「続けていく強さって、常に心の中で何かを燃やしながら 前に進むことで見出していけるんじゃないかと思う」 内なる炎を宿した『blaze』を道しるべに初の関西アリーナ公演へ! Kalafinaインタビュー&動画コメント
現在放送中のアニメ『アルスラーン戦記 風塵乱舞』(MBS系日曜17:00~)のエンディングテーマとなっている、3人組ボーカルユニットKalafinaの1年ぶりのニューシングル『blaze』。これまでにも『魔法少女まどか☆マギカ』など数々のアニメ作品のテーマ曲を担当してきた彼女たちの楽曲は、海外でも高い人気と評価を得ており、ライブも国内のみならず、アジア、北米、南米各地でも盛んに行われている。アンビエントやアイリッシュトラッド、クラシックやロックなど様々な音楽要素をちりばめたスケールの大きなサウンドに、3人の異なる歌声が織りなすハーモニー。アニメやゲームなど日本独自の文化が“COOL JAPAN”として海外で脚光を浴びている、その現象の一翼を彼女たちが担っていると言っても過言ではない。デビューから8年目を迎えた今年、満を持しての開催となる関西での初のアリーナ公演、9月10日(土)・11日(日)の神戸ワールド記念ホールでのライブを前に、ライブへの意気込みや新曲『blaze』について、Hikaru、Keiko、Wakanaのメンバー全員に話を聞いた。
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『blaze』の歌詞を聴けば聴くほど、歌えば歌うほど
Kalafinaと重なる部分がたくさんある
――Kalafinaのスケールの大きな楽曲を聴いていると、日常の出来事が本当に些細なことに感じるぐらい、広い世界に連れ出してもらえる瞬間があって。『blaze』はそのスケール感や爽快さとともに、勢いや情熱を感じる曲で。
Keiko 「『blaze』は直訳すると“炎”という意味で、歌詞のメッセージ性にもつながってくるんです。『アルスラーン戦記 風塵乱舞』のエンディング曲ということで歌詞も作品の世界観に寄せて書かれているんですが、“歩き出してた”、“走り出してた”というワードが歌詞の中にあって。歩き続けることも、走り続けることも、それを続けていく強さって、常に心の中で何かを燃やしながら前に進むことで見出していけるんじゃないかと思うんです。そうすることで、立ち止まらずに進む力が湧いてくる。そういうふうに、“人の心の中に灯し続ける炎”という意味でこのタイトルをつけたので、目に見えて燃え上がる赤い炎というよりは、“目に見えない”ところがポイントかなと思います。この曲では冒頭からHikaruがメインボーカルを取っているので、この曲をどんなふうに伝えたいかという“意思”みたいなものを決めてくれたのはHikaruのボーカルですね。そこに、Wakanaも私も寄り添うように作り上げていきました」
Hikaru 「最初にメロディを聴いて歌詞を読んだときに、“歩き出してた”、“走り出してた”というワードはポイントだなと私も思いました。ずっと歩き続けていくことって、瞬間的に大きく爆発することじゃなくて、同じエネルギーでずっと進んでいかなきゃいけないところがあるなと思ったので、それを歌でも表現したいなと。なので、ずっと高い熱量をキープしたまま、最初から最後まで歌い切ろうという気持ちで臨みました。これまでだと、例えば最初は強い感じで歌い始めて、サビで落ち着いたトーンに変わるなどいろんなパターンがあるんですが、『blaze』はどんな歌い方をしても熱量を変えないという、自分にとっては新しい挑戦でもありましたね」
Wakana 「レコーディングでも、持てるエネルギーを使い果たして歌うという感じで、3人ともブースから出てくると、“ハァ~ッ”て肩で息をして頭から蒸気が出るような感じでした(笑)。自分としては、ただやみくもに走るんじゃなくて、ちょっと後ろに引っ張るような気持ちというか、粘り強さを表現しながら歌うのが難しい曲だなと思いました。冒頭から3声で始まるので、そこで私は熱風のような風を感じるんですね。バン!という大きな爆発はないんですけど、熱さを持って3人で歌っているからこその爽快感があって。それと、個人的にはこの歌詞を聴けば聴くほど、歌えば歌うほど、Kalafinaと重なる部分がたくさんあるなと思っていて。Kalafinaは皆さんに歌を届け続けることを目標にしているし、ライブの場で生でそうすること=私たちの喜びでもあるので、“新しい世界に向かって歩き続けていく”という歌詞のメッセージは、自分自身にも響きました」
ある一定の枠の中で表現していくことを常に考えているし、目指している
それが3人で作るKalafinaの音楽だと思う
――ライブの話が出ましたが、Kalafinaはこれまでに海外でもたくさんライブをされていますが、日本と海外のリスナーに違いはありますか?
