初の全国流通作品となる1stミニアルバム『Ctrl+Z』をリリース
琴線に触れるボーカルと独創的なサウンドスケープ
結成時のエピソードから現在の心境を語る
ユアネスのメンバー全員インタビュー&動画コメント
物語性を帯びた女性のポエトリーリーディングで始まる1stミニアルバム『Ctrl+Z』(コントロールゼット)を3月21日にリリース。今作が初の全国流通作品であり、今後さらに全国区のバンドへと進化していきそうな4ピースロックバンド、ユアネス。歌謡曲がベースにあるというボーカル黒川の浸透力ある歌声が耳に残り、ギターの古閑を中心にクリエイトされる楽曲はマスロックなどの影響を受けた高度なバンドサウンドで独創的な音像を描き出す。メンバーは音楽の専門学校で出会い、福岡で結成したという。その成り立ちとバンドや音楽に対する想いを和やかに誠実に話してくれた。
――4人共、音楽の専門学校出身ということですが、ユアネス結成の経緯というのは?
黒川(vo&g)「メンバー集めたのはギターの古閑です」
古閑(g)「もともとベース(田中)とは地元(熊本)が一緒でコピーバンドを組んでいて、同じ専門学校に進学して福岡に来たんです。そこでバンドを組むことになって。小野ちゃんは2017年から正式に加入したので、その前のドラムをまず誘って、ボーカルどうしようか?ってなったんです」
――黒川さんとの出会いは?
古閑「実は黒川とは入学前からSNS上だけで友達だったんです。とりあえず同じ専門学校の入学者を全部友達にしておこうと思って、SNSで探してフォローしていってたら、その中に黒川がいて。後から、実は彼が高校時代の文化祭か何かで一回だけボーカルをしたことがあるという情報を知ったので、彼に歌ってる動画を送ってもらったんです。それで、めっちゃいい声やからこれは誘っておこうと。その後、初めて一緒にスタジオに入った時が初対面でした」
――黒川さんは歌うことが好きだったんですか?
黒川「はい、好きでした。うちはめちゃくちゃ大きい声で歌ったりする家庭だったので。僕も自然と歌うようになって。家族や学校の先生から褒められてました(笑)。松田聖子、中森明菜とか、カリスマ性がある女性ボーカルの方が好きで、キーを変えてアレンジして歌ってました」
――バンドの曲を歌ったりは?
黒川「バンドをやるまでは、バンドの曲は全然聴いてなくて。ベースっていう楽器のことも全然知らなくて。高校の時にバンドで文化祭に出た時に初めて知ったんです(笑)」
――バンドに対する憧れはそんなになかったんですか?
黒川「まったくなかったです」
――そんな黒川さんの声を聴いて古閑さんはピンとくるものがあったんですね?
古閑「そうですね。すごくいい声してたし、純粋にただ歌を楽しんでる感が伝わってきたんです。“俺はボーカリストだぞ!”っていうタイプではなくて、ただ聴いてて自然と耳に浸透する声だったので。純粋な気持ちで聴けるっていうのが一番大きかったと思います」
黒川「昔から声自体はこんな感じなんですけど、声質とか喋り方が男らしくないので、結構コンプレックスでもあったんですけど…。この声を褒めてくれる人が周りにいたので、そこは自信を持ちたいなって思ってます」
――確かに、耳にした時にす~っと染み込んでくるような黒川さんの澄んだ歌声が印象的です。その黒川さんのボーカルで歌を聴かせるっていうのは当初から決めていたんですか?
古閑「最初は特には決めてなくて。とりあえずバンドをやろうって感じで始めたので」
田中(b)「先輩にライブに誘っていただいたんですけど、その時まだバンド名すら決まってなくて。とりあえず、30分の枠を乗り切らないといけないから、一生懸命に曲を作ったんです」
——ちなみにバンド名はどうやって決めたんですか?
田中「メンバー一人一人がカタカナを一文字ずつ出して、それを上手い具合に並び替えて、響きがいいからこれに決めました」
――バンドとしては昨年、ドラムの小野さんが加入されてからより強化されてきたようですね?
田中「そこが一番のポイントだったと思います。(小野が)加入してからがすごい濃ゆくて、バンドとしてより力を発揮できるようになったので」
小野(ds)「周りからもすごく注目してもらえるようになって」
古閑「やっぱりドラムがしっかりすると、上物もボーカルもやりやすいんで。(小野は)学校のドラムコースの中でも特に上手かったんです。自分が曲を作ってるんですが、ドラムの打ち込みをしたことは基本的に全部やってくれて、かつ面白く叩いてくれるんで。できることの幅が広がっていきました」
――『色の見えない少女』のミュージックビデオの反響も大きかったようですが、あの曲はどのように生まれたんですか?
