ホーム > インタビュー&レポート > メジャー第1弾となるベスト盤『ハローグッドバイ』を リリースしたSAのフロントマン、TAISEIが語る パンクという音楽、そしてライブへの姿勢
――去年は何といっても7月11日の日比谷野外音楽堂でのワンマンの大成功、本当におめでとうございます。
ありがとう!SAは14年間同じメンバーでずっと走り続けて、ここまで意地張って真面目にパンクロックをやってきたと思うんですね。その中で、ずっと走り続けてもいいんだけど、どこかで1つの区切りをつける意味を込めてゴールテープを切りたくて、それが昨年の野音だったんだと思う。僕らはそのロックンロールという名の長距離マラソンを完走することができて、“ここまでやれるんだ”って自信にもなったし、次の新しい長距離マラソンのスタートを切ることができた。ゴールって、終わりじゃなくて次の始まりだからね。それとともに、一回誰かにほめてもらいたかったのかな。“お前ら、ここまでよくやったよ!”って(笑)。
――去年の今頃は、野音に向かうツアーの真っ最中でした。SAの野音への挑戦と大成功の結果は、メンバーと同世代の40代、50代の大人ファンから若いバンドマンも含めて、多くの人に夢を見ることや夢に向かって挑戦することの素晴らしさを教えてくれたように思います。
自分自身、“年を取っても、若いヤツみたいに夢を持っていてもいいだろ?”みたいに思うところもあって。夢とか希望とかって照れくさいしこっ恥ずかしいけど、やっぱり大事だなと思った。それに、あの日野音に来てくれた人は、俺たちに夢を見せてもらえたと思ったかもしれないけど、逆に言えば俺たちもSAを応援してくれる奴ら=コムレイズのおかげで夢を見せてもらえたんですよね。夢を共有できたというのかな。一人で見る夢はたぶん、寝てる時に見る夢なんですよ。でも、誰かと共有することのできる夢っていうのは、何かを成し遂げようとする力になる。それを改めて実感しました。あの日野音に来ていた人、ひとり一人がそれぞれの夢を持っているだろうし、もしも、あのSAの野音で何かを得ることができたと感じてくれる人がいたとしたら、俺は本当に音楽を続けてきてよかったなぁって思う。悩んで腐って、いじけて、なんだかんだやってきた人生もあったけど、それでも自分の中の好きなものがブレずにここまでやってくることができて、人にそんなふうに思ってもらえることをひとつやり遂げることができた。さっきの“ほめて欲しい”って話じゃないけど、最終的には自分で自分を褒めてあげたかったのかもしれないですね。“ここまでよくやってきたよ”って (笑)。
――その野音の模様が映画になり2月20日から公開されます。
野音はSAだけが突っ走ってやってきたものじゃなくて、コムレイズっていうSAファンの連中の“SAのために絶対に大成功させてやろう”っていう想いがあった。あいつらも“俺らの信じたSAはどこまでやってくれるんだろう”っていう決着をつけたかっただろうし、“俺らがついてきたんだから絶対に成功させてやる”という熱が、あの日確かにありました。この前、完成試写会があったんだけど、改めて俺らの想いもそうだし、全国から観に来た連中の夢とか希望とかいろんなものが全部詰まってるんですよ。だからこそ、DVDでも良いんだろうけどスクリーンで観てもらいたいし、それを感じ取ってもらいたいなと思った。俺は、自分では絶対に野音では泣かないと思ってたんですけど、ボロ泣きしてて(苦笑)。それもバッチリ撮られてました。
――そして、昨秋にメジャーデビューのニュースを聞いた時には思わず“やったぁ!”と(笑)。メジャー第1弾のベスト盤『ハローグッドバイ』は、ライブでもおなじみの曲や、“SAといえばこの曲でしょう!”という選曲に新曲がプラスされていますね。
みんなに、“お前らさ、実は映画もメジャーデビューも野音前に決まってたんだろう?”って言われるんだけど、全然違って、全部野音が終わってから決まったことばかりで。本当に青天の霹靂でしたよ。それにベストアルバムという形態を取るなら、まさに“これぞSA”っていうものにしたかったんですね。これから新しくSAを聴いてくれる人たちに、これがSAなんだってものを届けたかったし、“ライブで聴いたことがある”ってことはつまり、ライブで育っている曲ということだし、それを届けたかったんですね。SAって楽曲の振り幅が大きいんだけど、その中でもSAの良さを凝縮した曲を4人で選びました。
――曲の振り幅でいえば、『YOUTH ON YOUR FEET』(M-7)や『KIDZ IGNITE』(M-14)のような強力なパンクアンセムもあれば、『DELIGHT』(M-10)はバッハのメヌエットをアレンジしたスタンダード曲『ラヴァーズ・コンチェルト』のカバーですね。サラ・ヴォーンのバージョンがCM曲になっていたこともあり、SAを初めて聴く人でも“どこかで聴いたことがある”と思えるキャッチーさ、親しみやすさがあります。
