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結成10周年を迎え、アルバムリリース&ワンマンツアー開催
映画『トリガール!』の主題歌/挿入歌も担当と
2017年を駆け抜けるねごとの
蒼山幸子(vo&key)と沙田瑞紀(g)にインタビュー

今年結成10周年を迎え、2月にアルバム『ETERNALBEAT』を発表すると共に、ワンマンツアー『TOUR 2017 ETERNALBEAT』を開催。6月には中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)サウンドプロデュースによるニューシングル『DANCER IN THE HANABIRA』で新たな進化を提示するなど、2017年は精力的に動いてきたねごと。各地の夏フェス出演を経て、9月1日から全国公開中の映画『トリガール!』の主題歌/挿入歌となった両A面シングル『空も飛べるはず/ALL RIGHT』を8月30日にリリース。『空も飛べるはず』は言わずと知れたスピッツの名曲の初カバー、一方の『ALL RIGHT』は映画のための書き下ろし曲となる。そのリリースの経緯や今作に反映されたバンドの現在地とこれからについて、蒼山幸子(vo&key)と沙田瑞紀(g)に訊いた。


――映画『トリガール!』の主題歌として、スピッツの『空も飛べるはず』を初カバーされましたね。
 
蒼山「今回は監督さんから直々にお話しをいただいて。まず、『いいんですか?』っていう感じだったんですけど。スピッツサイドに確認していただいたところ、『ねごとだったらいいよ』って言ってくださったというのを聞いて、しっかりやろうと思いましたね」
 
沙田「私たちの世代は小学校の合唱曲として使われていたような曲だったので、そんな日が来るのかとびっくりしたんですけど。私自身も大好きな曲だったので、お話があった時点ですぐに、“どんなアレンジでどんな風に録ろうかな”って考えてました」
 
――アレンジは沙田さんが中心になって?
 
沙田「そうですね。だいたいこういう曲にしようっていうのはメンバーで共有しておくんですけど、知っている方も知らない方も、『このカバー好きだな』って思えるような、すっと入ってこれる楽曲にしたくて。けっこうストレートでナチュラルな感じになりましたね。イントロからのリフやギターソロとか、メインとなることは大きくは変えずに作れたので、自分たちとしても納得がいっています」
 
――“グランジ感を出した”っていう発言も他の記事で読みましたが。そのあたりは?
 
沙田「ああ、それはガールズバンドならではの悩みなのかもしれないですけど、そのままポップにやると、ちょっと軽く聞こえてしまうんじゃないかと…。ねごとは割とオルタナとかグランジの要素が強かったバンドなので、その色が出ればいいかなというところはありましたね」
 
蒼山「意識してというより、元々そういう世界観が好きなんだと思うんです」
 
――映画はコメディタッチで、人力飛行の『鳥人間コンテスト』に向かって加速していく内容ですけど、エンドロールで『空も飛べるはず』が流れると、ホッと着地できます。蒼山さんのボーカルも気負わず愛情を込めて歌っている印象ですが、実際レコーディングの時はどうでしたか?
 
蒼山「もう本当にその通りというか、もともとスピッツの曲自体が好きなので、自分の色を出そうっていうよりは、曲の中に溶け込むような感じで歌いました」
 
――今回、両A面ということで、『ALL RIGHT』の方はねごとのオリジナルとして書き下ろされた新曲ですね。この曲は実際に映画の中で挿入歌として流れるシーンを観て制作されたそうですね。
 

 
蒼山「監督さんから具体的なオーダーをお聞きして、疾走感や透明感、みずみずしい感じのバンド然としたサウンドの方が合うのかなっていうのがあったので。それと今のエレクトロな路線とのバランスみたいなのを(沙田)瑞紀が考えながらトラックは作っていった感じですね」
 
沙田「監督がお好きだとおっしゃっていた自分たちの曲を聴き直して、自分も原点回帰しながらアレンジしました。基本的にはバンドサウンドなんですけど、今の自分たちの味付けとしてシンセの音色を加えて、少しアッパーに聞こえるようなトラックになりました。新しい挑戦だったので、映像とはまった時は、“ああよかった!”って思いましたね。これは自分たちでもすごく演奏したいし、堂々と観てもらいたいなっていう気持ちになれました」
 
