仲違いを乗り越えた2ndアルバム『充分未来』
“都会の失恋”をテーマに添えた歌メロ作品
集団行動インタビュー&動画コメント
相対性理論の初期メンバーであり、コンポーザーを担っていた真部脩一(g)。彼が立ち上げたバンド、集団行動が2ndアルバム『充分未来』をリリースした。昨年9月に渋谷WWWで行われたワンマンライブで披露された新曲から6曲、書き下ろし2曲の全8曲が収録されている。ボーカルに音楽活動経験が全くなかったミスiD2016ファイナリストの齋藤里菜を、そしてドラムに真部の盟友・西浦謙助を迎えた3ピースバンド。まだバンドになりきれていないと感じていたという1stアルバム『集団行動』から8ヶ月。2枚目の作品はどのような過程で制作されていったのか。メンバー内の不和を乗り越え、サポートメンバーを迎えて生み出された今作は、前作よりもポップさが増し、明らかに齋藤の歌唱力が上がっている分、完成度も高い。どこかノスタルジーな空気をまとう『春』(M-3)や、ロックチューン『鳴り止まない』(M-6)、真部らしいメロディーの『充分未来』(M-2)、『絶対零度』(M-5)など、ポップマエストロたる真部の、中毒性のある楽曲群が心を捉える。真部自身も到着点がわからない、と語る集団行動。今後の動向が楽しみな中、今回のインタビューでは、前作から今作までを真部と齋藤に振り返ってもらった。
メンバーの電話に出られないほど、自分で自分を追い詰めた期間
――まずは昨年6月のデビューから今作までの8ヶ月間を振り返っていただこうと思います。
齋藤「8ヶ月……しか経ってないんだ。そっか(笑)」
――齋藤さんがオーディションでジョインされたのが2016年3月、その1年後にお披露目ライブ、2ヶ月後にデビュー、そして今作までの8ヶ月。トータルで2年弱ですね。
齋藤「音楽始めてまだ2年経ってないんだ。めっちゃ長くやってる感じしません?」
真部「2年以上やってる感じするね」
齋藤「1枚目を出してから2枚目までは相当濃かったというか、自分と向き合う時間が多かったなというのはありますね。……うん、濃かった。その一言(笑)」
真部「何ていうか、ちょっと紆余曲折があったんです。僕にも責任の一端はあって。僕は集団行動を始める前の5年間、フリーランスでプロデューサー的なお仕事もさせてもらっていて。なるべくプロデュースから遠いところのものを自発的にやってみたいということで、自分がバンドメンバーとして集団でのクリエイションに関わろうと思ってたんですけど、5年間で染み付いた癖がなかなか抜けなくて、最初のうちはバンドになりきれていないというか、“プロデューサーと他のメンバー”っていう感じの関係性だったんですよね」
――どうしてもプロデューサー目線になってしまうと。
真部「なってしまうし、僕もそこに行った方が業務的に楽なので。ただプロデューサーとプレイヤーを兼ねると、1人でやってた頃よりも業務的には倍になる。でも出てくるものはあんまり変わらない、となっちゃうと嫌だなと思って。メンバー間でコミュニケーションを取って、全員でバンドを引っ張っていくような形にならないかずっと試行錯誤していて。そんな中、思った以上のギスギスがね(笑)」
齋藤「ほんといろいろありましたね」
――そうなんですか。
真部「すんなりとはいかなかったですね。1stの時は、特にボーカルは技術的に伸びている最中で、引き出しが少ない分、選択肢がすごくシンプルだったので齋藤さんもあんまり迷わなかったし、何とか辿り着くだけという感じだったんですよね」
――なるほど。
真部「音楽未経験の彼女を、商品として成立するボーカルになるまでに仕上げていくのはプロデュースという形で、そこはスムーズだったんですけど、齋藤さんがだんだん上手くなってきて、できることが増えて選択肢の幅が広がると、こっちが意識的にコントロールすることが不毛なことじゃないかと思えてきたというか。僕は僕の好きなようにディレクションしつつ、齋藤さんの方からも何か提案があるような制作の現場にしたいなと思っていたので、結構厳しく“ボーカリストとしての自覚を持たんかい”という話をしてたんですよね」
齋藤「先に求められることから始まったので、ほんとに四六時中どうやったら歌が上手になるか、表現力がつくか、自分の価値みたいなものをずっと探してた期間ではありましたね」
真部「齋藤さんは経歴としては異色で、音楽を始めた瞬間から厳しいジャッジのもとに置かれていて、音楽を好きになることがひとつの義務でもあったわけなんですよね。“仕事と自分”がいびつな関係で築かれてきていて、迷うことも多かったと思うんです。“好きになれ”と言われて好きになるのって、難しいじゃないですか」
