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ももクロから西田敏行までがデビュー45周年を祝う
『黒フェス』が9/6(日)=“黒”の日にいよいよ開催へ!
枯れることを知らない気力の源とその音楽人生をたどる
松崎しげるインタビュー&動画コメント (2/2)

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『愛のメモリー』なんかカラオケで78点だよ! 
みんなが感動する感じで歌ってんのに78点!

 
――他にも、『夢で逢えたら』(M-8)や『ルビーの指環』(M-5)など、様々なカバーをされています。 
 
「『夢で逢えたら』は、僕がバンドをやってる頃から、吉田美奈子というスーパーボーカリストが歌っているのを見て、“あぁ、いいなぁ”と思っていて。ラッツ&スターとか、いろんな人が歌ってるんだけど、今回は“もうちょっとR&B系でいこうか”っていう感じで。『ルビーの指環』の寺尾聡さんは、僕が学生の頃にはもうプロとしてバーンとやっていて、僕の憧れのバンドだったね。加山雄三さん、寺尾さんのバンドは、僕が“こういう風にバンドをやっていこうかな”っていう、1つの目印というのかな。で、最近は酒飲んだりして寺尾さんと遊んでるんだけど、このカバーでは『また逢う日まで』と同じく、壊すところから始めたの。あまりにも寺尾さんのはアンニュイな感じじゃない? だけど、思いっきり壊しちゃって。“すみません先輩、めちゃめちゃに壊しちゃって”ってメールしたら、“お前が歌うんだから、お前のバージョンでいいんだよ。人に気を使うんじゃないよ。俺のライブが近々あるから来るか?”って。もう笑っちゃうよね。嬉しくて。いきものがかりの『ありがとう』(M-3)は、子供から借りて聴いてたの。“いい曲だよなぁ”って。ものすごく愛くるしくて。でも、俺が歌ったら暑苦しいだろうなって。それもカバーの面白さというか、コピーをするんじゃなくて自分なりのっていうね。それが『ありがとう』には出てると思うし、もう笑っちゃうよね(笑)」 
 
――カバーされている楽曲にも、松崎さんのパワフルな歌声を受け止める器の大きさを感じます。 
 
「そうなんだよね。時として丁寧さがないんじゃないかっていうこともあるんだけど、僕みたいなライブ人間っていうのは、この盤で上手く歌うことはプロだから出来るんですよ。最近はカラオケでも上手い人がいっぱいいるじゃないですか。でも、人が感心するいい歌を歌ってないんだよね。感情移入っていうか、“こんな風にステージで表現したいんだ”っていうことが欠落しているというかね。だから、フレームからはみ出したアーティストがあんまり出てこないというか。はみ出すことは、いくらでもセーブ出来る。それはテクニックとしては出来るんだけど、あんまりテクニックも使いたくないし。まぁ結構、今回は素のまんまでざっと入れた感じだよね」 
 
――このアルバムでは、テクニックは使わずに。 
 
「そうだね、ストレートな自分というか。今のレコーディグ技術だといろんなことが出来るし、何でも出来るじゃない? だから、ステージマン松崎としては最小限、自分がステージで対応出来る、そういう物作りをしていきたいと思うし。でも逆に、次のアルバムに関しては、レコーディングを駆使して“すっごいな!”って思われるようなものを作ろうと思うし。それには時間がかかるけど、時間をかけてやるのもすごく好きだから、そういう作品を作んなきゃいけないなっていう気持ちもあるし。ただ、今回はカバーなので。カバーの一番プレッシャーがかかるところは、その作品を出したアーティストの皆さんにご迷惑が掛からないこと。そのギリギリの限度のところでやらなくちゃいけないっていう、そこだけだね」 
 
――そこは歌手・松崎しげるとしての色、個性と、楽曲が元々持っているものとのせめぎ合いというか、壊し過ぎてもダメだし、即して歌うのも違う。 
 
「だろうね、きっと。やっぱりヒット曲ってものすごい力を持ってるんだよね。すごいアレンジしても対応出来ちゃう。そのメロディがみんなの脳裏に残ってるというか」 
 
――それが、ヒットする理由の1つでもあるような。 
 
「ありますね。あと、稲垣潤一くんの『ロング・バージョン』(M-4)は、俺がウィスパーボイスで歌ったらガッサガサになっちゃう(笑)。でも、そのガサガサがいいのかなと思って。だから、か弱くなく、男臭い『ロング・バージョン』になっちゃった。でもそれはそれでいいんだなって。特に好きだった曲だし。僕はカラオケで点数が出るのって大嫌いなんだけど、1回、家族で(カラオケに)行ったときに、うちの息子が点数制ばっかりやるのよ。“いいよ”って言ってるのに“歌ってよ”って。で、何か知らないけど『ロング・バージョン』が入ってるから、ぱ~って歌ったの。そしたら、“パパすごいよ、100点だよ!”って(笑)。ビックリしちゃって、笑っちゃったもんね(笑)。『愛のメモリー』なんか78点だよ! みんなが感動する感じで歌ってんのに78点だよ!」 
 
