな世代の方に楽しんでいただければ
――歌詞では、松井五郎さんや阿久悠さんといった大物の名が並ぶなかで、ありささんと吉村さんが作詞を担当された楽曲が1曲ずつ入っているのも、今のサーカスならではと思いました。
ありさ 「やっぱり今のサーカスのような親子世代で男女混成のコーラスグループって、他にはないと思うんですよ。だから、私たちがいるからこそ歌える音域が広い曲もあれば、男女がいるからこそ語り合うように歌える恋愛の曲もあるし、親子世代がいるからこそ歌えるような『家族写真』(Futur/M-10)も1枚のアルバムの中に入っています」
――そして、最後にはボーナストラックとして歴代メンバー7人が勢ぞろいして歌い継ぐ『Mr.サマータイム 2018』(Futur/M-11)が収録されていて、こちらも40年の歩みと変遷を感じさせる貴重なテイクです。
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高 「こちらも楽しかったです、というよりもフッと寄り添う気持ちよさというのかな。“あっ、最初のメンバーはこの鳴りだったな”と思い出して懐かしかったり、メンバーが変わるたびにこんなに変わってきたんだなと改めて」
――そんなデビュー40周年にふさわしいアルバムを手に、5月26日(土)にはビルボードライブ大阪に登場します。
高 「新しいアルバムに収録された曲を全部はできないですが、可能な限り詰め込んで」
吉村 「新曲も過去曲もたくさん聴いていただけると思います」
ありさ 「バンドは4人編成なんですけど、ピアノの方がシンセサイザーも持ち込んで当時の音も今風に再現した場面もありつつ、そこに4人の声が載るのでかなり厚い音になると思います。踊れる曲もあるし、みんなで歌える曲もあるので、いろんな世代の方に楽しんでいただければ」
ライター吉本秀純さんからのオススメ!
「デビュー曲『Mr. サマータイム』(原曲はフランスのミシェル・フーガン『Une Belle Histoire』)から“オトナ”な世界を洒脱に表現し、数多くの名曲を残してきたサーカス。スタイリッシュにしてジャジー、どこかフレンチな雰囲気すらも漂わせるサウンドは、近年に70~80年代の日本のシティポップが国内外の聴き手から再評価される中で、改めて聴き直されているのも納得です。デビューから40周年を迎え、変わらぬクオリティで今も進化を続けている“現在進行形のサーカス”に、リアルタイム世代も後追い世代もぜひ注目を」
(2018年5月24日更新)
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