初の全国ワンマンツアー開幕直前“夜ダン”徹底講座
ロック=ダンスミュージックを信条に快進撃を続ける
夜の本気ダンスがルーツも今もヒストリーも解説!
『DANCEABLE』インタビュー&動画コメント
ロックフェスを主戦場とする飽和状態のシーンの真っ只中にいながらただの四つ打ちでは終わらせない、問答無用のグルーヴ×グッドメロディ、溢れるバイタリティが生み出す彼らの“人力ダンスミュージック”の本質は、メジャーデビューアルバム『DANCEABLE』を聴けば一目瞭然。ニューウェイヴ、ポストパンク、ロックロール・リヴァイバルetc経由で、踊らせるための機能としてのロックではなく、“ロックは踊れる”という自らのセオリーを徹底的に現場で証明していく4人は、6月10日(金)大阪BIGCATよりいよいよ初の全国ワンマンツアー『WONDERFUL! DANCEABLE! ENSEMBLE!』をスタートさせる。そこで、米田貴紀(vo&g)とマイケル(b)の2人に、『DANCEABLE』レコーディング裏話はもちろん、地元京都で培われた音楽と漫画にまつわるルーツや信条、ロックDJイベント『onion night!』『ピストル・ディスコ』と共にステップアップした道のりや、『見放題』『MINAMI WHEEL』をはじめバンドの岐路でことごとくステージに立ってきたBIGCATへの想いなどをたっぷり語ってもらった。初の全国ワンマンツアーを前に、“夜ダン”の内部構造をおさらいするのにもってこいのインタビュー!
僕たちの本質的なところをきっと分かってもらえるって
信じていたいんですよ
――いやぁ~夜ダンをね、『めざましテレビ』で見る時代が来たというね(笑)。
マイケル(b)「そうですね(笑)」
米田(vo&g)「自分でもビックリしてます(笑)。まさか」
――それぐらい、いろんな状況を巻き込んでメジャーデビュー出来たのはちょっと痛快だなと。現在地的な感覚で言うと、どんな気分です?
米田「元々僕がロックを最初に聴いたとき、ギターを触り出した頃から目指してたのはメジャーのシーンやったので。ちゃんとステップアップ出来てるなと思うし、でもここからが始まりやなって。とりあえずお祝いされたり“おめでとう”とかは言われましたけど、“ここから僕たちがやっていかんと!”って、すごい感じてますね」
マイケル「やっとスタートラインに立てた感じはありますね。バンドとして8年やってきて、やっとその表舞台と言いますか、いろんな人に音楽を届けられるところにまで来れたのかなぁって」
――何かちょっとグッときますね。“俺、家で普通に音楽聴いてたのにな”とか、高校のときなんか、そこまで具体的な未来像を思い描いてたわけではないだろうし。
米田「うんうん。この前も『LINE LIVE』っていうのをやったんですけど、そのときのキャパがすごい狭いところやったんです。そこで演奏してるときに、昔京都で出てたライブハウスにすごく似てる感覚やったので、演奏中に何かそことダブって、ちょっと感動というか思い出す、みたいな」
――それこそね、昔はフロアに降りて歌ってたのが、今では降りられないぐらいの人がいてくれて。
米田「そうなんですよ。昔はもう、ホンマに人が少な過ぎてどこにでも行けるみたいな感じやったのが(笑)、今は人がいっぱい過ぎて入れない状態っていうのも、ありがたいですね」
――ちなみにその昔京都でやってたライブハウスって?
米田「それは木屋町のDEWEYっていうところなんですけど、そこの店長さんがその前にやってたAFTER BEATっていうライブハウスがあって。僕がバンドをスタートさせたのってそこからやったんですよ。だからそういうことを思い出すとやっぱり、昔一緒にやったバンドの人とか、いろんな人が頭に浮かんでくるなって」
――デビューアルバム『DANCEABLE』のリリース後、そのリアクションに対してはどう思いました?
