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「自分の汚いところ、イヤなところの中に必ずキラキラが眠ってる」
蒼き結晶のようなポップネス、いまだ続くバンドという青春の奇跡
ツアークライマックスに捧ぐ
ジョゼ『YOUNGSTER』インタビュー&動画コメント

 キャリアを重ね、年齢を重ね、経験と知識を得るにつれ、誰もが否が応にも失っていく衝動や無知ゆえの行動力。それはどんな職業だって、人生だってそうで、バンドマンもしかり。“少年の心を忘れない”という常套句は、同時に大人であることへの痛烈な自覚と過去への憧れの心的証拠でもある。が、しかし。シーンの狭間で孤軍奮闘しながら、そのかけがえのないきらめきを意図せずに放ち続けているのが、3ピースロックバンドのジョゼだ。彼らの新作『YOUNGSTER』(=若者、少年の意)は、Cocco、GRAPEVINE、くるり、aiko、木村カエラなど多数のアーティストをプロデュースし、ベーシストとしてもサザンオールスターズ、藤井フミヤ、奥田民生、吉井和哉、ポルノグラフィティ、いきものがかり、miwaなど、第一線の現場でその腕を振るう根岸孝旨をプロデューサーに招聘。まだまだ未完成な若者3人がもがき苦しみながら生み出した、蒼き結晶のようなポップネスがビッシリ詰まった1枚となった。ツアーのクライマックスを前に、バンドという青春がいまだに続いている奇跡を、メンバー全員で語ってもらった。

 
 
“バンドやろうぜ!”みたいな気持ちを、今一度思い出してみようって
 
 
――前作の1stフルアルバム『Sekirara』(‘15)で、1つの代表作と思えるような作品を作って。じゃあ今作はというときに、今まで通りにはいかなかったらしいね。
 
羽深(vo&g)「むしろ、“今まで通りにいきたくなかった”んですよね。変化が欲しくて悩んでる0から1の間がキツかったというか。いやぁ~絞り切りましたね、今回は」
 
――『Sekirara』を作った時点で、ストックほぼなしの状態までいったわけやもんね。
 
羽深「そうですね。気が付いたら、ちょっとあってはならない事態に(笑)。『Sekirara』は“ジョゼコレクション”みたいな感じで昔の曲も入っていたので、必然的にヒストリー感、バイオグラフィ感が出たのかなと思うんですけど」
 
――ただ、さっき言った“変化が欲しい”=このままじゃダメだとも思ったわけよね。
 
羽深「『Sekirara』の延長線上で同じようなアルバムは出来たかもしれない。でも、“それでいいのかな?”って思っちゃったんですよね。『Sekirara』のツアーを廻っているときに、やっぱり目の前で聴いてくれるお客さんをまず第一に、ライブを前提として曲を作っていきたいなと思ったんですよ。 でも、それは“書かなきゃ”じゃなくて、単純に俺らもそういう曲が欲しかったんですよ。で、自分でケツを叩いて(笑)。今回は、今までのようにプリプロをしっかりやったり、僕が事前に組み立てて持っていくようなやり方はほぼしてないですね。スタジオに入ったときの瞬発力で、“これいいね、気持ちいいね”を大切にしたのかなと」
 
吉田(b)「ジョゼが変わっていこうとしているときに、リズム隊…特にベースが今のままじゃいけない、まず自分が変わらなきゃって、僕が一番思っていたのかなって。でも、そうは思ってはいるけど、変わるために何をすればいいのか、何を変えなきゃいけないのかが分からなかった。そういう意味では、根岸(孝旨)さんがプロデュースに入ってくれて、その指針を全て示してくれたという」
 
中神(ds)「『Sekirara』のときは、まずありのままの僕らを観てもらいたいというのがコンセプトにあって。今回の『YOUNGSTER』は、ありのままの僕らを観てもらった上で、そこから何を伝えていきたいのか? そういう想いがすごく詰まってるアルバムだと思うんですよね。ライブ然とした曲を作ったのもそうですけど、前作にはなかった伝え方を、この『YOUNGSTER』では出来たかなと思います」
 
