“HEAVY POSITIVE ROCK”=どんなマイナスのこともプラスに変えられるような音楽をモットーに掲げ、今年もアルバムツアーの他に、海外ツアーやlynch.、vistlipとの3マンイベント、プロバスケットボールチーム・パスラボ山形ワイヴァンズの2016-17シーズンのブランドアドバイザーに就任するなど目まぐるしい日々を送るSuGが、前作『VIRGIN』(‘16)と対になる2ndミニアルバム『SHUDDUP』をリリースした。Shut Up=黙れのスラングをタイトルに持ってきた今作、そして、11月12日(土)・13日(日)の大阪IMPホール2DAYSより開幕する、ポップでカラフルな“極彩SuG”とダークで激しい“極悪SuG”がそれぞれのコンセプトのもとパフォーマンスを行い、各日の観客の歓声の大きさを測り勝負するバトル型ライブ『VersuS』の全国ツアー『SuG VersuS 2016 EXTRA』について、武瑠(vo) とyuji(g)がエピソードを交えながら話してくれた。
yuji(g) 「今頃は多分、国外のどこかに…(笑)」
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武瑠 「で、今回『KILL KILL』(M-2)のMVを解禁したときに、またYahoo!ニュースに載ったんですよ。いいニュースで更新できてよかったなって(笑)。あと、『KILL KILL』のMVで(きゃりーぱみゅぱみゅのMVやステージ演出なども手掛ける)増田セバスチャンさんと一緒に制作できたのが結構嬉しかったですね。4~5年前に初めて会って、ずっと一緒にやろうと言ってきたので、やっと仕事ができたかなという感じです。ただ、“人生で二番目に辛かった”と言っていました(笑)。今回はセットがすごくて、廃品のプレステ2を200台以上使ったらしいです。今時のMV撮影ではない結構めちゃくちゃな作り方で、本当に採算を度外視した作り方をしてくれましたね。元々バンドも好きな人で、“自分もずっとやりたかったことができた”と、すごく喜んでくれました」
それぞれの立場の“黙れ”を書いてみよう
――その『KILL KILL』を収録した『SHUDDUP』は前作『VIRGIN』に続いてのミニアルバムですが、前作を作った時点で対になる作品を作る構想はあったのですか?
武瑠 「『VIRGIN』は初期衝動をテーマに、無計画に、本当に衝動だけで作ったんですよ。その後に何を出そうかなと考えたときに、年末に『VersuS』のツアーをやろうと何となく見えてきて。で、『VersuS』のVがたまたま『VIRGIN』の頭文字と同じだったので、Sから始まる刺激的な言葉を探して、極悪っぽいタイトルのアルバムにしようと思って。そのときには『KILL KILL』のデモだけあって、この曲はいつか絶対に出したかったから、『KILL KILL』を入れた『SHUDDUP』(=Shut Up)=“黙れ”という攻撃的なアルバムを作ろうと、企画書を書きました」
――ミニアルバムを作るのに企画書を書くんですか!?
武瑠 「毎回そうですよ。SuGはみんな好きな音楽がバラバラで、音楽性が広くていろんなものを作れちゃう分、テーマがないとどうまとめていいか分からなくなっちゃうんで。今回は“黙れ”というタイトルがあって、それはストレス社会に対して黙れなのか、弱い自分に対して黙れなのか、ゆとり・さとりと言われ過ぎることに対しての黙れなのか。それぞれの立場の“黙れ”を書いてみようということで、今回はメンバー全員が曲を書いたんですよ。以前は5人全員が曲を書いていいものを選んでいたんですけど、今回はそれぞれの曲が入る前提で書いているので、ちょっと特殊でしたね。絶対に収録されるから、それぞれでちゃんと完結してくださいって。成長するための試練みたいな」
――それはプレッシャーがかかりそうですね。
yuji 「長くバンドをやっていると、何を書いていいか分からなくことがあるんですよ。そういう意味では、今回みたいにテーマが限定されているのは作りやすかったなって。逆に迷わないというか」
武瑠 「あと、ジャケットにもなっているアイコンの中指が骨折しているんですけど、それは“骨は折られても信念は折れるな”という想いを表わしていて。『KILL KILL』のMVで着ているTシャツにデザインされたアバラも、実は骨折しまくっているんですよ。タイトルが決まるまでは結構いったりきたりして何回も何回もやり直したんですけど、あの中指のアイコンが浮かんでからはスッといけましたね」
メンバーからしても、遂に出たなという感じです
――いろんな“黙れ”の入ったミニアルバムですが、キーになっている曲はあります?