――(笑)。厳しいですね、機械は。 
 
「ある番組でも言ったんだけど、僕らは“対人間”だから。どういう風に伝わるか。機械じゃないんだよって。それはずっと復唱してたね」 
 
――ずっとステージで歌われて、人間対人間のやり取りをずっと肌で感じてこられたということですよね。 
 
「『愛のメモリー』なんて、もう何万回も歌っているけど、毎日表情が違う。全然違う。だから、そういうことだよね、きっとね。お客さんの息遣いって、アリーナのコンサートになると、パンッと音が止まった瞬間に、みんなの深い息がウェーブになって聴こえてくる。あの空気感がたまんなく好きだね。やっぱこの世界に入ってよかったって思う一瞬だし。どんなステージをやっていても、いつもそれを感じるね。ステージって100%出そうと思ったら、本当に120%、140%、そのぐらいまで出さないと。それはやっぱり、オーディエンスとのやり取りの中で思ってもみないことが起きるというか。ステージは生きているって言うけど、本当にそうだよね」
 
――何万というお客様と、松崎さんお1人で対峙していくのは、それだけエネルギーが必要なのかなと思います。 
 
「それもあるけど、プロフェッショナルな言い方をしちゃうと、数万人っていう規模で歌うこともあるんだけど、結局は1人に向けて歌ってるんだよね。1人に向けて歌っている歌を数万人が聴いているという感覚。そういう面では、松崎のステージは伝わりやすいかもしれない」 
 
――1人に向けて歌われているというのは、お若い頃から心がけてらしたんですか? 
 
「いや~、バンドをやってる頃なんかは、雰囲気で逆にお客さんに呑まれてたよね。だけど、それがだんだん歌っていくにしたがって…『愛のメモリー』を歌い始めた頃は、まだお客さんを意識してたかな。だけど、意識しないと売れなかった時代っていうのもあったよね。それは時代がそうさせたのかもしれない。ただ、諸先輩がいろんなことを残してくれたから。名言もあるし、“お前、こんないっぱいの中で1人に対して歌うんだよ。それをみんなが聴いてるんだから”って」 
 
――そういうご助言で、思い出されることはありますか? 
 
「最初に“小さくまとまっちゃダメよ”って言われたのは朝丘雪路さんでしたね。'70年から1年半ほどステージをご一緒させていただいて。前歌じゃなくて、中歌をさせていただいて。失礼があっちゃいけないと思って、しっかり、丁寧に歌を歌ってたの。“上手いけどさぁ、小さくまとまったダメ、松崎くん。あなたは本当に歌(の存在感)が大きいんだから”って。そういうひと言の助言が、新人の自分にはものすごく役に立ってたかなって思いますね」 


何しろ音楽が好きで、ステージに出るのが楽しくて仕方ない

 
――今、松崎さんが後進の方に伝えたいことはありますか? 
 
「今は完全に背中を見られている世代なので。『イナズマロック フェス』にしろ何にしろ、西川(貴教)くんとか後輩たちが、この65歳のオヤジを見て“何だこのパワー!”って。まず最初に驚くよね。“何ですか、その原点は?”って。“いやいや、何しろ音楽が好きで、ステージに出るのが楽しくて仕方ないんだよ”って。“すっごいですね、西川くんよりもキーが高いんじゃないですか?”、“おう、西川よりもキーが高いんだよ”、“何で維持出来るんです?”、“酒も飲むし、煙草もケツからヤニが出るほど吸うし、夜遊びもするし、何なんだろうね?”、“何かケアしてることは?”、“ない!”みたいな。そのまんまだよね。生んでくれた親父、お袋のおかげと、あとは高校までずっと野球やってたからね。声を出さないとブッ飛ばされるあの時代に育って、どうやったらバックネット裏からセンターの後ろまで声が通るのかっていうのは考えたよ。パンチくらいたくないから…(笑)。それは、カッコいい言葉で言えば腹式呼吸なんだろうけど。(原点には)それがあるんだよな。でも、嬉しいよな。後輩たちが、文句垂れながらも、それでも嫌な顔をせず来てくれるし。それと、声をかけてくれるっていうのが嬉しいよねぇ。65歳にもなってこんなガチャガチャ歌っているヤツは、俺の周りにもちょっといねぇもん。やっぱり音楽が俺の身体を動かしてるし、俺の栄養になってるってすっごく感じる!」 
 
――健康の秘訣は音楽? 
 