米田「SNSとかで反応を見て初めて実感ってあるんやなって。本当にいい作品が出来たとはもちろん思ってたんで、“この曲が好き”みたいなつぶやきを見ると、すごく嬉しいなと」
――じゃあ“夜ダン”とかでエゴサーチすると。
米田「やっちゃいますね、やっぱりね(笑)。ちょっと気になりますよね、どうしてもね」
――それこそ“この方向で間違いない”じゃないですけど、自分たちの活動に予感めいたものが生まれたのって、どのタイミングだったんですか?
米田「昔はずっと京都だけで活動してたんですけど、そこから外に出ようとなったとき、ロックDJイベントの『onion night!』とか、東京で言うたら『ピストル・ディスコ』周りの人たちが、気に入ってくれたんですよね。そこから結構物事が動き出したかなと。『ヤングアダルト』(’13)(今年3月に復刻盤が発売)を持ってそういうDJイベントを廻ってた、あそこが始まりかな」
――ちょうど『onion night!』自体の存在感が出てきた時期と重なりますね。相乗効果というか、何か一緒に上がっていけた感じがありますね。
米田「そうですよね。今はもう関西のロックDJイベントと言えば=『onion night!』で。僕たちも少しでもそういう力になれてたらいいなと思いますよね。ずっと京都だけでやってたら、ホンマにアンダーグラウンドの方に行っちゃってた可能性は十分にあったので」
――言ってしまえば、夜ダンって今のフェス文化に上手く乗れたバンドだとも思うし、それと同時に絶対にカウンターも生まれてくる。自分たちが知られる土壌にはなったけど、同時に誤解も生まれていく苛立ちや戸惑いは、もう仕方ないっちゃ仕方ないですけど。
米田「そうなんですよね、うん。もちろん100人おって100人が素晴らしいと言ってくれる世界じゃないのは分かってるんですけど、やっぱり“今流行りの4つ打ちロック”とか言われちゃうのは、しょうがないことなんですけど、やっぱり悔しかったのはありますし。でも、本当に僕たちのことをしっかりと観てくれたら、聴いてくれたら、その奥にある僕たちの本質的なところをきっと分かってもらえるって、信じていたいんですよ。夜の本気ダンスらしくやっていけば、いつかそういう誤解は解けていくんじゃないかと思って、活動してましたね」
マイケル「我々は昔からやってることは変わらないんで、この時代にそういう音楽が流行っただけというか。ただ、その流れに乗れたことは、よかったなってバンドとしてはみんな思ってるんです。そこから興味持ってくれた人に我々の音楽をもっと探ってもらって、“あ、ちょっと根っこが違うな”って感じてもらえたら嬉しいですし。あと、“夜の本気ダンス”って結構インパクトがある名前なんで、またどこかで会えたときにちょっとでも好きな方向に転がったらいいかなって」
――“夜の本気ダンス”って、よくよく考えたらどんな名前やねんって話ですけど(笑)、これは元メンバーの部屋の壁に新聞か何かの記事が貼っていたと。そもそも何でそんな記事を貼ってたんやろ? 元ネタは何の記事なんやろ? ディスコブームの復興とか?(笑)
米田「(笑)。だから僕たちの生みの親って言ったらもう」
マイケル「その新聞です(笑)」
“自分もそうなれるんじゃないか?”って
――デビュータイミングなんで聞いておきたいんですけど、そもそも音楽を始めたきっかけは?
