「ウソツキと名乗ることで、自分が普段思ってることや
自分自身のことを書ける気がする」
怖くてたまらなかったバンドが伝えかった“本当のこと”
『惑星TOKYO』全員インタビュー&動画コメント
この春リリースした2ndフルアルバム『惑星TOKYO』を手に、現在は初のワンマンツアー『「惑星X(エックス)」星跨ぎツアー』真っ最中のウソツキ。同作では元来の人懐っこい美メロに磨きをかけ、疾走感あるロックチューンから、じんわり沁みるフォーキーなナンバーやバラード、グルーヴ感を増したファンキーな楽曲にディスコサウンドまで、多彩に振り幅を広げた曲調で魅了する。プレイヤーとしても飛躍的な成長を遂げ、洋楽からの影響をうかがわせる最先端のアレンジを実現。また、「歌とメッセージありき」という竹田昌和(vo&g)による妄想力溢れるソングライティングも冴え渡り、聴き手の心のツボを刺激する。バンドとして大きくジャンプアップを遂げたそんなウソツキのメンバー全員インタビューでは、音楽的なこだわりだけでなく、“王道うたものバンド”と宣言する意識について聞いていく中で、芯にあるピュアな思いを吐露してくれた。
歌とメッセージありきで
最新のサウンドをちゃんと着こなせるようになりたい
――この4人が揃ったのが’13年の夏ということですが、そもそものバンドの始まりはどんなきっかけから?
竹田(vo&g)「最初に出会ったのは僕と(林山)拓斗(ds)くんで、同じ音楽の専門学校に通っていたんです。彼が“バンドやろうぜ”って僕を誘ってきたところから始まって。そのときはまだ名前はウソツキじゃなかったんですけど、本格的に活動を始めたのはこの4人になってからですね」
林山「(竹田に)ポップスを歌うセンスがありそうだなって感じたんですよね」
――拓斗さんに誘われるまで、竹田さんはバンド志向ではなかったんですか?
竹田「昔はシンガーソングライターみたいなことをやってたんですけど、専門学校のギター科に入学したので、歌詞を書くのは諦めようと思って。でも、学校で“歌った方がいいよ”って言われたりしてたので、またやろうかなと」
――藤井(b)さんと吉田(g)さんは?
藤井「僕らはまた別の専門学校の同級生で、先に僕が紹介されてウソツキに加入したんですけど、ギターがなかなか見付からなくて。“ちょっとヘンだけど、ギターがめっちゃ上手いヤツがいるから”って吉田を紹介したんです(笑)」
――ウソツキは、“王道うたものバンド”と打ち出していますが、それはいつ頃から?
竹田「1stミニアルバムの『金星人に恋をした。』(‘14)の頃からです。その当時はロックフェスが全盛だったので、今よりも“うたもの”が流行ってなかったんですよ。なので、あえてそう言っちゃおうぜっていう、アンチな精神からですね。野望としては、Mr.Childrenとかスピッツみたいに、“結局はこれが一番好きでしょ!”っていう音楽になれたらいいなって」
吉田「フェスでただ盛り上がればいいとか、そういう音楽じゃなくて。僕は、みんなのド真ん中に届いて感動してもらえるようなメッセージと歌があるバンドを、“王道うたものバンド”って言うんじゃないかなと思いますね」
竹田「でも、今はちょっとだけその感覚が薄れてて。僕は洋楽はハードロックやヘビメタから聴き始めたんですけど、’14~15年ぐらいにテイラー・スウィフトやマルーン5を聴いて、そのアレンジの秀逸さやスピーカーから出てくる音のよさが全然違うことに驚愕したんです。自分たちもそういう音が出せるようにならないとって、洋楽のビルボードチャートに入るような最先端のアレンジに挑戦したいなと思うようになってきたんです。歌とメッセージありきで、最新のサウンドをちゃんと着こなせるようになりたい!って。何となく、サウンド=曲に着せる服かなと思ってるんです。情緒がある日本語で、洋楽のようなバチバチのドラムとか、めちゃくちゃ踊れるベースラインが同居するのってすごい難しいんですよ。今回の『惑星TOKYO』もそうなんですけど、普通のロックバンドならエイトビートにするところをあえてそうせず、リズムの絡みを作りつつ、ちゃんと日本語が乗ってる曲に挑戦しました」