古閑「2016年の2月に、しらこさんっていうイラストレーターの方が投稿された“色の見えない少女”っていうイラストがきっかけでできました。その絵にすごく刺激を受けたので、“イラストを見て曲を書かせていただきました。もしよろしければ、この曲に『色の見えない少女』というタイトルをつけさせてください”というメッセージを曲に添えてしらこさんにダイレクトメールで送ったら、喜んで受け入れてくれました。そこからお互いに色々とお話しさせてもらうようになって、クリエイターとしてすごくいろんなことを教えてもらったんです」
――その出会いがひとつの転機になって?
古閑「そうですね。自分も作り手としていろいろと確立した上で、何かを届けたいという気持ちで作品を作ろうと思うようになって。楽曲に対してもっと愛を注ぐようになりましたね」
――今回リリースされた1stミニアルバム『Ctrl+Z』が初の全国流通作品となりますが、収録曲はいつ頃作られたんですか?
古閑「2017年7月に自主制作盤で『Ctrl+Z』という作品を出していて、7曲目までは基本的に同じなんです。今回の全国流通盤では、8曲目の『100㎡の中で』と4曲目の『あの子が横に座る』の音源は正式に小野ちゃんでレコーディングし直して、ボーカルも録り直しました。『100㎡の中で』は、ほぼ結成当初ぐらいからある曲です。いろいろアレンジをしていく中で今の形になっていったんです」
田中「完全に再構築した感じなんですけど」
――バンドの原点になるような一曲なのかなと?
黒川「そうですね。あの頃思ってたことで、今でも同じように思ってることもあるので。長く長く大切にしていける曲だなって感じてます。自分たちの曲って、聴く人それぞれの境遇でいろんな捉え方をしてほしいので、これはこういう曲ですっていうのをあまり決めたくはないんですけど、『100㎡の中で』に関しては、完全に個人の思いをただ文字に起こしたっていう曲になっています」
――この曲は夢を実現する前にリタイアしていく人に向けて歌っているようにも感じます。
古閑「バンドを続けていく中で、周りに解散しちゃうバンドや音楽を離れちゃう人もいたので。自分たちが行っていた学校が音楽の学校だったということもあって、そういう曲が生まれたんだなとも思います」
――弾き語りの『埃をかぶった時刻表』(M-7)は黒川さんの個人的な思いを歌っているようですが。
黒川「これは初めて一人で作った曲です。僕はユアネスっていうバンドを始めてから、音楽を始めたと言ってもいいぐらいで。そこからギターも習うようになったんです。歌詞に関しては、高校の最寄駅に行った時にパッと思い浮かんで一瞬でできたので、10代の思いが強いのかなと思いますね。だいたい過去を振り返ったり、思い返したりするような楽曲になることが多くて。このアルバムのテーマとほぼ同じということもあり、今回入れさせてもらいました」
古閑「黒川くんは最初はボーカルだけだったんですけど、一緒にやっていくうちにバッキングギターをしてもらうことになったので、ギターの授業を受けてた自分が放課後に彼にギターを教えてたんです。卒業のタイミングでやっとギターが弾けるようになって幅が広がっていったんですよ」
――『あの子が横に座る』はバンドサウンドならではのダイナミズムがある曲ですね。
田中「前半は畳み掛けるようにやって、サビにいく前はすっと落とすっていう強弱があって、(黒川の)声もすごく高いところに行くんで、結構カラーがしっかりある曲ですね。この曲と『Bathroom』の二つがこのアルバム『Ctrl+Z』からのMVになっていて。そのMVのディレクションも全部、古閑くんがやっています。撮影していただいた方と絵コンテから作っていったんで、頭の中のものを映像として残せました。曲調も真逆で、映像的にも『Bathroom』と結構リンクしていて黒と白のコントラストが効いています」
――『Bathroom』の歌詞はしっとりした感情が出ているように思いますが、後半スケール感が増していく展開に引き込まれていくし、ライブで聴いてみたい曲です。
古閑「『Bathroom』はレコーディングの1、2週間前まで曲ができてなくて。このレコーディングでは一番新しい曲だったんです。客観的に見た時に、もう少し全体の一貫性がある濃い色付けが欲しいなって思って」
田中「彼(小野)は加入したてだったんで、すごい汗かいてました(笑)」
小野「他の曲もやらないといけないし、『Bathroom』もまだ来てないし、ああ~って…」
――女性のポエトリーリーディングから始まるアルバムの構成にはどんなこだわりがあって?