米田「僕はASIAN KUNG-FU GENERATIONの『崩壊アンプリファー』(‘02)を、中学3年のときにジャケ買いして。それまでは全くロックというか、音楽自体に興味がなくて。バスケ部やったんですけどそれも終わって、もう勉強しかやることないし、“他に熱中できることないかな?”みたいな時期に、そう言えば音楽って楽しそうやなと思って。『崩壊アンプリファー』も最初は全然耳に馴染まなかったんですけど(笑)、繰り返し聴いていく内にだんだんロックのカッコよさが分かったような気がして。そこからアジカンのルーツとかもどんどん掘っていって、いろんなシーンを知るようになった感じなんですけど」
マイケル「僕は中学のときに周りが結構洋楽を聴いてて、その影響でグリーン・デイとかリンキン・パークとかSUM41を聴いてたんですよ。で、やんわり“バンドってカッコいいな”と思って高校で軽音楽部に入ったんですけど、テレビでPOLYSICSのライブ映像が流れてるのを観て、それがめっちゃ楽しくて。テレビながらにライブの熱量が感じられたんで、“何やこのバンドは!?”と思って、そのときに初めて自分でチケットを買ったんです。こういうバンドになりたい、このバンドをもっと追いかけたいと初めて思ったバンドは、POLYSICSですね」
――アジカンもPOLYSICSも、ここにいる2人の男の人生を変えてると思ったら、音楽っておもしろいですよね。そこから曲を書こうとなったのは、その延長線上で自ずとやりたくなったと。
米田「ですね。たまたま家にアコギがあって」
――何やろね、あのたまたま家にアコギがあるっていうシチュエーション(笑)。
マイケル「アハハハハ!(笑)」
米田「その時期ぐらいに父がちょっと買ってきたんですよね、それまでなかったのに」
――すごいなぁ、そんな遅くからギター始めたんや、お父さん(笑)。
米田「そうなんですよ(笑)。昔フォークソングが好きやったのもあると思うんですけど、それでちょっと自分も触りたいなって。教えてくれる人もいないんで本当に独学で弦を押さえたりしてたんですけど、同時期ぐらいにちょうど『BECK』っていう漫画を読み出したりしてたんですよ。あれに結構、影響を受けてる(笑)。普通のヤツがスターになれる、“こんな俺でも出来るんだ!”みたいな。じゃあ自分もバンドやってみようかなって」
――世代ならではやな~。そのときに『スラムダンク』が流行ってたら、そのままバスケを続けてただろうし(笑)。
マイケル「アハハハハ!(笑) 確かに」
米田「やっぱりね、漫画とかああいうイメージが出来るものって、すごいなと思いますね。“自分もそうなれるんじゃないか?”ってイメージを湧かせる。あれがなかったら、そんな想像すら出来なかったんで」
“夜の本気ダンスが思う、ロックとは何ぞや?”が出せてる
――最新アルバム『DANCEABLE』はクオリティだけじゃなくちゃんと熱量もある楽曲揃いでしたけど、個人的に可能性を感じたのが『escape with you』(M-6)とか『Dance in the rain』(M-9)でしたね。音楽的にも、メジャーでやっていく上でも、ちゃんと視野が広がっていく感じがする曲で。
米田「その2曲に関しては、ライブでハンドマイクで歌うイメージが最初にあって作った曲なんですよね。イエモンとかああいうデッカいロックバンドを想像して作ったので、今までの僕らとはまた違う感じの曲になったのかなと」
――『Dance in the rain』の“交わす意識は走馬灯”のラインも、もはや“空耳アワー”(笑)。
マイケル「アハハハハ!(笑)」
米田「確かにね(笑)。自分でもやってて、“こんなん歌詞なかったら絶対分からんやろ!”って(笑)」
――洋楽に影響を受けて英詞で歌うバンドももちろんいるけど、こういう風に母国語を乗せられて、しかもおもしろくやれるのが一番楽しい。どっちにも行けるというか。
米田「僕もそうですね。やっぱり前提として日本語で歌いたいのがあるから。でも、日本語で歌いたいけど日本語っぽくなくしたいというか、リズム感の上で崩していきたい。そこで遊んでるのはありますね」
――あと、レコーディングは東京ではなく、奈良のMORGで、合宿形式でやったと。
米田「今の時代に東京って言っても、新幹線で言うたらもう2時間半とかで行ける距離やし、別に東京に行かずとも全然戦えるというか、活動は出来るんだっていうのは作品でも示せたかなと」
――やっぱりどんどん時代も環境も変わっていってるもんね。関西でもしっかり全国で勝負できる音が作れる、そういうバンドがいてくれるのは心強いなぁと。自分たちにとってどういうアルバムになりましたか?
