1stアルバム『人生、山おり谷おり』をリリースし
『FUJI ROCK FESTIVAL ’17』への出演も決まっている
注目アーティスト、MONO NO AWAREにインタビュー
ライブハウス・CLAPPERとイベンター・夢番地が手掛ける『not forget pleasure』。両者が猛プッシュする注目アーティストが登場する同イベントも、5月24日に第5回目が開催され大盛況で幕を閉じた。そこで今回、当日、開放感や自由さ、さらに秘めた熱も同時に感じさせ、存在感たっぷりのアクトを見せつけた、MONO NO AWAREにインタビュー。彼らの音楽を形作る、その背景や音楽へのスタンスなど、まだまだ知られていないその実態に迫る。
――今日は、CLAPPERと夢番地がイチオシする皆さんを、より多くの方に知ってもらうべく話をお伺いします。まずはそれぞれ音楽を始めたきっかけから……。
玉置「僕はRADWIMPSさんの曲を聴いて、歌詞がおもしろいなと思って詞を書き始めたのがきっかけですね。それに付随する形で中学から高校にかけて曲を作るようになって、それが今バンドの曲を作る原点になってます。実は今も曲を作るより詞を書く方が楽しいですね」
柳澤「僕が最初好きになったのはUVERworldさんで、その後、隣の姉の部屋から聴こえてきたBUMP OF CHICKENさんとかCoccoさんとかヴィジュアル系とかを聴くようになりました。で、中学卒業のタイミングでバンドを組もうってなって、その時ドラムがいなかったのでドラムを始めて……。そこからは軽音部に入ってという感じです」
竹田「私は小学校の時にトランペットをやっていたんですけど、中学では体を動かしたいと思ってやめちゃったんですよ。それで高校の時にまた楽器がやりたいなって思ってベースを始めました。当時はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTさんとかを聴いてました」
加藤「僕は中3の時に地元でバンドが流行っていて誘われてギターを始めたんです。最初はヴィジュアル系のコピーとかしてました」
――皆さん同世代ですか?
玉置「同じ学年ですね」
――玉置さんと加藤さんは同郷で同級生なんですよね?
玉置「そうです。ここ3人(玉置・柳澤・竹田)は大学のサークルが一緒です。
――このメンバーでバンドを始めたきっかけは?
玉置「成順(加藤)に声を掛けられて、それがちょうど僕も成順とバンドをやりたいと思ってた時期で、メンバーを集めようってなって。成順がドラムを僕がベースを誘うことにして僕は竹田を誘ったんです。その後ドラムが変わるってことで、新たに誘ったのが柳澤という流れです」
柳澤「実は(声が掛かるより)先にデモを聴かせてもらってたんです。当時僕はオリジナル曲をやったことがなくて、こんな曲を作れる人がいるんだ!って思ってて……。で、その後バンドに誘われたので、うれしかったですね」
竹田「(玉置は)サークルのライブもあまり出てなかったから、たまに話すくらいでよくは知らなかったんですよね。あと第一印象が強烈で最初はどうしよう?って思いました。でも軽い気持ちで……(参加決定しました)(笑)」
――当時、声を掛けた側は既にプロを目指していたんですか?
玉置「特に何の意識もしてないですね。ただ、発表する場があるのはいいなって」
――そんな皆さんも今は注目バンドで、好評の『not forget pleasure』にも出演。ちなみにこれまで大阪でのライブは?
玉置「今回で4回目です」
――手応え、どうですか?
柳澤「お祭りですね(笑)」
玉置「東京との比較にはなるんですけど、お客さんとの距離感とかライブの見方とかが違う感じがしますね。東京だとお客さんがちょっと動くくらいイメージでも、大阪だと拳を突き上げたり……殴られる?くらいの気配が(笑)」
全員「ハハハ」
玉置「危機を覚えるくらいの熱量で、やってて気持ちいいです。こんなに人って感情が高ぶるのか!って。テンションが高い。おもしろいですね」
――理由は何でしょうか?
柳澤「なんですかね?」
加藤「酒かな(笑)?」
玉置「西日本の方がお酒の消費量が多いんじゃない(笑)?」
――気になりますね(笑)。
玉置「いや、でもお祭り気質なんだと思います(笑)。自分を出すのがうまいというか、みんなが主役になりうるくらいのレベルで楽しんでるからすごい。“全員でステージ!”みたいな。だから大阪に呼んでもらって、こっちでライブができることが刺激になります」
――西と東でセットリストが変わったりします?
玉置「ほとんどないですね。変えなくても勝手に反応が変わってくってのが、おもしろいところです」
――『not forget pleasure』もそんな盛り上がりを見せるイベントですが、皆さんが思う良いイベントとは?
玉置「ひとえに愛情ですね。その人(主催者)がどれだけこだわりや信念や執着心を持ってやっているかって重要だと思います」
――それが感じられる部分とは?
玉置「……フードのうまさとか?」
全員「ハハハ」
玉置「ま、別にフードを入れなくてもライブは成立するけど、僕たちが自主企画をやる時には基本的にフードを出すようにしてます。(自身の出身地の)八丈島の出身の子の店の料理がおいしいから、皆にも食べてほしい!っていう感じで。ま、今はたまたまフードの話だけど、そういう細かい部分でシンパシーを感じる時は、期待に応えたいなって思っちゃいます(笑)」
――確かに(笑)。さて、次は皆さんの最新作『人生、山おり谷おり』の話を。これは1st フルアルバムですが、今回、何かテーマはありましたか?