Keiko 「全っ然違いますよ!(笑) やっぱりお国柄や環境が違えば、音の楽しみ方も違っていて。今年初めてメキシコに行ったんですが、メキシコシティは標高が高くて富士山の5合目ぐらいにあたるんですね。私たちはそこにいるだけでも息が上がってしまうような状態だったんですけど、そういう環境で育った現地のスタッフの方たちはとってもタフで、みんな朝から晩までずーっと喋って、笑って、元気で。ラテンアメリカ独特のノリというか、お客さんたちもライブが始まる前からすごくテンションが高くて、音楽を楽しむことに関して身体や表情で本当に素直に表現してくださって。自分たちも、もう一度音の楽しみ方を違う角度から感じることができたし、リズムのノリ方もいつもよりちょっとオーバーになったりして(笑)」
Wakana 「バンドの音もいつもより大きかったよね(笑)」
Keiko 「そう(笑)。ただ、私たち自身は国によってパフォーマンスや歌唱を変えるのではなく、どの国に行っても変わらない姿勢でやっていこうっていつも話しているんです。当たり前ですけど、国によって、場所によって、言葉やノリ方は変わってくるし、それはその土地やお客さんたちが変えてくれるものだから。私たちは変わらずにブレずに、日本でやっている音楽をそのまま届けることを常に意識してステージに立っているんです。Kalafinaはサポートメンバーもデビュー当時からずっと変わらずに奏でてくださっている大先輩の方々ばかりで、これまでもいろんなことを教わってきたんですが、中でもドラムの佐藤強一さんが常に“いつも通り”ということをおっしゃっているんです。いつも通りに、平常心でやる。それが実は一番難しいことなんですよね。だから、ステージに出る前には円陣を組んで、“いつも通り、丁寧に”って声を合わせて必ず出ていくんです」
Wakana 「“丁寧に”というのは本当に思っていますね。それが“いつも通り”にもつながるし、その気持ちを忘れるわけじゃないですけど、特にメキシコとかはアゲアゲだったから(笑)、ステージに出ると自分も盛り上がってしまうので。自分たちまで完全にノッてしまうのではなくて、“いい歌を届けたい”という冷静さはどこかに持っていないと」
Keiko 「Kalafinaは3人の声で1つの曲を作っているので、誰か1人の心が乱れたり、誰か1人のテンションに持っていかれちゃうとハーモニーが崩れてしまうし、その1曲をどう見せたいか、聴かせたいかが見えなくなってしまうんですね。自分たちの中では今までもこれからも、ある一定の枠の中で表現していくことを常に考えているし、目指している。それが3人で作るKalafinaの音楽だと思うんです。個々の表現に関してはソロパートで出し切れたらいいし、そこで1人の表現者としての見せ方ができればいいと思う。そういう意味でも、Kalafinaのハーモニーの部分と、個人のボーカリストの部分の2つの立ち位置を、歌唱できちんと表現できるようになりたい。それは今でも模索中ですね」
――そして、カップリングの『夏の朝』(M-2)は『blaze』とは全く違った世界が楽しめる曲で、3人の歌声の持つ清らかさやハーモニーの美しさに引き込まれます。
Keiko 「私たちも『夏の朝』のようなファンタジックな曲を歌うときは、メロディの持つ世界から声が飛び出すことなく、溶け込んだ中で表現をしたいんですね。3人の声の成分やボリューム感も、後ろで鳴っている優しいギターやフルートの音色に寄せていきたい。その中で、言葉を語り継ぐように歌っていきたい。この曲はWakanaちゃんの声からスタートして、彼女がこの曲の雰囲気をまず作ってくれて、その声に紡がれて光をつないでいくように、同じ世界の中を3人で旅している。いつもだったらそれぞれの声で世界を変えたりもするんですが、この曲は1つのファンタジックな世界観を3人一緒にたどっている、その声のリレーがすごくあたたかく感じられて。1人の声の語尾から、次の人の声につなぐ。身体の中にある目には見えない熱を受け取って、それを感じながら歌っているような、すごく不思議な感覚があるんです。ステージで歌っていても、2人の体温まで感じながら声が出ているような感覚があって。Kalafinaならではの楽曲になったんじゃないかな」
