8thミニアルバム『光にまみれて』を1月にリリース 今作を引っさげて2月から全国ツアーを展開 新たに自身のレーベルを立ち上げて動きだした GOOD ON THE REELというバンドの 独自の視点と切り口を明かすインタビュー&動画コメント
バンド結成から13年。自身のレーベルを立ち上げ、セルフプロデュースで製作された8thミニアルバム『光にまみれて』をリリースしたGOOD ON THE REEL。バンドマンの過酷な現実が暴かれる『ショーベタ』や孤独な女性の暗部をえぐり出す『モラトリアム』といった強烈なナンバーがある一方で、ストレートなメッセージ性を感じさせる『かくれんぼ』や『Marble』、さらに『光』のような穏やかなラヴソングも聞こえてくる。その一曲一曲には血の通った言葉が綴られ、毒々しくヘヴィな要素を孕みつつ、鋭く乾いたボーカルと浄化力あるクリーンなギターサウンドによってある種のカタルシスが味わえる作品に。また、リード曲『モラトリアム』はメンバー自身がMVの撮影にも初挑戦するなど、新たな展開を見せている。ここに至るまでの経緯と独自の切り口で描かれる楽曲について、千野隆尋(vo)と伊丸岡亮太(g)が率直に語ってくれた。
――まず、今作が自身のレーベル、lawl recordsからの第一弾としてリリースすることになった経緯というのは?
千野(vo) 「このバンドで12年ぐらいやってきて、新たにGOOD ON THE REELを始めるじゃないけど、色々経験してきた上で、今までやれてなかったようなことを発信していきたいなと。それで、自分たちでレーベルを作ってみようと思ったんです。今までフルアルバムが続いてたんですけど、今回またミニアルバムに戻るっていうこともあり、いろんなタイミングが合って」
伊丸岡(g) 「再出発じゃないけど…」
――これまでのジャケットって、絵(イラスト)の印象が強かったんですけど、前回のデジタルシングルから写真になり、ビジュアルイメージも変わってきましたね。『モラトリアム』(M-2)のMVにも惹きつけられました。
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千野 「あれは、DIYで、全部自分たちで撮って作りました」
伊丸岡 「それも初の挑戦ですね」
――センス良くて、ファッション関係の映像の方が絡んでるのかな?って思いました。
千野 「全然(笑)。映像のアイデアも自分たちで考えて」
伊丸岡 「この二人でやりました」
――前々から映像にも興味があって?
千野 「そうですね。二人で飲みに行ったりした時、僕が“短編映画撮りたい”って言ったら、(伊丸岡が)“俳優やりたい”っていうから、亮太(伊丸岡)が主演で出るつもりで考えたりしてたから…」
伊丸岡 「それが役に立ってるのかな」
千野 「ただ、妄想してただけで、(短編映画を撮るのは)まだ実現はしてないんですけどね。こういうのあったら、泣けない?みたいな話をしてて、居酒屋で(笑)」
――あの『モラトリアム』の映像は、シンプルに街の人を撮っていて、そこに人間ドラマを浮き上がらせているようでもあり、それがGOOD ON THE REELの楽曲と合わさることで、すごく感化されます。
千野 「あの曲自体、一つの映画のような気がしてて。歌詞的にもドラマティックで映像が乗りやすい曲だなと。歌舞伎町のイメージがすごい強かったんで、メンバーを撮ったのは歌舞伎町近辺です。(他の出演者は)友達に声かけて、東京のいろんな場所で撮りました。人ごみの中で一人一人が生きてて、それぞれの人生があってっていうのを表現したくて」
伊丸岡 「いろんな人にスポットを当ててますね。逆に言えば、俺たちが主役というより、出てくれてる人達が主役っていう感じで」
――確かに、人間臭さを感じます。そういうものを表現して伝えたいという思いが強いんですね?
