インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「自分にとって音楽は、人生を踊るためだったり、前に向かうもの」 今の時代がどうなのかよりも、俺という1人の人生がどうなのか The Flickersから静かなる闘志を込めて 『UNDERGROUND POP』インタビュー&動画コメント


「自分にとって音楽は、人生を踊るためだったり、前に向かうもの」
今の時代がどうなのかよりも、俺という1人の人生がどうなのか
The Flickersから静かなる闘志を込めて
『UNDERGROUND POP』インタビュー&動画コメント

 ガレージやパンクのヒリヒリした衝動に、エレクトロ~ニューウェイヴのエッセンスを掛け合わせたサウンドを炸裂させる3ピースロックバンド、The Flickers。魂から叫ぶボーカルが聴く者を突き刺し、疾走するダンスビートがそれを加速させ、高揚させる。『SUMMER SONIC』や『ROCK IN JAPAN FES』『RADIO CRAZY』といった大型フェスにも出演を果たすなど勢いに乗る中リリースした、メジャー1stアルバム『UNDERGROUND POP』。同作に伴うツアーの真っ只中のフロントマン・安島裕輔(vo&g&syn)を迎えたインタビューでは、1つ1つの言葉をじっくり選びながら、まっすぐな眼差しで話してくれた。

 
 
アンダーグラウンドなものがすごく好きだし
同時にイヤでしょうがないときもある
 
 
――メジャー1stアルバムということで、意識したことはありますか?
 
「メジャーだからどうこうっていうのはなくて。どこに行っても自分たち次第っていうのを肝に命じて。変わらないことを意識した、ということもないんですけど」
 
――『UNDERGROUND POP』という意味深なアルバムタイトルですが、“アンダーグラウンド”と“ポップ”、それぞれどういった捉え方をしていますか?
 
「自分にとっては同一線上にあるもので。どちらの言葉についても、良い意味とも悪い意味とも思ってなくて。アンダーグラウンドなものがすごく好きだし、同時にイヤでしょうがないときもある。ポップも同じ。対称的な言葉をくっつけてるんですけど、少し問題提起的な意味は込めていますね」
 
――イヤになる、というのはどういったところにですか?
 
「例えば、アンダーグラウンドっていうのは日陰の、暗いイメージがあると思うんですけど、そこにある誇り高いものはカッコいいと思う。だけど、そこだけでやっていくんだっていう、こじんまりしたものにはしたくない。The Flickersは割と長い間、小さくて汚いライブハウスで育ってきて、その場所が大好きなんだけど、そこから抜け出したいとも思っていた。そういったこれまで培ってきたものもこのアルバムに詰まっているから。これまでを肯定して、これからどこに向かっていくのかという意志を込めてのタイトルです」
 
――ここ数年は大型フェスにも出演していますが、そこからのフィードバックなどはありましたか?
 
「今という時代の中で音楽を作ってるけど、自己表現を大切にして作りたくて。今の時代がどうとかビジネスだからとか、今回はそういうことには向き合いたくなかった。そこを考えてしまうと、今の自分には作れない気がしたから。それよりも、自分という1人の人間の人生を表現出来るように、そこを特に大事にして作りましたね。自分らしいものをとにかく一生懸命に作ろうって。こっちの方がみんな好きだろうな、でも僕だったらこっちがいいな、っていうのを悩みながら選択していきました」
 
――アルバムを作る際に、メンバー3人で共通認識としてあったテーマとかはありました?
 
「これだ、っていうのはなかったですね。でも、そんなにしょっちゅう曲が作れて、CDを出し続けられるもんじゃないだろうから、“これが最後かもしれない”っていうくらいの気持ちで1曲1曲作ろうって。今出来ることを一生懸命にやって続いていくのが、ロックがロールしていくことなのかなって思っているので。まず自分を音楽で表現すること、メンバー同士でグルーヴすること、その先にお客さんがいると思うんです。かと言って、自己表現だけどエゴイスティックなものにはしたくはない。誰かと分かち合うものではありたいなと思います」
 
