「挑戦をするなら早いうちにやりたい」 1stフルアルバム『SODA POP FANCLUB 1』でメジャーデビュー まもなく全国ツアーをスタートさせるサイダーガールインタビュー
聴けば思わずキュッと胸が締め付けられるような甘酸っぱい気持ちにしてくれる炭酸系ロックバンド・サイダーガール。彼らが記念すべき1stフルアルバム『SODA POP FANCLUB 1』を10月18日にリリース。インタビューでは思わぬ今作での“野望”(?)も飛び出し、顔出ししない3人の素を見せてくれたトークは、ファンだけでなく、彼らを「何者?」と思っていた人たちにも、ぜひご覧いただきたい。
――今年7月にデビュー、そして10月に1stフルアルバム『SODA POP FANCLUB 1』をリリース。この3か月いかがでしたか?
フジムラ(b) 「メジャーデビューして感じたのは、ラジオで流してもらったり雑誌で紹介してもらったり、僕たちを知らなかった人に聴いてもらえるようになったのがうれしいなと思います」
――それはライブなどで実感しますか?
フジムラ 「はい。あとはTwitterとかでも」
――『SODA POP FANCLUB 1』が店頭に並んでからは、Twitterにも感想が届いているのでは?
知(g) 「はい。レスポンスはすごく増えたなって思います。今回は今までになかった僕たちの一面を出したいっていうコンセプトで、いろんな人に僕たちを知ってもらいたいという思いを込めたので、その意図を読み取ってくれたリスナーの人がたくさんいらっしゃったのがうれしかったですね。いろいろ挑戦してるっていうのを受け取ってもらえたかなって思います」
――確かに、さまざまな曲が並んでいますね。
Yurin(vo&g) 「例えばこのジャンルが好きな人はこの曲が好き、あのジャンルが好きな人はあの曲が好きっていうような反応があって、それは作る意図として大正解というか狙ったところなので、すごくうれしいです」
知 「この曲だけが人気があるとかではなく、聴く人で好きな曲は分かれるかなって。収録曲それぞれに好きって言ってくれる人がいるって感じです」
――そんな表情豊かな今作。実は悩みに悩んだとお聞きしましたが…。
知 「そうですね。今年1月頃から制作を始めたんですけど、まずそこで、今までインディーズでやってきたサイダーガールのテイストをより尖らせて、それを自分たちの武器として一つもっていくのか? それとももっといろんなことに挑戦してこれからまた違うことをやろうとしていくのか? どっちにするのかをメンバーで話し合って悩んで…。それで後者に決めました」
Yurin 「挑戦をするなら早いうちにやりたいっていう気持ちがあったので、1stでできたことはすごく良かったなと思います」
知 「で、その後は、じゃあどの曲を入れようか?って選曲もありつつ、アレンジをスタジオで詰める時にも(悩んで)…。今までは、これまでどおりの(テイスト)があって、そこに乗っけようっていうので楽になってた部分もあったと思うんですけど、今回はそうでないところに進もうとした面があったので、そういう意味でどこまでの塩梅でとどめるのか、振り切るのか、みたいなのをすごく話したかなと思います」
――その塩梅は試行錯誤して…と?
Yurin 「そうですね、いろいろ試してはやめ、試してはやめっていうのはありましたね」
フジムラ 「今までにやったことがない感じの曲が多かったんで難しかったけど、でも楽しい方が大きくて…」
知 「うん」
フジムラ 「楽しんでできたから、いいアルバムになったかなと思います」
――特に苦戦した曲は?
Yurin 「楽曲面でいったら『ナイトクルージング』が、そのノリとか弾き方のニュアンスとかが大変だったかな。普段やらないリズム、テンポなので、そこにしっくりくるノリ方がなかなかできなくて。何回も試して、結局イントロとサビとアウトロで違う弾き方をしたり…」
フジムラ 「そう。歌のメロディとギターの弾き方を合わせたり…。これ僕が作った曲なんですけど、最初作った段階では結構バラバラな動きをしていて、これじゃ歌えない!ってなって、じゃあここはこうして…って一個一個やっていって全部がまとまるまでに時間がかかりました」
知 「細かい話をすると、シャッフルのパーセンテージとかそういうのでもノリ方って全然変わってくるから、そのノリを統一させるのが難しかったですね」
――『ナイトクルージング』はフジムラさんの曲ということですが、みなさんは3人が全員、曲を作りますよね。誰がどんな曲をどれくらい作るというのは、どうやって割り振っているんですか?
