ジャンルの垣根や既存のレールをブチ壊し 彼らだけのフィールドを自由に開拓した 『Hello Chaos!!!!』を携え、東名阪ツアーも決定! パノラマパナマタウンインタビュー&動画コメント
今春、大学を卒業し神戸から上京。そしてメンバーで共同生活を始めたパノラマパナマタウン。そんな変化のなかで作られた一枚『Hello Chaos!!!!』には、いったいどんな“Chaos=混沌”が描かれているのか? 今まさに勝負時の4人に話を聞いた。
――3rdミニアルバム『Hello Chaos!!!!』がリリースされました。まずこの作品にはどんなテーマがあったかを教えてください。
岩渕 「“届ける作品”にしようという意識がありました。だから曲もポップなものにしたかったし、歌詞も人に届くことを大切にしましたね。実は前作『PROPOSE』(2ndミニアルバム)は“僕らがやりたいことはこれなんで、届く人に届けばいいや!”って作ったんです。ある程度尖ったものでも届くだろうと思ったし音楽シーンを変えられるんじゃないかって思って。でもそういう反響がなかったというのが正直なところで、もっと届けようとしないと届かないのかなと思ったんですよね」
――前作から学んだ部分ですね。
岩渕 「そもそも僕らは、どういうバンドになりたい!とかそういうのがそこまでなかったんです。他と違うことがしたいっていうのはメンバー共通であったんですけど、それ以上の具体的なものはなくて…。それで良かったこともあるんですけどね。例えば自分たちの得体の知れなさとか、いろんなジャンルを混ぜて聴いたことのないものを生み出せたこととか。でも、自分たちの中で咀嚼できていなかった……4人で一つの方向を向く感覚がちょっと薄かったかなって思います」
田野 「確かに前作までは綿密にどんな作品にしよう?という話をする時間が少なかったと思います。それが『Hello Chaos!!!!』は、作るタイミングがちょうど大学を出てバンド一本でやっていくぞ!という覚悟を決めた時だったこともあって、もっと話し合ってちゃんと決めてから臨めたと思います」
岩渕 「4人が意思統一するという作業を、今までの作品とは比べものにならないくらいしました。音を出す前も出してからも。だから4人の姿勢や思いは少しもずれなくできたと思います」
――ちなみに以前はどんな感じで制作を?
岩渕 「全体の意思というより個々の意思を出しまくって……ま、そこまでワンマンではなかったにせよ、各々がやりたいことを詰め込んで曲ができましたって感じですね。人のことを見る余裕もなかったかな」
田村 「その余裕は本当になかったね(笑)」
田野 「それくらい直感的にやってました」
岩渕 「無邪気でしたね。純粋にカッコイイと思うものを4人で、せーの!で合わせて気持ちの良い方向に持っていく感じです」
――純粋さゆえに前作の反響が残念だったんですね。
岩渕 「当時は根拠のない自信が大きくて、そのまま突き進んでいたという(笑)。それが一回壁にぶち当った。一番悩ましかったのは、どういう音楽をしてるんですか?って聞かれた時に答えられなかったことですね。歯がゆかったし、意識を持って自分らの作りたい音楽をやんないと先がないなと思いました。無邪気でやれるのかもしれないけど、その先も創作意欲が湧いて……というのは難しいし、大学を出て一生バンドやる!って時に、それで続くのかな?と思ったんです。作りたいものを作った、でも届かなかった、じゃまた作ろう!っていうのではバンドとしてやっていけないと思ったんですよね」
――伝わることに重きをおくとわかりやすさが求められると思いますが、自分たちのやりたいこととのバランスはどう取りましたか?
