シャムキャッツの2015年の集大成とターニングポイントが交差する 東名阪クアトロワンマンツアーがいよいよ開幕へ! 次のモードの鍵を握る初期デモ音源集『素晴らしかった日々』と この1年を総括するインタビュー&動画コメント
エバーグリーンなメロディと、何気なくも(だからこそ)素晴らしい日常の機微を切り取った詞世界で魅了するシャムキャッツの’15年は、「大阪を盛り上げていこう」という1年でもあった。’14年を代表する名盤『AFTER HOURS』の続編となる『TAKE CARE』を今年3月にリリースして以降、そのレコ発ツアーとして梅田Shangri-Laでワンマンを成功させたのを皮切りに、“関西ツーマンシリーズ”と銘打った自主企画『ALSO』を、3月に踊ってばかりの国、7月にYogee New Waves、9月にキセルを迎えて開催。そして、いよいよスタートする年末ワンマンツアー『素晴らしい日々』@東名阪のクラブクアトロにあたり、自主制作時代の初期音源をコンプリートしたCDを会場限定でリリースというトピックも。11月の大阪・味園ユニバースでのライブ翌日、菅原(g&vo)と大塚(b)の2人に、この1年をいろいろと振り返ってもらいながらも、“次”の展開にこそ熱が入るインタビューとなった。
東京でやっても、逆にここまで刺さらなかったかもしれない
――昨日のライブは、初期曲の『魔法の絨毯』(DISC1:M-3)や『忘れていたのさ』(DISC1:M-6)など、昔の曲も結構やっていた印象でした。
大塚(b) 「実は全く予定になかった曲もしましたね」
菅原(g&vo) 「元々はライブの中盤辺りで古い曲を2曲くらいと考えてたんですけど、昨日は1時間くらい(タイムテーブルが)巻いたんで、お客さん待たせるのもあれだったから、主催の方と話して早めにステージに出ていくことにしたんです。だから、最初の方の5曲くらいは予定してなかったもので。その場でリクエストを募って、出来そうな曲をリハと称して演奏していったら結構盛り上がってしまって(笑)」
――そうだったんですね。アンコールも過去曲で、最後にやった『さよならアーモンド』(『たからじま』(‘12)収録)にしても、アレンジを変えていたのもあるでしょうが、今のシャムキャッツにフィットしていてビックリしました。
菅原 「最近のライブでは、あのバージョンで結構やってます。『AFTER HOURS』(‘14)『TAKE CARE』(‘15)の頃は、ライブ1本で観せなきゃいけない世界の中に、昔の曲がポンッと入ることは難しかったけど、これからはもうちょっと混ざるようなライブをしていきたくて」
――MCでもちらっと話していましたが、ライブDVDも制作しているそうですね。
菅原 「今回のクアトロツアーの特典として。シャムキャッツってあまり映像作品がなかったし、最近のライブのモードを観てもらいたかったので。新しいお客さんも多くなってきてるので、ダイジェストみたいな雰囲気で作ろうと」
――そもそも“今年は大阪を盛り上げていこう”と掲げたのは、どういった想いからだったんですか?
菅原 「東京では今までやってきた自主企画ライブに引き続き、去年から新たに『easy』というイベントを定期開催したりして、自分たちの足場が確実に固まってきている感覚がありました。呼ばれてライブをするだけだと広がっていかないなって。そういうことを肌で感じて、日本全国で同じようにやれたらいいなと。関西でも同じように、自分たちでそういう場を作っちゃった方がいいんじゃないかって。ホームグラウンドを作ると言いますか」
――実際に自主企画の『ALSO』を開催してきた中で、手応えはありました?
菅原 「はい。昨日の会場でもお客さんが、“毎回楽しみにしてます!”、“次の『ALSO』はいつですか?”って言ってくれたり。近い所では、年末にクアトロでワンマンするのを目標に『ALSO』はやってきたので、それが形になって嬉しいです。動員を増やしながら、第二のホームが作れていけてるかなと思っています」
――印象的だった回はありますか?
