「僕らの一貫したテーマは“音楽でいかにぶっ飛べるか”なんですよ」
粋でファンキーでトリッキーでクレイジーな
Wienners流日本昔ばなし(!?)『GOKOH』を語る!
玉屋2060%&アサミサエインタビュー&動画コメント
メジャーデビューも経験し、玉屋2060%(vo&g)はアイドルへの楽曲提供などでも話題になった。そんな彼らだが’14年9月にオリジナルメンバー2人が脱退…。バンドの活動休止ほど辛いものはないが、約9ヵ月後には新メンバーとともに動き出した。なぜ、彼らはバンドを続けることができたのか。そして生まれた2ndミニアルバム『GOKOH』は、和の物語をコンセプトに、美しいメロディが奏でられた作品となった。自分の想いを伝えるのではなく、物語に託すという作風についてもいろいろと語ってもらった。
バンドをやる上で重要なのは仲のよさではなく、空気感なんですよ
――’14年9月にオリジナルメンバーが2人脱退して、約9ヵ月お休みをされましたよね。ここで辞めずにバンドを続けたのは、やはり岐路だったと思うんです。
玉屋(vo&g)「バンドを続けようと思ったのは、単純に今までに作った曲をまだやりたかったからです。ライブでやることによって、もっといい曲になるはずだと思ってましたから。まだ、完成じゃないですからね。解散して別のバンドを組むのもいいんですけど、やっぱり同じ名前でやりたかったので。意地もありましたし。“はぁ? ふざけんな! 意地でもやり続けるぞ!!”みたいな(笑)」
――アサミ(vo&key&Sampler)さんは新メンバーとして誘われたとき、どう思いましたか?
アサミ「“まさか!”と思いました! もちろん、Wiennersを知っていて、メンバーが脱退したことも知っていましたけど、“誰が入るんだろ!? 大変だな~”と他人事でしたから(笑)」
――(笑)。Winnersのバンドのイメージはどんな感じでしたか?
アサミ「曲もそうだし、ライブもそうだし、すごいことをやっている人たちだと思っていました。私はライブハウスで働いていて、バーカンからWinnersのライブを観てましたけど、勢いがすごいですよ! 3D感がすごい!!」
玉屋「勢いだけはあったからね(笑)」
アサミ「女性がキーボードとサンプラーの両方やってるのはすごいなと思っていました。自分がこの役をできるのかと、入るときは正直思いました。“指2本で弾けばいいから!”と言われましたけど、腕2本でも足りないですよ(笑)。今はライブもレコーディングも体験して、身が入ってきている感じですね」
玉屋「アサミサエに関しては、ぶっちゃけキャラクターですね。技術は鬼のように練習したら誰にでも身につくので。人間性は大きかったですね。だって、歌ってるのを聴いたことすらなかったですから」
アサミ「話したこともなかったですし(笑)」
玉屋「彼女のライブを観る前に、声をかけましたから」
アサミ「私も、話してみたいという欲求が高まってましたし」
玉屋「新しく入ったKOZO(ds)も初めて会う人ではなかったし、この4人でも空気感を出せるんじゃないかと」
――去年の『RUSH BALL』でライブを観させてもらったんですけど、新体制で動き出して3ヵ月くらいなのに、ちゃんとバンドの空気感が出来上がっていてすごいなと思ったんです。
アサミ「野外ってお客さんの顔が結構見えるんですけど、あのときはお客さんと一緒に楽しめましたね。何かリラックスできて、大きな場所で集大成をいきなり作り上げたというか」
玉屋「まぁ、そういう空気感って練習して出せるもんじゃないですから。バンドをやる上で重要なのは仲のよさではなく、空気感なんですよ。最初にこのバンドを結成したときに求めていた空気感は、明るいものだったんです。別に前のメンバーが暗いわけじゃないけど、もっとあっけらかんとした感じというか。小難しい顔をして小難しいことをしても、仕方がないですから。小難しさよりもユーモアが先に来てほしいので。そして、小難しいことをやるためにはユーモアが必要ですから。僕らは初めて観たときに小難しいとは思われない。でも、楽しいだけでは終わらせたくない。家に帰ったら終わりのライブはしたくないし、楽しい=バカみたい、でもない。楽しいの先に行きたいし、楽しいを入口にして、こちらから何か意味のあるものを発信して提供できないと。例えば、フェスも入口にして、もっともっと深いところまで連れて行きたいんです」
作る曲は全部がBGMというか、一本の映画を作って
登場人物を描き、最後にエンディングテーマが流れるイメージ
――あと、今作を聴いて思ったのは圧倒的にメロディがいいということなんです。メロディが圧倒的によければ、フェスなどでも変に煽ったり騒いだりしなくても、必ず伝わるし、届くように個人的には思うので。
玉屋「どの楽器にも歌心が欲しいんです。本来は全部インストでもいいくらいなので。映画のサントラが理想に近いですね。サントラは映画があって成立していますが、それの映像がなくても成立するようなものを作りたくて。初期はインストが多かったし、メロディだけで勝負したいです。言葉って、邪魔することが多いので」
――アサミさんは今作も含め、制作の作業で難しかったことはありますか?