玉置「テーマは……なかったです(笑)」
――ハハハ。ではそれまでに蓄積してきた曲を選んで詰め込んだ感じですか?
玉置「そうですね。でも、選ぶ余地はなかったです。持ち曲ほぼすべて(笑)」
柳澤「前はよくやってて、最近あまりやらなくなってた曲とかはありますね」
玉置「ただ、意図的にこの曲!ってよりは、ほぼ必然的にこの10曲っていう。名刺代わりというか、こんな感じでやって来ていますという感じです」
――全曲に強い個性がありますよね。
玉置「そうですね。ちょっと……売れたかったんです(笑)」
――正直者(笑)。ちなみに意図的にいろいろなテイストの曲を作るようにしているんですか?
玉置「それもないですね。曲は基本的に僕が作って、編曲をバンドでやってるんですけど、僕が好きに作って、それをバンドで共有してきた10曲です。僕がテーマを持って作ってないから、作品全体とか何曲かを通して(違ったテイストの曲をそろえよう)とかもないです」
――なるほど。では、玉置さん以外のメンバーは曲を受け取って理解・咀嚼するということだと思いますが、大変なことはないですか?
加藤「(曲が)変だな?みたいなのはないですね。ちゃんとなじむ。周啓(玉置)の中でしっかり作られていて曲として完成しているので、(曲が良くて)思わず何回も聴いちゃいますね」
――言葉でやりとりは?
玉置「ほぼないですね」
柳澤「こういう感じだよね?こんな感じでやっていいよね?くらいですかね。一応確認取るくらい」
――言葉がなくても理解し合えているんですね。
柳澤「同年代だから共通言語が多いっていうのもあるのかな。聴いてきた音楽は違うけど」
玉置「なければ一緒にやってくれないだろうなっていう……」
柳澤「あと、それぞれで補完し合っているってのもあって、あいまいだったものを形にしていくという感じですね」
玉置「そうですね。デモを作る段階で僕が気付かなかった場所……手が届かないかゆい所みたいなのを、メンバーがかいてくれる時があるので、それに喜びを感じることも多いです。そういう点に、この4人でやっている理由があるかなって思います」
――良い関係性ですね。さて話を『人生、山おり谷おり』に戻し……。詞がインパクトありますよね。文字だけだとふざけた感じにも取れますが(笑)、曲になると意味を持つ感じがしてすごいなと思いました。
玉置「そう思っていただけるとうれしいですね。そこは意識してます、唯一(笑)。コミックバンドにはならず、でも熱過ぎないというか……そういう(熱い)バンドを否定してるわけではなく、そういうスタイルは自分には合わないっていう。そこの中庸、真ん中を取っていく感じです。聴く人のテンションによってピックアップする部分が変わるようになったらいいなって。ま、なってるかどうかは反省しないですけど(笑)、作る時は考えます」
――どんな風に真ん中を取るんですか?
玉置「基本的に僕は生真面目な人間なんですけど……」
柳澤「フフッ」
玉置「いやいやいや~(笑)」
柳澤「いいよ、いいよ~(笑)」
玉置「言いたいことは明確にあって、でもそれを書くとろくなことにならないというか(笑)、自分に違和感があるんですよね、真面目なことを書くと……。しかも響かないんじゃないかと思うし。何ていうかウワ~ッってなる(笑)。真面目なことは言いたいけどそれをストレートに表現するってなると、ちょっとオシャレ度が低い感じがするというか、耐えられないです、そんな自分に」
――シャイなんですね。ちなみに個人的には「二段熟カレー」という詞というか言葉にノックアウト(笑)。
玉置「わかります。あの曲に関して一番いいたかったのは二段熟カレーなんで(笑)。でも、あそこはバランスとかじゃないです(笑)」
――ハハハ。でも想像力を刺激しますよね。わかりやすい曲が流行りがちななか、想像するのりしろがあるMONO NO AWAREさんの音楽は大人……中年(笑)にも響きそう。
玉置「本当ですか? え、わかんないです。けど、うれしいです(笑)。若者が聴く音楽だって無意識に自覚しているところがあるじゃないですか、お客さんの年齢層を見ていても……。だからそういう人がいるかもっていう情報がうれしいですね」
――さてそろそろ時間が……。最後に読者へメッセージをお願いします。
玉置「『人生、山おり谷おり』にはおもしろい曲が入ってます。ぜひCDで買って装丁とかも楽しんでほしいです」
柳澤「(装丁も)こだわったもんね。僕たちも楽しんで作ったものなので、ぜひ聴いてください」
竹田「曲の受け取り方みたいなものが自分の感情で左右されるんじゃないかなと……。だからうれしい時、悲しい時、怒ってる時、いろんな時に聴いてみてもらいたいです」
加藤「今作が初めての全国流通で、前よりも多くの人の耳に届くようになったんです。大阪の方にもたくさん聴いてもらえたらと思います」
text by 服田昌子
(2017年6月19日更新)
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