武瑠 「やっぱり大元に『KILL KILL』があったので、僕はこの曲が中心にあるイメージかな。この曲は2年くらい前に書いていて、プリプロで1コーラスだけ歌詞も入れて歌録りをしていたんですよ。リフとかは全然違いましたけど」
yuji 「“この曲を出したいけど、でも今回じゃないかな”って、選曲会のたびに『KILL KILL』が流れていました(笑)。だからメンバーからしても、遂に出たなという感じです。普通、楽曲のメインになるのってサビじゃないですか? でも、この曲は最初のデモの段階から、言い方は悪いですけどサビは二の次でしたから(笑)。すごく珍しい曲だなと思っていました」
武瑠 「いつもよりAメロの数を増やして、10回歌っているんですよ。同じメロディだけど符割りが全部違って、10回も出てくるからたまに訳が分からなくなってくる(笑)」
yuji 「でも、ライブで初めてやったときから、Aメロの大合唱はすごかったですから」
武瑠 「みんなの歌っている顔がニヤニヤしていたというか、嬉しそうでしたもん(笑)。だからサビの方が課題っちゃ課題だなって。どうやって盛り上げたらいいのかな(笑)」
みんなが共感できるストレス発散アンセム
――『KILL KILL』の歌詞はリスナーからも募集したんですよね。
武瑠 「歌詞は完全にリスナー視線で“KILLしたい”という言葉から書いて、みんながものすごく共感する曲だと思ったので、歌詞を募集してみたらおもしろいかなと。ほとんど書き上げた上でいいフレーズがあったら使おうと思っていたんですけど、“アイドルの方が好きな彼氏”、“自分だけ加工アプリするやつ”、“すぐに死にたい死にたいいうやつ”がそれですね。リアルで女子高生川柳のような、みんなが共感できるストレス発散アンセムみたいなイメージで作ろうと思っていたので、割とイメージ通りにできましたね」
――思わず“あるある”と共感できる歌詞ですよね(笑)。
武瑠 「もっと叩かれるかとも思ったんですけど、震災以降の流れにあった“不謹慎”にも飽きた、みたいな。みんなが窮屈だと感じている空気感もあったので、言いたかったというか。もうちょっと昔だったら、ダメだったかも」
――個人的には“言いたい事なんか絶対言えない こんな世の中じゃ超ポイズン”という歌詞も引っかかりました(笑)。
武瑠 「昔はポイズンだったけど(※) 、今は超ポイズンっていう(笑)。そこだけ最後に付け足しました。あと、ちょうど作っているときに『フリースタイルダンジョン』にハマっていて、DOTAMAさんが“言いたい事も言えないこんな世の中じゃ”というフレーズを使っていて、このフレーズはやっぱり最強だなと思って(笑)」
(※) …フジテレビ系ドラマ『GTO』主題歌として大ヒットした反町隆史の『POISON ~言いたい事も言えないこんな世の中は~』(‘98)。
yuji 「企画書の時点で“超ポイズン”のフレーズが書いてあって、それがまさか入るとは思わなかったので、歌詞を見たときに“入れやがったこいつ!”って思いました(笑)」
武瑠 「あのフレーズを気に入り過ぎちゃって曲の締めにも使おうと思ったんですけど、それじゃ“KILLしたい”が立たなくなるからやめました(笑)」
バラードを入れなかったのは今回が初めて
――あと、今作は全体を通してHIP HOP色が強めな感じですよね?
武瑠 「『VIRGIN』のツアー後にロスに行く機会があって、そこでちょっとベタベタなHIP HOPというか、ストリートな感じをやりたいなと思ったんですよ。SuGって元々ちょっとブラックな要素が入っているし、音像とかSEとか打ち込みとか、全体的にちょっとベタに流行っている音を取り入れてみた感じですね。SEとか特に出ているかなと」
――7曲全てにそれぞれ色があり、『SCREAM IT LOUDER』(M-7)なんて踊りたくなりますし、『ZIG ZAG』(M-6)はリフとかがオシャレですよね。
武瑠 「『SCREAM IT LOUDER』は、『HELLYEAH』(‘14)がライブで育ってきた感があったので、そのパワーアップバージョンを書いてみようという感じでしたね。SuGの楽曲は、怖くてただ重いっていうのは違うような気がしていて、激しいけど踊れる感じがいいのかなって。いくらサウンドが重くても、そこに踊れる要素とかファッション性があれば、自分たちらしくやれそうだなって。今回はそういう実験も結構ありましたね」
yuji 「『ZIG ZAG』は自分の作曲ですが、オシャレな感じだけど、テンポ感だったり、アグレッシブな部分がSuGの個性なのかなと思っていたので、そういう部分を出しておきたいなって」
武瑠 「バラードを入れなかったのは今回が初めてだったので、最後まで結構悩みました。制作途中で意外と極悪感がないなと思って、バラードと『BLOODY MARY』(M-5)を入れ替えて、『WORLD FAMOUS』(M-4)も極悪っぽいアレンジに切り替えたという。でも、よりジャケットに合った選曲になったかなと。せっかくのミニアルバムなんで、分かりやすくしたかったのもありましたね」
――その極悪チューンの中に、プロバスケットボールBリーグのパスラボ山形ワイヴァンズの公式ソング『FLY VERNS』も収録されていて(笑)。
武瑠 「そうなんですよ(笑)。細かいオーダーとか規制もなくてやりやすかったし、チームのテーマにもシンパシーを感じたので、すごく書きやすかったです。僕はすごくバスケが好きなので、関われて光栄でしたね」
yuji 「これは制作の前段階でオファーがあったんですよ。ただ…」
武瑠 「『KILL KILL』とか言っている盤に入れていいのかなって(笑)」
yuji 「応援ソングなのにね(笑)」
みんな家で1人で楽器を弾きながら
“KILLしたい~♪”って練習してましたから(笑)
――他に今作の制作秘話はありますか?
