インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「“これは自分の曲”ってみんなが思う。名曲やな(笑)」 奇妙礼太郎×Sundayカミデ×テシマコージ=天才バンド 関西の至宝が2ndアルバム『アリスとテレス』でメジャーデビュー! 地元大阪ワンマンを前に語るインタビュー&動画コメント


「“これは自分の曲”ってみんなが思う。名曲やな(笑)」
奇妙礼太郎×Sundayカミデ×テシマコージ=天才バンド
関西の至宝が2ndアルバム『アリスとテレス』でメジャーデビュー!
地元大阪ワンマンを前に語るインタビュー&動画コメント

 ロックでソウルフルな歌声でオーディエンスを鷲掴みにする奇妙礼太郎をボーカルに、ワンダフルボーイズとしても活躍するSundayカミデがこれまでに作ってきた曲を演奏する、という試みから生まれた天才バンド。ドラムには奇妙礼太郎トラベルスイング楽団でも叩くテシマコージと、気心知れたスリーピースが繰り出す楽曲はどれもこれも心奪われるグッドミュージック。時に颯爽と、時にゆっくりと身体を駆け抜けては、懐かしいような、胸を締めつけられるような感触を残していく。そんな、大阪の至宝(奇妙礼太郎は上京しているが)とも言うべき彼らがこの度、2ndアルバム『アリスとテレス』でメジャーデビュー。ということで、その辺りの心境を聞いていたはずが話は脱線を繰り返し、でもいつの間にかいい感じに着地している、彼らのライブそのままのインタビューに!

 
 
自分がひと回りもふた回り大きくなって知ってもらうことで
全てがもっとスムーズになっていくだろうし、そうなりたい
 
 
――やはり気になるのがこのタイミングでのメジャーデビューです。率直に、想いと狙いを聞かせてください。
 
カミデ(key)「僕だけで言うと、Sundayカミデっていう大阪でごくごく局地的に有名な僕がメジャーデビューすることで、今まで出来なかったことが出来るようになるだろうなって」
 
――と言うのは?
 
カミデ「(取材の数日前になんばHatchで行われたSundayカミデ主催イベント)『Love sofa』の15周年で、1000人来なかったことですね…」
 
(一同笑)
 
カミデ「天才バンドでもそうだと思うんですけど、自分がひと回りもふた回り大きくなって知ってもらうことで、全てがもっとスムーズになっていくだろうし、そうなりたいなと」
 
奇妙(vo&g)「すごい根に持ってるやん(笑)。僕は、呼んでいただいたので、仕事して帰るだけでしたけど(笑)。メジャーデビューに関しては、したことがないから、インディーズとメジャーの違いが、実際はどんなもんか分からない。考えたこともないし。まぁ、したことないから1回してみたいな、富士山登ってみたいな、と同じ感じですね」
 
カミデ「富士山登ったことあるわ。小学校のときに、頂上の手前くらいまで」
 
テシマ(ds)「ええーっ!」
 
奇妙「もうやってないことないんちゃう? “いいなずけ”もおったし」
 
カミデ「中1の段階でね」
 
(一同爆笑)
 
奇妙「そんなことある?(笑) いいなずけがおるヤツって、漫画とかでしか見たことないで」
 
カミデ「俺が中1で向こうは高3で、親にハイキング・デートさせられて(笑)。ちょっと道がぬかるんでて、前を歩いてたお互いの親父が“ここの道はちょっとぬかるんでるから、手とかつないで…”って言われて」
 
奇妙「あとは若い2人で…って若過ぎるやん(笑)」
 
カミデ「山を下りて、“あとは2人で”みたいな感じで“マクドナルド行ってこい”って言われて。2万渡された」
 
(一同爆笑)
 
カミデ「もうそれ、一泊分の金額やん、って」
 
奇妙「えっ? 中1がインディーズで、高3がメジャーって話?(笑)」
 
カミデ「まぁだからそれくらい、どれくらい?(笑) 楽しみですね」
 
奇妙「うん。どんなことになるかなって。出来ることは増えるんで」
 
カミデ「“あーだこーだ言ってるけど、サンデーさんメジャーでやったことないですやん”みたいな空気が、夜な夜な居酒屋で流れないように(笑)。そこも知った上で、“お前何してんねん”って言いたい、みたいな(笑)」
 
 
基本的には“どうピアノを弾きたいか”から始まる
 
 
――アルバム『アリスとテレス』ですが、前作『アインとシュタイン』(‘14)と比べたときに、“スリーピースバンド”という形が磨かれ、よりシンプルに、より強度のあるものになっています。その辺りは実感していますか?
 
