3rdフルアルバム「TALENT」をリリースしたRhythmic Toy World 新作やライブについて語る 内田直孝(vo&g)インタビュー&動画コメント
9月6日に3rdフルアルバム「TALENT」を発表したRhythmic Toy World。同作は初めてメンバーがサウンドプロデュースを務め、作詞作曲のすべてを行う内田直孝(vo&g)の世界観が凝縮されているという。…となれば、本人に話を聞くしかない! しかも写真を見ればやんちゃのトレードマークだった三つ編みをバッサリ切って、SNOWでかわいい耳とハートが付いている。一体彼に何があったのか。
――まずは…。髪切りましたね!
「バンドの歴史上では結構、髪型変わってるんですよ。最初はくるくるで短かくて、伸ばしてセンター分けのミディアムにしてバンドしてキリストって呼ばれて(笑)、そこから三つ編みに。〇〇期・〇〇期みたいに言えたらおもしろいよねって言ってたんですよね。だから三つ編みにした時から、いつか切るのは決まってて…。ただ一番インパクトがあって、アイコンとして走っていたから走らせておこうって2年ぐらいやって、ま、十分アイコンの役割を果たしてくれてから、いつ切る?ってなってたんですよ。でも満を持してみたいな時に切るのはダサいよね!と。例えば“メジャーします!”→“アー写公開”→“髪の毛切ってます!”って(笑)。なんか長いものに巻かれてる感じは、このバンドには合ってない。もっといつまでも大人に牙をむくぞ!というスタイルだから。で、どうする?ってことで、誰も想像しないタイミングで切るのがいい!って、「『HEY!』」のツアーファイナル前日に切りました。ファイナルって、だいたいワーッて始まるじゃないですか、でもどよめきからという(笑)。開始3曲ぐらいまでザワザワしてましたね。しかも過去最大のキャパだったんで後ろの人は遠くて現状が理解できない。声は僕だけど…あれ?みたいな(笑)」
――そういう流れだったんですね。何かあったかと…(笑)。
「逆に何もなかったんです(笑)。深読みする人もいますからね。意味が隠されているんじゃないか?って。今のアー写はなぜネズミなんだろう?みたいな。でも、SNOWが流行っているうちにやっておこう!と。“旬のものは旬のうちに”。アルカラの(稲村)太佑さんの格言です(笑)」
――SNOWの写真を見て、深読みしながら「TALENT」を聴くと1曲目の「未来ワンダー」で、方向性が変わった?と思ってびっくりしますよね。
「キラキラした感じとかね。実は1曲目は遊園地の入口にしたかったんですよ。入口って派手な方がいいじゃないですか。ドキドキワクワクしたい。キラキラしたあの瞬間を1曲目にしたかった。だから音楽的にこういうサウンドをやっていきたいとかではまったくない(笑)」
――遊園地の入り口だったとは。
「「TALENT」はディズニーシーっぽいんですよ」
――…?
「入園する時ってみんなキラキラしてすごい。で、ショップとか並んでて、で、2曲目が「JIGOKU」。タワー・オブ・テラーなんですよね(笑)。ちょっと激しい。最初あんだけみんなワーッて言って、頭にこんなん(カチューシャ)付けて、ポップコーンとか食べてるのに、でも絶叫マシンに乗る!みたいな(笑)。それってすごくないですか? でもトータルで楽しい。だから今回のアルバムはそういうテーマパーク感があるんですよね。最後の「ユメイロ (TALENT Ver.)」は家に帰ってからとか、みんなと別れた後とか。イメージはそういう感じ」
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――確かに。いろいろな聴きどころが散りばめられている感じですよね。あと、うまく言えないのですが…どこかスッキリした印象を受けました。
「あ~、デトックス感はありますね。なんですかね、やっぱり今回セルフプロデュースっていうのが大きいかなと思います。これまではプロデューサーと二人三脚で、アレンジとか楽曲の方向性とか、いろんな意見をもらったり手伝ってもらったりしてやってきてたので、でき上がった時に自分が最初に思ったものと違ったものになることって結構あったんですよね。もちろんすべて良い方向に変わるんですけど。ただ、今回に関しては自分がパーンッとこういう曲!って思い付いたものに限りなく近い状態で完成できてるんで、そういう部分が気持ちとして乗ってるのかもしれないですね」
――迷いがない?
「迷いというより、ハメどころがわかってるというか。ここが一番おいしいとか、ここが一番上がるなとか。それがベースとしてあって、歌詞やメロディとかもうまくハメられる。そういうのがスッキリした感じとかになってるのかな」
――では今回は頭の中の段階で、よりしっかり完成形が見えていたということですか?