――そうですね、確かに。
真部「彼女の中では多分、物を作ったり、製品を一緒に仕上げることにやりがいや楽しさを見出している部分と、その中で感じるプレッシャーが一緒くたになってて。僕も妥協はしたくないし、企画モノバンドでもないし、とにかく自分が1人の時にはできなかったものを作りたいというキッカケで始まったので、齋藤さんへの注文がやたら多かった。特に僕は“ポップバンドはボーカル次第だ!”と思ってるところがあったので、相当なプレッシャーをかけたんですよ」
齋藤「へへへ(笑)。9月のワンマンのちょっと前くらいに、自分で自分のことを追い詰める期間があって。とにかく自信がなくて“これが正解”というもの以外はできない状態で、負のスパイラルに陥ってしまって、それで行き詰まっちゃって。誰とも話したくないし、“歌ったら、どうせ真部さんからダメだって言われるんだろうな“とか。その時はリハスタには行ってたけど、帰ってからは誰とも連絡取らなかったり、メンバーの電話に出なかったりして、3日程音信不通になってました」
真部「SOS的なものはあったんですけどね。“私にした決め手を教えてくださいよ”と言われたよね」
齋藤「不安で。自分で大丈夫っていう理由が欲しかったんです」
真部「僕も悪いなとは、今思ってるんですけどね。“自分の存在理由を人に求めるな!”と言ってましたから」
――わあ、厳しいですね!(笑)。
齋藤「それでもっと病むっていう(笑)。その時はほんとに自分の良さなんて何もないと思ってたから。それを乗り越えてのアルバムなので、思い入れは強いですね」
真部「自力で這い上がったよね」
齋藤「いつだか明確には覚えてないんですけど、多分吹っ切れた日があったんですよね」
ワンマンライブでは全員がピリピリしていた
――9月13日に行われたワンマンライブ『集団行動の単独公演』の時は、まだ自分に自信がない状態だったんですか?
齋藤「全然なかったですね。お客さんの顔もちょっと怖くて」
真部「初ワンマンで、しかも新曲が13曲あって、僕も僕で新曲の反応がわからなすぎてピリピリするという(笑)」
齋藤「皆ピリピリしてて、すごい変な雰囲気でしたね、あのワンマンは」
真部「そこで反省しましたね。僕、今までメンバーとあんまりコミュニケーションをとらないようにしていたんです」
――意識的に?
真部「そうです。作品と関わってる人の間に距離があった方が、おもしろいものができるとずっと思ってたので。でも、全員のモチベーションをキープする上でも、全員が当事者的に関わってもらうためにも、コミュニケーションの時間を増やさないといけないなと。あと電話に出てもらうためにも」
齋藤「あの時は通話ボタンを押す勇気がなかったです(笑)」
真部「ワンマンの後ぐらいに皆を集めて、“僕は嘘はつきたくないから、良いことは言いたくない。そのかわり、やりたいことや良いと思うことに関してはなるべく説明するから、それを共有した上で全員納得してやってほしい、その中で共感するものや、自分にできる要素を自発的に拾って関わっていってほしい”という話をして。そういう話に長い時間を割くようにしたんですよね」
齋藤「それ以降“曲をどうしたい”という会話は、ほんとに増えた気がします」
真部「それまで僕がいないところでは、楽曲の話は全くされていなくて、僕が来てから制作の話が始まる状態だったのが、今や、僕がいないところでも“バンドどうしよう”みたいな話が進んでいたりね」
齋藤「うん」
真部「だから逆に僕は、プロデュースって何なんだろうということに気付かされましたね」
――8ヶ月の中でいろいろ気付きがあったんですね。
齋藤・真部「ありましたね~」
真部「その時ギスギスしすぎたせいで、最近ほんとに良かったと思って褒めても、“あの時音信不通だったから今褒めるんですか?”って」
――(笑)。
齋藤「気を遣って褒めてくれるのかなとすら思っちゃう(笑)。でも今はボーカリストとしてどうなりたいかや、この曲をどうしたい、自分の良さもだんだん分かってきて。自分のことも声も好きになってきてるので、今となっては良い経験だったし、バンドとして良い兆候だなと思います」
コンプレックスだった声を褒められることが増えて
求められる声なんだと思えるように
――今作の『充分未来』は、齋藤さんの歌声に自信と情緒感を感じました。
齋藤「ありがとうございます。1stと同じ自分だったらこのバンドは絶対ダメだというのは考えなくても分かることだったので、自分の良さを伸ばそうと意識しました。その点でだいぶ、レコーディングの時から心の余裕はあったので、そういう部分から出ているものかなとは思います」