カミデ「『アインとシュタイン』を出してから1年半ライブをしてきた中で、形になってきたノリが出たんじゃないかな、というのはありますね。最初は“曲をやる”って感じやったところから、いろいろ崩していってまた作って、っていうのが形になってるかな」
 
――Sundayカミデさんの曲としてすでにあるものをカバーするというか、天才バンドに落とし込むときには、どういう作業が多いんですか?
 
カミデ「基本的には“どうピアノを弾きたいか”から始まる。ピアノのフレーズを決めて、それがドラムと合うか確かめたいからテシマを呼び出すっていう作業は、割とあったよね?」
 
テシマ「そうですね、うん」
 



カミデ「『ロックジェネレーション』(M-1)は、リズムとピアノのフレーズが合うまで半年くらいかかってるし。自分しかやらないピアノのテクニックみたいなものがあって、それを表現するときになかなかドラムと合わなくて。それは僕がそのフレーズを弾き切れてないのもあるんですけど、その辺りがちょっと時間がかかったかな」
 
――冒頭の『ロックジェネレーション』『Joy to the world!』(M-2)以降は、ミディアムテンポの聴かせる曲が続きます。ロックなライブの熱量・凝縮感がハンパない天才バンドなんですが、今のモードとしてはそっちに寄っているのかなと思ったり。
 



カミデ「(今回のアルバムは)今のライブ感とはまた違っているので、ここから何曲ライブでやるねん、っていうのはある。例えば、『好きだよ』(M-3)は割と若いときに作ってたんですけど、途中から恥ずかしくなって、あんまりやらなくなった曲で。それが過ぎて、今また“めっちゃいい曲やな”って思えるようになったとき、奇妙くんにやってほしいなって」
 
――Sundayカミデさんのソロアルバム『MY NAME IS!!!』(‘13)でも歌ってましたよね。そのときは『スキダヨ』という表記だったんですが、今回は『好きだよ』に。意味はあったんですか?
 
カミデ「意味はないっす」
 
奇妙「聞かれるのに疲れて、考えるの止めてるやん(笑)」
 
カミデ「そうなんや! って今思いながら(笑)。カタカナやったんや。でもそうかもしれん。カタカナにしてる時点では、まだちょっと照れがあったんやと思う。今回、普通に『好きだよ』に出来たのは、一周して来れたんだと」
 
奇妙「うん、これがいいと思う。何のてらいもないから」
 
――『firefly』(M-4)は、Sundayカミデさんと奇妙さんがかつて出会ったクラブをモチーフとした曲です。これを奇妙さんが歌うということで、また新しい意味合いが生まれてくるなと。
 
カミデ「奇妙くんと僕が初めて会ったのもfireflyやし、僕らの周りの人はほぼそこで出会ってる。それを歌ってほしいなっていうのはありました。ワンダフル(ボーイズ)のライブでこの曲をやったときに、FUNKYMICっていうラッパーが聴いてて、“あれって、俺をモチーフにした曲やんな?”みたいな(笑)。それを聞いてたfireflyの元店長が“いやいや、俺の曲やろ!”って」
 
奇妙「“これは自分の曲”ってみんなが思う。名曲やな(笑)」
 
――奇妙さんは、fireflyの思い出はありますか?
 
奇妙「そうですね。受付の女の人が怖かったなって」
 
テシマ「アハハハハ!(笑)」
 
奇妙「会って0.5秒しか経ってないけど、何か悪いことしたかな?って(笑)」
 
カミデ「当時はどこでもそうやったよね。キャッシャーを任されるっていうことは、そのハコの顔というか。気負いもあるから、必要以上にイキってる、っていう(笑)」
 
 
自分が誰かにスポットライトを当てる覚悟をする
 
 
――奇妙さんは、天才バンドで歌う際に、どういったことを意識していますか?
 
奇妙「今回は、メロウな曲が割と難しかったなっていうのはありますね。どういう風に取り組もうかな、みたいな」
 
カミデ「今回は、その確認の作業が割とあったよね?」
 
奇妙「“こんな感じとこんな感じ、どっちがいい?”って聞きながら」
 
カミデ「『ビューティフルグッバイ』(M-5)だとしたら、“サンデーさん、これはどういう友達の曲でしたっけ?”みたいに確認があって、それを説明して“なるほど”ってまた歌い直す」
 
奇妙「淡々と歌う方がいいかなって思ったり」
 
カミデ「“自分が主役なのか、曲が主役なのか”っていう。そういうところでは考えた感じでしたね」
 
――ちなみに『ビューティフルグッバイ』だとどちらだったんですか?
 