「頭の中で…。いや、そこは今までと変わらなかったです。思い付きじゃないですか、作るっていうのは。感じ方とかは昨日も今日も明日も変わるわけで…。昨日はこれがいいと思ったけど、今日はもっと挑戦したいなとか。作り手の人はみんなそうだと思うけど、どんどん客観的な感覚がなくなっていくというか、どんどん自分的なものになって、そうなると突拍子もないアイデアとかになりがち。で、それをメンバーがちゃんと軌道修正してくれるという作業が繰り返されましたね」
――ということは、いつもよりメンバーとのやり取りが増えた?
「増えましたね。だいたい頭の中のイメージってゲルニカ(ピカソの絵画)みたいな感じなんですよ。どこが前なのか右なのか…ああいう感じ。それを出す時にきれいに描く作業が、作曲・作詞やと思うんですよね。そのノウハウみたいなのを今まで教授してもらってやってきたんです。そうやってやってたんですけど、今回たまにゲルニカのまま出ちゃうことがあって、メンバーが“これはどっちが前なの?”“こっちは黒なの? 白なの??”って言って、“こっちは黒かな。こっちは白かな”って。“だったらこうした方が伝わりやすそうだよ”っていう…。メンバーがリスナーに近い状態で見てくれる感じです」
――今回、他のメンバーはいつもより客観視していたかも?
「だと思います。だから思いっきりやれる。自分でもやり過ぎてる感覚とかはあるんですよ。でも、辿り着きたい場所があって、その先まで行っても、目的地まで削ることはできる。だけど初めから先まで行くのを止めちゃうと、目的地に行けない。だから振り切ってみんなに削ってもらう…みたいな。そうすると自分のやりたかったことに100%近い状態になるし、自分も周りも納得できる」
――ハイカロリーな作業ですね。
「何て言うんですかね…気持ち悪い…ドクターフィッシュみたいな感じ(笑)。気持ち悪いけど気持ちいい。ハイカロリーだけど、その不気味さがいい。いやいやこれはね~!やり過ぎって思う自分もいるんです。でも、これはね~!のそのゾクゾクする瞬間とかを一回人に体験してもらう。ね、気持ち悪いでしょ~?変でしょ~??って。で、やっぱ変やんね~!みたいな。それが楽しい。だから絶対これにしたい!とかは一切ないんですよね」
――じゃ、行き過ぎを調整する間に形が見えてくるんですね。でも、調整の大小の差はありそうですよね。
「それこそ1曲目は頭の中のまんま。なんかわかんないけど、めっちゃいいね!って(笑)。逆に『フラッシュバック』は変わっていきましたね」
――この曲はどんどん展開して初期の頃っぽいですね。
「もう本当に昔の僕。高校生の僕が好きそうな曲を作ろうと思って。当時の僕がカッコいいと思う要素をいっぱい入れました。展開が多いんですけど、実はその展開がラストサビの前くらいで行き過ぎてたところがあったんですよ。一回お花畑みたいな…テュン、テュンテュンテュンみたいな雰囲気を出したい!って言って(笑)」
――お花畑?
「僕のイメージでは映画の『グラディエーター』の主人公が、死にそうな戦いの最中、草原みたいな所で夕日に包まれてサーッて精神世界に入るシーン。一瞬パーンッ!みたいなのがあって、その感じ!ってメンバーに伝えて…。最初は理解しようとしてくれたんですけど、やっぱり変…ってなって。“そうやんね。俺もそう思う。ライブしんどそうやもんな”って(笑)」
――そんな紆余曲折が…(笑)。でも、アルバムとしてもこれまでバンドが通ってきたさまざまな要素が散りばめられている感じもします。年齢不詳というか…。
「あ、でも精神年齢は下がったと思いますね」
――前作「『HEY!』」の方が高かった?