アサミ「とっても難しさはあるんですが、聴いて楽しめるミニアルバムにはしたかったですね。歌のレコーディングも楽しかったですし、女性パートのキャラが立ってましたから。歌詞をもらったら、その登場人物の絵を描いたりしていました。麦わら帽子をかぶっていて、顔が見えないとか、この姫君は15歳くらい…ちょっと厳しいかなとか。なので、毎日楽しかったです!」
玉屋「(笑)。確かに絵は直感的で手っ取り早いんですよ。まず、曲の雰囲気とかを想像するんです。何色なのか? どんな匂いがするのか? 彼女はボーカルでもあるので、そういうところまで考えるのは重要ですね」
――前メンバー時代と曲の作り方が変わったりはしましたか?
玉屋「基本的に曲の作り方は変わらないです。でも、特に今回のミニアルバムは自分らしさに焦点を当てましたね。イメージから始めていったんですが、作る曲は全部がBGMというか、一本の映画を作って、登場人物を描き、最後にエンディングテーマが流れるイメージですね」
“イェ~!”じゃなくて“ウォ~!”なんだよ
――確かに、今回は特にどの曲にも物語を感じます。
玉屋「『TRY MY LUCK』(M-2)以外は、語り部として歌ってますね。日本というテーマで落語じゃないですけど、お話をするというか。ミニアルバムで日本昔ばなしができるんじゃないかと思って、物語をなぞらえた感じです」
アサミ「全曲好きですけど、『さよなら浦島太郎』(M-4)はすごくかわいいし、バカだな~って(笑)。曲の中で主人公が動いていくのが見えるから、やっていても楽しいです」
玉屋「『さよなら浦島太郎』は浦島太郎の物語になぞらえて、竜宮城という名のぼったくりバーでぼったくられる話なんで(笑)。『姫』(M-5)も漫画を描いている人とかなら分かると思うんですけど、登場人物が自分の手を離れていく感じ…ごくまれにそういう瞬間があって。自分で想像したテレビを、自分で観てる感じというか…。『姫』は竹取物語をなぞらえているんですけど、どんな台詞を言うんだろうって…自分で作った話のはずなのに思うんですよね。おじいさんの竹取姫への気持ちを書いているんですけど、“ああ姫 ああ姫よ/さよならの意味を 教えてくれないか”という歌詞はすごく切ない…泣けるんですよね」
――物語を歌ってもちゃんと気持ちがこもっているし、やっぱりメロディがいいですしね。奇をてらった物語だと、嘘の場合ってすぐ分かるじゃないですか。
玉屋「分かります(笑)。まぁ、僕らの一貫したテーマは“音楽でいかにぶっ飛べるか”なんですよ。物語以外で自分の伝えたいことは一切ないので。愛も世界平和も思想もない(笑)。とにかく楽しいの先を通り越して、非日常を味わえるか、ですから」
アサミ「やっぱりWinnersは、そうあってほしいですよね。人間っぽさを超える感じでいてほしい。憎さとか妬みも通り越して、先に行けるような」
玉屋「よく“イェ~!”じゃなくて“ウォ~!”なんだよって説明するんです。それも楽しいだけじゃイヤだからなんですけど。『さよなら浦島太郎』だって、マジで歌ってますから。表現の仕方が過剰なんですよね(笑)」
アサミ「でも、物語のはずなのに、意外と共感できたりしますから。一見、遠い感じがするんですけど、そうじゃないんですよね。だから“他人事じゃない!”って思える(笑)」
玉屋「音楽に興奮させられたからこそ、自分もやってやりたい。音楽を作る上で一番大事なのは、いかに音楽以外の趣味があるかだと思うんです。そして、それを落とし込んでいくこと。『おおるないとじゃっぷせっしょん』(M-1)は、日本人の侍ファンクバンドが『ソウル・トレイン』(アメリカのダンス番組)に出演して、超アウェーの中、とてつもないファンクチューンを演奏する話なんですよ。で、メロディは和テイストで、勝ちに行くイメージの曲を作っていくんです。コントの設定になり切る感覚に近いかもですね」
――すごい発想力…ちなみに今回はミニアルバムですけど、フルアルバムの構想は?
玉屋「自分の中では、フルアルバムの構想はもうできています」
アサミ「えっ、ちょっと待って! 全く知らないです!! 後で会議、会議(笑)。他のメンバーにもLINEします(笑)」
Text by 鈴木淳史
(2016年11月 9日更新)
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