『スクール・ウォーズ』主題歌『ヒーロー』からユーミン
アバ、EW&F、ドナ・サマー他ディスコの名曲カバーまで!
35周年アルバム『Voice Of Power』を手にビルボードライブ大阪へ
麻倉未稀インタビュー&動画コメント
ラグビーを題材にした青春ドラマの金字塔『スクール・ウォーズ』(‘84~’85)の主題歌として大ヒットした『ヒーロー』(‘84)などで知られ、今年デビュー35周年を迎えたシンガーの麻倉未稀。圧倒的な歌唱力の高さで世代を超えた支持を集める彼女が5年ぶりにリリースした新作『Voice Of Power -35th Anniversary Album-』は、キャリアを重ねてさらなる高みに達した彼女の歌声がパワフルに堪能できる充実作。現在の心境を反映した叙情的な新曲に、誰もが知る洋楽ディスコ・クラシックスの風格に満ちたカバー、そして『ヒーロー』の新バージョンまで。改めてその歌の凄みを示した新作と9月16日(金)にビルボードライブ大阪で行われるライブについて、彼女に語ってもらった。
『Voice of Power』というタイトル通り
今のパワーを35周年にぶつけようと
――アルバムとしては11年にリリースされた2枚組ベスト『ハート・オブ・ゴールド -30th Anniversary Best Album-』以来5年ぶりとなる作品ですが、今回は全曲が新録で、より麻倉さんの現在が伝わる1枚となっています。
「『Voice of Power』というタイトル通り、今のパワーを35周年にぶつけようという感じで作れたと思います。制作に関わったスタッフもほぼ同年代が多かったので、方向性が決まるのも早かったですね」
――アルバム冒頭の3曲は、『人生は美しい』(M-1)『Applause!』(M-3)という新曲2曲と、バイオリン奏者の牧山純子さんのインスト曲『Sunny-Side Up』(‘14)にオリジナルの歌詞を付けたカバー『今も、今日からも』(M-2)となっており、『人生は美しい』の作詞は名曲『ヒーロー』(M-9)も手掛けられた売野雅勇さん、『今も、今日からも』の作詞は湯川れい子さんが手掛けられています。
「れい子先生とはアルバムを作る前からご相談をしながら、詞も書いていただくかもしれませんというお願いもしていましたね。売野先生には『ヒーロー』が収録されることもあって書いていただきたかったんですけど、32年前の『ヒーロー』は“現実”というか、“あなたの中にもヒーローがいて、私もそうだし、みんなヒーローを求めている”ということを歌っているんですが、今回の『人生は美しい』では、“宇宙からみんな見ているから、頑張れよ”みたいな内容で。延長線上でここまで来たか、というわけでもないですけど(笑)、私自身がそういうふうに感じるタイミングでもあったので、アルバムの1曲目としてもいい曲になったと思っています」
――冒頭の3曲には、曲調も歌詞もデビュー35周年を迎えた麻倉さんの今が反映されているように感じました。
「この3曲に関しては、(作詞家に)括りを作ってしまうと制限されてしまうので、“曲を聴いたイメージで、ただ、そこに作詞家の先生それぞれのドラマを作っていただければ、それだけで私は十分です”とお願いしたところ、3人それぞれが“ずっと私のことを見てました?”と思うような歌詞を書いてきてくださって。ホントにビックリしましたね」
70~80年代に洋楽のディスコソングを聴いて育ってきた世代なので
ここで懐かしい曲を味わってもらおうと
――アルバムの中盤ではアバ、アース・ウインド&ファイアー、ドナ・サマーといった面々によるディスコ/ダンスミュージックの名曲中の名曲カバーで、麻倉さんのソウルフルな歌の巧みさが際立っています。
「やっぱり70~80年代に洋楽のディスコソングを聴いて育ってきた世代なので、ここで懐かしい曲を味わってもらおうと。『君の瞳に恋してる』(‘67)(M-4)と『ダンシング・クイーン』(‘76)(M-5)は歌ったこともあったんですけど、ドナ・サマーは私が歌いたいと言っていたら、まさかの『ホット・スタッフ』(‘79)(M-7)に決まって、何とか頑張ってみました。『ブギー・ワンダーランド』(‘79)(M-6)はディレクターが大好きということで選んだんですが、実はこれまでに歌ったことがなかったので、ボイストレーニングを受ける時間をもらって臨みました」