蒼山「ある意味、初期のねごとっぽい要素がすごく盛り込まれている曲でもあって。6月に自主企画のイベントで2曲とも披露した時、『ALL RIGHT』の方がお客さんの飲み込みが早くて。多分、ねごとを好きな人が、“これがねごとだ”っていう要素が大きく占めてる曲なんだなって。ライブでもキラーチューンになりそうな感じですね」
 
――歌詞は映画の内容ともリンクする内容ではあると思いますが、ご自身の今の思いも込めながら書いたんですか?
 
蒼山「そうですね。映画の中で(土屋)太鳳ちゃんが演じてるのはとても強気な女の子なので、“ALL RIGHT”っていう言葉がぴったりだなって。一方でねごとの曲なので、今の自分が思ってる素直な気持ちが入れられたらいいなっていうのがありました。ねごとは今年で結成10周年で。振り返ってみたら、それなりにいろんなことを超えてきたので。ここまで来れたっていうことは、何か超え方や飛び方を学習してきてるっていうことだから。“大丈夫”っていうことを言える曲だったらいいなと思って」
 
――自分たち自身に向けたポジティブなメッセージでもあると?
 
蒼山「そういうことを意識して書いたわけではないですけど。絶対にリアルな気持ちは反映されると思うので。バンドとしては、“前を向いてるよ”っていうのが出ているのかなと思いますね」
 
沙田「久しぶりにアップテンポの曲で、幸子のポジティブな部分がちゃんと言葉になって出てるし、サビだけで伝えるというより、丸ごと、“ALL RIGHT”って言ってる感じで、それが気持ちいいなって思います」
 
――ねごとは今年結成10年というお話が出ましたが、これまでを振り返ってみたりしましたか?
 
蒼山「10年前に『閃光ライオット』に出た時の映像を目の当たりにすることがあって、すごい下手だなと思って(笑)。あの頃は、もうエモーショナルだけで駆け抜けてました(笑)」
 
沙田「最初はね…」
 
――結成したのは高校生の時ですよね?
 
蒼山「高校2年生の冬に結成して、デビューが19、20歳でしたね」
 
――その時の情熱は何に向かってたんですか?
 
蒼山「実は、“プロになりたい!”って思ってたわけでもなくて…」
 
沙田「“音楽って楽しい〜!”みたいな、それだけでやってきたことが、こんなに広がっていって、自分の力で歩いていくものになるとは思ってなかったですね」
 
――シーン全体でも、女性だけのバンドって少ないし、10年15年って長く続けていけるバンドも少ないと思いますが。これからはどういう意識でやっていこうと思っていますか?
 
沙田「あんまりガールズバンドだからとか意識してなくて。音楽が好きな4人が集まったら、それがたまたま全員女の子だったっていう感じなので。“ガールズバンドの中で生き残っていく”とか、“女の頂点を目指すぜ!”とかではなくて(笑)。それより、もっとどういう風にすればねごととして音楽が楽しめるかとか、ねごととしてどういうものが生まれていくのかっていうことを楽しんでるバンドなので。もっと自然な感じが伝わったらいいなと思ってます」
 
――純粋にバンドとして音楽を楽しんでいる姿勢を伝えたいと?
 
沙田「うん。人間としてというか(笑)。そういう風に枠を飛び越えていけたら、もっといい景色が見えるのかなって思いますね」
 
蒼山「この4人でいたら面白い音楽ができるんじゃないかっていう予感をずっと追いかけてきたら10年経っていたっていう感じなので。それが続く限りはやっていきたいなという気持ちはありますね。せっかくこういうフィールドで音楽をやってるからにはねごとを知らない人に、もっと自分たちの世界に飛び込んできてもらえるような説得力があるバンドになりたいなと思うので。これからも本当に一歩ずつ、ちゃんと踏みしめていけたらなって思っています」
 
――初期の頃のねごとのライブには緊張感のようなものを感じてたんですけど。近年はメンバー自身ものびのびとライブを楽しんでいるようです。
 
沙田「初期の頃は、“ミスしないように上手に演奏しないと”とか、“うまく歌わないと!”って気を張ってた気がしてて。それ以上に、もっと音楽を楽しむっていうことが一番大きな部分だよなって、サードアルバム作った時に思ったので。そこから、どんどん今の形に成長できてたらいいかなって…」
 
――それはライブをやることで獲得してきたことでもある?
 