岩渕 「届けるためにやりたいことを我慢したって感覚は全然ないですね。あくまでやりたいことを伝える……やりたいことが先にある。だからバランスみたいなことは考えなかったですね。それにもっとコアなものを作りたかったっていう感覚もないです」
田野 「制作していた時は、ひたすらにわかりやすいものを作りたかったって感じです。自分たちでもその曲に対してちゃんと解析ができて、ちゃんと語れて、ルーツも見えていて、それをわかりやすい作品として出すってことかな。前までは自分たちでも得体のわからない曲ができてしまっていた。これがわかり難かったということですね」
――自分たちがわかっているから伝えられる。前は伝えたいことがわかっていなかったと……。
田野 「そうですね。今回はちゃんと確信的に曲を作るということが初めてできた作品です」
岩渕 「変な話、ファンの人に“大人にポップなものを作れって言われたの?”ってたまに言われるんですけど(笑)、そんなことはまったくなくて。本当に自分たちがわかるものを……そういう意味でわかりやすいものを作りたいっていうモードだったんです。自分たちのことを知ってほしいし届けたい。まだ聴いたことのない人に対しても曲を伝えたい。そういうのが強かったですね。100人、200人に刺さればいいとか、コアな音楽好きだけが聴いてくれればいいという意識で今バンドをやってないですね。もっともっと多くの人に……こういう言い方はどうかなとも思うけど、僕らはミュージックステーションに出られるバンドだと思うし、そういうバンドになりたいし、限られた人だけに聴かれるバンドで満足したくなかった。それはやっぱり覚悟ですかね。“バンド一本でやる。上京して4人で暮らすぞ”っていう。一生バンドやりたいですから」
――それでは順に曲の話を。1曲目は自己紹介的な『PPT』。メンバー一人一人のことが歌われています。作詞が楽しそうですね。
岩渕 「普通に……恥ずかしかったです(笑)」
――逆に詞に書かれた方の感想は?
田野 「恥ずかしかったです(笑)。これレコーディングまで詞の詳細を知らなくて、ブースから聴こえてくるのを聴いて“あ、こういう感じなんや”って」
岩渕 「言わずにやりました(笑)」
田野 「僕に関しては“未だ分かんねえ”って言われてて、そのとおりだなと(笑)。僕も自分がわかんないです」
田村 「僕はあまり恥ずかしいとかはなかったですね。“地元広島を愛してます”とか、基本情報なので(笑)」
岩渕 「ま、曲なんで、4人の間でも言ったことのないような内面を掘り下げてもしょうがないかなと……(笑)」
――でもそれもちょっと聴いてみたいです。
岩渕 「そしたらちょっと8小節じゃ足りないです(笑)」
――確かに。そして2曲目はリード曲『リバティーリバティー』。ライブで盛り上がるナンバーです。
田野 「そうですね。音源はもちろんですけど、ライブで届くのが大事だなって。フェスのオープニングとかに出させてもらって大勢の前でやると、届かないなっていうのを感じることが多かったんです。だからライブで心をつかめる曲が必要だと。届く曲が一曲あればもっと戦えるのに!っていうので、一回聴いただけでもとりこにできる曲を!って作りました」
岩渕 「遠くで歩いている人とかご飯を食べてる人とか、そういう人もこの曲になったら集まってくれるんです。1コーラス終わったら“人増えてるやん!”っていう。そういうのはこの曲の力だと思います」
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――3曲目はエンターテイメントではなく『エンターテイネント』。
岩渕 「エンタテインメントに対する諦めを歌った曲なんです。今のエンタテインメントってなんでこうなの?っていう諦め。その諦めの感情、諦念(ていねん)がかかってるんです」
――これもキャッチーですよね。
岩渕 「ポップで明るい曲だからこそ、のせられる詞だと思います。ちょっと批判めいてるというか……。でもそれは言いたいことだったし、そういうことをエッジの立った曲にのっけると、ちゃんと表現になるなと思ったんです。明るく突き抜けた曲だからダークなことを言ってもおもしろいなって」
――そして4曲目から雰囲気がガラリと変わります。
岩渕 「そうですね。最初に明るくポップなアルバムにしようというコンセプトがあって、そういう曲を作って5曲入れようと思っていたんです。でも、今思えば時期的に、大学卒業して今からバンドをやっていく。でもそのバンドもこの先どうなるかわかんないっていうタイミングで……それは最後の『odyssey』(M-5)で言っていることなんですけど……そんなセンチメンタルな時期に、そこまで能天気に最後まで騒ぎ倒せなかったという。その時に思っていたものが出てしまったんですね(笑)」
――なるほど。そんな4曲目は『パン屋の帰り』で初のラブソング。それまではラブソングは敬遠していたんですか?
岩渕 「例えば歌詞に書きたいことを探す時、題材が壺にあるとするじゃないですか。で、僕にとって恋愛ってすごく大きい壺なんでいつも目に付く所にはあるんです。でも恋愛の曲ってありふれているように思えて……実際にラブソングはたくさんあるし、人が好きな気持ちって時に陳腐になるじゃないですか? それに僕らは他と違うことがしたいってバンドだから、僕たちがやることじゃないかなって思ってたんです」
――それが変化したのは?