千野 「そうですね。初期の頃から不特定多数に書くというより、ピンポイントで書く歌詞が多かったんですけど。みんなを救おうって綴るより、誰か一人の人を救ってあげようっていう意識があって。その方がもっと深く刺さると思うし、もっと広がるんじゃないかなって」
伊丸岡 「一曲一曲で誰か一人の人に向けてるっていうのが強い。それがより色濃く出てるのが今回のミニアルバムですね」
――どのようにこの7曲を作っていったんですか?
千野 「この7曲は楽曲でいろんな面を見せられるように、曲調の種類から選びました」
――全体的にギターロックをベースに、ネオアコ系のクリーンで繊細な音が印象的です。
伊丸岡 「そうですね。音色的にはそういうものが結構好きなので。そう言ったテイストになってると思います」
――その中でも、1曲目の『ショーベタ』は激しさが強調されていうようですが。
千野 「もともと、リード曲の『モラトリアム』を1曲目にしようかって言ってたんですけど、導入部分がゆったりしているので、それよりも、最初から殴りに行こうかと(笑)」
伊丸岡 「インパクト重視ですね」
――『ショーベタ』は歌詞の内容にも、けっこうドキッとさせられますが、この主人公は誰なのかなって?
千野 「バンドマンですね。ま、でも、社会人だったり、学生さんだったり。いろんな人に当てはまるようにと思って書きましたけど。それぞれ自分の立つステージがあって。例えば会社ではプレゼンあったり、学校ではテストあったりして、そこで評価されていく、そういういろんな人の私生活にも繋がるように意識して書きましたね」
――最初にその“バンドマン”という言葉が出ましたが、その中に自分たちもふくまれていますか?
千野 「そうですね。もちろん入ってたりしますよ。例えば、ストリートでライブをやってたとして、僕らがMr.Childrenだったら、誰でもすぐ立ち止まって聴いてくれるじゃないですか? でも、僕らはそんなに認められてないというか…。売れる売れないって、その時々の流行も関係することだけど、ただ知られてないから聴かないとか、振り向かないという人にも知ってほしいなっていう…」
――そういう悔しさもあって?
千野 「そうそう、聴いてほしいし。そういうところはありますね…。何でもそうですけど、演じる側は一生懸命やってるけど、観てる側って、音楽は日常で普通に楽しむもんじゃないですか。だから重さが違うというか。僕はこれで生活してるけど。なかなか難しくて、本気で聴いてもらうとか、本気で観てもらうのって。その感覚の違いがちょっと出てるかな。だから、さっき話した人ごみの中の一人一人に生活があって、それぞれが頑張ってるし、悩んで苦しんでて、でも幸せがあってっていう。その中の一人がバンドマンでもあって。そのバンドマンと観る側の差っていうところをちょっと意識して書きました」
――それは千野さんの心の叫びでもあるのでしょうか?
千野 「それももちろんあるし、ちょっと誇張してる部分もある。僕の友達のバンドマンとかを思い浮かべて書いてるところもあるし。いろいろ混ざってますけどね」
――『ショーベタ』もそうですが、GOOD ON THE REELの楽曲には表現する側の強い気持ちを感じるし、そういう本気の表現に接した時って、受け手も真剣になって聞き流せないと思います。
伊丸岡 「受け取る側の力も必要でしょうけど」
千野 「受け手の感覚だったり、好みもあるよね。でも、本気すぎて引いちゃうとかもあるだろうし。やっぱあくまでエンタメで、正解がないから(笑)」
伊丸岡 「だから面白いんですけどね」
――『モラトリアム』は孤独な女性の暗部をえぐり出すような内容ですが、なぜこういう曲を作ろうと思われたんですか?
千野 「これは詞先で、ある小説に感化されて書きました。結構久しぶりにエグいのが書けたので、これを曲にしたいと思って、(伊丸岡)亮太に投げて作ってきた曲です」
――ラストの『私へ~光にまみれたver.~』は先にデジタルシングルでリリースされた曲ですが、これも主人公は女性?