カバーに関しては、茶目っ気というか遊び心をエッセンスとして入れてみたくて。80年代にイギリスのパンクバンドがクラシックのカバーをパンク的にやっていたのを当時聴いていたし、そのアプローチをSAなりの解釈でやれないかなって。パンクバンドってパッと見の印象でデストロイ&バイオレンスなイメージを持たれがちだけど、本当はアイロニカルだったりファニーだったり、プリティでもあり、音楽性でいえば根底にはロックンロールが流れてるしグラムロックの要素もハードロックも入っていて奥が深い。僕自身もそういう音楽が好きなんですよね。それと、曲作りにおいては、キャッチーであることというのは常に心掛けていて。僕らはレコードも大事だけど、やっぱりライブが一番だから。ライブで“この曲が始まったら盛り上がる”っていう曲はやっぱり大事だよね。技術的なことを言えば、たとえば“NAOKIちゃん。ギターソロの時は客はもうその曲に飽きてる頃だから、ちゃんとみんなを惹きつけるギターソロを弾かなアカンよ”ってよく話してる。たとえば、曲が始まって1番、2番、ギターソロがあってサビで終わる構成の場合、ギターソロの時はもう、みんなは次の曲を聴きたくなってるでしょ?(笑)。でもギターソロで惹きつけることが出来たら、もっともっとその曲が聴きたくなるし、その後の期待も膨らむ。だから、他のパートも含めて、手癖でやるんじゃなくしっかりとメロディーを考えてプレイしようっていうのは、曲を作りながらよく4人で話してますね。
――初めて聞く話です。
そういうこれまでの曲とともに、半歩でも3分の1歩でも前に進んだ感を自分たちでも感じたくて、新曲2曲と新録音を4曲を入れました。新曲は、結果的には大きな一歩になったし、再録音した4曲はライブでもずっとやってきている曲で、中には10年ぐらい前に作った曲もあるんですけど、曲の表情が作った当時とは違ってきてるんですよ。曲が育ってきてるということなんでしょうね。僕らも大人になったけど、曲も大人になった。いい育ち方をしたんでしょうね、親がいいから(笑)。
――昨年の大阪のライブで『DON’T DENY,GIVE IT A TRY!!』(M-3)を歌う前に、“SAは14年前、このスローガンから始まったんだ”と言われていましたね。
“否定をするな。受け入れろ”っていう意味なんだけど、今の4人になった時に毎日毎日リハやって、終わったら酒飲んで、“俺たちは絶対にやってやる!”って、“そのためにSAはこういうバンドにならなきゃいけない”って朝まで大討論会という名の決起集会をやってたんですよ。特にNAOKIは大御所パンクって言われる存在でもあるけど、それでいいのか?と。たとえば当時流行ってた青春パンクやメロコアを“クソだ”っていうのは簡単だけど、そいつらが何で受け入れられているのかといえば、それをいいと思うヤツがいっぱいいるからだよね。それを見もしないで聴きもしないで、若いからという理由だけで“クソだ”なんて言ってたら絶対にダメなんだよね。だからSAは、まずはどんなヤツでも聴いて、一緒にライブをやって、その中で感じ取るものがあればいいし、そうやって交わっても本当にダメだったら、陰で言わずに面と向かって“クソだ”って言えばいい。その精神で行こうって。これまでSAは若いバンドともジャンルの違うバンドともたくさんライブをやってきたけど、それは僕らが自分たちから開いていこうって決めたんですよ。閉ざしちゃったら誰も入ってこれないですから。
――『さらば夜明けのSkyline』(M-6)に“つまんねぇ大人になりたくねぇ”という一節がありますがTAISEIさん自身、今もそう思われますか?
今でもカッコいい大人でいたいと思うし、もっとそうなりたいと思う。カッコいいにもいろいろあるけど、最近思っているのは心がカッコよくありたいと思ったんですよ。精神や言動がカッコいいというより、心。それと、漠然としちゃうけど、“ちゃんとしてる人”っていいなと思った。ちゃんとあいさつができる人。ちゃんと人の悲しみが分かる人とかね。ルールを守るとかモラルを重んじるとかって、実は簡単な話だと思うんだけど、“そんなのはクソッタレだぜ”って言ってたガキの頃があっただろうし、ステージで“てめぇ、馬鹿野郎!”って言ったっていいと思う。でも心はカッコよくいたいと思うし、もう一回磨き直しって感じがするんですよ。心って磨いたらまだまだきれいになりそうな気がするし、それがカッコいい大人なのかもしれないなって。負けず嫌いだし意地っぱりだし、逃げだしたくなる時なんていっぱいあるけど、そういう時はもう一人の自分が“てめぇ、ダセェぞ”っていうんだよね。そういう昭和の男のダンディズムみたいなのを継承したいと思います(笑)。
――同じ曲に、“ヘタクソな歌 カッコ良すぎて涙が出た”とありますが、これは何か具体的な曲を指しているんですか?