「音楽。健康法は全くないです。ただ、年齢的に変わったのは、肉食80%だったのが今はもう、肉が15%くらいになって、魚中心に。それは自然と身体がそういうものを欲してきた。声はいくらでも出るけど、身体は当たり前に65歳なのかなとは思うね!」 
 
――最後に『黒フェス』についてお伺いします。 
 
「9月6日(日)=96=クロ=黒! 松崎しげる=黒! 幕張メッセでやります。やっぱり好きなアーティストが来てくれるので、西田(敏行)とかと売れなかった頃の話をするのも楽しいし。今や役者協会の会長だからね! その前が森光子さん、その前が森繁久弥さんだから。どこを見ても(いろいろな作品に)出てるし、俺より2つ年上なんだけど、恐るべき67歳だよ。俺は体育会系で先輩には必ず“さん”付けするんだけど、唯一あいつだけは…“にしやん、にしやん”って。あだ名も俺が付けたの。それまでは“としちゃん”だったの。でも、当時はもうトシちゃん(=田原俊彦)の時代で。あいつの女房も“としこ”で、あいつの家に行ったら“としちゃん”ばっかりだから! それで“にしやん”って呼んだら、“にしやん、いいね”って。奥さんも昔はにしやんのことを“とし”って呼んでたんだけど、最近は“にし”って。やっと定着しましたよ(笑)」
 
――『黒フェス』には、芸能界の中でもいろんなジャンルの方が来られますね。 
 
「葉加瀬太郎みたいに、クオリティの高い音楽を一緒に今まで作ってきた仲間とか、大好きなスターダスト・レビューとか、“やるよ”って言ったら、“行きます!”って言ってくれるの、嬉しいじゃない。西村由紀江ちゃんだって、大阪の『日曜はピアノ気分』っていう番組で知り合ったんだよ。やっぱり、いい音楽をやるメンバーが周りにいるのは幸せなことでね。例えば、由紀江ちゃんが西田敏行の『もしもピアノが弾けたなら』を弾く姿が目に浮かんだり。何かほのぼのとしていいのよ、孫とおじいちゃんみたいでね(笑)。まだまだやることはいっぱいあるし、まだまだこんなもんじゃない。終わった後はすぐ次のことを考えてるからね! “あ~、何かやりてえな~”って。その気力がある内は、絶対に歌い続けるというか、いいものがいっぱい出来るんじゃないですか!? 頑張りますわ!」

 
Text by 岩本和子
 



(2015年9月 2日更新)


Check

Movie Comment

やっぱり黒い、黒過ぎる!(笑)
ハイテンション動画コメントはコチラ

Release

デビュー45周年記念!
日本の名曲を集めた絶品カバー集

Album
『私の歌~リスペクト~』
発売中 3000円
ANYTHING GOES
HUCD-10186

<収録曲>
01. また逢う日まで(尾崎紀世彦)
02. 木蘭の涙(スターダストレビュー)
03. ありがとう(いきものがかり)
04. ロング・バージョン(稲垣潤一)
05. ルビーの指環(寺尾聰)
06. Everything(MISIA)
07. ハナミズキ(一青窈)
08. 夢で逢えたら(大瀧詠一)
09. 愛は時を超えて(大橋純子)
10. 駅(竹内まりや)
11. 見上げてごらん夜の星を(坂本九)
12. 私の歌(松崎しげる)
Bonus Track
13. キミノアト(ももいろクローバーZ)

