大阪・新歌舞伎座での恒例の“忘年会”まで間もなく!
ニューアルバム『cuisine de classic』のことから
忘年会まで、藤原道山、古川展生、妹尾 武に聞いた
藤原道山(尺八)、古川展生(チェロ)、妹尾 武(ピアノ)という3人のトップアーティストによって結成され、2007年から独自の活動を展開しているKOBUDO—古武道—。純邦楽、クラシック、ポップスといったジャンルの枠を超え、日本の伝統と感性を大切にしながら、さまざまな音楽性を取り入れた新しいインストゥルメンタルの世界を創造している。その成り立ちから、10月21日にリリースされた6枚目のニューアルバム『cuisine de classic(キュイジーヌ ドゥ クラシック)』について、さらに12月23日(水・祝)に大阪 新歌舞伎座で開催される恒例の『古武道忘年会「師走の協奏曲(コンチェルト)」Vol.7』に向けての意気込みをメンバー3人にお話しいただいた。
——そもそものどのような接点から、古武道を結成されたのですか?
妹尾 武(以下、妹尾) 元をたどると僕は古川とは同じ(桐朋学園)大学なので、彼のことは昔から知っていたんです。それで、僕がソロアルバムを出した時に、レコーディングに参加してもらったのが古川との最初のきっかけですね。(藤原)道山とは、彼のソロアルバムに僕が参加したのがきっかけで仲良くなって。それから、僕と道山は、“武道”としてよくコンサートをやっていたんです。その後、2004年頃、僕のソロコンサートに道山と古川をゲストに呼んだ時に、初めてこの3人で演奏したんです。その時のまわりの反応がとても良くて。“またぜひ3人でやってほしい!”という声もたくさんいただいたので。“じゃあ、一緒にやろう!”って、3人の気持ちがひとつになったんです。
——当初から、ジャンルの壁を感じることはなかったのですか?
古川展生(以下、古川) ジャンルが違うといえども、基本的に3人ともクラシックの教育をちゃんと受けていて、共通言語がしっかりあるので大丈夫でしたね。僕自身、基本的にクラシックの人と一緒にやることが多いのですが、2002年頃からライブハウスでライブやったりするような活動も始めていたんですよ。
妹尾 僕はポップスだけでなく、今までクラシックをベースにいろんな音楽をやってきました。和のものも好きだったのですが、道山に出会って、自分の中にあった尺八の既成概念みたいなものが覆されましたね。尺八奏者っていうと、着物を着た人とか、虚無僧みたいな格好の人を想像していたのですが(笑)。彼は白馬の王子さまみたいな雰囲気ですし(笑)、尺八なのにフルートやピッコロみたいな音も出ることに驚きました。こんな素晴らしい日本の楽器の可能性というものを一緒に広げられたらいいなと思ったんですよね。
藤原道山(以下、道山) 僕もクラシック音楽を聴くのも好きでしたし、実は、昔からクラシックの曲を尺八で吹いたりしていたんです。だから、コラボレーションができたらいいなっていう思いはずっとありました。それがこういうメンバーと出会ったことで実現し、尺八の可能性がどんどん広がっていく面白さを感じています。
——とても柔軟な志向で、ほんとに活動内容がボーダーレスですね。
古川 あえてボーダーレスにやろうと思っているわけではないですけど、結果的にいろんなジャンルの音楽を演奏しているということになっているので。そういうふうに感じとっていただけるのは嬉しいですね。
道山 周りからは新しく見えるかもしれないけど。自分たちがやりたいことをやっているだけなので。特別なことをやっているという、変な気負いはないと思いますね。
——10月21日には、クラシックの名作たちに、“絶妙な古武道の味付け”が施されたニューアルバム『cuisine de classic(キュイジーヌ ドゥ クラシック)』がリリースされました。
道山 古武道のコンサートでもクラシックの曲は毎回やっていましたので、アルバムに入れてなかったものがけっこうたまってきていたんです。
古川 クラシック初心者向きの曲もあれば、“こんないい曲もあるんですよ”って!いうような通好みの曲も入っているので、そこもぜひ聴いてほしいですね。
妹尾 毎回アルバムに入れている古武道のオリジナル曲も、今回は3人それぞれ、ちょっとクラシカルな趣の曲を持ち寄ってレコーディングしました。そのあたりのさじ加減がうまくできたアルバムなんじゃないかなと思います。
道山 ソロを尺八が吹いていたと思ったら、チェロに移り、次はピアノが奏でているっていう感じで、どの曲も主役と伴奏を完全に決めているわけではないのが古武道の特徴です。そういうところにも注目して聴いていただけると面白いんじゃないかな。
——特に、ベートーヴェンの『ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章』(M-3)やドビュッシーの『月の光』(M-7)なんかの主旋律を尺八が奏でているのは初めて耳にして、とても新鮮に響いてきました。
妹尾 作曲者に聴かせたいですね(笑)。ドビュッシーさんも日本の浮世絵がすごい好きだったそうなので。道山の尺八にもきっと興味をもってくれると思うんです。
——今作の中から、それぞれの思い入れのある曲やおすすめの曲を教えていただけますか?