やっぱりパンクなんですよね。俺らが子供の頃は、テレビに出て歌を歌ってる人はみんな歌がうまかったし、そういう人じゃなきゃ人前では歌えないと思ってた。その固定観念をガラッと崩してくれたのがパンクだったんですよ。ピストルズのジョニー・ロットンも、がなってるだけで歌は下手だったし、クラッシュのジョー・ストラマーもそう。“そうか!下手でもいいんだ”って、“俺でもできるんだ”ってことを最初に教えてくれたのがパンクで、俺は今もこうやって歌ってるけど、最初の頃はもう本当にヘタクソで。それでも気持ちよかったし、歌うことで得られる解放感がたまんなかったんですよね。
――2月27日、TAISEIさんの地元である岐阜からツアーが始まり、大阪は3月24日(木)Shangri-laですね。
自分たちでも飽きない曲を作ってるつもりで、どの曲も300回歌っても1000回歌っても毎回歌うたびに違うし、どの曲も本当に好きなんだよね。『さらば夜明けのskyline』なんて、歌えば歌うほど好きになっていってる。次のライブでその曲達がまたどんなふうに育ってるか楽しみにしていてほしいし、これからも俺たちはずっとやみくもに走り続けるんでしょうね。野音のMCでも言ったんだけど、あの日、ステージから本当にいい景色を観せてもらった。だけど人間は欲深いから、いい景色を観ると、さらにもっといい景色が観たくなるんだよね(笑)。それが何なのかを、これからコムレイズと探す旅になるんじゃないかなと思います。本当は迷うよりも、一本筋が通ってるほうがいいんだろうけど、まだまだ迷うだろうし、探すだろうし、悩むことだってある。でもそれがあるから人生、前に進んで行けるんじゃないかなって思っていて。いいっすよ?(笑)。いつもいつも何かを探してるのって。
――“不器用でもテメェの道 行くお前カッコいいぜ!”(『RALLY-HO!』)と歌われている通りですね。
本当にその通りだと思う。でもね、悩んでいても迷っていても一つだけ確かに言えるのは、“もっと上に行きましょう”ってこと。コムレイズの奴らには、これからも“四の五の言わずについて来い!”だし、今回のベストアルバムで初めてSAを知ってくれて、何かちょっとでも“お、SAいいな”と思ってくれた人がいたら、俺たちの扉はいつでも開いてるから、何も心配しないで飛び込んできてくれたらいい。3月のライブでみんなに会えるのを楽しみしています!
取材・文/梶原有紀子
撮影/河上 良(bit Direction lab.)
『劇場版SA サンキューコムレイズ』
2016年2月より全国順次ロードショー!
http://sa-movie.jp/
(2016年2月24日更新)
ALBUM
『ハローグッドバイ』
発売中
インペリアルレコード
初回限定盤
TECI-1485 ¥3900+税
アルバムCD+DVD
通常盤
TECI-1486 ¥3,000+税
アルバムCD
<収録曲>
DISC.1(アルバムCD)
01.START ALL OVER AGAIN! 1. START ALL OVER AGAIN!
02.新しい歩幅 2. 新しい歩幅
03.DON’T DENY,GIVE IT A TRY!! 3. DON’T DENY,GIVE IT A TRY!!
04.サマーホリディズスカイ 4. サマーホリディズスカイ
05.GET UP! WARRIORS 5. GET UP! WARRIORS
06.さらば夜明けのSkyline 6. さらば夜明けのSkyline
07.YOUTH ON YOUR FEET 7. YOUTH ON YOUR FEET
08. (GOOD BYE)SHINING FIELDS 8. (GOOD BYE)SHINING FIELDS
09.runnin’ BUMPY WAY 9. runnin’ BUMPY WAY
10.DELIGHT 10. DELIGHT
11.MARCH of HEROES 11. MARCH of HEROES
12.SONG FOR THE LOSER 12. SONG FOR THE LOSER
13.GO BARMY KIDS 13. GO BARMY KIDS
14.KIDZ IGNITE 14. KIDZ IGNITE
15.RALLY-HO! 15. RALLY-HO!