 
僕は小さいけど全力の爆発を繰り返して続いていく
 
 
――アルバムは『nova(=新しい)』(M-1)という曲で始まります。タイトルが表すように、The Flickersの新しい側面も感じられる曲になっています。
 



「新しさもあるけど、今の自分たちのド真ん中の曲だなと思っています。『nova(ノヴァ)』は、星で起こる爆発のことを指していて、ノヴァを繰り返して星は死んでいくんですけど、星が終わるときの大爆発がスーパーノヴァで。ロックのヒット曲には結構“スーパーノヴァ”っていうタイトルが多いけど、僕は小さいけど全力の爆発を繰り返して続いていく、っていうところに自分の気持ちを込めたかった。だから“ノヴァ”なんです」
 
――この曲の中で、“未来を今/ここで奪うのさ”と叫んでいます。
 
「僕自身は、ほっといたら“未来なんてないでしょ”って塞いだ気持ちになっちゃうし、ライブでは希望を歌いたいのに、どうしてもその気分になれなかったりもする。この歌詞を書くことは自分の中で勇気が必要だったし、それを口に出すこともエネルギーが必要だった。だから、自分の中にあるそういった迷いやしがらみを振り払うような気持ちでシャウトしているんです」
 
――アルバムを通して“愛”や“永遠”というものがキーワードになっているように感じました。『love song 2』(M-9)や『underground』(M-14)における歌詞だったり、『love in the music』(M-8)『I don't know what love is』(M-13)といったタイトルもあって。
 



「その2つの言葉は、僕が常に気になっててしょうがない言葉だからだと思います」
 
――分からない、から?
 
「そうですね。分かってないから。でも知っているような感覚もある」
 
――『love song 2』はストレートなラブソングです。きらめくギター、ドキドキする疾走感。叫ぶこともなく、シンプルに歌っていますね。
 
「少し前に弟の結婚式があって。兄バカじゃないですけど(笑)、いい結婚式だった。結婚式のときに、“俺、まだちゃんとしたプロポーズしてない”って、泣きながらみんなの前でプロポーズしたんですけど、それがすごい素敵だった。その翌月くらいにじいちゃんが亡くなっちゃって。おばあちゃんが付きっきりで看病していて、その姿を見ていると、すごく感じるものがあった。そういったものを曲にしようと思ったのが出発点です。自分の大切に思うものに対して、自分が言いたい“好きだ”という気持ちを書きたかった。メンバーや周りにいてくれる人、音楽そのもの、いろいろ置き換えられるんですけど」
 
――そしてラストは、8分に及ぶ長尺の『underground』。激動の(そして繰り返される)毎日のように、アレンジも変化を続けながら進んでいきます。
 
「これは7年前くらいの曲で。歌や演奏に集中したくて、1回きりで録りました。それ以上は良くても良くなくてもやらない、って決めてね」
 
 
最先端の自分を見せたいし、その瞬間、全力でいたい
 
 
――曲順は、どういった組み立て方をしましたか?
 
「アルバムを通して物語になっていて、1曲目の『nova』で眠れないまま朝になって、『midnight express』(M-2)では朝、電車に飛び乗ってどこかに行く。どこにも行けなかったか、たどり着いた先か、どちらか分からないけどそこは『neo tokyo』(M-3)という街だった。という風に、最後の『underground』まで物語が続いています」
 
――『love in the music』や『love song 2』があった後で、『I don't know what love is』となるんですね(笑)。
 
「散々いろいろ言っているのに、結局悟っているわけではないと(笑)」
 
――歌詞を書く上で、インスパイアされたものはありましたか?
 
「個人的には大友克洋の作品にハマっていたので、SFやレトロフューチャー、ファンタジーといった近未来的なところは影響を受けていますね。『neo tokyo』とか『steam punk revolution』(M-6)がまさにそう」
 
――ニューウェイヴやテクノの要素を含むアレンジも特徴的です。“ダンスミュージック”をやっている感覚はある?
 