曲の持つ魅力をもう一度掘り下げて
今の私たちが見せられる曲を大切に歌いたい
3人のハーモニーを一番心地いい形で聴いてもらいたい
――9月10日(土)・11日(日)神戸ワールド記念ホールにて開催される『Kalafina Arena LIVE 2016』が近付いてきました。ずっと応援してきたファンや、初めてKalafinaを観る方に向けて、最後にメッセージをお願いします。
Keiko 「今回はライブのタイトルにシングルやアルバム名を掲げていないので、“今の私たちの音楽、今の3人のハーモニー”を皆さんに届けられたらと思っているんです。初めて来てくださる方もたくさんいらっしゃると思うし、そういう方々にどんな表現でアプローチしたらいいかをみんなですごく考えました。私たちの歌って、どこか日常からかけ離れた世界を描いているものも多いので、来てくださった方がKalafinaワールドに一歩足を踏み入れたら、そこがいつもの生活とは違った空間になっていたらいいなぁって。全体的には音のエンタテインメントを作りたいんです。自分たちの声が楽器の一部になるような曲もあれば、フルートやバイオリンの音色が私たちの声と同じようにハーモニーを奏でてくれるときもある。自分たちがこれまで歌ってきた楽曲を、“これはクラシックの要素がある曲なのか、ロックサウンドで聴かせる曲なのか、アカペラのように目を閉じて響きを楽しんでもらいたい曲なのか”とか、その曲の持つ魅力をもう一度掘り下げて、今の私たちが見せられる曲を大切に歌いたい。それを根っこに置きながら、3人のハーモニーを一番心地いい形で聴いてもらいたい。そこがこだわりの部分だし、アリーナの大きな会場だからこその音の良さを考えて、とにかく音に集中してもらえるようなライブにしようというトライもありますね」
Hikaru 「よく驚かれるんですけど、Kalafinaのライブってお客さんの層が10代の方からご高齢の方までと幅広くて、親子や3世代で来てくださる方もいて。以前、“それだけいろんな世代の方が、同じものを聴いて楽しめることはそんなにないよ”って言ってもらえたことがあって、すごく嬉しかったんですね。今回のライブももちろん、これからもずっと、いろんな世代の方に楽しんでもらえる音楽を届けていきたいですね」
Wakana 「今回のような広い会場でやらせていただくのは、今までKalafinaのライブに来れなかった人たちにも是非来てもらいたいという想いも込めているんです。私たちが目指しているのは、いろんな方の胸に届く音楽を紡ぐことなので、お友達に誘われて私たちを全く知らずにライブに来てくれた人にも、“この曲がすごく胸に響いた”とか“あの曲のフルートの音色がすごくきれいだった”とか、何かその人の中に残るものがあれば、音を楽しんだ経験になると思うんです。だから、是非皆さんで音を楽しみに来てください」
Keiko 「これまで関西ではたくさんライブをやらせていただいて、ホール会場でいろんな声の響き、音の響きを作ってきました。各地でライブをやらせていただく中で、“アリーナならではの響きを関西の皆さんに届けたい”という想いがふつふつと湧いてきていたところで今回の公演が決まったので、私たち自身もすごく楽しみにしています。Kalafinaは今年でデビュー8年目を迎えたんですが、きたる10年目に向けて、今までのKalafinaと現在、そしてこれからの私たちも描きつつ、全部を出し切りたいと思っているので、是非皆さんに来ていただきたいです!」
Text by 梶原有紀子
(2016年9月 8日更新)
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