菅原 「個人的には、3月の踊ってばかりの国に出演してもらった回ですね。同世代として意識せざるを得ないバンドです。元々すごくいいなと思ってたんですけど、ちょっと“ヘッ”っていう(反発心のような嫉妬のような)気持ちもあって。でも、『ALSO』をきっかけに林(g)くんと話したら、共通点がすごくあって、それが嬉しかったですね。使ってるアンプとか機材がほぼ一緒なのに、出てる音も全然違って。話せば話すほどウマが合っていくので、何でもっと早く出会わなかったんだ!って(笑)。関西出身でそう思えるロックバンドと一緒に出来たことは大きいかも」
大塚 「キセルもやりたかったけど出来なかったバンドですね。『ALSO』をやってきたから、シャムキャッツとしてずっと活動してきたからこそ、それが形になってようやく叶ったところもある。しかも、それを大阪でやれたのがよかった。東京でやっても、逆にここまで刺さらなかったかもしれないし」
菅原 「大阪だと、関西はもちろん中国地方とかからも観に来てくれるんで。あと、韓国から大阪って割と近いじゃないですか? 関西国際空港があって。だから、毎回韓国から『ALSO』を観に来てくれる人もいますね」
――韓国からも! 素敵ですね。
菅原 「そう、素敵ですよね。最近アジアの国同士の距離が近くなっているんじゃないかと思って。ひと昔に比べて航空券も安いですし、シャムキャッツはまだ行けてないけど、例えば、ビーサン(=Alfred Beach Sandal)もよくライブをしに行ってますし、僕たちもこれからどんどん国をまたいで活動出来ればと思っています。そして大阪では、大阪府以外からもライブを観に来てくれる人が多いのがいいなって。東京だと、“千葉から来ました”とか“神奈川から来ました”っていうことは、案外なくて」
大塚 「大阪って、こっちを楽しませようとしてくれてる雰囲気すらありますからね(笑)」
新しいことをやりたいと思ったときに
昔の曲を聴いてみたら意外と共通点があった
――来たる12月の東名阪ワンマンツアー『素晴らしい日々』のタイミングで、初期音源集『素晴らしかった日々』を会場限定でリリースされますが、こちらは’07年~’10年に自主制作していたデモをまとめた内容とのことで。最初のリリースとなった『はないき』(‘07)に関してはもう8年前となりますが、今ご自身で聴いたとき、どう感じました?
菅原 「“意外とカッコいいじゃん”って(笑)。最近は『AFTER HOURS』『TAKE CARE』の2枚の世界観を一旦終えて、また新しいモードで曲を作ってたりするんです。そうしたとき、昔の自分たちのエッセンスってやっぱり今でも続いてるし、それを見直してもいいんじゃないかって」
大塚 「シンプルというか、やれることも少なかったからね。でも、(根本的には)あまり変わってない感じはする」
菅原 「結局、“昔やってた曲も俺らなんだよ”って知ってもらいたいんですよね。最近と違って、’10年くらいに出した曲とかはごちゃごちゃしていて、ダーティーな感じだったりするから。でも、それにも良さがあるし、改めてその良さをこのタイミングで伝えられればいいなって」
大塚 「昔っぽい感じに戻りたいわけでもなく、新しいことをやりたいと思ったときに、昔の曲を聴いてみたら意外と共通点があった、っていうくらいで」
菅原 「昔の曲にヒントはあるよね」
大塚 「そうそう。改めて客観的に聴くと、“こういうことがやりたかったんだな俺たち”みたいなのがあって。それを今、新しくやりたいっていうのはある」
――それにしても8年前となると、もう別の人間ですよね。
大塚 「“これ、自分が弾いてるのかな?”っていうこともありますね(笑)」
菅原 「あるある(笑)。“よくこんな曲作れたな”みたいな。でも、幸せだなと思うのは、振り返ったときに“ちょっとずつよくなってるな”っていうのがずっと続いてるイメージなんで。いきなり劇的に変わったぜ!っていうのはなくて」
――その変化の中で、先ほど『AFTER HOURS』と『TAKE CARE』という2枚の世界観を一旦終えた、と話していましたが、それにはきっかけはあったんですか?
