LGMonkees→山猿へ
アニメ『NARUTO -ナルト-疾風伝』を彩った『風』を手に
バンドツアー真っ最中! 再生回数1000万超えの
ハートフルシンガーの現在に迫るインタビュー&動画コメント
’11年の東日本大震災での体験が元で生まれた『3090~愛のうた~』が、配信で累計150万DLを突破、動画サイトでは1000万PVを超えるなど、“泣ける歌”としても幅広い層から大きな反響を巻き起こしたLGMonkeesが、自己の音楽活動の原点となる“山猿”名義で本格的な活動を再スタートさせた。4月には山猿として2ndアルバム『あいことば2』を、7月8日にはニューシングル『風』をリリース。アニメ『NARUTO -ナルト-疾風伝』のオープニングテーマ曲となった痛快なロック調の表題曲に、思春期の記憶を呼び覚まし優しく背中を押してくれる『無口な明日を嫌わないで』、新たにEDMバージョンとなった『3090~愛のうた~』を収録。その音楽的なバックグラウンドから現在に至る活動の変遷を、人間味溢れるエピソードを交えながら、存分に語ってくれた。
東京とか都会に出なくても音楽活動は全然出来るし
僕は地元で感じたことや普段生活していて思ったことを曲にしている
――昨年、LGMonkeesから山猿に改名しましたが、音楽活動自体は元々、山猿としてスタートしたんですよね。
「そうですね。“ここから音楽をやっていこう!”と思ったときに付けた名前が山猿だったから、LGMonkeesとして活動していた期間も、気持ち的にはずっと山猿だったのかなって。ライブのときも、みんな山猿って呼んでたし(笑)。ちょうど初めてのライブから10年目を迎えたタイミングで、“俺っていったい何者なのか?”と考えたとき、やっぱりそこには山猿というアーティストが存在していたことを実感して、名前を戻してリスタートしました。ファンの子たちも“おかえり!”ってすごく喜んでくれて、涙してくれた人もいたから(笑)。やっぱり戻してよかったんだなって」
――あと、今でも活動拠点は福島県なんですね。
「はい。東京とか都会に出なくても音楽活動は全然出来るし、僕は地元で感じたことや普段生活していて思ったことを曲にしているので」
――そもそもの音楽的バックグラウンドはどういったところに?
「ばあちゃんがやっていたスナックにカラオケがあったので、小さい頃から歌いたいときに歌っていたんです。美空ひばりさんとか演歌も好きで、中学時代に『AIR JAM』に出会って、そこからさらに大人になるにつれて、いろんなジャンルを聴くようになっていって。だから、ジャンルに関係なく自然と言葉がラップ調になったりバラードになったりするし、バンドスタイルもあればEDM系もあるという感じで、山猿にはいろんな曲がありますね」
――あるインタビューで、“毎日曲を作っている”という発言を目にしました。
「曲を作っているというより、日々言葉を貯めていってるというか。普通に生活しているだけで、すごい笑うし、涙が出てくることもあれば、怒りを覚えることもある。そういうことを飾らず、みんなと同じ目線でフィルターをかけずに伝えられたらなと思って、曲を作ってますね。日々思ったことを、そのまま吐き出してるというか」
――それは、誰かに伝えたいという思いから?
「はい。(LGMonkeesの)最後のライブでも、伝えたいことがあり過ぎて1曲目から喉を潰しちゃって…(笑)。でも、その後も一生懸命歌って、ファンの子がサビを一緒に歌ってくれたりして…やっぱりライブの一体感はそこで生まれるなって。“まっすぐ ”っていう言葉が好きなんですけど、やっぱりライブでもそのまっすぐな気持ちを伝えたいから。フィルターをかけずに、まっすぐな気持ちで音楽をやっていく。それが山猿なんじゃないかなって」
――お客さんのファン層も広そうですね。
「めっちゃ広いですね。それこそ70歳ぐらいのおじいちゃんおばあちゃんが2人で来て、手をつないで聴いてくれてたり。家族で来てる人も多いし、いつの間にかいろんな人が集まってきてくれてますね。僕自身、誰にでも話しかけるんですよ。それは、(東日本大)震災の体験がきっかけで、被災して避難所生活をしていたときに、自然と“おはよう”とか“こんにちは”って挨拶するようになって。それまで特に会話したことがなかったおじいちゃんおばあちゃんとか、近所の人とも話すようになったんです。それまでは主に自分のことを歌ってたんですけど、それから曲を作るときも家族のことを歌うようになって、ライブも家族で来てくれる人が多くなったので、ファンのことを(ファミリーとかけて)“FAM(ファム)”って呼び始めたんですよね」
陰で頑張ってる人に気付けない、せかせかした世の中だからこそ
人が頑張ってることに気付けることがすごく幸せ
――7月にリリースされたニューシングル『風』は、アニメ『NARUTO 疾風伝』のオープニング曲となりましたが、間奏にもロックなギターソロが鳴り響いてたりして。これはNARUTOをイメージして書いた曲?
