「人生って結構楽しいもんなんだなと思えるようになってきた」
JONTEの輝ける再起動! 3年半ぶりのアルバム『Reboot』
そして、ブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』
音楽×演劇のハイブリッドな人生を語るインタビュー&動画コメント
‘06年、EXILE新メンバーのオーディション『EXILE Vocal Battle Audition 2006~ASIAN DREAM~』でファイナリストに選出され、’07年にメジャーデビューした実力派ボーカリストJONTE。甘く、ソフトな歌声で聴く者を優しく包み込む彼は、歌手としての活動はもちろん、ミュージカルへの出演など俳優としても活躍。現在はブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』に出演(大阪公演は8月13日(土)~22日(月)オリックス劇場)し、小池徹平、三浦春馬らと圧巻のステージを見せている。10月22日(土)には、5月にリリースしたアルバム『Reboot』の世界を体現するべく、ビルボードライブ大阪でのライブも決定。その人を惹きつける歌声を武器に歌手×俳優として活躍するJONTEに、アルバム『Reboot』への想いや、ミュージカル『キンキーブーツ』への意気込みを語ってもらった。
表現することに関しては、歌うことも、人前で演技をすることも
似たものがあるので、両方やることで相乗効果が生まれる
――『Reboot』(’12)は約3年半ぶりのリリースとなりましたが、何かきっかけがあったんですか?
「舞台出演やライブ活動をしていく中でいろんな方との出会いがあって、久々にアルバムを作ってみようということになったんです。一番大きかったのは、宮本亜門さん、鈴木おさむさん、槇原敬之さんのお三方がタッグを組んで作られたミュージカル『愛の唄を歌おう』に出演したことですね。そのときにCHEMISTRYの川畑要さんと仲良くさせていただいて、音楽の話をいろいろとしていく中で、川畑さんが親しくされているプロデューサーさんを紹介してくださることになって、いろんな楽曲を一緒に作ったり、ライブで披露していたんです。そこから今のレーベルにお声がけをいただいて、アルバムを作らせていただけることになったんです」
――リリースはなかったけれど、音楽活動自体は続けられていたんですね。
「ありがたくも、舞台のお話をいろいろいただいたので、その合間を縫ってやっていましたね」
――JONTEさん自身としては、どちらかに重きを置きたい想いはあったりするんですか?
「最初の頃は、やっぱり音楽活動を中心にやっていきたい想いが強かったですね。でも、ミュージカルに出させていただくようになったことで表現力がついたりして、ミュージカルの経験が自分の音楽に戻ってきたんですよね。それを、ライブをやるたびに実感して、気持ちが変わったというか。表現することに関しては、歌うことも、人前で演技をすることも似たものがあるので、両方やることで相乗効果が生まれるんです。今ももちろん根底には音楽がありますけど、その上でミュージカルや舞台は自分を豊かにしてくれる経験になるので、積極的に俳優としての活動もしていきたいなと思っています」
AORとアメコミを融合させるって
結構無茶があるというか、斬新ですよね?(笑)
――タイトルの『Reboot』は、再起動や再始動という意味が込められているんですよね。
「事務所もレーベルも一新したので“気持ちを新たに”という想いもありますし、今回はほぼ自分で作詞作曲にチャレンジさせていただいているんです。そういう意味でも、自分にとっては新しいスタイルでもありますし、いろんな経験を踏んだ自分をもっと出せるように、今までの自分から脱皮して作ったので、そんな想いも込めました」
――がっつりと作詞作曲にチャレンジしてみて、いかがでした?
「特に作詞が大変でしたね。今回のアルバムにはテーマがあって、まず1つはAOR=アダルトオリエンテッドロックというジャンルへのチャレンジ。さらには、JONTEとはどういう歌手なんだろう? 自分とはどんな人間なんだろう? ということを掘り下げていったんです。それでたどり着いたのが、自分が好きな“アメコミ”で(笑)。実は、『バットマン』の中に出てくるキャラクターや要素をモチーフに、楽曲を作っていったんです」
――すごい(笑)。そんな裏テーマがあったんですね。
「そうなんです。それを歌詞にはめ込むのがすごく大変でした(笑)。アメコミって結構メッセージ性があるんですよ。例えば、『バットマン』にしても、幼少期に洞窟に落ちてお父さんが助けに来てくれる場面で、“人はなぜ落ちるのか。這い上がるために落ちるんだ”というお父さんの言葉があって。そんなところを汲み取って歌詞に混ぜてみました。AORとアメコミを融合させるって、結構無茶があるというか、斬新ですよね?(笑)」
――隠し味がすごいです(笑)。
「その辺が結構苦労したところでもあって、ずっとスタジオにこもりっきりでした。メロディ自体は浮かびやすくて楽しかったんですが、歌詞はすごく苦労しましたね」
――1曲目の『~trigger~』の入り方も、映画のプロローグみたいでおもしろいですよね。
「アメコミをモチーフにしたと言っても、そこに固執し過ぎるのもどうかなと思って、裏の裏テーマくらいでうっすらと持っていたんですね。『~trigger~』はすごく映画っぽいので、これがJ-POPのアルバムに入ってもおかしくないのかなとか、いろいろ考えてフェイクを入れてみたりしたんです。世界観を大事にしたいのはあったので、映画を観ているような気持ちになってもらえたら嬉しいですね」
――アメコミの中でも、何で『バットマン』だったんですか?
