「今ではもう、これがないと年が明けない、みたいな(笑)」
ピンク・レディーのヒット曲が大胆不敵なアレンジで蘇る!
ビルボードライブ大阪での新春恒例の豪華ステージに向けて語る
未唯mieインタビュー&動画コメント
『ペッパー警部』『S・O・S』('76)『カルメン'77』『渚のシンドバッド』『ウォンテッド(指名手配)』『UFO』('77)『サウスポー』『モンスター』『透明人間』('78)etc…日本のポップス史に残る数多くのヒット曲で一時代を築いたピンク・レディー。タイトルを見るだけでメロディが脳内再生されるそんな名曲群を、日本有数の打楽器奏者・仙波清彦(指揮&perc&小鼓)プロデュースによる大胆不敵なアレンジで蘇らせる、新春恒例の豪華ステージ『仙波清彦 Produce 未唯mie Sings 新春“Pink Lady Night” 2018』が、ビルボードライブ大阪にて間もなく開催される。ソロアーティストとしても活動する未唯mieが、村上“ポンタ”秀一(ds)、白井良明(g)、バカボン鈴木(b)ら総勢23名の大所帯をバックに、歌で、衣装で、そして和と洋が共存する度肝抜くバンドサウンドで、新年の幕開けを飾る白熱のライブについて語るインタビュー。40年を超えるキャリアを誇る彼女がなぜ、今でもライブにこだわるのか? 時代に愛されたピンク・レディーの楽曲への知られざる想いや当日の見どころまでを、たっぷりと話してくれました!
パフォーマーとしてはまだまだやりたいことがある
――もう年の瀬で公演が近付いてきましたが、まずは’17年振り返ってみていかがでした?
「毎年、『新春"Pink Lady Night"』から始まって、ライブとしては3月1日の『未唯mieの日 Presents 「裏ピンク」アンコール』、7月は『Breezing Harmony 3』。10月には笹路正徳(p&key)さんと『Halloween Night』、11月には『Breezing Harmony GO WEST』をやって今に至ると(笑)。“裏ピンク”の再演がなかなか面白くて、ソロではピンク・レディーのA面のヒット曲をそのままのアレンジでやることはないんです。やっぱりそれは2人揃ったときに、みたいな感じがあって。アルバムの曲とかB面の曲を“裏ピンク”と呼んでいるんですけど、そちらはもう本当にオリジナルに近い形で再現するんで、結構面白いんですよ。今までピンク・レディーでもライブで歌ったことがないような曲=振り付けもないので、私自身が懐かしい感じのする振り付けもして、ステージで歌って踊るんです」
――当時でさえ人前でやっていなかった曲となるとレアですね。
「金原千恵子(vl)さんとか笠原あやの(vc)ちゃんが1回目を観に来てくれて、“楽しい! こういうの声掛けて〜!”って言われて、“え、出てくれるの?”みたいな(笑)。それで今年は弦が入ったゴージャス版で再演できたんですけど、やっぱりピンク・レディーの楽曲にはすごい力があるんだなぁって感じるんですよね」
――みんながよく知る、名曲以外の曲でも。
「そうなんですよ。阿久(悠)先生、都倉(俊一)先生があの時代に作った曲は、本当に不思議なくらい力があって。みんながあまり聴いたことのない曲でも、“あ、ピンク・レディーの曲だ”って感じられる。それがすごく面白いなと」
――未唯mieさんは’16年にデビュー40周年を迎えましたが、それだけ活動し続けられているのもすごいことで。
「本当にパフォーマーとしてはまだまだやりたいことがあるので。そのためには身体が元気でないといけないし、民間治療みたいなこととか、食育も勉強し始めたり。身体の芯からエネルギーを出して、来てくださった方にちゃんと届くパフォーマンスをしたい。そういう想いがすごく高まって来た年だった気がしますね」
――40年を超えるキャリアで、そう言える意欲とバイタリティは素晴らしいですね。
「何でかと言うと、私がこういったライブ活動を本格的に始めたのが’07年からなんです。だからようやく10年経った感じなんですよね。それまではエンタテインメントな表現が多かったので、もっと音楽に深く入ってみたいなぁと思うようになって。そうしたら、村上"ポンタ"秀一さんが、“未唯mieちゃん俺、手伝うよ”と言ってくれたんで、“この機を逃したら…!”と思ったので。今までに触れたことのないジャンルや楽曲、パフォーマンスを抜きにして本当に純粋に、音楽をどうやって楽しむのか、深めていくのか。それがもうすごく新鮮で、音楽の研ぎ澄まされたリズムとか深さをたくさん感じて、“私まだまだ入口にいたんだなぁ”って思ったんですよ。それからようやく10年できたんで、何だかベース=土台ができた感じがしてるんです。“ここからだなぁ!”みたいな」
――そもそも、改めて10年前にもっと音楽に深く入ってみようと思ったきっかけは何かあったんですか?