「そうですね。僕が原作のめちゃめちゃファンだったんです。サウンド面ではバンドっぽいハジけるような音で、聴いてくれた人がハッピーになるような、イントロから勇気づけられるような力強い曲にしようと思って書いた曲です。自分も歌っていてすごく楽しい。初めて聴いた人でも、みんな笑顔でノッてくれる曲ですね」
――タイトルは“疾風伝”からイメージしているんですか?
「それもありますけど、“風”って人生みたいだなって。毎日同じ風は吹かないし、さっきまで優しい風が吹いていたのに、急に強い風が吹いてくることもある。“明日は明日の風が吹く”とも言いますけど、人の背中をちょっとでも押せたらいいなと思って作った曲なので。もし、今は向かい風で悩んでたり行き詰まっているときに、この曲が少しでも追い風になってくれたらいいなと思います」
――カップリングの『無口な明日を嫌わないで』(M-2)は、どういう人に歌いかけているんですか?
「一番は自分自身ですね。それとやっぱり、世の中の頑張ってる人に向けて。頑張ってない人っていないと思うんですよ。みんな誰かのために頑張ってると思ったとき、自分の背中も押せるような気がして。歌っていて、自分自身も頑張ろうって思えるような曲ですね」
――“頑張れよ!”と言われるより、“頑張ってない人はいない”と言われると、何だか嬉しいですね。すごく肯定的な言葉だなって。ちなみに、この曲を書いたきっかけは?
「LGMonkeesから山猿に改名するのって、やっぱりパワーがいるからどうしようか悩んでいたときがあって…そのときに中学時代野球部だった頃を思い出したんです。コウタくんっていう、すごい不器用なヤツがいたんですよね。ヘタ過ぎて球は届かないし、みんなもバカにしてたんですけど、彼は部活が終わった後、夜中に壁にボールをぶつけながら、1人で練習してたんです。そんな風に陰で頑張ってる人に気付けない、せかせかした世の中だからこそ、人が頑張ってることに気付けることがすごく幸せだというか。あいつが頑張ってるから、俺も頑張ろうかなって思える。そういう頑張ってる人に出会えたのも、自分にとってすごいプラスだったなって。山猿の歌詞って90%ぐらい実体験なんで、どの曲もどこかで自分が触れた思い出たちを歌ってるのかもしれない」
――だからこそ、沁みるのかもしれないですね。
「だといいですね。人って、努力を積み上げていったときに強くなれる。かつてのコウタくんを見てそう思ったのを、今思い出しました」
誰1人として置いていきたくない
――3曲目にはEDMバージョンの『3090~愛のうた~(Love Mix Version)』が収録されていて、原曲とはまた感じが変わってますね。
「最初に作ったときはミディアム調で、親父へのリスペクトの思いを込めて作った曲だったんですけど、それから3~4年経って、今はその子供が産んだ子供目線で届けたいなって。前はじっくり聴く感じだったけど、EDMだとドライブなんかでも聴けるし」
――以前に比べて、ご自身の気持ちの上での変化は何かありますか?
「ファンの子には“昔より優しくなった”とか言われますけど(笑)、僕自身はそのままですね。あと、自分と似た人が集まるって言うじゃないですか? ライブもきっとそうだと思うから、無理してカッコつける必要はないなって」
――7月24日から、『あいことばは生猿です!! Tour2015~夏の陣~』がスタートしました。
「今まではDJスタイルのライブだったんですけど、今回は初めてギターとキーボードが入ったバンドでツアーをやります。DJスタイルは慣れてるし、自分も楽しんで出来るんですけど、それじゃあつまらないなって。山猿というアーティストがどこまでいけるのか、自分でも挑戦ですね。1曲1曲、不器用なりに10年目の挑戦をしたいなと」
――最後に、まだ山猿のライブを観たことがない人に向けてメッセージをお願いします。
「初めてライブハウスやクラブに行ったときって、“どうしたらいいんだろう?”って緊張して後ろの方にいるじゃないですか。自分もそうだっだし、家族で集まるようなホントに飾らないライブなんで、誰1人として置いていきたくない。後ろの人にまで目をやって歌って、一生懸命、素直に山猿の音楽を届けたいなと思います!」
Text by エイミー野中
(2015年8月19日更新)
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