大塚 「さすがに、あれをそのまま続ける感じではないもんね」
――あの世界観に飽きた?(笑)
菅原 「飽きましたね(笑)。ライブでガンガン昔の曲もやりたいし、クアトロツアーで完全に切り替わると思います」
このワンマンを来年につなげられるようなものにしたい
――12月の東名阪ワンマンライブを、どういったものにしたいですか?
VIDEO
菅原 「ちゃんと“次”を観せたい。『AFTER HOURS』と『TAKE CARE』は自分たちの地元を舞台に、その街にスポットライトを当てた作品だったんですけど、次はそこからちょっと出て、東京とかまた新しい場所に行って、ある街の中で生きていく、みたいな。若干カメラが俯瞰になるというか、より広くなる。今作ってる曲は、コード感が今までにない感じですね。あとは、いろんな音を入れられたらいいなっていうのと。(音像としては)結構サイケです。だいぶ変わったなって」
大塚 「ちょっとドリーミーな。どう解釈されるんだろう?っていうのはありますね」
――それは“変わった”んですか? “変えた”んですか?
大塚 「意図的な感じではないですね、夏目(vo&g)がどうかは分からないですけど。『はないき』の頃は“子どもながらの夢”みたいなところもあったんですけど、『AFTER HOURS』と『TAKE CARE』は、地元にいながらの“都会への憧れ”というか、現実を見ながら多少夢も見たりしつつ、だった。そこを抜け出して、ようやく世界にハマるように生きていくんだけど、夢を見ることも忘れないよ、みたいになっていくと思うんですけどね」
――ちなみに、最近よく聴いている音楽だったりはありますか?
菅原 「現行のバンドで共感するというか、すごくいいなと思ったのは、ディアハンターの新譜(=『フェイディング・フロンティア』(‘15))ですね。理想の音像です」
――なるほど。さっき言ってたサイケの感覚って、きっとそこですよね。
菅原 「ただ、ドラッグ的なサイケじゃなくて、シラフの状態で視界はしっかりしてるけどサイケ、みたいな」
大塚 「逆に怖い(笑)」
菅原 「でも、“狂ってる”っていうのは個人的にはテーマです。“ロックバンド”の感じというか、きれいにまとまらないというか、ちゃんとひねくれるというか…昔は“ひねくれてるよね?”って言われたら、“えー、そうですか?”って言ってましたから(笑)」
――最後に、ツアーの初日となる12月2日(水)梅田クラブクアトロへの意気込みを聞かせてください!
大塚 「すごく楽しみですね。1年間を通して大阪でやってこれたのはよかったし、このワンマンを来年につなげられるようなものにしたい」
菅原 「4人というオーソドックスな編成で、ステージに立って、演奏してカッコいい、っていうのには自信があるので。ぜひ観て欲しいですね!」
Text by 中谷琢弥
ライター中谷琢弥さんからのオススメ!
「『AFTER HOURS』は、それはそれはよく聴いています。今もなお。自分の中のフラットさを取り戻せる(思い出すことが出来る)から、というか。仕事メールのやりとりや家事や雑務や、日常のBGMとして聴き流すことも出来るし、とっぷりと聴き入ることも出来る。きらきらしていて、シンプル。そこにたどり着くまでには実験的なことをしていたり、もっと雑多だったりして、そういう寄り道というか軌跡があるからこそ、そのシンプルさには強度があって。“今の全ては過去の全て”とか言われたりもするけれど、今回のように過去作を再び世に出す、という行為も“今”や“これから”を知るためには彼らにとって必要なこと、なのだろう。でも、やっぱり次回作が楽しみなわけであって。インタビュー後半で話していたシャムキャッツの次なる展開。ディアハンター的なサイケデリア、へと寄っていくとなると、期待はし過ぎているくらいがちょうどいい」
(2015年11月30日更新)
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Movie Comment
リラックス度がすごいぞ(笑) シャムキャッツからの動画コメント!