羽深「おもしろいなぁって自分でも思うんですけど、泥臭いバンドがだんだんと孤高の、ファンタジックなバンドになっていくことはあるかもしれないですけど、うちらは逆なんですよね。最初の頃は結構分かりにくい音楽をやってたと思うんですよ。でも…“バンドやろうぜ!”みたいな気持ちを、今一度思い出してみようって。『YOUNGSTER』=若者、少年というタイトルにもそれが表れていると思うんですけど。どんな曲がキャッチーなのか、分かりやすいのかは、もしかしたらどこかで分かってたと思うんですよ。それこそJ-POPを聴いて育ったんで、ポップネスがないわけじゃないんです。でも…ずっとそこから逃げてたんですよね。カッコつけて。そういうものを取っ払ってみようという試みから、『YOUNGSTER』は始まっていったのかもしれない」
 
――歌モノにちゃんと挑戦していきたい気持ちにはどこかで気付いてるんだけど、いざそれをやるとなると小っ恥ずかしいというか。
 
羽深「そうそう。でも、心のキャパというか、ジョゼの器を広げるのは今だなぁと。『Sekirara』で好きになってくれた人は“こんな作品を出すんだ”って思う人もいるかもしれないですけど、根本的には変わってない部分もいっぱいあると思うんで。よくライブに来てくれるお客さんとかは、“裏切ったな!”とは言わないと思うんですよ(笑)」
 
――当の本人が相当変えたと思っていても、その声とこの歌詞でしょ? そんな変化で見えなくなるほど薄い色じゃないよと。むしろジョゼはまだまだ変われると思う。もっと踏み込めると思う。
 
中神「めちゃ分かります。作詞作曲する人に多いと思うんですけど、端から見たら“全然お前だよ!”みたいな(笑)」
 
――メンバーが変わるとか、住む場所が変わるとか、結婚するとか子供が生まれるとか、それぐらい問答無用の環境の変化がない限りは、そこまで変わらないと思う。だからもっと大胆でもいいと思うし。
 
羽深「マジっすか!? ちょっと参考にします(笑)」
 
――『ハートソルジャー』(M-1)に“僕は僕のままで変わればいいんだろう”とありますが、散々変わろうと思っても、こうやって残るジョゼの核(笑)。
 



今回は本当に変わりたかったから
 
 
――とは言え、今作の曲作りは、羽深くん的に相当キツかったと。
 
羽深「そうですね(苦笑)。いつもは歌詞と同時に曲も作って、歌いたいことがちゃんとあって、サビにこういうフレーズがあって、そこにはこのリフが乗るよなって家で1人で組み上げてみんなに送信、だったんですけど。何せ時間がなかったんですよね。ストックが0というのもあったし、根岸さんがいらっしゃるのに方向性も決まってないし、もうどうしよう!?って。だから今回は、とりあえずスタジオで“せーの”でやった曲がかなり多い。いつもの順序で作れたのは『Friday』(M-6)と『LITTLE CITY』(M-3)ぐらいですね。他の曲はスタジオでまずバンドサウンドが出来て、メロディは何となくあって、歌詞を後で付けるという。やってみて分かったんですけど俺、後付けの歌詞が超苦手でしたね(苦笑)。歌詞とメロディが一緒に落ちてくる必然性が好きなんで、その美学をまず変えなきゃいけなかった。ただ、今回は本当に変わりたかったから、根岸さんもそうだし、スタッフもそうだし、みんなの意見を割と聞いたんですよ。それが逆に自分の首を絞めたというか、“いや、それはちょっと届きにくいんじゃないかな?”とか言われると、カッチーン!ときて。自分で聞いたくせに(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) みんなも意見を求められたから言ったのに(笑)。
 