武瑠 「制作が海外ツアーと被ったのが本当に大きかったですね」
yuji 「メキシコから帰った次の日が歌録りだったよね?」
武瑠 「うん。それが地獄でした。シンプルに“歌いたくねーな”って思いました(笑)。確か台湾に行って2~3日空いて、20何時間かけてメキシコに行って。そこには1日半くらいしか滞在しなくて、また往復50時間くらいかけて移動して、歌録りをして、その2日後にタイ、みたいな(笑)。タイから帰ってきたまた次の日も歌録りで、その何日か後に高松からツアーだったんですよ。とりあえず時間がないから移動中の車の中で歌詞を書こうと思ったら、例の件で機材車が変わってめっちゃ揺れて書けなくて。それにもめちゃくちゃイライラしたのを覚えています(笑)。最悪な状況が被りまくりましたよ」
――まさに、今作のコンセプトである“折られても折れるな”状態じゃないですか(笑)。
武瑠 「そう! 名は体を表わすというか(笑)」
yuji 「楽器隊はいつも通りのスケジュール感だったのでその辺は大丈夫だったんですけど、『KILL KILL』のAメロは楽器隊も全員コーラスをしているんですよ。そのときに同時にメインリフを弾いているんですけど、符割りとかメロディが全然違うので、ギターにつられたコーラスになっちゃったりして、すごく苦労しました。みんな家で1人で楽器を弾きながら“KILLしたい~♪”って練習してましたから(笑)。それが今回の一番大変なポイントでしたね」
今年の締め括りであると同時に
来年迎える結成10周年への一歩目になると思う
――この『SHUDDUP』のお披露目であり、全国版となった『VersuS』のツアーが始まりますが、今回は極彩SuGと極悪SuGのどちらが勝ちそうですか?
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武瑠 「『VIRGIN』のツアーをやっている分、今のところは極彩がリードしているのかなって。(極悪の)『SHUDDUP』はアルバムツアーがない状態なので、音源を出してこれからどうなるのか。でも、『KILL KILL』のMVの反応が結構よかったので、ライブでは盛り上がるような気がします。アンセム化しそうだなって」
yuji 「『SHUDDUP』のライブでの表現を、リハーサルでどれだけ詰められるのか、これからの自分たちにかかっているのかなと思います。やっぱりライブ本番で、ましてやツアーを通して作り上げてきたものは相当大きいので、『VIRGIN』に追い付けるか?っていうところですね。『SHUDDUP』はそこに初出してぶつかっていく分、だいぶプレッシャーが大きいですね。ちゃんと争えるくらいまで持っていかないといけないので」
――逆に、このツアーを通して『SHUDDUP』が育っていくのを観られる楽しみもあるかもしれないですね。
yuji 「そうですね。それこそ関西は最初の大阪2DAYSと、終盤の京都・神戸の両方を観られたらおもしろいと思います。どう育ってきたのかっていう」
――大阪で極彩が勝ったとしても、京都・神戸で逆転する可能性もありますもんね。
yuji 「そうですね。『KILL KILL』がすごい爆発力を持っていそうなんで」
武瑠 「最後に5回くらい『KILL KILL』をやろうかな?(笑) さすがに“飽きたわ!”って言われそうですけど(笑)。あと、全国を廻った最後に、極彩と極悪がツーマンをする頂上決戦が12月30日(金)豊洲PITであるんですよ。それは今年の締め括りであると同時に、来年迎える結成10周年への一歩目になると思うので、またちょっと特別なライブになるかなと思います」
――それでは最後にぴあ関西版WEBの読者にメッセージを!
武瑠 「今年は大阪、関西圏推しの活動をしたと思っているので、その気持ちを組み取って大阪だけじゃなく、神戸、京都にも遊びに来てほしいなと思ってます(笑)」
yuji 「今年は関西をだいぶ贔屓しているイメージがあるので、やっぱりその分の見返りを求めちゃいます(笑)。もっと盛り上げられるように頑張りたいですね!」
Text by 金子裕希
Photo by 渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)