蒼山「それもあるとは思いますね。やっぱりツアーとかイベントを重ねるたびにお客さんとの距離を年々近く感じられるようになってきていて。以前はもっとお客さんを煽ったりすることにトライしてた時期もあるんですけど。最近のねごとはダンスビートでつないでいったりして、基本的には横ノリの中で、どれだけ浸ってもらえるかっていうライブの作り方をしてるんですけど。自分がその中に浸れば浸るほど、人と繋がれるような感覚っていうのが強くなってきてる気がします」
 
――最近のライブではライティングとも合わさってより進化した、ねごとならではの世界観に引き込まれます。
 
蒼山「照明や映像が映える曲調が増えてきたので。ねごとの世界観をライブでもっと立体的に感じてもらえるように、照明や映像も含めたチームとして作るようになってきました」
 
――この秋以降の展開も気になります。
 
蒼山「今年は2月にアルバム『ETERNALBEAT』を出して、ツアーをやって、6月に『DANCER IN THE HANABIRA』を出して、さらに8月に今回のシングルを出していて。けっこう精力的に駆け抜けてきたので、この速度のまま、2017年は最後まで行きたいなと思ってます。そうしたいなと思って始まった1年だったので」
 
沙田「ライブはどんどんやっていきたいですね。やっぱり作る楽曲に自信が持てれば持てるほど、ライブって良くなっていくんだなっていうのが感じられて、堂々とやれるようになってきたので。本当にその楽曲を心から聴いてほしいなと思って演奏してるか否かってすごく大きな問題だなって実感してます。音源もたくさん作りたいし、それに伴ってライブもたくさんやっていって、どんどん大きくなっていけたらいいなって思ってます」

text by エイミー野中



(2017年10月 6日更新)


Check

Release

Single
『空も飛べるはず / ALL RIGHT』
発売中
KMU

【初回生産限定盤(CD+DVD)】
1300円(税別)
KSCL-2964~KSCL-2965

【通常盤(CDのみ)】
1000円(税別)
KSCL-2966

<CD収録曲>
01. 空も飛べるはず
02. ALL RIGHT
03. 空も飛べるはず -Instrumental-
04. ALL RIGHT -Instrumental-

<DVD収録曲>
01. 空も飛べるはず -Music Video-
02. ALL RIGHT -Music Video-

Profile

ねごと…インディーロック、オルタナティヴロック、フォークロック、シンセポップ、ドリームポップ、エレクトロニカ、ダンスミュージック、様々な音楽ジャンルにインスパイアされ、自由な音楽を奏でる変幻自在実力派エレクトロニック ロック バンド、ねごと。 「儚さ」と「力強さ」を兼ね備えた透明感溢れる歌声を持つ蒼山幸子(vo&key)と、バンドのサウンドクリエイトを全面的に手掛ける沙田瑞紀(g)を中心に、踊るようなベースラインを奏でる藤咲佑(b)と、幾多のアーティストからも客演で呼ばれるほどの実力派ドラマー 澤村小夜子(ds)からなる4人組。10代限定の夏フェス「閃光ライオット」で審査員特別賞を受賞、10代の頃から注目を集め、大型フェスにも多数出演。2016年、中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)をサウンドプロデューサーに迎えた『アシンメトリ e.p.』をリリースし、ねごと流ダンスミュージックという新しい一面を開花させる。その後、2017年2月にはアルバム『ETERNALBEAT』を完成させ、その真価を発揮。アルバムを引っ提げて全国10カ所にて、ワンマンツアー“TOUR 2017 ETERNALBEAT”を開催した。そして、『ETERNALBEAT』をさらに後押しする、中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)サウンドプロデュースによるNew Single『DANCER IN THE HANABIRA』を6月にリリース。さらに、今夏、映画『トリガール!』の主題歌 / 挿入歌を担当! 主題歌は、スピッツの名曲『空も飛べるはず』をカバー、挿入歌はねごとオリジナルの新曲『ALL RIGHT』。8月30日に、Double A Side Single『空も飛べるはず / ALL RIGHT』としてリリースした。