林山「『惑星TOKYO』でやっと思い通りのアレンジができたんですけど、それを実現するまでには演奏力がすごく必要でしたね。今作はメンバーがすごい頑張ったし、各自の技術が飛躍的に上がったんです。レコーディングも結構ノリノリでできました(笑)」
自分の中で“これ、新しいな”と思えないと作品にはしたくなくて
――今作『惑星TOKYO』には『コンプレクスにキスをして』(M-4)のようなディスコ調の曲もあれば、ファンキーな『人生イージーモード』(M-2)もあったり、振り幅が広がってますね。
藤井「16ビートの細かいリズムが多くなってきてますね。『コンプレクスにキスをして』もそうだし、『惑星TOKYO』(M-1)『本当のこと』(M-11)のような細かいリズムは個人的に苦手だったので、ジャミロクワイの曲をコピーしたりして、すっごい練習しました。そうやって、音数を減らしてもグルーヴを出せるようになってきて」
吉田「ギターはアルペジオみたいにつながるフレーズが多かったんですけど、それを短く切っていくリズムを強調するものが増えましたね。あと、『どうかremember me』(M-5)『本当のこと』ではスライドバーを使ったり、演奏の幅が広くなりました。『地下鉄タイムトラベル』(M-6)ではファンキーな音も使いこなして、変幻自在とか言われてますけど(笑)。その辺は曲に合わせて対応していきましたね。ただ、曲自体はレコーディングの1ヵ月半前ぐらいにできたんですけど、フレーズが全然できなくて…。スタジオに自分の家のデスクトップPCを持ち込んで(笑)、先に出来上がったリズムにギターを重ねながら、レコーディングしてる横で同時進行でずっとフレーズを考えてたんです。そこでようやくできたフレーズをそのまま録ったので、ライブ感はあるんじゃないかな」
――そんなサウンド面での新しさがありつつ、メロディのよさや親しみやすさは、1作目から一貫しているのでは?
竹田「それはいわゆる“ピュアさ”ですかね? そういう部分は昔からあると思ってて、サウンドとかメロディは、ピュアというかキラキラしているものが好きなんです。あと、意識しているのは、発明があってほしいというか、自分の中で“これ、新しいな”と思えないと作品にはしたくなくて。歌詞でもサウンドでもいいんですけど、どこかに発明がないとイヤなんで。例えば、『惑星TOKYO』という言葉自体もそうですね」
――確かに捉え方がユニークですもんね。『惑星TOKYO』の歌詞は自問自答しているようにも感じました。
竹田「そうですね。昔の自分と今の自分の対話というか、この曲は自分自身に歌ってる曲だと思っていて。ただ、“諦めてほしくない”っていうエゴを押し付けてるんで、個人的にはこういう歌は好きではないんですよ。“諦めるな”って、押し付けがましいじゃないですか? だけど、この曲に関して言えば、自分自身、諦めたくない想いが強くて。自分もそうだけど、この曲を聴いてくれた人が、もうちょっと頑張ってみようかなって思うようになってほしいっていう願いを込めていますね」
――『人生イージーモード』に関してはどうですか?
竹田「これも本当のことを言うと、『惑星TOKYO』と同じことを願ってるんです。“頑張るな”って言うことで、結果的に成功してほしいと願ってる。これは頑張らない方がうまくいく結果が多い自分の持論からきています(笑)。僕が一番ライブで緊張して頑張っちゃうタイプなんで、そうしたくない気持ちがあるんです」
吉田「こういう曲、なかなかないですよね」
――字面通り心の中にじわっと入ってくるような『心入居』(M-8)にはキュンときました。
竹田「全部自分の話なんですけどね…みんなにいろんなことを思われるのがイヤだから、“ウソツキ”っていう名前でやってるんで(笑)」
――そういうエクスキューズがあることで、正直に自分の思いを出せる?
