中川晃教、春のコンサートツアーは「特別な意気込みがある」
中川晃教Symphonic Concert 2018「Spring has Come」が、4月1日(日)の大阪・ザ・シンフォニーホールを皮切りに、全国6箇所で開催される。2001年にシンガーソングライターとしてデビューし、現在ではミュージカル俳優としても大きな存在感をみせ、多忙を極めながらも音楽を作ることやコンサートを大切にしている中川。「自分には『音楽』が柱として深く根付いているからこそ、ミュージカルをやることもできたんだと、年々実感できるようになってきた」と語る彼の、コンサートに込めた想いや今回への意気込みを聞いた。
――今回、ツアー名を「Spring has Come」と名付けた理由からお聞かせください。
4月1日を皮切りにやらせていただくツアーということで、シーズンにちなんだタイトルはどうかなと思ったのがひとつと、15周年を記念したアルバム『decade』(2016年)の中に、まさに『春』という曲があるのですが、それを書くにあたって僕が感じていたことを、今回のお話をいただいたときにふっと思い浮かべたんです。その気持ちをタイトルに込めたいなと思いました。
――楽曲『春』をつくったときに感じていたことというのは?
18歳でデビューして、ミュージカルなどさまざまな経験をさせていただく中で、20代のときに「本物のエンターテイナーになりたい」って思ったんです。歌を聴きにきてくださる方、ミュージカルを観にきてくださる方、全ての方々に「よかった」「たのしかった」「いいもの見た」と思ってもらえる、そんなエンターテイナーになりたいという目標を持っていた20代があって。30代に入って、そういう思いや経験がひとつひとつ実を結び、形になっていくようになった。その過程で、自分の役割、やれることっていうものがだんだん見えてきたり、見せてくれる人たちとの出会いもあったんですね。その出会いや別れが『春』を書かせてくれたと感じていて。さらにこの曲のレコーディング中に一緒に住んでいた祖母が亡くなったのですが、歌っているとき、自分の中でふっと繋がっている感覚…すべてのものに対して「ありがとう」と言わせてくれるような、そんな時間たちと繋がっているなと思ったんです。そして「一人じゃない」って思えたのがこの曲だったりします。春って卒業・入学とかターニングポイントを迎える人がたくさんいると思うけど、そういう意味でも、僕自身の個の意味でも、すべての始まりの曲ですね。
――そんな曲を今、タイトルに由来させたのはどうしてですか?
今年の冬は本当に雪が降りました。僕もたまたま舞台で、様々なところへ伺いました。電車の窓から雪に埋もれている家々を見ながら移動していたのですが、本当に大変だ!と思い、当たり前の生活をする大切さにも気づかされました。そんな早く春が来て欲しいという気持ちが、タイトルになりました。
僕は2001年にデビューしたのですが、こういった形で全国でコンサートやらせていただく機会をいただけるようになったのは本当にこの1、2年なんです。だから、自分が今も歌い続けてこれていること、僕の歌っていうものを届けていけることに特別な思いを抱かずにはいられないんです。今の僕の歌声をお客様に届ける。それができる喜びは僕にとって特別な経験です。またこれをしっかりと続けていけるようにという気持ちでこのコンサートに取り組んでいます。
――それを「シンフォニックコンサート」にされたのは?
プロデューサーとの出会いが大きいです。その方は世界中の才能ある魅力的な方々をよく知っていらっしゃって、ひとつ音楽のカタチというものに捉われない人たちは、クラシックをやっていようが、ポップスをやっていようが、ワールドミュージックをやっていようが繋がってくるということを教えてくださるような、そんな方なんです。だからこそ、中川晃教のというものに興味を持っていただいたんだなということは、お話をしていてすごく実感したんですね。それで今回、音屋室内管弦楽団の皆さんと一緒に、生の楽器とプレイヤーさんと中川晃教の持つ楽器…声とのアンサンブルで広がる、新しい型にとらわれない音楽をぜひ作っていってほしいという想いを受けて、この編成になりました。
――いわゆるシンフォニックコンサートのイメージとは違うものになりそうですね。
そうですね。自由でオリジナリティがあって、ワクワクドキドキするような。誰も歩いてない道を歩いていこうとする、そういうライブ感、音楽ならではの楽しさというものがあると感じています。シンフォニックコンサートは敷居が高いと感じている方や、ミュージカルに興味はあるけど抵抗がある方、単純に楽しいものは好きだけどクラシックには難しさを感じるというような方にも観てもらいたい。コンサートに足を運んでミュージカルに興味を持っていただけたり、ミュージカルは観ていたけどコンサートもこんな素敵な時間なんだと感じていただけたり、そうやってお客様が交差しながら、僕自身が今やっているエンターテインメントの芯まで繋がっていくようなものになったらいいなと思っています。
――今回、どんな楽曲が披露されますか?
ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』の、これは僕も賞(第24回 読売演劇大賞 最優秀男優賞)をいただいて、30代の代表作にしたいという想いもあるんですけれども、その中から「Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)」を予定しています。あとは、各地で少しずつ楽曲を変えながらやろうと思ってるんです。僕が大好きなデビューミュージカルである『モーツァルト!』の楽曲や、今年やらせていただく『銀河鉄道999~GALAXY OPERA~』の楽曲も発表できたらいいなとも思っています。それから僕自身の新曲。昨年、バースデーコンサートで初めて披露した『相対性理論』もお届けしたいですね。
――中川さんのお話から、コンサートをつくる楽しさはもちろん、お客さんに楽しんでもらいたいっていう揺るぎない意志を感じます。
それがなかったら続かないですよね。やっぱり感じるんですよ、お客さんの楽しんでくださる空気って。僕らの音の中にだって感じます。今日この人、調子がいいなとか、なんか迷ってるかなとか。逆を返せば自分自身のものもあらわれてるってことで。すごく自然体で、でも喜んでいただける、楽しんでいただけるものってどんなものだろうって、やればやるだけ目標として色濃くなります。情熱的に、感情的に…それもひとつだけども、自然体でそこにスッといて、だけどその歌声がちゃんと心に届くような。ひとりひとりの目の前にろうそくの火を灯すように、距離を感じさせない一対一の時間をつくりだせる。そういうイメージをしながら、コンサートだからこそ歌える歌があるなって思いますね。
――最後に、大阪の皆さんに一言お願いします。
ザ・シンフォニーホールは今回初めて立たせていただくのですが、すごく響きの素敵な会場で、このステージに立てることは僕にとってのひとつの挑戦でもあります。大阪では、ミュージカルやコンサート、さまざまな公演をやらせていただいますが、それをきっかけに足を運んでくださるお客様も、初めて中川晃教の歌声に触れあってくださるお客様も、今、観に行こうかどうしようか迷っていらっしゃる方も、すべての方に喜んでいただける歌、そしてセットリストでお届けしていきたいです。さまざまな感情を呼び覚ます、そういう声の力、歌の力をお届けできたらなと思っています。お待ちしています!
取材・文:中川實穗
(2018年3月16日更新)
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