奇妙「淡々と、ですね。メロウなやつは割と、その方が伝わるかなと思って」
 
――カミデさんのソロアルバムにも入っていた『ダラダラ』(M-6)も、原曲はもっとエモーショナルですけど、淡々としてますもんね。『THIS IS LOVE』(M-9)は今回のアルバムに向けた新曲になります。
 
カミデ「ワンダフルボーイズのサックスのミッキー(=林未来彦)と、トラベル(=奇妙礼太郎トラベルスイング楽団)のベースの(PEPE)安田くんが、チャリティーイベントをしているんですね。元々ずっとライブを観に来てた彼らの友達に、遠位型ミオパチーっていう難病にかかった子がいて。悪化するにつれて杖をついて来て、その内に車椅子で来るようになって。とうとう身体が動かなくなったときに、難病支援のチャリティーライブを2人で立ち上げて、全国でそれをするようになった。僕もずっと近くでそれを見ていた中で、2人の知名度ではやっぱりなかなか広がり切らないところもあって…。じゃあ僕自身がもっと有名になるしかないなと。そういう“自分が誰かにスポットライトを当てる覚悟をする”っていう想いも含めて、出来た曲です」
 
――この『THIS IS LOVE』以降は、スタジオ・ジャム・セッションが6曲収録されています。これは“ライブではこういった展開もあるよ”という宣言ですか?
 
カミデ「レコーディングの最終日に“まだ収録時間があるな”ってなったとき、奇妙くんが“セッションやりましょか”って言い出して、バーン!ってギターを弾いて歌い出したから、“うわうわ、めちゃカッコええやん”って慌ててベースを弾いて。それを1時間やり続けたのを、次の日に奇妙くんがスタジオで編集してくれてこうなった。今回のアルバムで一番好きなのは、思いっ切り自分のベースソロから始まっている『SHIBUYA STRUT』(M-14)ですね」
 
奇妙「何回聴きました? これ」
 
カミデ「今、108回」
 
奇妙「煩悩の数やん(笑)」
 
 
バンドの一番いいところって
何か分からんけど、異様に息がバツンって合う瞬間がある
 
 
――12月12日(土)には、レコ発ワンマンツアー『ヤクザも政治家もエリツィンもレーガンも毛沢東もキング牧師もロッケンロール!ツアー2015』の大阪公演が梅田クラブクアトロで行われます。どういったライブにしたいですか?
 
カミデ「自信のある音を、自信満々にやるだけですね。今、最大限に出来ることを全部やるのが、天才バンドのやり甲斐のあるところなので。ピアノも、ベースも」
 
――三点倒立も?
 
カミデ「あれはアクロバットヨガのポーズで、三点倒立とはまた違うっていうのを…」
 
奇妙「サンデーさん、今イラッとしましたね?(笑)」
 
カミデ「あれはなかなか難しいから。あのポーズをミュージシャンでやる人、多分いてないと思う」
 
奇妙「誰もやらんと思うよ(笑)」
 
――奇妙さんは、どういったライブにしたいですか?
 
奇妙「基本的には、何にも考えてないですね。ぶちまけて帰ろうと思っていて。ギターぶらさげて、大きい音出して、自分の身体で出来ること全部やって、それでオッケーっていう感じかな」
 
カミデ「ライブ中に奇妙くんが“今日はこういうライブをしよう”っていう指針を出してくれるというか。そこにどれだけ僕たちが乗っかれるか、みたいな」
 
奇妙「この2人が、がっちり演奏してるから、それが出来る。そういうバンドを自分はやってなかったから、全部出せるから、すごいスッキリする。何度もライブしてる内にどんどん自由度が上がってきて、どんどん出来ることが増えてきてるし。最終的に3人ともさらけ出す状態になって、信じられへんくらい息の合う瞬間があったら、最高やなと思いますね。バンドの一番いいところって、何か分からんけど、異様に息がバツンって合う瞬間がある。10年くらいバンドしてるけど、“うわ、何やったんや今の”って、5回もないから。それが自分がバンドっていうものに求めるもの、そのものですから。今回、スタジオセッションしてるときに、それに近い感じがふわっとあって。何かね、まだまだやることがいっぱいあっていいなって思ってる。まだ一合目か二合目かな。最近、富士山で例えるんですよ」
 
カミデ「それ、車でまだ行けるところ」
 
(一同笑)
 
奇妙「じゃあ車で行きたいな(笑)」
 
 
Text by 中谷琢弥



(2015年12月10日更新)


Check

Movie Comment

梅田クアトロへ想いと懺悔を語る(笑)
天才バンドからの動画コメント!

Release

これぞバンドなケミストリー
2ndにして堂々のデビューアルバム!