「今の大阪松竹座がかつて映画館だった頃、親に初めて連れて行ってもらって観たのが『バットマン』だったんですよ。あの頃、9歳の自分からするとすごく衝撃的でカッコよくて。あのときの感情は今でも鮮明に覚えていますね。そこから『バットマン』がすごく好きになって、フィギュアとかも買ったりしましたね(笑)。でも、そこまで『バットマン』やアメコミを前面に出すわけじゃなくて、意識しなければ普通に聴ける歌詞でもあるので、自由に感じていただけたらと思います。どう表現しようかというのは、すごく苦労しましたね」
本当に感無量でしたね。こんな日が来るとは思ってもいなかった
――先ほどお話に出てきたCHEMISTRYの川畑さんも、アルバムに参加されていますね。
「実は僕が歌手になりたいと思ったきっかけがCHEMISTRYさんだったんです。僕がまだ大阪にいる頃、CHEMISTRYさんが出ていたオーディション番組を見て、一般人が夢を持って歌手になっていく様に刺激を受けたんですよね。いつか共演したいと思うほどに憧れていた方と、一緒にミュージカルに出演させていただくことになったのでそれを伝えたら、CHEMISTRYさんの楽曲も手掛けられているプロデューサーの谷口尚久さんを引き合わせてくださったんです」
――そんな憧れの方と一緒に歌ってみて、いかがでしたか?
「本当に感無量でしたね。こんな日が来るとは思ってもいなかったですし、いろんな経験を踏まれてきた方でもあるので、レコーディングのときは、言葉の響きが全然違うなと思いましたね。学ぶことがたくさんありましたし」
――ちなみにCHEMISTRYさんの他に、影響を受けたアーティストはいますか?
「山下達郎さんや大滝詠一さんがすごく好きですね。あと韓国にBROWN EYED SOULというグループがいて、ホンットに歌が上手いんです。彼らの曲も、暇さえあれば常に聴いていますね。歌い方もすごくキレイで、どこかマックスウェルを思い起こすような歌い手だったりもしますし。キレイに歌われる方が大好きで、Joeとかにもすごく影響を受けましたね。みんな最初はいっぱい真似をして、歌っていきながら自分の形を作っていくと思うんですけど、あんな風に歌えたらという想いはすごくありましたね。今は経験を重ねていく中で、自分のスタイルみたいなものも少しずつ見え始めてきたので、自分にあるものを最大限に活かして、今できる表現をするように努めていますね」
――『Trick Star』(M-9)では、NONA REEVESの奥田健介(g)さんも参加されていますね。
「プロデューサーの谷口さんがお知り合いということもあって、ご紹介していただいたんです。結構パーティーチューンというか、今までの自分にはないテイストで盛り上がれる曲でもあるので、すごく新鮮味がありましたね。ライブで歌える日が楽しみです」
――最初に仰っていたように、今までの自分から脱皮したことで、新しいテイストがどんどん生まれたりも?
「そうですね。オーディションの頃からバラードのイメージがついていたこともあって、今まではそういう曲が結構多かったんですよ。でも、もっとチャレンジしたい想いがあって、今回は本当にゼロからやらせてもらったので、全てが新しいと思いますね。今までは用意していただいたものをしっかりと歌うことに重きを置いていたんですが、今回は自分の中で表現したいものを表現する、そんな1枚になったので」
――これからはもっと定期的にリリースしていきたい気持ちもありますか?