オフィシャルサイト
http://www.negoto.com/


Live

【東京公演】
『SUPER SHIBUYA EXPO LIVE』
チケット発売中 Pコード:342-490
▼10月20日(金) 22:00
TSUTAYA O-EAST
オールスタンディング-3500円(ドリンク代別途必要)
[出演]小室哲哉/ねごと/SLY MONGOOSE [DJ]石野卓球/川辺ヒロシ/Elli Arakawa/MONKEY TIMERS [VJ]DEVICEGIRLS
※この公演はオールナイトイベントです。20歳未満は入場不可。要顔写真付身分証明書。
[問]ホットスタッフ・プロモーション
■03-5720-9999

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【佐賀公演】
『佐賀さいこうフェス2017』

▼10月22日(日)
佐賀城本丸歴史館周辺


『第14回 東京国際ミュージック・マーケット 14th TOKYO INTERNATIONAL MUSIC MARKET LIVE』
チケット発売中 Pコード:344-305
▼10月23日(月) 18:30
TSUTAYA O-EAST
スタンディング-2000円(ドリンク代別途必要)
[出演]The Idol Formerly Known As LADYBABY/亜咲花/Anly/SILENT SIREN/ねごと/ほのかりん
※3歳以上はチケット必要。
※チケットは1人4枚まで。
[問]ホットスタッフ・プロモーション
■03-5720-9999

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【新潟公演】
『ストレイテナー BROKEN SCENE TOUR 2017 AW』

▼11月18日(土)
新潟LOTS

【北海道公演】
『mole 11th Anniversary × FPP LIVE GO!NEXT23』

▼11月26日(日)
札幌Sound Lab mole

【愛知公演】
『MERRY ROCK PARADE 2017』

▼12月23日(土)・24日(日)
ポートメッセ名古屋
※ねごとの出演日は後日発表


学園祭にも出演!

【鳥取公演】
▼10月8日(日)
鳥取大学学園祭「風紋祭」
【東京公演】
▼10月15日(日)
武蔵野大学武蔵野キャンパス「第50回摩耶祭」
【富山公演】
▼10月28日(土)
富山県立大学「第28回県大祭」

徳島大学常三島キャンパス「常三島祭」
四星球/ねごと

発売中 Pコード:637-128
▼11月4日(土) 17:30
徳島大学常三島キャンパス 体育館
オールスタンディング-2500円(整理番号付)
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]FM徳島■088-656-2111

チケット情報はこちら

【京都公演】
▼11月5日(日)
京都産業大学「第52回神山祭」

Comment!!

ライターエイミー野中さんからの
オススメコメントはコチラ!!

結成10周年を迎えたメンバーに、改めてお互いの関係性について尋ねてみると、「それぞれの考え方や嗜好を尊重していて、それが合わさった時に一つの景色が見えるようになればいいなと」(沙田)「一人一人がちゃんと立っていて、あまり寄りかからない感じ。基本的にはストイックというか、個っていうものを大事にしてます。そういう関係だったから、10年続いてきたというのは絶対あると思う」(蒼山)という言葉が聞けて、なるほど!と納得。そんな風にお互いを尊重しつつ、一人一人がストイックな姿勢でバンドの世界観を創り上げてきたからこそ、ねごと独特のポップでありながらもエッジがあるクリエイションやパワフルなライブを可能にしているんですね。10年というひとつの節目に、偉大な先輩の大名曲を初カバーするというのは、ねごとにとっても大きな意味があっただろうし、ここからさらなる進化と広がりを見せてくれそうな予感がします。