羽深「自分の器の狭さも露呈されたというか。自分のダメなところが目の前にあって、分解しなきゃいけない作業って、一番イヤなことだと思うんですよね(笑)。それが多かったからしんどかったのかなぁ」
 
――音楽家としてだけじゃなく、やっぱり人としての要素もすごくあるというか。ジョゼの曲だったり、羽深くんと会って話した印象から思ってたんだけど、なかなかここまでピュアな人って実はいないかもって。
 
羽深「そうですか?」
 
――よく“少年の心を忘れない”とか言うけど、それって大人になっていく過程の中で、自分の中にある少年性が失われないみたいなことだけど、羽深くんはマジでこいつ少年だなって思うことがすごくある。大人の中の少年性じゃなくて、少年そのもの(笑)。
 
(一同笑)
 
――だから他の人の少年性とは話が違う。歌詞を見ても、まだこんなこと言ってんのかって(笑)。
 
(一同爆笑)
 
羽深「アハハハハ!(笑) いや、クソ生意気なガキですよ、本当に」
 
中神「こういう歌詞を書いといて、実際は人間関係も結構上手に立ち回れるタイプだったら“あれ?”って思うんですけど、はぶちゃん(=羽深)はリアルにそうだから“あ、本当なんだな”みたいな(笑)」
 
――やっぱり高校生のときの自分と、大学生の自分、社会人の自分は違う。でも、羽深くんは割と高校生の自分をキープ出来ている人だと思う。それがいいことかは分からないけど(笑)。
 
羽深「アハハハハ!(笑) でも楽しいですよ、俺は(笑)。人生楽しいです」
 
――でも、そこが他のソングライターと違うところでもあって、かわいげでもあるなと改めて思いましたけどね。制作中に悔しくて枕を殴ってたっていうエピソードも、いくつだよと(笑)。でも、そこがいいんだよね、ジョゼは。
 
 
精神と時の部屋というか…短い期間で強い師匠と出会ったというか
ビシバシ鍛えられましたね
 
 
――そんな中、根岸さんがこのチームに加わってくれたわけですけど、今まで錚々たる人たちをプロデュースしてきた根岸さんからしたら、それこそ今まで一番『YOUNGSTER』な、未熟な状態のバンドだったんじゃないかなと。これはでもすごい縁よね。
 
羽深「間違いないと思いますね。あと、結果このタイミングでベストだったなと思います。ぶっちゃけ俺らがもっと勉強した上で出会っていれば、見付かる答えは違ったと思うんですけど、精神と時の部屋というか…短い期間で強い師匠と出会ったというか、ビシバシ鍛えられましたね」
 
――そもそも今回はプロデューサーを立ててみようという話が先だった?
 
羽深「そうですね。その中で“根岸さんはどう?”っていう提案があって。スタジオにいきなり来てくれたんですよ。もうマジかよ!って。(奥田)民生さんも好きですし、GRAPEVINEとかくるりも好きだったんで、いつかはやって欲しいとは思ってましたけど、今か!って(笑)」
 
――しかもね、そんなときに限って曲もない(笑)。
 
羽深「そのときはマジで『Friday』しかなくて、とりあえずスタジオでやってみて。“ジャーン♪ ドコドン!”って終わって、“…で?”みたいな(笑)。根岸さん的には『Sekirara』を聴いて、“もうこの子たちは完成されてるし、僕が何を助ければいいの?”っておっしゃってたんですね。でも、いろいろとコミュニケーションを取っていく内に、俺らの勉強が足りない部分がいっぱい出てきて。それこそ音楽理論というか、今まで勘違いして乗せていた音が意図的だったのか、ラッキーでそうなったのか…そういうことが分かってないと、お客さんに伝わるものも伝わらないって」
 