フジムラ 「それについてはそこまで厳密な打ち合わせをしたことはなくて…。メンバーそれぞれ得意なテンポだったり曲調だったりがあるんですよ。だからアルバムを作る前からデモを出していて、それを組み合わせてアルバムが形になることが多いですね。それで足りない部分は、じゃ俺が作るよっていう…。だから各自、割と作りたいものを作るっていうスタンスです」
Yurin 「最初は自由に作っていって、もうあと数曲入れたいなっていう段階で、みんなで話してこういう曲調があったらいいんじゃないかとか、こういうテンポがあったらいいんじゃないかっていう案を出して、それを補完していく感じです」
――では、1枚を強い一色でそろえる!という場合は作り難い?
Yurin 「いや、それに対する不安はないですね。コンセプトが決まっていたら決まっていたで、逆に僕らは作りやすいのかなと思います」
知 「今回も最初に決めたコンセプトがあって、そのうえでバラエティに富んだ曲を書いてみよう!っていう挑戦ができたし、インディーズの時も最初にコンセプトを決めてみんなで曲作りを始めるっていう感じだったので。たぶん、無意識にちょっと意識してるみたいな部分があるから、自分の好きなものを作るっていうのでできるというか…」
――そもそも3人の好みは似ているんですか?
フジムラ 「共通して好きな音楽も多いです」
知 「円図的にこうなって(重なって)ます」
フジムラ 「そこにプラス、それぞれのバッグボーンがあるみたいな感じですね」
――バラエティ豊かでもサイダーガール色がちゃんとあるのは、そういうところですか?
フジムラ 「曲を作る時、サイダーガール感っていうのは意識しないです。自然と同じ方向を向いている気がしますね。たぶんそれぞれのギターのサウンドだったり歌詞だったりで、肉付けされてサイダーガール感が出るのかな」
――なるほど。ちなみに今回自分以外が持ってきた曲で、ドキッとしたことはありましたか?
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知 「Yurinくんの『メランコリー』とかは、自分のなかではすごい飛び道具で…。結果的にはシュッてなったんですけど、最初自分じゃこういうのは持って来れないなって。デモ段階からギターソロが入っていたんですけど…」
Yurin & フジムラ 「…(笑)」
知 「それがちょっとへなちょこというか(笑)、力尽きてそのまま終わってる感じで…。そういうのもありつつ、でも自分の手癖にないフレーズが入ってたりするから、あ、こういうのは自分も吸収したいなって思って。それに、それをデモの段階でコピーするのとかがすごく楽しい! フジムラの曲だと『ナイトクルージング』とか『くらし』がそうなんですけど、自分がああいう曲調で作るともっとありふれた曲になりそうだなって。そういう自分がやらないことのある曲が多いですね。自分だったら、怖くて作れないな…みたいな曲」
フジムラ 「あ~(笑)」
知 「それをちゃんとバンッて出せるのがすごいなと…」
――お互いが良い刺激になってるんですね。
フジムラ 「みんなでいいものを作りたいっていう…仲間でありライバルであるというか。よし、みんなよりいい曲作ってやろう!っていうのが常にあるというか、刺激し合っていて楽しいです」
――今、知さんから見たYurinさんとフジムラさんの曲についてのコメントが出ましたが、逆に知さんの曲に対する感想は?
Yurin 「これは2人ともなんですけど…。僕は割と自分のことを話せないというか、曲でも深いところをさらけ出せないタイプなんです。でも何て言うんですかね…共感できるものを2人は出してくるんですよ。そういうのは僕にはできないなって思うのですごいなって思う。あと、この響きいいなって思って、コード感とかベースラインとかもよくマネします。どうやって弾いてるのかを聞いたりもするし」
知 「(結成から)3年間、刷り込みです(笑)」
――刷り込み(笑)。
知 「自分の好きなコードを、(Yurinの)後ろでポロポロって弾いて…(笑)」
Yurin 「最初コードとか全然わからなかったんで、2人から勉強して…。バンド始めてからの曲作りに関してはすごく2人に影響受けてます」
知 「うれしい(笑)!」
――3人が一つで成長している感じなんですね。で、話を少し戻して、さっきYurinさんから出た、共感できる曲というのは?
