「ライブで渡したいもの、伝えたいことがたくさんある」 1年7か月ぶりとなる新作『NAMiDA』リリースを経て 成長し続けるKANA-BOON全員インタビュー
KANA-BOONが4枚目となるアルバム『NAMiDA』を9月27日(水)にリリース! 彼らの魅力をギュッと濃縮したような聴きごたえあるこの一枚は、果たしてどのように生まれたのか? 4人に話を聞いたところ、出てきたキーワードは“キャンプ”。そのポップな響きとは裏腹に、予想以上のいい話が飛び出します。
――『NAMiDA』は前作『Origin』から1年7か月ぶりのアルバム。ゆっくり作れましたか?
谷口(vo&g) 「しっかり時間を取ってアルバムに向かえた感じですね。昨年秋頃、休みがてらメンバーとキャンプへ行ってアルバムの話をしたのが最初です。その時はまだ全体像は見えてなかったけど、『Origin』は音のカッコよさを追求したので、それをさらに太い音、ロックバンド然とした音で録ろうっていうのが一つありました。あとは、自分たちらしさというか…もっとKANA-BOONの魅力がダイレクトに伝わる方向に!っていう。」
――キャンプ! それはミーティングするために? キャンプを楽しみに??
古賀(g) 「どっちもかな。でも本題としては、4人だけでミーティングをするっていう目的だったので、ミーティングありきのキャンプですね(笑)」
小泉(ds) 「温泉でもよかったけどね」
飯田(b) 「とりあえず息抜きができたらいいねって。温泉っていう案もあったし…。とにかく普段行かない所の方が向き合って話せるねって」
古賀 「周りに人がおれへんっていうのがよかった。結構まじめに話せましたね。メンバーに対して思っていることで普段はあまり言葉にしないこと…ダメなところとかもシビアに。で、そこからこうなったらいいんじゃないかとか、結果的にポジティブな話ができて、目標を持ち直せて、帰る前日にはまとめてギュッとできたな」
――普段からキャンプに行っているわけではなかったんですね。
古賀 「はじめてのキャンプでした」
飯田 「テンション上がってね(笑)」
古賀 「あれ、何のために来たんやろう?ってなったな(笑)」
飯田 「でもよかったよね。4人でガッツリ遊ぶってめちゃ久しぶりやったから、そういうの(遊び)もあって、砕けた話からまじめな話までできた。全部できたからよかったなって。マジメな話だけやったら、あまり空気よくなかったと思うんで」
谷口 「今からマジメな話せなあかん!ってなるとね」
古賀 「スイッチ入れなあかんからな」
谷口 「ちゃんと一回、友達っていう大前提で遊んで…っていうのがよかった」
――曲作りのために…というものじゃないですもんね。
小泉 「楽器も持たず(笑)」
飯田 「遊び道具だけ持って(笑)」
小泉 「ドローン持ってったな。全然操作できへん!」
――楽しそう(笑)。で、そこで出た結論は?
谷口 「自分たちがいっさいの不安要素なく胸を張れる作品を…という。もちろん『Origin』も自信作で達成感もあってチャレンジもしてる。でもだから聴く人との距離の測り方っていうのが、たぶんうまくできてなかったのかなと。そこらへんを見直そう!って」
――距離の測り方?
谷口 「『Origin』中で自分たちが新しいトライをしている分、聴く人からすると新しいカラーになったわけで、そこの距離感です。テーマとしてみんなが好きなKANA-BOONから一回離れてみようという意図もあったし…。でももうちょっとこっちが近づくと言ったら変ですけど、もう少し近くでもよかったのかなって。もう少しみんなが好きなKANA-BOONを追求しつつ、自分たちの合点が行く場所を探すことができたんじゃないかなと。そのしこりみたいなのがあったんですけど、今回そういう“ちゃんと受け入れてもらえるかな?”という余計な心配が取り除けたと思います」
――さて、アルバム内には『涙』というアルバムと同じ名前の曲がありますが、今回この曲が軸になったんでしょうか?