――しかもね、J-POPの大海原に打って出てみんなに聴いてもらうには、まぐれを待ってはいられないというか。しっかりそういうことが分かった上で仕掛けていくのか、バットをただ振り回すのかじゃ、バッターボックスに立つときの感覚も全然違うだろうし。特にベーシストは試練ですよね、先生がベーシストですから。
 
吉田「自分で言うのもあれですけど、根岸さんもこれだけ未熟なベーシストと一緒にやったことがないと思うんですよね(苦笑)。変わらなきゃいけないとは思ってたんですけど、変わる=自分のダメなところを全部見なきゃダメじゃないですか。もう何も包み隠さずに全部おっしゃってくれたんで、正直むちゃくちゃ辛かったですね(苦笑)」
 
羽深「よく泣かなかったよね?」
 
吉田「いや、めっちゃ泣いてたよ? 家で(笑)。うーん…振り返れば“辛い”しか出てこないのが正直なところ(苦笑)」
 
中神「あんなに露骨に分かるものなんだと思ったんですけど、実際に来ていただいてスタジオワークをしたときに、春人(=吉田)と同じベースで、同じアンプで、もう全く言い訳が出来ない人の違いだけの状態で、根岸さんに俺らの曲を弾いていただいたりもしたんです」
 
吉田「しかもその場で、“こういう感じの曲なんですけど”って伝えたら、“ちょっと貸して”ってもう完璧に、っていうかむしろ120%ぐらいのフレーズが(笑)」
 
――根岸さんのベースはヴィンテージだから、とかじゃない(笑)。腕でしかないという。
 
吉田「根岸さんと合わせた次の3人のスタジオが、超怖かったです」
 
羽深「俺らは知っちゃったんでね、極上の味を(笑)」
 
――とは言え、パートを置き換えればみんなに起こり得る出来事なわけで。
 
中神「絶対にそうだと思いますよ。僕はもう全力で避けたいですね(笑)」
 
――次はドラマー出身、その次はボーカル&ギター出身のプロデューサーって、担当制で回していく(笑)。
 
羽深「次はセルフかな!?」
 
(一同爆笑)
 
――でも、ヘンにキャリアがスタートしてしまうと、ここまで言えてそれを聞けるかもお互いに難しい。根岸さんが第一線のプロで、みんながまだ未熟でっていう状態で出会えたからこその、貴重な時間でもあったよね。
 
中神「しかも、あくまで僕らのよさを分かってもらった上で、意図を汲んで、アドバイスをいただいたんで」
 
羽深「プロデューサーのイメージって、“ここはこうだから”って決めていく人だと思ってたんですけど、根岸さんは俺らが何をしたいのかを第一に、尊重してくれたというか。“それだったらここは違うんじゃない?”とかいうコミュニケーションが多かったんですよね」
 
 
俺もボーカルブースで“お会計ー!”って
歌うことになるとは思わなかったですよ(笑)
 
 
――あと、歌詞について触れていくと、『LITTLE CITY』はリハに遅刻しそうになったときに生まれた曲であると同時に、“なんでもあるのが自慢で/なんにもないのが自分で”という、東京生まれのコンプレックスを描いたと。
 
羽深「一見、意識が高そうに見えがちだけど、東京って怠け者が多いと思う。だから遅刻もしちゃうし(笑)」
 
――普通、こういう曲って最後に一筋の光があるというか、何かしら改善の余地が提示されて終わる。でも、この曲は言い訳するのも諦めて“許してくれ”で終わっちゃう。こんな曲見たことないわ(笑)。
 
(一同爆笑)
 
羽深「俺も歌詞を書いていて、このオチにたどり着いたときは笑いました(笑)。結局、ただ許して欲しかった(笑)」
 
――他にも、根岸さんも指摘したという『GUILTY』(M-5)の“16番線”とか“新宿”とか、景色が限定される言葉を選んだことでむしろ広がりが出るというか。Syrup16gとかもそうだけど、案外、固有名詞を出した方がイメージを喚起させるのはあると思う。聴いた人がそれを勝手に自分の環境に置き換えるから。
 