「それはピンク・レディーの2年間限定のコンサートのファイナルで、かつてレコーディングに関わったミュージシャンに来ていただいて、それはすごく華やかなものだったんですけど…ピンク・レディーの楽しさは自分でも十分に分かっているし、お客様が望んでくれているのも伝わるんですけど、“私自身が何を表現するのが自分らしいのか?”が、まだまだ手探りな状態で。音楽だけじゃなくて、“人として私は何をしたいんだろう? どんな生き方をしたいんだろう?”っていうところまで考えて…そんなタイミングでのポンタさんのお声掛けだったので、ちょっと“自分探し”じゃないですけど、“音楽から自分を知っていきたい”みたいな気持ちもあって。まだまだ眠っている私がいるんじゃないか、まだ出会えてない私がいるんじゃないかなぁって」
――なるほど。未唯mieさんがコンスタントにライブハウスでライブをするのは何かしらの志とか意志があるんだろうなと思っていたので、すごく納得しました。それにしてもバックのメンバーの方々も、ポンタさんをはじめ白井良明(g)さん、バカボン鈴木(b)さんほか、まぁ強力なメンツで。
「本当に超一流のメンバーが集まってくれるので、彼らと奏でることがやっぱりすごく刺激になるんです。すごく繊細に音楽を感じて、愛しているので。“私はここまで真剣に音楽と向き合っているのか?”って、毎回彼らからインスパイアされるものは大きいですね」
ピンク・レディーのファンだけじゃなく
音楽好きでも楽しんでいただけるんじゃないかな
――年始には恒例の『仙波清彦 Produce 未唯mie Sings「新春"Pink Lady Night" 2018」』が控えていますが、こういった新春企画が始まったのは?
「いつもホームにしている会場で6ヵ月間マンスリーライブをやろうとしたとき、毎月違う顔を見せたいなと思ったんです。仙波清彦さんとはにわオールスターズに関しては、うちの事務所の社長からいろいろと聴かせてもらって、“こんな世界もあるんだ〜!”って知ったときから、いつか一緒に何かできたらいいなと思っていたんですね。そこで、6ヵ月間いろんなことができるなら、“そうだ、仙波さんに言ってみよう”っていうことに。はにわと一緒にやるんだったら、一番かけ離れたピンク・レディーが面白いんじゃないかということで、そのマンスリーライブの中から生まれたのが、『新春"Pink Lady Night"』だったんですよ」
スタッフ「仙波さんの表現もピンク・レディーも、“おもちゃ箱をひっくり返したような”というコンセプトなので、ポンタさんに紹介していただいて。“仙波流にピンク・レディーを壊してください!”っていうところから始まって」
――取材に向けて去年のライブ音源を聴かせてもらったんですけど、想像といい意味で違って、こんなにもミクスチャーなのかと(笑)。このアレンジは、本当に楽曲ごとにジャンルが違うぐらい。
「そうなんです。だから、ピンク・レディーのファンだけじゃなく、音楽好きでも楽しんでいただけるんじゃないかなと思うし、本当にいろんな要素が詰まっているライブなので」
――イントロにディープ・パープルを挟んだり、ファンク色を出したかと思えば民族音楽っぽかったり、はたまた映画音楽のテーマを入れてみたり…バンドメンバーに実力と遊び心があるからこそ、みんなが聴いたことのある名曲がここまで変わるんだなと新鮮でした。
「これだけの遊びを、一流のプロが本気でやるから面白いんですよね。“ここまで壊しちゃってファンの人に怒られないかな?”って、最初はおっかなびっくりだったんですけど(笑)、ファンの方たちも年を追うごとに“よくこれで踊れるよね?”って思うぐらい、あのサウンドでも踊っちゃうんですよね(笑)。面白いですよ〜」
――これほどの大所帯のバンドで音を鳴らすこと自体、現場ではかなりのエネルギーが生まれると思いますし。