――麻倉さんと言えば、ボニー・タイラーが原曲の『ヒーロー』もそうですが、映画『フラッシュダンス』(‘83)で世界的にヒットしたアイリーン・キャラの『ホワット・ア・フィーリング』(‘83)、ボン・ジョヴィの『夜明けのランナウェイ』(‘84)の日本語カバーの印象が強いので、今作における英語での見事なディスコ・クラシックスの名曲カバーの連打にはグッときました。
「『夜明けのランナウェイ』はボン・ジョヴィが大きくブレイクする前に取り上げたのでスゴいと言われることもありますけど(笑)、今でも時々リクエストされて歌うことがあります。実は今回は時間の制約などもあって英語のまま歌うことになりましたけど、やれるだけやってみようといいチャレンジになったし、ボイストレーニングを受けた成果を出せたことが一番大きかったです」
――そのグルーヴィーでソウルフルな中盤の流れを受けて、続く『黄昏ダンシング』(M-8)『ヒーロー』という代表曲の35周年バージョンも、ダンスミュージック色が強い仕上がりになっています。
「そうですね。特に『ヒーロー』に関しては、これまでにいろんなアレンジで歌ってきたし、違うバージョンもあったんですけど、アルバムの流れでダンスミュージック色の強い方を選びました」
ライブはアルバムと同様に
パワーを押し付けるような感じになると思います(笑)
――そして、ラグビーつながりで松任谷由実の『ノーサイド』(‘84)(M-10)をじっくりと聴かせるアレンジで取り上げられていますが、こちらも『ヒーロー』からの流れもあって、原曲のよさを再認識させてくれます。
「特にこの曲の歌詞は、アスリートが現役を退いて次にどう生きるかということが歌われていて、いろんなことを犠牲にしてラグビーに打ち込んできた彼らが最後の試合をするシーンが、歌っていても目に浮かんでくる曲なので。歌いながら、改めてこの曲の歌詞の巧みさに、さすがだなと思わされましたね」
――そういう意味では『ヒーロー』も、曲調面でも歌詞の面でも特別な高揚感を聴き手にもたらす曲というか。心を奮い立たせたいときに、今も時を超えて聴き継がれるパワーを改めて感じました。
「ちょうど30周年の’11年に東日本大震災が起こって、そのときにたくさん『ヒーロー』をかけていただいたり、私も被災地に歌いに行ったりしていたんですけど、そこで感じたことやその後に伺ったお話などから得た経験も、今回の『ヒーロー』の中には入っていると思います。それと同時に、うちの主人がちょっと大病をしたときに、入院に立ち会えない中で生放送で『ヒーロー』を歌わなきゃいけないことがあって。そのときに、この曲に歌いながら自分が励まされたというか、なぜ皆さんが『ヒーロー』に励まされるのかが改めて分かったという経験も反映されているかもしれません。ずっと自分で歌っておきながら…ですけれど(笑)、『ヒーロー』は本当に不思議な曲で、聴いている皆さんにスイッチが入るのが、歌っている私にも分かるんですよね」
――そんなパワフルでシンガーとしての充実ぶりも反映した新作を携えて、9月16日(金)にはビルボードライブ大阪でライブが行われます。
「アルバムにも参加してもらったバイオリニストの牧山純子さんにもスペシャルゲストで来てもらって、新作からの曲はもちろん、大阪になじみのある欧陽菲菲さんの曲もジャズテイストで取り上げようかと考えています。ライブはアルバムと同様にパワーを押し付けるような感じになると思いますけど(笑)、大阪の方はパワフルなので、負けじと投げ返してもらえるようなライブになればと」
Text by 吉本秀純
(2016年9月14日更新)
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