真部「情緒に関しては苦労してたもんね。普通は表現のために技術を身につける段階だと思うんですけど、齋藤さんは逆で、技術が先についちゃって、“情緒をどうする”という話になって。やっと肩の力が抜けてきて、1人の女の子としての情感みたいなものが自然に出てきた感じがしますね」
齋藤「1stの時は表現の仕方すら分からなかったし、自分がどこまで表現していいのか、限界を勝手に決めてたところはあったかもしれない」
真部「よく“こういう歌い方、真部さん嫌いですよね?”って言われてた」
齋藤「あ、言ってたかも!」
――真部さんの好みに合わせようと。
真部「それで僕もドキッとして、ちょっと焦ってしまって。僕はもしかしたらダメな育て方をしてるのかもしれないと思って」
齋藤「あー、今振り返れば言ってましたね」
真部「そうそう、言ってたでしょ」
齋藤「真部さんの顔色伺って、“これは真部さんの描いてるボーカルと違うかな?”、というのは1stはずっと考えてたかもしれない。2ndは思ってみれば、そんなこと1回も考えませんでした、すいません(笑)」
真部「何かしらのブレイクスルーがあって、吹っ切れてのびのび歌ってるなという感じはして。それはすごくありがたいし、僕もやってて楽しいです」
――先ほど“自分の良さを伸ばそうと意識した”とおっしゃいましたが、自分の良さって何だと思われましたか?
齋藤「うーん、私、声質が特殊じゃないですか」
――フラットですよね。
齋藤「よく言われるんですけど、フラットって何かあんまりわからないんです」
真部「わからないんじゃん(笑)」
齋藤「わからないんですけど(笑)。でも、そのわからない感。感情を込めてるのかフラットなのか考える余地のあるボーカルは、私にとっては悪いことでもあるけど、良いことでもあるのかなと。あと私、ずっとこのハスキーボイスがコンプレックスだったんですよ。真部さんと一緒にバンドやることになって、声を褒められることが多くなって、私の声は求められる声なんだなと思いましたし、それが多分、1stより2ndでプラスされてるのかなというふうには思います」
真部「そうなんだ、それは初めて聞いた」
齋藤「“高音でちょっと抜いたりした方がいいかな?”とか、2ndでできた技術が1stではほとんどなくて、それは自分の良さを知らなかったからなんですけど。歌う時に声をめっちゃ変えてるとかそういうことじゃなくて、ただ単に自分の声の中で好きだと思う部分を表現してるから、“変わった”と言ってもらえてるのかな」
真部「つまり身体能力にやりたいことが追いついたんだね」
齋藤「うん、ちょっとだけ」
真部「普通は逆だよね(笑)。やりたいことに身体能力が追いつくんだよね」
――努力されたんですね。
齋藤「そりゃもちろん、プロとしてやらなきゃいけないことは……プロって言うの恥ずかしい(笑)」
全員「(笑)」
齋藤「目の前にお客さんがいるわけじゃないですか。お金払って聴いてくださる方や、ライブに来てくださる方のために、当たり前にやらなきゃいけないことではありますよね。最初は自分もオーディションで“誘われたからやります”みたいな感じで思ってて。でも、この世界そんなに甘くないじゃないですか。だから今純粋に楽しんでやりたいと思ってやれるようになったのは、すごく幸せなことだなと思います」
真部「いやあ頼もしい」
齋藤「(笑)」
キャッチコピーは“都会の失恋”
――では今作は、共有できるコンセプトを決めて作っていかれたんですか。
真部「前作もあるにはあったんですが、“ロックバンド的なものを”という曖昧なものを追い求めていて……ロックバンド的かどうかって、すごく判断しづらいなと思って(笑)。その反省を活かしてですね、今回は共有しやすいキャッチコピーとして“都会の失恋”をやります、と」
――都会の失恋。
真部「サポートメンバー含め、東京出身者が1人もいないので、皆上京はしてきてるから、都会の印象はある。そして、人間なんだから恋愛や失恋の経験はある。というので、この2つ。“都会の失恋的かそうじゃないか”というジャッジができる。軸があると作りやすくなるだろうと思ったし、会話の機会も増えると思ったので。いざそうして始めてみたら齋藤さんが、“真部さん、実は私、恋愛経験あまりないんです”って」
齋藤「少ないんです」
真部「しまった、と思ったんですが、結果として満足するクオリティのものが出来上がりました」
――収録されている8曲の中で、書き下ろしの2曲はどの曲ですか?