DISC.2(DVD)
01.サマーホリディズスカイ
02.ドキュメント映像1
03.KIDZ IGNITE
04.さらば夜明けのSkyline
05.NEVER TOO LATE
06.SONG FOR THE LOSER
07.ドキュメント映像2
08.DON’T DENY,GIVE IT A TRY!!
09.GO BARMY KIDS
10.青春に捧ぐ part2
11.START ALL OVER AGAIN!
発売中
Pコード:281-828
▼3月17日(木) 18:30
磔磔
オールスタンディング-3780円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]怒髪天
※小学生以上は有料。未就学児童は保護者1名につき1名まで無料。
[問]夢番地
[TEL]06-6341-3525
▼3月24日(木) 19:30
Shangri-La
オールスタンディング-3780円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以上は有料。未就学児童は保護者1名につき1名まで無料。
[問]夢番地
[TEL]06-6341-3525
1984年、当時高校生のTAISEI(Vo)を中心に結成。強烈なメロディセンスとシンガロングな楽曲スタイルは結成直後から話題となり、パンクスの間で全国的な知名度を勝ち得た。が、バンドは3年足らずで解散。それから10年以上を経た1999年、伝説と化していたSAがTAISEIのソロプロジェクトとして再始動。2002年、LAUGHIN’NOSEやCOBRAという日本を代表するパンクバンドを渡り歩いてきたNAOKI(Gt)の加入を機に正式なバンド化を決意。KEN(Ba)、SHOHEI(Dr)が加入し、最強の布陣である現メンバーが揃う。RANCIDやG.B.Hなど海外のパンクバンドのツアーサポートや、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」「ARABAKI ROCK FEST.」など大型フェスへの出演を果たす一方、2005年にはイギリスのパンク名門レーベルANAGRAMよりベストアルバム『SAMURAI ATTACK』にてEUデビュー。2009年には8ヶ所を横断する全米ツアーを敢行。2011年には台湾にて現地の大手レーベルHimaraya RecordsよりCDデビューし、同年4月に野外フェス“SPRING SCREAM”を含むツアー、12月には台湾最大規模のフェス「ROCK'IN TAICHUNG」にメインアクトとして招聘される。古きよき、そして圧倒的かつ絶対的なロックンロール・スター像を継承するライブパフォーマンスは世代や国境、ジャンルを越えて支持されている。
2015年7月に初の日比谷野外大音楽堂でワンマンを行い、大成功に収める。そして、その模様を中心としたドキュメンタリー映画『劇場版SA サンキューコムレイズ』が2016年2月に公開。全国順次公開。
オフィシャルサイト
http://sa-web.jp/
「ベスト盤『ハローグッドバイ』のジャケットで4人が見せる笑顔が、とてもいい。インタビューの中でTAISEIは、『昔は“笑ってください”って言われても笑えなかった時期もある。今回のジャケットは、“笑って”って言われたんじゃなくて、なぜか4人とも笑ってたんですよ(笑)』と話してくれた。昨年の当サイトのインタビューでNAOKIは『お客さんや仲間のビッグスマイルを見たら、どんな疲れも吹っ飛ぶ』と話していた。自分が中学時代、教科書やノートの隅っこに“GET THE GLORY”とたびたび落書きしていた。それは、NAOKIがかつて在籍したバンド、LAUGHIN’ NOSEの曲名。その頃はたぶん、自分も笑えていなかった。パンク=とんがってなんぼ、なだけではなく、SAの4人だからこその人間味が熱さとなって感じられ、惹かれる。これからもずっとSAがあり続ける限り、自分も彼らに負けないビッグスマイルであり続けたい」
■大阪■
【会場】梅田ブルク7
【実施日】2月28日(日)
【実施時間】13:30の回 上映前舞台挨拶
(舞台挨拶13:30~/第1部上映開始 14:00~)
【チケット料金】2,500円均一
■名古屋■
【会場】イオンシネマ名古屋茶屋
【実施日】2月28日(日)
【実施時間】18:00の回 上映前舞台挨拶
(舞台挨拶18:00~/第1部上映開始 18:30~)
【チケット料金】2,500円均一
※舞台挨拶回は、通常の前売り券でのご入場はできません。別途、専用チケットのご購入が必要となります。
※舞台挨拶専用チケットでは、舞台挨拶とその後に続く映画本編(第1部)がご覧いただけます。
映画「劇場版SA サンキューコムレイズ」
http://sa-movie.jp/
梅田ブルク7
http://burg7.com/
イオンシネマ名古屋茶屋
http://www.aeoncinema.com/cinema/nagoyachaya/