押尾コータロー、佐藤竹善、西村由紀江&ウェイウェイ・ウー、
NAOTO、藤原道山、吉俣良ら盟友参加の『Cellos LIFE』!
チェロが繋いだ絆と人生を語れ――
柏木広樹インタビュー&動画コメント
チェロ奏者としてソロ作を重ねる一方で、葉加瀬太郎のツアーの音楽監督も務めながら、アカデミー賞を受賞した映画『おくりびと』のチェロ演奏指導と劇中演奏も担当してきた柏木広樹。オリジナル作としては3年ぶりとなった最新アルバム『Cellos LIFE』では、押尾コータローや佐藤竹善をはじめとする親交の深いアーティストとのデュオを中心に、ブラジルやスペイン音楽色の強いバンドサウンドも多彩に展開。人間の声に最も近い音色とされるチェロの魅力をカラフルに引き出した新作と、それに伴いビルボードライブ大阪ほかを巡るツアーについて語ってもらった。
生音だけで共演していると、お互いに次に音が小さくなるなとか
次はこう歌うなというのが、息遣いや雰囲気からも伝わってくる
――今回のアルバムはタイトル通りに“LIFE”というのが作品全体のテーマとしてあったそうですが。
「そうですね。元々は“LIFE”だけにしようと思っていたんですけど、それではちょっと重いなということになって。自分が命とか生活とかを語るにはまだまだケツが青いなという結論に達したんですけど、僕も47歳になって、出会いもあるけど別れも最近はどんどんと増えてきているんですよね。人間や動物もそうだけど、自然や生態系でもその死に際を見ている中で、少しそういうことを考えるようになったことも伝えたいなと。思えば僕は7歳の頃からチェロが傍らにある生活をしているから、チェロを通してだったらそんなに重くならずに伝えられるかなと思ったんです」
――シンガーソングライターや小説家だと、重くならざるを得ないテーマですもんね。
「その一方で、スタッフからもっとチェロの音がいっぱい聴こえる作品を作って欲しいという提案があったので、じゃあ“LIFE”じゃなくて“Cellos LIFE”にすればいいんじゃない? ということになったんですよね。そこから、チェロならオケを1人で作ることも出来るし、メロディとバックを自分でやることも可能だし、編成が小さくなれば必然的に(音の)対話が聴こえてくるわけで、そこからデュオが増えていけばいいんじゃないかと話し合いをして。アルバムタイトルが先に出来ることはなかなかないんですけど、それでいこうよとなって曲作りを進めていきましたね」
――では、曲作りに関しても今までと少し違った面持ちで臨まれた、というか。
「そうですね。そういった意味では、去年に飼っていた犬が亡くなってしまって、書くつもりじゃなかった曲が今年になって出来ちゃったのはありましたね(=『モモの唄 feat. 押尾コータロー』(M-5))。まぁ、音楽とはそういうことか…と思わされたし、この曲があったからこそ他の曲では逆に明るく振れたり、もっと違うところにも行けたとは思います。最初のタイトルは“モモのレクイエム”で、重いなぁと思いながら書き進めていたんですけど、実際には“今まで一緒にいてくれてありがとう”という感じの曲になっていって。押尾さんとレコーディングを進めていったときにも“オレも飼っていた犬が亡くなったときにありがとうなと思ってたけど、そういう曲でいいんだよね?”という話になったんで、“その通りです!”ということで、完成させることが出来ましたね」
――曲の持つ意味が多くを語らずとも伝わっていた、と。
「今回のデュオ曲のほどんどは、同じ部屋でヘッドホンを外して、お互いの生音がお互いのマイクに被ってしまう状態で録音したんですけど、それがふっくらとした音の良さの原因にもなっていますね。もちろん修正はしにくくなるんですけど、生音だけで共演していると、お互いに次に音が小さくなるなとか、次はこう歌うなというのが、息遣いや雰囲気からも伝わってくるんですよ。その点でもよかったし、次も同じ方法で録ろうかなと思っていますね」
僕は元々“この人とこういう音がやりたい”という動機が
曲作りにおいて重要なタイプなのかもしれない
――デュオ曲では、尺八奏者の藤原道山さんとの『相思華』(M-11)もラストを飾るにふさわしい緊張感を保った名演で印象的でした。
「道山さんに『月下竹韻』(‘11)という曲があるんですけど、コレがえらくいい曲で。初めて『月下竹韻』を一緒に演奏したのは4年くらい前なんですけど、今年ライブでゲストで来てもらったときにこの曲を1曲目に演奏して、アンコールの最後にそれに対するオレの答えとして書いたのが『相思華』なんですよ。だから、今回のデュオ曲はどれも共演相手の顔を見て書いたというか。タイトル曲の『LIFE』(M-7)も、西村由紀江ちゃんとウェイウェイ(・ウー)がどういう顔をして弾くかが見えれば成功だと考えていたし、僕は元々“この人とこういう音がやりたい”という動機が、曲作りにおいて重要なタイプなのかもしれないですね」
――5曲のデュオ~共演曲以外も、スペインやブラジル音楽色の強いアンサンブルのものが多く、全体として気が付けば世界を一周しているような多彩な仕上がりですね。
「スペイン色の強い曲に関しては、以前バルセロナに行ったときに見た空が今までで一番青かったので、今回はそれが『Cielo Azul』(M-9)(=スペイン語で青い空の意)になっていたり、生命力の強い曲も1曲書きたいというところからフラメンコを連想して、チェロがちょっと喋り過ぎみたいな曲を作ってみようと出来たのが『Torbelino!』(M-6)(=つむじ風の意)だったりと、結構いろんなことを妄想しながら作っていきましたね。ブラジルっぽいものも、ブラジル北東部のアフリカっぽいビートが入ってきたものが軸になっていたり。アルバムを聴いた人がちょっとそこの国に行った気になれたり、自由に音楽から想像して自分の国を作ったりしながら楽しんでもらえれば嬉しいですね」
――そして、そんな『Cellos LIFE』のリリース記念となるツアーが、大阪では10月14日(水)にビルボードライブ大阪で行われます!
「アルバムからの曲を可能な限り中心にしながらも、やっぱりそれ以前にビルボードライブ大阪に足を運んでくれたお客さんに、終わってから“楽しかったよ!”と言ってもらえるライブにしたいですね。その時間を共有出来てよかったと思ってもらえるようなね。ビルボードは東京も大阪もやりやすいですけれど、大阪の方がお客さんと“近い”感じはありますよね。お客さんの心拍数が元々高い気がするし、やっぱり“損をしない”という想いが強いというか(笑)。なので、終わった後に“来てよかったわぁ”と言ってもらうために、前日までいろいろ考えながら臨もうと思っています。2ndセットはもちろんですけど、1stセットも70分という限られた時間でサクッと終わったのに“よかったわ”と言ってもらえるものにしたいですね」
Text by 吉本秀純
ビルボードライブ大阪・庄山路子さんからのオススメ!
「弦楽器、チェロって、何だか敷居が高く近寄りがたい雰囲気があると思う方も多いかと思いますが、柏木さんの飾らなく、優しく繊細なお人柄がそのまま音色に表れるようなステージを是非体感してください」
(2015年10月 1日更新)
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