千野 「そうですね。小学生の頃とか未来の自分に向けてタイムカプセルに手紙を入れたりすると思うんですけど、これはその逆ですね。昔の自分に対して、今の自分はこうだよって、手紙を書いてる女性みたいな感じ。この曲は僕の中で映画みたいになってて。『モラトリアム』も映像みたいな感じで書いてたんですけど、歌舞伎町を歩いててネオンに消えていく女性みたいなイメージです」
――女性が主人公の歌を歌うことに抵抗は無いですか?
千野 「主人公が男性にしろ、女性にしろ、両方に伝えたくて歌ってるから、あんまり抵抗は無いですね」
――確かに、これが女性の声で歌われると濃すぎるというか重くなりすぎるけど、千野さんのちょっと乾いた鋭い男性の声で歌われるからいいのかもしれない。バックに流れるサウンドも、このヘヴィな内容を昇華するような力があるし。いろんなものが合わさってカタルシスが味わえるような気もします。ちなみに、千野さんが歌詞を書くときに意識することは?
千野 「歌詞のアイデアやメッセージは被らせたくないので、今回の7曲すべて書き方を変えて、主人公も分けています」
伊丸岡 「今作の中では、『光』(M-5)という曲が一番幸せな曲ですね」
千野 「これは結婚式とかでぜひ使っていただきたいですね(笑)。僕はなかなか幸せのみで書くことがないんですけど、これは“幸せ”だけで書いてみようっていう曲だったんです」
――アルバムタイトルが『光にまみれて』で、ここにも“光”という文字がありますが、“まみれて”っていう言葉は“汚れる”ような意味合いで、あまり良いことでは使われないですよね? 『光』の方は、“幸せ”な曲ということですが、アルバムタイトルをこの表現にした理由は?
千野 「今作では焦点をすごく狭めて一人のために書いたような曲が出揃って。それぞれの生活の温かい光だったり、冷たい光だったりいろんな光があると思うんですけど、いろんな光にまみれて生きてるっていう、その生々しさっていうところから着想を得ましたね」
伊丸岡 「それも映画のタイトルみたいだし」
千野 「綺麗な言葉とそこから出てこないような言葉を対比させるようなことが、僕は結構好きなんですよ」
――ジャケットの字は手書きのようですが?
伊丸岡 「手書きです」
千野 「彼は本当は綺麗な字を書くんですけど、もっと崩してって注文して書かせました(笑)。これも映画の冒頭で、ちょっとブレるような映像に街が映し出されて、そこにこのタイトルが浮かび上がるようなのを意識しました」
――映画や映像や好きな人にもキャッチされそうな作品ですね。
千野 「ぜひ、聴いていただきたいです」
伊丸岡 「ジャケから入ってくれてもいいですし」
――今作は楽曲だけじゃなくて、映像などもすべてDIYでやるようになったということで、GOOD ON THE REELにとってのターニングポイントになりそうですね。
千野 「そうですね。初めてやったこともあって、至らない部分もあったんですけど、意外とファンの人もすんなり受け入れてくれて。ちょっとホッとしましたね。2018年が、こういう作品でスタートできたっていうのは良かったなと思います」
――最後に、2月24日からスタートする全国ツアー、『GOOD ON THE REEL presents HAVE A “GOOD”NIGHT Vol.74~83~ネオンにまぎれて~』に向けての意気込みをお願いします。ファイナルは大阪ですね。
千野 「今回、けっこうエモーショナルな曲が多いんで、よりライブ感が強くなると思うし、そこにいるひとりひとりに届くようにやります。いろいろ、演出も考えてるんですけど、大阪までの9か所をやっていって、変わってくるものもあるでしょうし、特別な夜になることは間違いないですね」
text by エイミー野中
(2018年2月28日更新)
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