真部「『絶対零度』と『会って話そう』(M-1)ですね。『絶対零度』に関しては、メロディーのアイデアはずっとあったので、それをこのバンドに沿うようにアレンジして、演奏スタイルがある程度固まってる中でハーモニーづけをやっていたので、出口がはっきりしていて、やりやすかったですね」
――齋藤さんは歌ってみてどうでしたか?
齋藤「『絶対零度』はほんとに死ぬかと思いましたね(笑)」
真部「大変そうだったね」
齋藤「9月のいろいろあった時期にデモの歌入れだったので、歌い方がほんとに定まらなくて。どんな歌い方をしても、曲にも自分にもしっくりこなくて、ずっと悩んでましたね。どうしていいかわからなすぎて、“ちょっと真部さん一緒に来てください!”って、ボイトレについて来てもらって(笑)」
真部「“ボイトレに2人来た!”って、ボイトレの先生ちょっと困っちゃって(笑)。僕もいたたまれないし、先生もいたたまれないし」
齋藤「“ここの歌い方が定まらないんですけど、どうしたらいいですか”って相談して」
真部「“僕はこうしたいんです!”って話してたら、“齋藤さんと話すんでちょっと黙っててください”と言われて」
全員「(笑)」
齋藤「結局、“こういう口の形で体のここを使って歌ってみて”というので1発で解決しちゃったんで、悩んだ時期は何だったんだとその時は思いましたけど(笑)。『絶対零度』には相当苦しめられました」
真部「齋藤さんは、ノートに丁寧に全部歌詞を書き写して気持ちを覚えるんですけど、『絶対零度』だけ書き込みがすごかった(笑)」
――歌詞が難しかったんですか? それともメロディー?
齋藤「メロディーは全部難しいんですけど(笑)」
真部「はははは(笑)」
齋藤「多分、真部さんには明確に“こういう雰囲気にしたい”とか私がどういうふうに歌ってるかが頭の中で想像できてるんですけど、それを私が返せなかったというか。分かってはいたんですけど、表現ができなくて結構苦しめられました」
真部「歌詞に関しては、他の作品と違ってメロディーが忙しいので、言葉遊びにすると情報量が多くなりすぎて重たくなっちゃうんで、なるべくJ-POPの文法に近い形で、流れるように聴ける歌詞を書いてみたんですけど、意外に難しくてびっくりしました」
――確かに歌詞は全体的に分かりやすくなってますよね。そしてロマンチックです。
真部「はい。いや、僕はずっとロマンチックなんです」
全員「(笑)」
真部「ロマンチックな部分に対して、恥ずかしさや照れはないんですけど、“それをどこまで目に見える形にするのがロマンチックなのか”という悩みはずっとあって。今まではそれを抑制する方向で書いてたんですけど、むしろ抑制する方が重たくなるし、回りくどいんじゃないかと思うようになってきて。リミッターをかけずに自然体な形で書けるような技術が、自分についてきたというところですかね」
――でも、『絶対零度』は難しかったと。
真部「難しかったですね(笑)。正解が見えない中でやっていたので。言葉遊びを使うと必然性を生みやすいんですよ。この文字数にはこの韻しかない、という感じで落としどころをつけられるんですけど“この歌詞じゃなくて他のアイデアがあるのかも”というものをずっと引きずりながらやるのって、実はすごいストレスなんですよね。だけど、そのストレスを残しておくだけの余裕が自分にできたというか。それが結果的に、軽さや分かりやすさにつながってるのかなと」
――なるほど。
真部「単に完璧主義を捨てたというだけのことかもしれないんですけど。頑なになっていた部分を解いて、これじゃなくてもいいと思える歌詞に、軽快さや洒脱さを感じられるようになってきたので、自分の中で大きな進歩だと思います」
――それは、集団行動を始めてからの意識ですか?