「そう思います。「『HEY!』」は曲としては楽しいとかハッピーとか、すごく明るいものなんですけど、あれって精神年齢は高いんですよね。歌詞も自分と同年代よりもちょっと上に向けて書いているというか。もともと(収録曲の)「輝きだす」がシングルとしてあったんですけど、そこが狙った層…僕らと同じぐらいの社会人4年目以降とかの、ちょっとやり方も抜き方もわかりつつ、でもなんか捨てきれないっていう人たちに向けた曲ばかりだったんですよ。だから曲は“Yeah”みたいになってるかもしれないけど、精神年齢は高い。でも「TALENT」はさっき言った高校生の自分が好きそうな曲とか、少し下の年代の人たちにも聴いてもらいたかったんですよね。ライブに来てくれる人の幅が、今ちょっと上に広がって家族連れの人も増えてきたんですよね。じゃあせっかくやし20歳より下の世代にも聴いてもらえるような楽曲性みたいなものにアンテナ張ってみようって。だから、自分の精神年齢も若くしたんです」
――無邪気に楽しい「『HEY!』」と多彩な「TALENT」で、精神年齢は逆かと思いきや…。
「ちょっと語弊があるかもしれないけど、おもしろい・楽しいのカテゴリーで言うと芸人さんとYouTuberって一緒だと思う。でも芸人さんは(年齢が)上の層が支持することが多いじゃないですか。で、YouTuberは低年齢から支持を集める。それが今言ってることなんですよね。精神年齢が高い方…「『HEY!』」の楽しいっていうのは芸人さんみたいなこと。だって、芸人さんってめちゃ頭いいじゃないですか? この間だったら人はクスっと笑うやろうなとか、経験と技術とすべてを研ぎ澄まして、人に対して楽しいを提供する。逆にYouTuberは、まず自分が楽しいこと…一番先にやってみたい!とか、絶対ほかにもやりたい人いるよな?みたいなことがきっかけで、おもしろいを発信する。それはみんなが小さい頃に持ってたもので…」
――好奇心?
「そう。それに憧れるみたいなもの。そういう形で今回は(楽しいを)提供したかったんですよね。そうすれば前のアルバムも愛せるし、今回のアルバムも愛せる…違う楽しいを提供できる。そうじゃないと何枚もアルバムを出す意味がないかなって。言い方は難しいけど「『HEY!』」を聴いて、いいバンドやねぐらいに思っていた人が、「TALENT」を聴いてめっちゃいいバンド!って思ってくれて、で、「『HEY!』」をめっちゃいい!と思った人が「TALENT」を聴いて、このバンドやっぱりいいね…みたいな塩梅。やっぱりね、少しでも多くの人にこれから先も聴いてもらいたいから。だから自分たちで狭めるべきではないと思うんですよ。このバンドはこういうバンドやから!ってなると、どんどんその人たちしか聴かなくなっちゃうと思う気がする。そういう意味で新たな入口…自分たち(過去の作品で反応しなかった人)も聴けるかも!みたいなきっかけ。それがやりたかったんですよね」
――さて。そろそろツアーの話も…。
「少し前に今まで出した曲をほぼほぼ全部やるというツアー(『ジキルとハイド ~NO RHYTHMIC NO LIFE~」』を東名阪でやったんです。それが僕らのライブバンドとしての考え方や経験みたいなものを、すごく上げてくれたんですよね。わかっていたことなんですけど忘れがちだったこと…音楽の楽しみ方、聴き方、盛り上がり方って本当に人それぞれで、例えば手を挙げる人挙げない人がいる、でも手を挙げない人が一番興奮していることだってある。そういうのを心底感じることができたんです』
――どんな風に?
「(ツアーは)おとなしい曲しかやらない日、激しい曲しかやらない日って分けたんですよ。で、前者はほとんど最近やってない曲ばっかりで…。それでも普段来てくれているお客さんがすごく満足してくれた。ということは、自分たちを愛してくれている半分を実は自分たちで使ってなかったような気がするというか」
――見えている反応がすべてじゃなかった?
「そうです。じゃ、こことここ(大人しい曲と激しい曲)をもう一度一つにして、1回のライブで提供することは、自分たちの魅力を今までの2倍で届けることができるんじゃないか!って、セットリストの組み方も変わったんですよ。前半後半にしたりとか、最初はすごくいい曲…みたいな感じで始まって最後の曲は気付いたらお客さんの上で飛んでる!みたいな。あれ? 最初こんなんやったっけ?という。でもそれが、僕らの楽曲の力でバンドがやりたかったこと…っていうのを、いいタイミングで改めて自分たちで感じることができたんです。だから今回のツアーは、対バン形式の時は、対バンさんもいろんなジャンルの方がいて、そしてワンマンはワンマンで、新曲と今までの曲のなかから自由自在に組み込む状態になります。確実にこれまでのツアーと内容も感じ方も持って帰るものも違うと思いますね。ライブってスゲーッ!て、思ってもらえるようなものを届けたいと思っているので、ぜひ来てください!」
text by 服田昌子
(2017年10月30日更新)
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