岩渕 「今回は、今まで挑戦しなかったことに挑戦していて、例えば『エンターテイネント』ならスカを引っ張って来て、それを全部俺ら色にしちゃうんだ!っていう感じだったんですよ。それくらいオリジナリティがあるっていう自信が、いろんなものを咀嚼するうちに出てきた。だから今だったらラブソングも俺ら色に……ありふれたラブソングじゃないものが作れると思えたんですよね」
――ラブソングだけど、どこか気だるい感じがしますよね。
岩渕 「甘ったるいラブソングに共感できないというか、ピンと来ないんですよね。天邪鬼なんで(笑)。ラブソングが歌う程、恋愛映画が言う程、現実の恋愛ってそんなにきれいなものじゃないだろうってどっかで思っているから」
――そういう視点の現れだったんですね。そして最後の曲は『odyssey』。
岩渕 「これは僕らのことを歌った曲です。僕らの私小説というか4人の歌だという感覚で作りました。でもアルバムが出ていろんな人が聴いてくれて、この曲を好きと言ってくれる人も増えて……。4人の曲が多くの人の曲になった感覚があります」
――他の曲にない浮遊感がありますよね。
岩渕 「この曲は特に伝えたいもの歌いたいことをメンバーに伝えてアレンジしたので、すごく同じ方向を向いています。“今からどうなるんだろう?”っていう気持ちが、浮遊感あるコーラスとかギターの感じとかに出ていて詞とリンクしてますね」
――先程話に出たように、もし全部アッパーな5曲だったら、ちょっと皆さんのことを勘違いしていたかもしれません。
岩渕 「そうですよね。今回はすごく素直な作品になったと思います。その時思ったこと、言いたいことがすんなり出てる。(制作期間の)2~3月は期待も不安もあって、その両方が必然的に出た。『Hello Chaos!!!!』って、混沌と出合うという意味なんですけど、本当に混沌としていた気持ちがストレートに表れていると思います」
――さて。ちょっと余談になるのですが、上京して始めた4人暮らしはその後いかがですか?
全員 「……(笑)」
岩渕 「どこまで話す(笑)?」
――公式HPのインタビューによると“掃除問題”が起こっているようですね。
田野 「それは……今も(家は)汚いです(笑)」
――掃除は当番制にすると書いてあったような。
田野 「いや、当番表は貼ってるだけ(笑)」
田村 「遅かれ早かれこうなることはわかっていた(笑)」
浪越 「食器を乾かす所があるんですけど……」
岩渕 「あ、その話はやばい!」
田村 「あと裏庭もあるんですけど、一回も足を踏み入れたことがないです」
浪越 「庭には行かんな~」
(話はまだまだ続く)
――はいっ。とにかく掃除してください!
田野 「近いうちにします! 宣言します!! したらTwitterで報告します」
――楽しみです。さてツアーの話も。タイトルが「Goodbye Chaos Tour」で、HelloからGoodbyeに変わっていますね。
岩渕 「上京してもまだ落ち着かない感覚や不安もあるんです。でも、そういう混沌にこのツアーでケリを付けたいなと思って。今作はオリジナリティ……僕らはこういうバンドですというのを出したいと思って作って光明は見えたけど、あと少し表現し切れてない感覚があるんです。混沌とは出合えたけどその先がある。ここが俺らのオリジナリティだ!っていうのにツアーで出合いたいと思ってGoodbyeにしました」
――ではそんなツアーを楽しみにしているファンへメッセージを!
岩渕 「今回は過去最大規模です。でも9~10月の僕らならそういう箱を埋めるバンドになっていると思っていて……。ただ、今まで半分ぐらいのキャパの所しか回ったことがないしワンマン自体も2回目なんで、正直不安もあります。だから今ツアーは自分たちにとってハードルなんですよ。でもそれを越えたいし、そうしたいと思って設定しました。自分らに鞭打つつもりでやる!って決めたので、少しでも多くの人に見てもらいたいですね。ライブバンドなんで、音源だけじゃ伝わらないものもあります。ぜひライブに来てください!」
text by 服田昌子
(2017年8月29日更新)
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