妹尾 ラヴェルの『ピアノコンチェルト 第2楽章より』(M-9)ですね。この曲は前から好きでよく弾いていましたが、テクニックより心情的にすごく難しい曲なんです。そこを古武道でどう表現すればいいのか悩みましたし、レコーディングはけっこう大変でした。でも、自分にとってはとても思い入れが強い曲になりました。
道山 ラヴェルの『ピアノコンチェルト 第2楽章より』は僕も大好きです。ピアノの独奏の後に、フルートが入るところは、いつも聴いていてゾクゾクするんです。それをまさか自分が尺八で吹くとは思っていなくて(笑)。全体的にどの曲も尺八で吹くことはなかった作品ばかりなんですけど、その中でも割と自然にできたのはドビュッシーの『月の光』ですかね。ドビュッシーやラヴェル、サティもそうなんですけど、あの頃のフランスの作曲家の作品は、どこか日本的な要素を感じさせるんです。そういうところも感じていただければと思います。
古川 僕は1曲目の『British Nobilmente』(M-1)かな。僕が在籍している東京都交響楽団のメンバーがストリングスとして参加してくれているので、それも嬉しかったですしね。
——そんな新作のツアーを経て、12月23日(水・祝)に恒例の『古武道忘年会「師走の協奏曲」Vol.7』が開催されます。大阪 新歌舞伎座では、今回が3度目となりますね。
妹尾 新歌舞伎座は提灯が飾られていて、独特の趣があっていいですね。
——“忘年会”では毎回スペシャルゲストも楽しみですね。今回は、ギタリストの村治佳織さんと日本舞踊家の尾上菊之丞さんが出演されます。
古川 ステージは前半と後半で構成されていて、ゲストの方は後半に登場していただきます。
妹尾 尾上さんのような日本舞踊家の方とコラボできたりするのは、古武道ならではですね。
道山 また新たな挑戦になると思いますのでとても楽しみです。
——ところで、関西で公演されるときはどのようなお気持ちですか?
古川 僕と妹尾は関西出身なので、ホームグランドに帰ってきたような気持ちになりますね。
道山 僕も4分の1は関西の血が流れているんですよ(笑)。(*道山さんは大阪にご親戚がいらっしゃるそうです)
妹尾 大阪はけっこうストレートに反応が返ってくるので、こちらも楽しめますし、ハイになりますね(笑)。
——では最後にメッセージをお願いします!
道山 とにかく肩肘張らず、古武道の音楽を聴いて存分に楽しんでいただければと思います。
古川 新旧問わず、盛り上がる曲を中心にやることになると思います。
妹尾 一緒に年忘れをしましょう!演奏の合間にはおしゃべりもしますし、ふだんの公演とは違って、お祭りのような気分で参加してもらえたら嬉しいです。
(取材・文/エイミー野中)
(2015年12月 7日更新)
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