羽深「それこそ今までは、風景を限定されたくなかったんで固有名詞を避けてきたんですよ。でも、五十嵐(隆=Syrup16g・vo&g)さんも“エビセン”とか言ってますしね(笑)。この曲は割と特殊かもしれないですね。弾き語りライブの待ち時間に“1曲増やしちゃおう”と思って、楽屋でバーッと30分ぐらいで書いた曲だったんで。本当に新宿にライブをしに来た自分を書いた(笑)」
 
――厳選された言葉数と明快さ。『GUILTY』『Friday』『ヤングパレード』(M-7)の3曲のポップさはすごくいいなと。『ヤングパレード』は最後に出来た曲ということだけど、まぁ入れられてよかったよね。
 
羽深「これはもう、みんなのお陰ですね。1人じゃ絶対に作れなかった」
 
――ライブの絵が浮かぶようなコーラス、言葉にならないWoo~♪というサビも新鮮で。
 
羽深「これはもう俺の心の叫びですね。“上手くいかねぇ!”って枕を殴っていた日々を叫んでるわけですよ(笑)。みんなの心の叫びも分けて欲しいというか、一緒に分かり合えたらいいなって」
 
――『ロクデナシ』(M-4)の詞が羽深くんと中神くんの共作となったのも、羽深くんがこってり絞られてたからこそ生まれたんだもんね(笑)。
 
羽深「こういう勢いあるロックナンバーは今までになかったから、どうやって歌詞を付けたらいいかが分からなくて。繊細な歌詞をちまちま書いてたんですけど、ジンジン(=中神)と、“BLANKEY JET CITYみたいに敢えて意味をそこまで持たせない歌詞にした方が、逆に上手くいくんじゃないの?”ってLINEでやり合って、ジンジンが送ってきたのが2番の歌詞だったりするんで。爆笑しながらボーカルブースに入って歌ったら、意外とイケたという」
 
中神「俺も本当に採用されるとは思ってなくて、これをヒントに言葉が広がればいいかなぐらいの軽い気持ちでササーッと書いたんですけど、いざ歌ってみたら“あれ? よくね!?”みたいな(笑)」
 
――それこそ、この曲では固有名詞が入ってきて“お会計”と絶叫するという(笑)。ロックバンドの歌詞にはまぁ普通は出てこないワードだけど、耳に飛び込んでくる言葉自体が持つキャッチーさがあって、それをあんなにしなやかな声で歌うという(笑)。
 
羽深「やっぱりそこですよね?(笑) 俺もボーカルブースで“お会計ー!”って歌うことになるとは思わなかったですよ(笑)。でも、結構英語の発音っぽくてカッコいいなって(笑)」
 
 
俺の声があって、メロディがあれば、ジョゼなんだ
 
 
――作っていく中で、改めてジョゼの武器とは何なのかを考える機会にもなったのかなと。
 
羽深「アレンジはこねくり回したんですけど、今回は自分の歌を信じましたね。歌モノに対する覚悟を決めたのも大きいのかなぁと。僕はそこまで自覚がなかったんですけど、テレビとかのタイアップもあって、あんまり僕らの曲を詳しく知らない人でも“ジョゼ、流れてたよ”って分かってくれたから。俺の声があって、メロディがあれば、ジョゼなんだって確認できたのはよかったと思いますね」
 
中神「そこがやっぱり一番芯の部分というか、これからバンドが続いていく中でも絶対にブレないというか変わらない部分だと思うんで」
 
――ちなみに印象的な事件とか制作上のエピソードはあった?
 