「これをきっかけに、出していけたらいいなと思いますね。最近は配信でどんどんダウンロードができる時代ですし、CDを手に取る方の数も少なくなっているかもしれないですが、やっぱり好きなアーティストのCDって、実際に店に行って買って、持っていたいと思うんですよね。その気持ちはおそらくずっとなくならないと思うので、そうやって手にしてくれる方がいる限り、ちゃんと音楽と向き合って、1曲1曲しっかりと作っていきたいなと思いますね」
どんな困難があっても自分を信じて、自分の中に少しでも希望が作れれば
強くなれると思うし、つながっていく
――10月22日(土)には、ビルボードライブ大阪でのライブも予定されていますね。
「嬉しいですね。実は『Reboot』をリリースする前に、どういう楽曲たちがこのアルバムに収録されているのかを先に披露したいなと思って、『Pre:HEARsAl(プリハーサル)』というライブをやったんです。でも実際にアルバムを携えてのライブはまだやっていないので、『Pre:HEARsAl(プリハーサル)』に来てくださった方にはおさらいのようなライブになればいいなと思いますし、舞台で僕を目にしてライブに行ってみたいと思っていただいた方には、また異なる一面をお見せできたらなと思います。いろんな想いを込めて、苦労を乗り越えて作ったアルバムでもあるので、1人でも多くの方に広がっていけばいいなと思います」
――上演中のブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』を観て、JONTEさんに興味を持つ方が増えるかもしれない。先ほど、音楽活動と舞台と両立することで相乗効果が生まれると仰っていましたが、そういう意味でも返ってくるものがありそうですよね。『キンキーブーツ』は、オーディションを受けられたんですよね。
「そうなんです。’12年に『海盗セブン』という作品に出させていただいて、岸谷五朗さんとお仕事させていただいたんです。今回は岸谷さんが演出に入られるということで、ミュージカルだから歌が重要だとお声掛けいただいたんです。でも、ブロードウェイのスタッフに歌声や演技の審査をしてもらわないといけないということでオーディションを受けて、出演できることになりました。岸谷さんと出会ってから時を経て、その中で自分が経験してきたものを『キンキーブーツ』でしっかりと発揮して、恩返しできたらなと思っています。シンディ・ローパーの曲も自分の楽曲にはないテイストなので、歌わせていただくのがすごく楽しみで。もっともっと、自分の可能性を拡げることができるチャンスでもあると思っています」
――ご自身のブログで「最近、ようやく演技を楽しめるようになった」と書いてらっしゃいましたよね。
「そうなんです。それでも難しいですけどね。本当にいろいろと経験を踏ませていただいたおかげです。昔は、俳優さんが稽古場で演出家の方にダメ出しされながら繰り返し稽古している姿を見て、自分には絶対できないと思っていたんですよ(笑)。僕も結構注意される方なんですが、いろいろやらせていただく内に、役になるために人物を掘り下げていく作業が少しずつおもしろくなってきたんです。いろんな人間になれることも、おもしろさの1つでもありますし、この時代に生きたこの人は、こんな経験をして、だからこういうセリフを言うんだとか、そういうところを細かく詰めていく作業を楽しめるようになってきました。その経験がまた自分に蓄積されたりして本当に勉強になりますし、舞台の魅力だなと思います。今は、もっといろんな役とか、いろんな場所でやってみたい想いが強いですね」
――それはやっぱり、音楽でもミュージカルでも、舞台に立って表現することが好きだからですね。
「それはあると思いますね。舞台は役になって板の上で物語を進めるので、いい意味でお客さんを気にせずに出来るというか、他のキャストもいらっしゃるので、緊張が自然と分散されると思うんです。ライブは1人だし、僕はお客さんの顔を見て歌うタイプなのでライブの方がプレッシャーは大きいですが、どちらも異なる楽しみ方ができているなと思います。今はライブとミュージカルを、いいバランスでさせていただけている気がしますね」
――『キンキーブーツ』の前は、ストレートプレイの『それいゆ』にも出演されていましたが、ストレートプレイとミュージカルで気持ちに違いはありますか?
「やっぱりミュージカルは歌で力を発揮したい気持ちが強くありますね。ダンスもあって、華やかでキラキラしたステージに立てる楽しさがあります。ストレートプレイは作品ごとに気付かされることが多くて、自分が考えもしなかった部分に触れられるものだと思います。毎回、新しい自分を発見できるという点では、どちらも楽しいなと」
――音楽も舞台も、今後のいろんな活動に注目していただきたいですね。
「そうですね。本当に、自分を信じることの大切さを『Reboot』を通してすごく実感しましたし、やっぱり“人”なんだなと思いました。正直、環境がいろいろと変わって、これからどうしていこうかと悩んだ時期もあったんです。でも、一生懸命やっていれば、どこかで見てくださっている人がいるんですよね。そして、人と人とがつながることによっていろんなことが叶えられていく。でも、そういう方に出会うためには、自分がやりたいことを明確にすることが大事で、歌がやりたいという想いが強ければ強いほど、いろんなことを引きよせることが出来るんだなとすごく思いました。今こうやって音楽活動が出来るのも、レーベルの方やマネージャーとか、同じ方向を見ていろいろと動いてくださる方がいるからで。どんな困難があっても自分を信じて、自分の中に少しでも希望が作れれば強くなれると思うし、つながっていく。それを最近は目に見えて実感することが多くて、人生って結構楽しいもんなんだなと思えるようになってきたんです。これから、それをもっともっと形にしていけたらなと思いますね」
(2016年8月12日更新)
Check