谷口 「『涙』と『バイバイハロー』が割と早くできてました。『涙』に関してはデモの段階から軸ではないけど引っ張ってくれる存在かなと…。『バイバイハロー』はアルバムを象徴する曲として進めようってなったんですけど、歌詞を書いていく時に変わっていって、やっぱりリード曲というより、その時のテーマを一つ切り取ったものという感じで…。それで進む方向が変わりましたね。『涙』はすごく自分のパーソナルな失恋ソングなんですけど、『バイバイハロー』は別れからの出会い。ハローバイバイじゃなく、バイバイハロー。今までいろいろな別れの曲をやってきたんですけど、そうじゃない。転機となる別れと出会いで、そこで完結した曲になったんですよね。だからアルバム全体を象徴するものではないなと」
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――そんな別れを予感させる『バイバイハロー』や『涙』という曲名、それに『NAMiDA』という作品名からすると湿度高めの予想になるんですが、そうではなくどの曲もちゃんと高揚するポイントや疾走感といった“らしさ”がありますよね。
谷口 「そうですね。ちゃんと顔を上げているというか…どの曲もそんな感じかなと思います。たぶんKANA-BOONのサウンドに引っ張られて、歌詞がそういう風に仕上がっていったんだと思います」
――逆に“どよ~ん”としたく、させたくなることはないですか(笑)?
谷口 「俺は歌詞書いている時ずっとどんより(笑)。この3人は…」
小泉 「(どんより)せえへんな(笑)」
古賀 「俺どんよりしましたよ(笑)。今回、鮪が作ったデモにはギターフレーズも入ってるものが多かったんです。それを聴いて、よければよい程どんよりしました(笑)。“あ、俺弾きたかったけど…いいフレーズ入ってるな~”って」
飯田 「嫉妬的な(笑)」
古賀 「悔しいっていう(笑)」
小泉 「でもメンバーやからよかったな。他のバンドやったらもっと悔しいちゃうん?」
古賀 「そこは別にえ~やん。関係ないから(笑)。このバンドで俺って言うギターがおるのに!っていう。そこやね(笑)」
――それで“いやいや俺が!”とはならない?
古賀 「内心思ってますけど(笑)、でもやっぱ鮪が指揮する、指揮したいっていうことの表れやと思うから、フレーズが入っているっていうのは。全部セットで鮪の曲で来てるんで、そこはサポートするしかないって思いますね」
谷口 「ま、折れてもらうっていうと変ですけど、こっちに寄り添ってもらうというか。今回は頑固にいこうって思って。昨年から自分がデモを作って…というやり方をずっと実践してるんですけど、作る時に確固たるイメージがあって完全に仕上げて渡すから、たぶん、この辺り(古賀)は悶々としてるやろうなって思いながら送信ボタンを押す(笑)」
――で、受信して…(笑)。
古賀 「…でも、いい曲やなって思うんで!」
飯田 「で、いい曲やなって思った後に、ギターがそう言えば!って(笑)」
――でも意思統一できているってことですね(笑)。ちなみにそういうやり方にした理由は?
谷口 「まずは自分が成長したいなっていうのがきっかけです。昨年頃から各々がちゃんと成長する期間が必要やなって思って。みんな個人練習とかしてるし、(自分は)まずは曲を書く人間としてステップアップしよう!みたいな感じです」
――『NAMiDA』の中で、そのやり方の最たる曲は?