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Release
廃盤の初期デモ音源をコンパイル! クアトロツアーより会場限定販売へ
Album 『素晴らしかった日々』 12月2日(水)発売 2000円 POT NFBS-007 <DISC 1収録曲> 01. チャイナは桃色 02. シムシティ 03. 魔法の絨毯 04. くらげとかもめ 05. あのこのバック 06. 忘れていたのさ 07. 冗談はよして 08. 前歯 09. 町どこへいった 10. 変な帽子 11. アメリカ Bonus Track 12. Disk Unionのテーマ 13. くらげとかもめ(アコースティック) 14. チャイナは桃色 ('09年1月25日 Live at 茶箱) ※01~05…『はないき』('07) ※06~11…『もちろんちょうだい』('08) <DISC 2収録曲> 01. 渚 02. おとといきやがれ(フルーツポンチ) 03. KOBAYASHI RUNNING 04. 不安でも移動 05. NO NO NO 06. BALLADE NOT SUITED 07. INTERLUDE 08. バターみたい 09. 気をつけて 10. シンパシー 11. うまくいってる? 12. ぽかぽか ※01~04… 『Demo Single Series “1”』('10) ※05~08… 『Demo Single Series “2”』('10) ※09~12… 『Demo Single Series “3”』('10)
Profile
シャムキャッツ…写真左より、大塚智之(b)、藤村頼正(ds)、菅原慎一(g&vo)、夏目知幸(vo&g)。’09年春、1stアルバム『はしけ』をリリース。その後、自主制作で次々と発表したCD-R作品『DEMO SINGLE SERIES』(全3作)、シングル『渚』『サマー・ハイ』は全てソールドアウト。’11年秋、ミニアルバム『GUM』をリリース。’12年冬、2ndアルバム『たからじま』をリリース。収録曲『SUNNY』がテレビ東京系『モヤモヤさまぁ~ず2』のエンディング曲に起用される。’13年、夏から秋にかけてTurntable Filmsとのスプリット12インチアナログシングルの先行即売全国ツアーを開催。’14年の年明け、店舗限定シングル『MODELS』をリリース、1週間で完売。VJを加えたバンド初のワンマンツアー『GO』を東名阪で開催。同年3月、アルバム『AFTER HOURS』をリリースし、渋谷CLUB QUATTRO公演を含む全国ツアーを開催し大成功を収める。また、アルバムの好評を得て『MODELS / LAY DOWN』を7inchアナログとしてシングルカット、さらには『AFTER HOURS』をLP化。10月には自主企画イベント『EASY』を成功させ、DeerhoofやMac DeMarcoなど海外アクトとの共演も重ねるなど、シーンの枠組みを超えた更なるブレイクが期待される。’15年3月に『AFTER HOURS』の“その後”を描いたミニアルバム『TAKE CARE』をリリース。全国6ヵ所のワンマンツアーを開催。以降も、“関西ツーマンシリーズ”と銘打ち自主企画『ALSO』を、3月に踊ってばかりの国、7月にYogee New Waves、9月にキセルを迎えて開催。12月2日(水)よりスタートする『シャムキャッツ 年末ワンマンツアー「素晴らしい日々」』より、初期デモ音源集『素晴らしかった日々』を会場限定で販売予定。シャムキャッツ オフィシャルサイト http://siamesecats.jp/
Live
前売チケット購入者にはライブDVDも 今年を締め括る東名阪ワンマンツアー
『シャムキャッツ 年末ワンマンツアー 「素晴らしい日々」』
Pick Up!!
【大阪公演】
チケット発売中 Pコード278-064 ▼12月2日(水)19:30 梅田クラブクアトロ オールスタンディング3000円 清水音泉■06(6357)3666 ※小学生以上は有料、 未就学児童は入場不可。
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【名古屋公演】 チケット発売中 Pコード277-710 ▼12月3日(木)19:30 名古屋クラブクアトロ スタンディング3000円 ジェイルハウス■052(936)6041
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【東京公演】 チケット発売中 Pコード278-753 ▼12月7日(月)19:30 CLUB QUATTRO 前売3000円 エイティーフィールド■03(5712)5227
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Column
名盤『AFTER HOURS』から 1年後の街を描いた終わりの始まり 四季×私記×死期な続編 『TAKE CARE』を語る!