古閑「曲順は自分が決めました。1曲目の『雨の通り道』は、2曲目の『虹の形』の前に雨を降らせたいなっていう発想の上で後から作ったんです。あのポエトリーリーディングの声はミュージックビデオに出てる女の子の声なんですよ。『Bathroom』に出演している女の子も同じ人なので、全体を一貫した作品として見ていただけるかなと」
――『Ctrl+Z』というアルバムタイトルのアイデアはどこから来ているんですか?
古閑「このワード自体は、パソコンのショートカットキーのことです。自分でパソコンで楽曲を制作しているので、結構多用するボタンではあって。(パソコンでは)簡単に元に戻せるんですけど、自分の人生は元に戻すことはできない。だけど、“過去を見つめること、過去を振り返ることは大切です”ということを伝えたくて、今回のタイトルにしました」
田中「先にタイトルを決めて曲を作っていったわけではないですけど。基本的には昔を振り返ったり、思い返したりする歌詞が多くて。アルバムの曲を選んでいって、一番最後に閃いてつけたタイトルです」
――現体制になってからライブに関して、何か変わってきたことは何かありますか?
黒川「ドラム(小野)の加入によってライブのクオリティも抜群に上がったと思います。あと、自分たちの見せ方がわかるようになってきたんじゃないかなと…」
古閑「僕たち結構SNSから話題になっていて、SNS上でみんな俺らのことを見てる人が多いと思うけど、ライブに来るお客さんは生身の僕たちを見るわけで。自分たちの音楽を聴いてくれている人がどんな人たちかっていうのも、ちゃんと知りたいなと思うようになってきました。そこで、ちゃんとお話もして、自分たちの曲を聴いて、どんな意見を持ってくれているのか、どう感じてくれているのかを聞くようにしています」
――それはライブの時に?
古閑「そうですね。物販の時とか、CDを買ってくれている時にお話ししてくれたことをちゃんと受け止めるようにしているんです。だから、自分たちはどのライブの時も絶対に物販に立って、お客さんと喋るようにしています。自分たちはそういうことを大切にしていきたいなと思っているんです。これからライブの規模が大きくなっていくにつれて、もしかしたら難しくなっていくかもしれないけど」
――今だから可能なことかもしれないし、貴重ですよね。
黒川「今のうちにできることをやっておきたいなと思いますね」
田中「最終的には音楽だけで満足して帰ってもらうっていうことを一番大事にしてるので…」
――確かに、実際にお会いしてみないとわからないことってありますよね。特に黒川さんは良い意味でギャップがあって(笑)。
黒川「僕はあんまカッコつけれないんで(笑)」
田中「ライブの時もボーカルは喋らないようにしようとか、ちょっとカッコつけて言ってみるとか、いろいろ試行錯誤した結果、素が一番ってことがわかったんです(笑)」
――せっかくメンバー全員揃っているので、それぞれの抱負を聞かせてください。
黒川「僕は、変な意味はないんですけど、人気者になりたいです。目立って目立って目立てるだけ目立って、自分を目指す人がいっぱいいてくれたらいいなと思います。僕は山口出身で、普通に生活してきて、音楽を知るきっかけがなかったんで、そこからすごい人気者になったとしたら、多分みんなほっとけんと思うんですよ(笑)」
古閑「自分は作曲を担当させてもらっているので、ユアネスというバンドをいろんな人にも聞いてもらいたいですし、一人の作曲家としても自分が作る曲が誰かの一生の原動力になるようなものにしたいなと思ってます」
田中「僕の場合、かっこいいプレイヤーを見て憧れるところからベースを始めたので。自分が目立ちたいというより、音楽を聴いたり始めたりする入り口になれるようなカッコイイベースが弾けるように頑張っていきたいなと思います」
小野「自分は最初ギターをやってたんですけど、ドラムを始めたいと思ったきっかけが、B'zのライブを見に行った時に、その外人のドラマー(シェーン・ガラース)を見て、すごいショックを受けて。これはドラムをやらないといけない!と思って始めたんです。自分が好きなドラマーはカリスマ性があって、人としてもでかいしかっこいいので、そういうドラマーになりたいです。日本のドラマーといえば小野貴寛って言われるぐらいに」
――では最後に、ユアネスとして、これからどのような活動をしていきたいですか?
黒川「僕らはやっと全国流通作品をリリースした段階なので、これからできることは一個一個しっかりやって、壁ができたら乗り越えて、ずっと長く長く音楽をやっていけたらいいなって思ってます」
text by エイミー野中
(2018年4月17日更新)
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