羽深「それこそ『ヤングパレード』は、ボーカルブースに入る直前まで歌詞が完成してなかった。歌入れの日まで歌詞がないのは初めてですね。“これどう?”、“いや…”みたいになったときはマジで険悪なムードになって(苦笑)」
 
――そこでみんなも丸く収めるために“いいんじゃない?”って言わなかったのも偉いね。
 
羽深「今までは“はぁ!? 何だよ、くそ!”って思うだけだったけど(笑)、ちゃんと愛を持って指摘してくれてるから。そういうことを言ってくれる人って、だんだん減ってくるじゃないですか? だから、いるだけハッピーだなって」
 
中神「今回のプロデューサーが根岸さんだったこともかなり大きいですね。例えば、他のすごい有名な方でも縁がなかったり、あんまり相性のよくないプロデューサーの方だったら、その言葉に納得できているか分からなかったと思うんですよね。“憧れの根岸さんが言ってるんだから”っていうのは、絶対にあったと思うんです」
 
羽深「もう人選は文句なしでしたもん。だって俺、それこそ民生さんも、GRAPEVINEも、中高生のときにめっちゃ聴いていて、くるりのアルバムの中でも『図鑑』(‘00)が好きだったんで、全部根岸さんが関わってるじゃないですか。だからもう、根岸さんの鶴の一声で突き動かされたというか。よかったです、本当に」
 
――いや~忘れられない作品になりましたね。後々ヒストリーを振り返ったときの、1つの転機でしょうね。
 
羽深「間違いなくそうだと思いますね。毎作、転機を迎えたいですけどね」
 
――いや、迎えられると思うよ。まだ未熟だもん(笑)。
 
中神「アハハハハ!(笑)」
 
――それは=まだ変われる余地があるということで。それこそ根岸さんがこれだけアドバイスをくれたのも、やっぱりその余白がまだまだあったからで。その“蒼さ”というか、高校生のまま生き続ける羽深くんの純度が(笑)。それを失ってほしくない気持ちと、変わってどうなるのかが見たい気持ちと。
 
羽深「自分でも、30代になったときの歌が、すごい楽しみなんですよね」
 
――何かキラキラしたおじさんになりそうだなぁ(笑)。
 
 
見えない場所に届ける最初の力ってライブだと思う
ライブが真髄のバンドになりたい
 
 
――アルバムが完成したときは、やっぱり感慨深かった?
 
羽深「本当にプリプロとかもやらないまま、全力で泳ぎ切って、後ろを振り向いたらそういう波紋=作品になっていた。ただ、ライブを前提として作ったから、『YOUNGSTER』を完成させるには、マジでお客さんの力が必要なんで。ライブで初めて曲が完成するのがロックバンドだと思うんですけど、今回の『YOUNGSTER』は本当にそう。今までの意識と全然違うと思います。このファイナルが終わった後に作り出す曲も、今から楽しみで」
 
――ずっとやってきたはずなのに、ここ最近はライブからもらえる感情が大きい自覚がやっぱりあるんだね。
 
羽深「本当に他者を意識し始めたというか…何だろうなぁ。やっぱり、見えない場所に届ける最初の力ってライブだと思うんですね。それで判断されると言っても過言ではない。音源がめちゃくちゃよければそれもいいんですけど、やっぱりライブが真髄のバンドになりたい」
 
――それでは最後に、みんなに一言ずつもらって締めたいなと!
 
吉田「『YOUNGSTER』が完成したと同時に、やっぱりまだ変われていない部分も改めて分かって。これからは自分も含めて絶対にもっと変わっていくので、まずはそのきっかけの『YOUNGSTER』を聴いていただいて、その変わっていく様を観に来てください!」
 
中神「『YOUNGSTER』は若者に向けたアルバムじゃなくて、おじいちゃんでも主婦の方でも、年代に関わらずその人の中の“若さ”を見付けるきっかけになるようなアルバムであって欲しいので。そこを感じてもらえればなと!」
 
羽深「どうも、高校生の羽深です(笑)」
 
(一同笑)
 
羽深「自分の汚いところとかイヤなところの中に、必ずキラキラが眠っているから、それを見つめたときの未来は本当に明るいと思います。それを信じてぜひライブに来てください!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2016年3月25日更新)


Check

Movie Comment

タワレコ難波店で起きたある出来事
ジョゼからの動画コメントはコチラ!