Album
『アリスとテレス』
発売中 2700円(税別)
unBORDE
WPCL-12256

<収録曲>
01. ロックジェネレーション
02. Joy to the world!
03. 好きだよ
04. firefly
05. ビューティフルグッバイ
06. ダラダラ
07. 琴平電鉄~君だけのライフ~
08. ロックライダー
09. THIS IS LOVE
10. FUNK YOU FUNK
11. BLACK TAHITI GIRL
12. CAT FOOD BLUES
13. レッドホットチリ島
14. SHIBUYA STRUT
15. ONIGIRI

Profile

てんさいバンド…写真左より、Sundayカミデ(key)、奇妙礼太郎(vo&g)、テシマコージ(ds)。関西を拠点に活動し“マジであったことポップミュージック”を標榜するワンダフルボーイズのリーダーであり、ボーカル/ピアニスト/ソロシンガー/A.S.P、BOWLING No.9ではベーシストと多数の顔を持つSundayカミデ。年間200本以上のライブを行い、泣き声混じりの切なさとむき出しのソウルで人々を魅了する歌声は様々なCMでも起用され、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団や、アニメーションズのボーカルとしても活動中の奇妙礼太郎。fugacity、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団、Sundayカミデto the テシマコージでも活動する奄美大島出身のドラマー・テシマコージが、それぞれの活動と並行して’13年に始動。Sundayカミデ作詞作曲の名曲『君が誰かの彼女になりくさっても』が、スペースシャワーTV『POWER PUSH!』やFM802のヘビーローテーションに選出され話題となった1stアルバム『アインとシュタイン』(‘14)もロングセールスを続ける中、’15年11月4日に2ndアルバム『アリスとテレス』をリリース、メジャーデビューを果たした。

天才バンド オフィシャルサイト
http://tensaiband.com/

Live

ツアーも終盤で地元大阪クアトロに!
X'mas前には『Love Sofa』にも出演

 
『ヤクザも政治家もエリツィンもレーガンも
 毛沢東もキング牧師もロッケンロール!
 ツアー2015』

【東京公演】
▼11月19日(木)CLUB QUATTRO
【名古屋公演】
▼11月27日(金)名古屋クラブクアトロ
【仙台公演】
▼12月4日(金)仙台MACANA

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード273-765
▼12月12日(土)19:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング3780円
GREENS■06(6882)1224

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


【奄美公演】
▼1月9日(土)ROAD HOUSE ASIVI


『Love sofa X'mas Special』
一般発売12月10日(木)
Pコード284-379
▼12月20日(日)16:00
CONPASS
オールスタンディング2500円
[出演]天才バンド/やついいちろう/
金佑龍/fugacity/ELEKIBASS/
Omoinotake/MIDNIGHT SALVAGE/
アツムテラフォーミング/フューチャーズ/
Kouhei’king’Nozaki/他
[DJ]HONEY BEE PARTY
CONPASS■06(6243)1666

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


Comment!!

ライター中谷琢弥さんからの
オススメコメントはこちら!

「ひと足先に11月19日に渋谷クラブクアトロで行われたレコ発ワンマンに行ってきたけれど、満員御礼&大盛況のフロアを見て感慨深くって。特にカミデさんとは10年以上前からの付き合いで(それこそfireflyの頃から。当時はあまり接点はなかったけれど)、いい流れじゃないときも見てきているだけに余計に。笑いというか爆笑を誘うMCから、一転して緊張感ある、熱量ハンパない演奏へとなだれ込む。どちらにも振り切ってるもんだからその落差はものすごくて、それが天才バンドの大きな魅力の1つで。笑い過ぎてなのか心が揺さぶられてなのか(そのどちらも、だろう)、涙をためた人がたくさんいる、“泣き笑い”という最も素敵な表情に満ちたフロアだった。何げない、ありふれた言葉を使っているのに、特別な響きをまとったSundayカミデの歌詞が、奇妙礼太郎という稀代のシンガーに歌われることで、より特別な輝きを放つ。元をたどればパーソナルなところから発信されているその歌詞とメロディは、リスナーそれぞれのパーソナルな部分と結びついて、普遍性のあるものへと変わる。天才バンドの豊潤な音楽が響き渡れば、もう大丈夫。悲しいことや悩みも、安心だ。そういう気分になる。渋谷クラブクアトロのライブで、奇妙礼太郎が“サンデーさん、オールナイトニッポンのパーソナリティーになったらいいのに”と言っていたけど、今回のメジャーデビューでその可能性すら出てきていて、そうなったらもう、おもしろいしかなくって。ワクワクソワソワ、これからのさらなる飛躍をとても楽しみにしています」