Yurin 「『なまけもの』とかですね」
――あ、確かに、あの曲の何もしたくない!というゆるゆる&ダラダラした感じには大いに共感できますね。
知 「本当はそういう人って多いと思いますし、自分ももちろんそうだから、そういう本当のところを見てほしいっていうのがすごいあって…。『エバーグリーン』という曲とかは、情景描写…誰でもパッと浮かぶワンシーンを意識して作ったんですけど、『なまけもの』は物語というより、みんなそうだよね!って…そういうのも見てほしい!っていう。そういう風に今回のアルバム制作から意識が変わったんです。特に歌詞とかが変わったんですけど、もっと自分のことをしゃべりたいなと思って」
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――なぜそう変わったんですか?
知 「メジャーデビューするってなった時、自分たちのことをもっと知ってもらわないといけないなって思ったんですよ。顔を出してないのは武器でもあるんですけど、このままだとナゾのままで終わっちゃう。で、そのナゾに興味を持ってくれた人に、自分たちのことをさらに知ってもらうのは楽曲だと思うんです。だから、この人ってやっぱりこういう人間なんだ!っていうのを歌詞とかでもわかってもらいたいなと…」
――聴く人との距離をもっと近くにと…。
知 「だから、もっと『なまけもの』を聴いたリスナーの方に“よしよし”されたいんです。それが2017年のテーマなんです(笑)」
――“よしよし”(笑)。
知 「そういうゆるっとなってるところ…それは、僕だけじゃなくてメンバーの魅力でもあると思ってて、そういうのを見てもらいたいなって。そういう意味で楽曲の“リアル感”みたいなものを(出したい)って」
――“リアル”という話で思い出しましたが、アルバムは“青春”が詰まった感じなので、3人は若いのかな?って思ったんです(笑)。実際お若いんですか?
知 「そんなに…若くもない(笑)」
――…にしてもフレッシュな感じ。
フジムラ 「若い頃にバンドをやってなかったんで、その時に言いたかったことを今言ってるのかな?って思います」
――2度目の青春(笑)?
フジムラ 「心の中は18歳(笑)」
知 「男は中学生で止まるから(笑)」
――じゃこの先も成長は…。
フジムラ 「…しません(笑)。体だけ老けていくけど、心はあの頃のままです!」
――永遠の18歳(笑)。でも、だからこそどんな人が聴いても胸がキュンとなるのかもしれないですね。
知 「そうですね。そういう意味でも幅広く聴いてもらいたいと思っているので」
Yurin 「最終的におじいちゃんとおばあちゃんをキュンとさせたいんです! 若返らせたい(笑)。そういう風に老若男女に聴いてもらいたいなっていうのが、バラエティに富んだものを作ろうっていうきっかけになったんです」
――確かに5歳は若返った気がします(笑)。
Yurin 「良かった! そう言ってもらえたら狙いどおりです(笑)」
――さて、11月18日(土)の大阪公演を皮切りに全13公演のツアーが始まりますね。
Yurin 「ライブでしかできないことをやっていくつもりです。音源では味わえない体験ができると思うので、楽しみにしていてほしいです」
フジムラ 「今回のような長尺のツアーは初めて。過去最長です。行ったことのない所も多くて、各地の人に会えるのも楽しみですね」
知 「関西地区は初ワンマンです」
――そうなんですね。ちなみにこれまでの関西でのライブの感触は?
Yurin 「熱量がすごいですね、大阪の人は。たくさんレスポンスをくれるので、やってて楽しい」
知 「優しい人が多い。イベントの後、2時間とかずっと待っててくれたり…。情に厚いというか、ずっと応援してくれる人たちも多いです」
Yurin 「熱心な人が多いですね」
フジムラ 「でも、笑いに関しては厳しいですね(笑)」
Yurin 「ま、我々の笑いのレベルがちょっと低いっていうのもあるんですけど(笑)」
――MCはゆるいんですね(笑)。
フジムラ 「ま、それに近い…(笑)。音楽はもちろんですけど、そういう部分でもお客さんの心をつかんでいきたいなと!」
知 「フジムラのMCのハードルをすごく上げておいてください(笑)」
――はい。MC楽しみ! フジムラさん責任重大(笑)。
フジムラ 「ヤバいですね(笑)」
知 「でも今自分で言ったんでね(笑)」
フジムラ 「そこはもう、僕の努力だと思います!」
――一瞬も見逃せないライブになりそう。
フジムラ 「そうですね。ライブの全部の時間で…」
知 「楽しんでもらえるように!」
――期待しています! ありがとうございました。
全員 「ありがとうございました!」
フジムラ 「…あ~。ちょっと怖いな~(笑)」
全員 「(笑)」
text by 服田昌子
(2017年11月 8日更新)
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