谷口 「今回は『涙』と『それでも僕らは願っているよ』ですね。完全に仕上げていきました。やっぱりバンド全体としての“らしさ”もそうなんですけど“核を出した”みたいなところがあるかなって気がします。『涙』のような切ない、琴線に触れるような感じっていうのは、たぶん僕が根本に持ってるものなんやと思うし、そういうのはセッションでは生まれなかっただろうって思います。セッションやったらセッションのノリで、その時のテンションとか、いろんな作用で変わってしまう。もちろん、いつもいつもいい風に転がってるんですけど、そうじゃない一人で作ったものの魅力。特に『それでも僕らは願っているよ』に関しては、それがある気がします。展開だったり音使いであったり、そういうところに表れている。今までのKANA-BOONじゃない、自分の根本的なところ。最近ライブでやり始めてるんですけど、ちゃんと気持ちを…責任感を持ってやれているから、いい曲ができたなって思います」
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古賀 「セッションだと、そこで作りきろう!みたいなのもあったりするもんな」
谷口 「次に回したりしないし。2時間で!って(作り切る)。たぶん中途半端にして終わったら忘れてしまう(笑)」
飯田 「別のものになる(笑)。その日のテンションだから、別の日に作ったら違うものがくっついたっていう変な感じになる」
古賀 「ワンコーラス終ったら“なんか変やぞ!”って(笑)」
小泉 「なると思う(笑)」
谷口 「セッションはお互いが勝負し合うし、成長もそこで感じる。今は一人で作ってますけど、またセッションに戻った時に成長を感じられるようにって作り方をチェンジしてるんです」
――今のやり方は、メンバー内で意思・意図を共有するのが大変そうですが…。
谷口 「でも割と最近はお互いのことを見えていたりするんです。ライブとかレコーディングとか、それぞれの音を聴いてるなって感じがする。それまでは自分のことで精一杯。余裕もなかった。でも今はそれ(お互いが見えていること)を実感することが多いですね。やっぱライブかな。ちゃんと輪になってるなって感じがする」
――じゃなきゃ4人でキャンプしないですよね(笑)。
谷口 「キャンプ押し(笑)」
古賀 「みんなキャンプ行ったらええねん(笑)!」
小泉 「ほんまに(笑)」
飯田 「でも本当に、デビュー前やったら4人で何かやったりしてたけど、デビューしてからはスタッフが一緒にいて完全な4人ってなかったんですよね」
古賀 「ないな~」
飯田 「誰か(メンバー以外が)一人でもいたら腹を割ることができないというか。ちゃんと4人だけ!っていうのがよかったと思います」
――さてツアーの話も…。
谷口 「今回、僕らとしては成長するツアーにしたいし、そうなる気配もしてます。ライブというものに全員ちゃんと向き合えてて、昨年とは感覚が全然違うし、届けるべき人とか届けるべきものとかを具体的に見られるようになってると思う。ツアーはワンマンだから僕らに希望を託してる人しか来ないわけで、やっぱりそこで何を渡せるかな?っていう感じですね。そこは『バトンロード』ができたのが大きかったですね。『バトンロード』は、そういう受け継ぐとか手渡すとかっていう思いを乗っけられる曲なんで、あの曲ができたのが変化のきっかけになったと思います」
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――伝える力がある曲ですよね。
谷口 「メッセージしたいことをちゃんと訴える曲ができたことで、ライブへの気持ちの入り方も違ってきて…。ただ楽しいとか、盛り上がるとかだけじゃなく、ちゃんとこっちから何かを渡して明日につながる。ライブの生のよさって何かをもう一度見直してちゃんと渡したいなって思います」
――曲の作り方だけでなく、ライブへの姿勢も転換期ですか?
谷口 「自分たちとしてはかなり…な!」
古賀 「ミーティングをするようになって変わりましたね。今まではライブが終わったら各々勝手にダメな時は自分で解釈して次はこうしよう!みたいな…。自分なりの反省をして、だけど誰にも言わずという。でも今はちゃんとメンバーに言って、逆にメンバーからも言われて、で、次までにこうする!っていうのを宣言するんです。そうしたら次までにそうしてないと直ってないってことになるから責任感が出るじゃないですか。それを繰り返してますね。それでライブの精度がすごく上がってきてます」
――素晴らしい!
古賀 「やるべきやったんやな、今までもな」
谷口 「やらなあかんっていう切迫感みたいなのはあったんです。でもそんな中でずっとバンドが動いていて急かされている感じというか…。今はそんな状況を変えられて、ちゃんと自分たちがそれ(見直すこと)を求めることができて、“曲をしっかりやれているか?”とか“ライブで伝えられるようになりたい”とか、そういう気持ちを持ったうえで、ライブの話ができているのでバンドとしていい状態です。ちゃんとつかもうとしてるなというのを感じますね」
――その変化のきっかけは?