Profile

まつざき・しげる…'49年11月19日生まれ、東京都出身。'70年デビュー。'77年に『愛のメモリー』で日本レコード大賞歌唱賞を受賞。国内外で数々の音楽祭の受賞実績を持つ実力派であり、年間を通じて数多くのステージをこなし、“ディナーショーキング”の異名を持つエンタテイナー。テレビドラマ『噂の刑事トミーとマツ』に主演する等、ドラマ、CM、バラエティ・ミュージカルなど幅広く活動している。久々の刑事役でTBSの人気シリーズ『ケータイ刑事』にレギュラー出演し、映画『ケータイ刑事 THE MOVIE3』も公開。'05年には念願だったチェコ・フィルハーモニー管弦楽団と共演。『愛のメモリー』原曲を含む秘蔵映像満載のヒストリーDVDの2枚組アルバム『My Favorite Songs』をリリースした。'08年には、クレイジーケンバンドの横山剣、リリー・フランキーとタッグを組み、親子の絆をテーマにリリースされた『オヤコのマーチ』が話題に。'09年にはnobodyknows+とコラボしたシングル『Fallin'』、元気のない日本を盛り上げよう!と応援ソングを集めた初の邦楽カバーアルバム『Yes We Can!!』をリリース。20年ぶりとなるホールツアーも行い好評を博した。デビュー40周年を迎えた'11年5月25日には、記念のベストアルバム『Shigeru Matsuzaki All Time Best "Old & New"~I'm a Singer~』をリリース。'12年6月には『愛のメモリー』35周年記念企画として、メガボリュームシングル『愛のメモリー35th Anniversary Edition』を発表した。'13年2月、チコ&ザ・ジプシーズ『愛と情熱のジプシーズ』にゲスト参加。フランス・パリにてレコーディングした『愛のボラーレ feat.シゲルマツザキ』スペイン語verと、日本にて録音した日本語verが収録された。還暦を超えてもますます精力的に活動を続け、今年6月10日にはデビュー45周年記念した名曲カバーアルバム『私の歌~リスペクト~』をリリース。9月6日(日)=“黒”の日には、豪華ラインナップを招いた一大イベント『「黒フェス」しげる祭 ~白黒歌合戦~』を開催する。

松崎しげる オフィシャルサイト
http://www.walker21.co.jp/matsuzakishigeru/

『黒フェス』 特設サイト
http://kurofes.net/


Live

芸能界を華やかに彩る錚々たる
顔ぶれで贈る冠イベント開催!

 
『松崎しげる デビュー45周年
「黒フェス」しげる祭 ~白黒歌合戦~』
チケット発売中 Pコード265-433
▼9月6日(日)13:00
幕張メッセ 国際展示場
スタンディング8800円
[出演]松崎しげる/ももいろクローバーZ/
Silent Siren/スターダスト・レビュー/
葉加瀬太郎/清水ミチコ/コロッケ/
西田敏行/HOUND DOG/DJ KOO/
ゴスペラーズ/LE VELVETS/西村由紀江/
SuG/竜馬四重奏/大橋純子
[司会]マイケル富岡
ディスクガレージ■050(5533)0888
※3歳以上はチケット必要。車椅子での来場は問合せ先まで要連絡。客席を含む会場内の映像・写真が公開されることがあります。

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普段はぴあ関西版WEB
演劇・演芸担当:岩本和子のオススメ

「この取材で初めてお会いしましたが、やはり第一印象は黒い!でした。とても丁寧にお話をしてくださり、豪快に笑われ、活き活きと語られる姿に圧倒されつつ、思わず前のめりになるエピソードをいくつもお持ちで、私にとってすごく楽しい取材となりました。取材の数ヵ月前、近鉄アート館で行われた後藤ひろひとさん主宰のイベント『Drunken Songbook vol.3 ~禁酒法時代~』を拝見しました。後藤ひろひとさん、大西ユカリさん、ぼんちおさむさんと濃厚な顔ぶれの中、ゲストで登場されたのが石野真子さんと松崎さんでした。松崎さんの1曲目はもちろん『愛のメモリー』。そのパワフルな歌声とテンションに圧倒されました。さらにすごいなー!と思ったのは、10数年前にもなんばグランド花月で『愛のメモリー』を聴いていたのですが、当時と変わらぬ歌声であったこと。衰えを知らないとはこのことか…!と圧倒されるのもう何回目。とにかく圧倒されっぱなしです。カバー集『私の歌~リスペクト~』も聴けば聴くほど味わい深く、特に好きなのは竹内まりやさんの『駅』のカバー。細かく震えるようなその歌声は、何度聴いても心に染みます。パワフルな松崎さんにもテンションが上がりますが、絹のような手触りの松崎さんの歌声も、本当に聴き応えがあります。今度の『黒フェス』も錚々たる顔ぶれです。文中にもありましたが、西村由紀江さんのピアノで西田敏行さんの『もしもピアノが弾けたなら』とか、もう聴いたら卒倒すると思います。会場ではいろんな素晴らしい場面を目撃出来ると思いますので、ぜひ楽しんでください!」