Release

根岸孝旨プロデュースで歌モノに挑む
バンド内革命巻き起こる最新作!

Mini Album
『YOUNGSTER』
発売中 2000円(税別)
K's Factory Inc.
DQC-1512

<収録曲>
01. ハートソルジャー
02. パステルカラー
03. LITTLE CITY
04. ロクデナシ
05. GUILTY
06. Friday
07. ヤングパレード
08. 飛行機雲を探して

Profile

ジョゼ…写真左より、吉田春人(b)、羽深創太(vo&g)、中神伸允(ds)。’10年、大学在学中の羽深、中神らによって結成。'12年3月、自主制作のデモ・ミニアルバム『weekend』をリリース。'13年5月に1stミニアルバム『Aquarium』を初の全国発売。11月には2ndミニアルバム『Nocturne』をリリース。'14年5月に開催された自主企画『小声で云うハロー vol.4』をもって前ベーシストが脱退、翌6月には吉田が加入し現在の編成に。'15年1月には1stフルアルバム『Sekirara』をリリース。最新作は、’16年1月13日にリリースされた3rdミニアルバム『YOUNGSTER』。

ジョゼ オフィシャルサイト
http://jozeband.com/

Live

リリースツアーもいよいよ終盤へ
残すは大阪&ファイナルワンマン!

 
『3rd mini album「YOUNGSTER」
 release tour『Y.M.C.A. 2016』』

【東京公演】
▼2月5日(金)shibuya eggman
【京都公演】
▼2月10日(水)京都MOJO
【香川公演】
▼2月12日(金)DIME
【福岡公演】
▼2月19日(金)graf
【広島公演】
▼2月21日(日)広島Cave-Be
【千葉公演】
▼2月25日(木)千葉LOOK
【宮城公演】
▼2月28日(日)FLYING SON
【北海道公演】
▼3月5日(土)COLONY
【愛知公演】
▼3月18日(金)ell.SIZE

【石川公演】
▼3月25日(金)金沢vanvanV4
 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード281-480
▼3月26日(土)18:30
LIVE SQUARE 2nd LINE
オールスタンディング2500円
[共演]ドラマストア/The Cheserasera
GREENS■06(6882)1224

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


【東京公演】
チケット発売中 Pコード281-531
▼4月2日(土)18:30
TSUTAYA O-Crest
オールスタンディング2500円
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999

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チケット情報はこちら


Column

終わらない思春期を描き出す
ソリッドブルーのギターサウンド
1人の声がみんなの音楽になる
『Sekirara』全員インタビュー

Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「純度というものは、保とうと思っても保てるものじゃない。バンドの状況がよくなればなるほど、関わる人も、耳に入る情報もノイズも多くなってくる。それが東京という、いまだ音楽の主戦場なら尚更で。羽深(vo&g)くんは東京出身、ジョゼは東京で結成されたバンド。なのに、です。前作『Sekirara』の消えない思春期感にも驚きましたが、今回の『YOUNGSTER』も、一線のプロデューサーを招いてド真ん中を目指したにも関わらず、まるで失われないピュアネスというか、どうしようもない少年性。今時のバンドはみんな器用なのに、何なんでしょうこのバンドは。放っとけません(笑)。この美しい未熟さと透明度は、その鋼の歌声とクリアなギターサウンド、それをしっかりと支えるリズム隊により、よりきらめきを増しています。彼らの音楽から感じる噓のなさは、彼らが本当に純粋に音楽と向き合っていることを教えてくれる。“会いに行けるアイドル”ならぬ“会いに行きたくなるバンド”。ライブで彼らに再会できる日が楽しみです」