真部「ずっと悩んではいたんですよね。言葉遊びやナンセンスみたいなものは、僕はすごく得意ではあるんですけど、作詞作業として自然体じゃないというか。もっとストレートな表現で自分独自の作風みたいなものができないかと悩んでいて、それが集団行動を始めてちょっとできるようになったかなって」
歌メロの美しさに焦点を当てて取り組んだアルバム
――『会って話そう』はどんな曲ですか?
真部「この曲は僕のせいで、アレンジがあがるのがレコーディング当日だったんですよ。僕の顔色も真っ青だし、メンバーの顔色も真っ青。“どういう曲がくるんだろう”、“今日は何をすればいいんだ”、みたいな顔でみんな待ってて(笑)」
――1曲完成するのに、何日もかけられるんですか?
真部「僕は結構かかっちゃうというか、第1稿は早いんですけど、第5稿、第6 稿まで作ってしまうんです。『会って話そう』はそれがかなり激しくて。歌メロからできた曲だから仕方ないんですけど、メロディーの要素が多いんですよ。メロディーがシンプルな割に、リズムが変わりすぎちゃうんで」
――確かにそれは感じました。
真部「ただ繋がりは良いんで、どこかを抜くのはなるべくしたくないなと思っていて。だから尺も、レコーディング直前まで6分になったり2分になったり」
齋藤「構成すら定まってなかったですね」
真部「そうそう。コード進行もリズムパターンもフィックスしてない状態で、マイクセッティングしてる最中もパソコンに向かう、みたいな作業だったんで、あれは、びっくりしました」
齋藤「びっくりというか(笑)」
真部「自分にびっくりしました(笑)。10年もやってきてると作り方がはっきりしてくるんで、あんまり悩まないんですよ。だからこれは結構珍しいケースで、それにびっくりというか(笑)。いやー、僕も青ざめましたけど、メンバーが1番青ざめてました。ほんと申し訳ないと思ってます」
――でも当日で完成したんですね。
真部「何とか。西浦さんもやっぱり一緒に10年以上やってきてるだけあるな~と思いました。“何やねん!”ってすごい文句言いながらもやってくれて。実は、キメのリズムが今聴き直すとちょっと曖昧だったりするんですけどね。あっはっは(笑)」
全員「(笑)」
真部「まあ仕方ないかというのと、かえってそれが良い感じに1曲目の勢いにつながってるんで。とにかくアレンジで死にかけた曲です(笑)。歌詞はアルバムのコンセプトを決めてから書き始めたので、すごく楽しく書けました」
――齋藤さんは、当日の指示で歌うという経験はいかがでしたか?
齋藤「大体の曲はレコーディングまでにどういうふうに歌おうとか、マイクの使い方をボイトレの先生と一緒に話したりするんですけど、この曲に関しては、当日まで歌詞が変わるかもしれないというのもあったし、構成も決まってないから、そういうのすら全然考えられてなかったです」
真部「はははは(笑)」
齋藤「行き当たりばったりみたいな感じで、その時あった自分の能力を信じるしかない、みたいなところはありました(笑)。でもデュエットだから、ワクワクの方が強かったですね。私の歌わない隙間があることが新鮮で(笑)。“ここに真部さんの歌が入るんだ”って思いながら歌うのは、すごく楽しかったです」
――真部さんはデュエット歌ってみてどうでした?
真部「やっぱりコーラスとは全然違うので、“自分の声を責任持って取り扱うって大変なんだな、齋藤さんに今まですごい悪いことしたな”と思いました」
――なるほど。
真部「あと、自分の歌の難しさに戦慄しますよね。やっぱり自分はメロディーの聴こえ方を最優先事項に作ってしまうのは実感していて。今作は特に歌メロの美しさに焦点を当てて取り組んだアルバムだと思います」
――そして今作を引っさげたワンマンツアーが東阪で開催されます。大阪は3月16日(金)、心斎橋JANUSですね。
齋藤「大阪でのワンマンライブは初めてなので、私たちも想像ができないというか、何が起こるかわからないですし、それすらも楽しみたいなと思います」
真部「今、世に出てる曲は15曲なんですけど、曲のストックは順調に増えているので、まだ耳にしていない曲も聴ける機会になると思います。あとは多分、CDを聴いた印象とは違う新しい発見があるかなと。集団行動は特にその要素が強いというか、ライブと音源のバランスがすごく良いグループになってきてると思うので、お楽しみに」
text by ERI KUBOTA
(2018年3月 8日更新)
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