竹田「そうですね。だけど、それを認めてしまうとバンド名が機能しなくなるので(笑)」
ずっとライブをやるのが怖かったんです
僕は期待されてこなかった人間なんで
――今作の最後に『本当のこと』というタイトルの曲があるのが気になります。
竹田「これは特別な曲ですね。ウソツキっていう名前のバンドが、『本当のこと』っていうタイトルの曲を書く。僕は自分自身の歌しか書けないんですけど、ウソツキと名乗ることで自分が普段思ってることや、自分自身のことを書ける気がするから。今までの作品では、カッコつけてる部分がやっぱりあったなと思って。『コンプレクスにキスをして』で歌ってるような、すごくダサいし弱い部分は昔だったら書けなかったんで」
――それが書けるようになったのはなぜですか?
竹田「お客さんが僕に弱い部分を見せてくれるんですよね。僕だったら絶対人に言わないようなことを、僕に言ってくれるんです。それで僕自身が少し救われたというか、そこまで僕を信じてくれてるんだって思ったとき、すごく勇気付けられたんです。同じことが僕もお客さんにできないかなって悩んで、『本当のこと』を書いたんです」
――そうだったんですね。この曲をライブで歌うときはどんな気持ちですか?
竹田「“聴かないでください”って言うときもありますけどね(笑)。一番聴いてほしい曲だから」
林山「表裏一体というか、本当にそう思ってもいるから、心に迫るところがある」
竹田「“聴かないでください”って言っても、みんながライブハウスから出て行かないのが分かってるから言うんですけど(笑)。そう歌ったのが4月1日だったんですけどね」
――“ウソツキが生まれた日”というサブタイトルが付いていた、『USOTSUKI NIGHT 創世記-ジェネシス-』 at 東京・LIQUIDROOMでのライブですね。
竹田「僕の中ではひと皮むけたライブでした。それはもしかしたら『本当のこと』が書けたからかもしれないけど、自分の中でより素直になれたというか…ずっとライブをやるのが怖かったんです。僕は期待されてこなかった人間なんで。僕は期待されるとダメになるタイプなんですけど、それをみんなに言うことができてなくて…。でも、今はそれを言える安心感からなのか、思うように歌えるし、声も出るし、人の顔も見える。自分の中でライブの存在が変わったようで。だから各地でライブをやるのが楽しみなんです」
――最後に、6月24日(土)梅田Shangri-Laでのワンマンライブ大阪公演への意気込みをお願いします。
竹田「今回のアルバムのジャケットは、人が改札を通ったらエイリアンになるイメージなんですけど、これは“誰もがエイリアンだよね”っていうことが言いたくて。僕は疎外感を抱えている人=エイリアンと呼んでるんです。僕自身は小学生、中学生のときにすごい疎外感を感じてたんですけど、今こうやって仲間ができても、どこかでそれを感じるんで。誰もがそういう気持ちを抱えているのかなと思って、その人のエイリアンな部分を引っ張り出して、みんなエイリアンにしてしまおう。そんなライブになったらいいなと思ってます。タイトルにある“X”は各地の場所のことで、大阪だったら“惑星OSAKA”。だから、地球じゃない場所に来てるあなたたちはエイリアンなんだよって。僕はエイリアンっぽい人が好きなんですよ。そういうふうに生きていった方が楽しいと思うし、僕もエイリアンっぽい部分を出して曲を書いてるから、みんなももっと自分を出してよっていうことですね。僕らのライブに来て、“エイリアンでもいいや”って、そんなふうに思って帰ってもらえたらと思ってるんですよね」
Text by エイミー野中
(2017年6月20日更新)
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