谷口 「きっかけは…いっぱいあるね。昨年ツアーをやって、このままでいいんかな?って少しハテナマークが付いたまま1年過ごしてしまった気がして。そこを直したい!っていう気持ちとかね」
古賀 「ずっと思ってたんやけど、言うタイミングがなかったというか…。で、やっぱりキャンプやな(笑)!」
全員 「(笑)」
――ところでキャンプの言い出しっぺは?
谷口 「誰?」
古賀 「事務所の偉い人」
飯田 「そういう機会を作ったらいいんやないか?って言われて…」
古賀 「大きな目標を一個作った方がいいってなって…」
飯田 「夢が叶っちゃって…“大きいステージに立ちたい”とか“フェスのトリをやりたい”とか。その後のことを考えられないまま、流れでいっちゃってたから、改めて自分たちはどうするべきか?っていうのを話し合ったりしてて…。そういうの(新たな目標)がない状態でライブはちょっと何かが足りてない…ぽっかりしてる感じがあったんですよ。それでツアーが終わった後に話し合って、で、キャンプですね(笑)」
――キャンプすごい(笑)。で、夢が叶った後は何をモチベーションに?
古賀 「一番になるっていう大きな夢はあるけど、それは具体的じゃなさ過ぎて。もっと具体的に目指すところについて話し合ったんですよ。頑張ろうって!」
――具体的な目標…。
飯田 「昔は、デビューする!とかから逆算的にやってたんですよね」
古賀 「音楽でご飯食べられるとかね」
飯田 「逆算して、そのためには…ってやってた。それをもう一度やるという。ただ、夢物語でがむしゃらなエネルギーでここまで来たけど、今は現実を知ったから。何かをするのにどれくらいの期間が必要かとか」
――そこも具体的に。
谷口 「でもやっぱり見える目標を立てるのは大事やったなって思います。今の状況からどんどん大きくしていかないと夢は叶えられないし、ヌルッてやってても腐っていくだけやなって感じた時期もあったし。今はすごくいいアルバムができて、これを届けたい!って気持ちもすごく強い。みずみずしくてすごく透き通ったエネルギーでやれてるんで、ちゃんと次の目標に向かっているなって思います」
――その目標を言葉にすると?
谷口 「やっぱり最終的には変わらず一番のバンドになりたい。それを具体的な言葉にするとなると難しいな…。〇〇でライブがしたい!かな。例えば『(KANA -BOON野外ワンマン ヨイサヨイサの)ただいまつり!(in 泉大津フェニックス)』をまたやれるようになりたいとか。ま、なかなか難しいなっていうのもありつつ(笑)、それをまたやるために今度のツアーを成功させなあかんしっていう」
――“やるぞ!”っていう感じが伝わってきます。今、楽しいのでは?
谷口 「そうですね。楽しいですね! 頑張れるし、頑張りたい」
――“これから”のバンドのよう。
谷口 「やっぱりアルバムができたことがいい作用になったんですよね。バンドをやる理由が今すごくシンプル。考えなくてもそれがちゃんと手に取るようにわかる。それが一番。このままのテンションでずっとやっていけるのが理想ですね」
――では最後に読者にメッセージを!
谷口 「いいツアーにします! ライブで渡したいものがたくさんあるし、伝えたいこともある。この状態のKANA-BOONを見て聴いてほしいですね。とにかく触れてほしいです」
古賀 「(『NAMiDA』の曲は)フェスとかで何曲かやってますけど、表に見えてない曲たちがたくさんいるので、ぜひワンマンを楽しみにしててください」
飯田 「いいアルバムができたっていう実感も手ごたえもめっちゃあります。試聴機でもYouTubeでもいいし、1曲でもいいし…。それだけでも今の感じって伝わると思います。どこを聴いても大丈夫です!」
小泉 「僕自身もバンドの状態も、ライブ・音楽に向き合う気持ちも今すごくいい状態。絶対に楽しいツアーになると思います。ぜひ僕らの音楽を聴きに来てください!」
(2017年11月 7日更新)
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