「本当に生で聴いたら、その現場にいたらすごいんですよ! そのエネルギーももちろんですけど、鐘と太鼓の音が“グァーン!!”とくるので。それが邪気払いにもなることもあって、いつの間にか新春にやるようになっていったんですよね。今ではもう、これがないと年が明けない、みたいな感じになってきて(笑)。メンバーも最初は22人からスタートしたんですけど、みんなやりたくてしょうがないから増える一方で(笑)。ポンタさんも、“早めにスケジュール教えて! 今年も絶対にやりたいから! 他を断ってでもやるから!”って(笑)」
――メンバーの皆さんも錚々たる実力者ばかりですけど、ともに時代を過ごしてきたからこそ、とりわけ思い入れを持ってくれているんでしょうね。
スタッフ「ポンさんなんか、『ペッパー警部』(‘76)のオリジナルドラマーなんで(笑)」
――改めてこういった夢のあるプロジェクトが、毎年スケジュールに組み込まれているのは嬉しいですよね。お客様からしても、新年の恒例行事みたいな感じでしょうし。あと、ピンク・レディーの楽曲×着物の組み合わせにも華がありますし、このアレンジで海外でもやってみてほしいですね~。
「そうそう! やってみたいんですよね~」
こういうふうにアレンジをガラッと変えてみると
裸になった楽曲自体のすごさが逆に見えてくる
――当日は装いも新たに生まれ変わったゴールデンヒッツが披露されると思いますけど、未唯mieさんがピンク・レディーのレパートリーの中で思い入れのある曲はあったりするんですか?
「絶対に外せないのはデビュー曲の衝撃もあって『ペッパー警部』なんですけど、ピンク・レディーが解散して30を過ぎた頃、ピンク・レディーの曲を1~2曲コンサートでやってみることになって、『モンスター』('78)を改めて聴いていたら、とんでもない曲だったことに気付いたんですよ。あれは子供ウケを狙ったような曲じゃなくて、“モンスター”はあの頃自由がなかった私たちのことにも思えたし、阿久先生のことでもあるだろうし、もしかしたらハンディキャップを持っている方たちのことかもしれない。こんなに深い曲だったんだと思ったら、涙が止まらなくなっちゃって。本当にすごい曲を歌わせてもらっていたんだなぁって、『モンスター』のイメージが全然変わりましたね」
――音楽って、自分が年齢を重ねていく中で、ガラッと違う響き方をすることがありますもんね。
「ね。でも、さっき言ったことは私の想像ですから、阿久先生がお元気なうちに“実際はどうだったの?”って聞けばよかった。結局、聞けずじまいでしたけど、あながち外れてはいない気がするんですよね」
――ずっと歌い継がれることでそうやって気付ける機会も生まれますし、ヒット曲というものの尊さというか。
「そうですね。あと、オリジナル通りに歌うと、“衣装とか振り付けも含めてピンク・レディーの楽曲”というイメージあるんですけど、こういうふうにアレンジをガラッと変えてみると、詞の内容とか、メロディラインとか、裸になった楽曲自体のすごさが逆に見えてくるところもあって」
――毎年の『新春"Pink Lady Night"』を観に来てくださる方にとってもそうかもしれないですね。そんな様々な想いが集まったライブが年明け早々に、大阪公演は1月5日(金)と本当に新春一発目というタイミングで行われますね。
「そうなんですよ。だからもう、初詣の帰りにお出でくださいっていう感じで(笑)」
――最後に新春のライブに向けて、未唯mieさんからお言葉をもらえれば!
「とにかく大きなエネルギーの渦が生まれる『新春"Pink Lady Night"』なので、年の初めの邪気払いを兼ねて、ぜひ楽しんでいただければと思います!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2017年12月28日更新)
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