米田「“今っぽい”っていうところから期待して入ったら何かちゃうなって思うアルバムかもしれないですけど、=それって僕ららしさが出てるというか。“夜の本気ダンスが思う、ロックとは何ぞや?”が出せてる。ロック=ダンスミュージックっていうのが僕の中にはあるんですけど、それが結構分かりやすくこのアルバムには詰まってるんじゃないかな。このアルバムを気に入ってくれた人は、この先もずっと夜の本気ダンスを好きになれる、そういうアルバムかなと思います」
マイケル「去年のフェスとかを通して我々が感じてきたこともアルバムにはすごい現れてますし、自分たちのルーツもこの1枚には収録されてるんで。本当に自分たちが感じてきたことが集約されてる1枚になってるなぁと思います」
――レコーディング期間は結構タイトだったみたいですが、印象的なエピソードはある?
米田「合宿とは言え、夜中に鈴鹿(ds)がドラムを録って、朝に僕が歌を録ってとか、結構メンバーの時間帯が合わない中で作っていったんですけど、個人的には歌詞がなかなか出てこない時期があって。MORGって本当に家みたいなところで、和室があって、そこに引きこもって(笑)、グワァ~ッって1人で歌詞を書いてたのを、今でも思い出したりしますね。あとは、合間に息抜きで一緒にゲームをしたり、マネージャーの吉田さんが毎日手料理を作ってくれたんですよ。そのお陰でこっち(お腹を叩く)も満たされたし(笑)、ホンマにそのパワーで作れた。そういうのは合宿やからこそ出来たのかなって。終わるときはちょっと寂しい感じもありましたね」
僕らはシンプルに“音楽って楽しい”って伝えていく役割を全うしていきたい
――そして、初の全国ワンマンツアーもいよいよ始まりますけど、初日は地元関西のBIGCATですね。
米田「BIGCAT自体にすごく思い出があるんですよね。3月の『スペシャ列伝』でもBIGCATでやらせてもらって、そのときも“ここは僕たちの思い出が詰まってます”って言ったんですけど、そこからワンマンツアーがスタートするのはすごく感慨深いというか。今年の1月に東名阪のクアトロでワンマンをやらせてもらったんですけど、それ以前は梅田のShangri-Laでしたぐらいで、まだ全然ワンマンをやったことがないんで」
――何かそれが意外でしたね。
米田「そうなんですよね。最近になってワンマンのよさだったり難しさを感じることが出来たので、このワンマンツアーではもっともっと質の高いライブをしたいし、他のエンタテインメントとも戦えるぐらいの時間をお客さんと共有したい。そういう次元のところまで自分たちを高めていきたいと思ってるんで。『DANCEABLE』の曲をもちろん披露するんですけど、この曲たちがライブでどうなっていくのか。もしかしたら予想の範囲を超えるかもしれないし、そういうところも今からすごく楽しみなツアーです」
――ちなみにBIGCATでの“思い出”って?
米田「『見放題』だったり『MINAMI WHEEL』だったり、そういうイベントでステージに立たせてもらってきたので。やっぱり僕たちのポイントポイントでやってきた場所なんですよ」
――確かに『見放題』でも『MINAMI WHEEL』でも、最もデカい小屋ですもんね。“この会場を任されたということは”っていう意思を感じる場所というか。
米田「そうなんです。だから、あそこで演奏すると、そういうことをやっぱり思い出すんですよね」
――最後にそれぞれ夜の本気ダンスとして目指すところを聞きたいなと!
米田「僕が最初に影響を受けたバンドはアジカンですけど、僕たちもそういう存在になりたいなぁと思ってて。夜の本気ダンスに影響を受けて、バンドを始めて、ここまで来ましたみたいなヤツが現れるぐらい、“日本でロックバンドと言ったら夜の本気ダンスだ!”ぐらいになれるように、もっともっと頑張っていきたいと思います!」
マイケル「“楽しさ”を追求するバンドでいたいなぁっていうのが、ずっとあって。ライブを観た人に“楽しい”っていう感情を与えられるようなバンドになりたいですし、自分たちもずっと楽しく音楽をやっていたい。いろんなバンドがいて伝えたいこともいろいろあると思うんですけど、僕らはシンプルに“音楽って楽しい”って伝えていく役割を、ずっと全うしていきたいと思ってます。それが感動につながったらエンタテインメントにもなりますし、そこを追い求めていきたいですね」
――“楽しい”ことは続くもんね。いい締めをもらいました、本日はありがとうございました!
米田&マイケル「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2016年6月 8日更新)
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