「あります。表面的な、行動としての“ダンス”というよりも、魂の前進、鼓舞みたいなものとして捉えていて。ほっといたら僕は、もしかしたら止まっちゃうかもしれない。自分にとって音楽は、人生を踊るためだったり、前に向かうものだったりするから」
 
――リリースツアーが7月よりスタートしています。関西は7月19日(日)梅田Shangri-Laにて。4月に大阪城音楽堂で行われた『High Apps』では、ギターとシンセサイザーをサポートに加えた5人編成でのライブでしたね。
 
「もっと自由に、より人間味のある演奏をしていくために、この5人編成になりました。CDをそのまんま再現するのとは違って、ライブならではのものを聴かせていきたいと思うから。ライブは、同じ歌を歌うのでも、その日その場にいるお客さんと分かち合うというか、一緒に作っていくものだから。お互いありきで、その日にしかない特別なものになる。最先端の自分を見せたいし、その瞬間、全力でいたいんですよ」
 
 
Text by 中谷琢弥



(2015年7月13日更新)


Check

Movie Comment

淡々と衝撃のエピソードを話す(笑)
安島(vo&g&syn)からの動画コメント

Release

魂を燃やし尽くすように炸裂する
激情のエレクトロパンクス!

Album
『UNDERGROUND POP』
発売中 2800円(税別)
ONECIRCLE
CTCD-20022

<収録曲>
01. nova
02. midnight express
03. neo tokyo
04. city pop
05. u-rei disco
06. steam punk revolution
07. morning star
08. love in the music
09. love song 2
10. in our deadroom
11. dancing in the glory
12. techno kids
13. I don't know what love is
14. underground

Profile

フリッカーズ…写真左より、堀内祥太郎(b)、安島裕輔(vo&g&syn)、本吉“Nico”弘樹(ds)の3人からなる3ピースロックバンド。80年代のニューウェイヴ、エレクトロポップ、ガレージロックなどの要素を盛り込んだダンサブルなサウンドと、エモーショナルなパフォーマンスでライブハウスシーンを中心に注目を集め、新人ながら『ROCKS TOKYO』『RUSH BALL』『COUNTDOWN JAPAN』『RADIO CRAZY』などの大規模フェスへの出演や、『MINAMI WHEEL』『SAKAE SP-RING』などのサーキットイベントで多くのオーディエンスを集め入場規制になるなど、ライブを中心に話題となっている。’14年6月にEP『AT FIRST LIGHT』にて満を持してメジャーデビュー。今年4月15日に2枚目のフサイズにしてメジャー初アルバムとなる『UNDERGROUND POP』をリリースした。

The Flickers オフィシャルサイト
http://www.theflickers.net/


Live

5人編成で挑む東名阪リリースツアー
大阪ファイナルが間もなく開催!

 
『The Flickers presents
“UNDERGROUND POP” TOUR 2015』

【東京公演】
チケット発売中 Pコード262-041
▼7月5日(日)18:00
LIVE HOUSE FEVER
オールスタンディング2500円
[ゲスト]Large House Satisfaction
Livemasters Inc.■03(6379)4744


【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード261-998
▼7月17日(金)19:00
CLUB ROCK'N'ROLL
前売2500円
[ゲスト]SISTER JET
ジェイルハウス■052(936)6041

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード262-023
▼7月19日(日)18:00
Shangri-La
オールスタンディング2500円
[ゲスト]Mop of Head
GREENS■06(6882)1224

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


Comment!!

ライター中谷琢弥さんからの
オススメコメントはこちら!

「The Flickersと同世代で、彼らも共演するようなバンドを見たときに、出発点は “陰”ながらも、それを“陽”に転嫁して放つバンドが多く感じるけれど、彼らは“陰”のまま叫ぶ。その立ち位置からして興味深いな、というのが第一印象でした。テクノというか四つ打ちをロックなサウンドに取り入れる、という方法は今や定番化しているけれど、彼らは“スピリット”の方を見てるのかな? と思っていたところ、インタビューで「表面的な、行動としての“ダンス” というよりも、魂の前進、鼓舞みたいなものとして捉えている」と話していて腑に落ちました。それって、ハウスミュージックやテクノの成り立ちや本質、にも近かったりもするので。とかなりながらも、アグレッシブで直接的に訴えかけてくるライブはロックバンドそのもので、そういった幾つもの側面や表情を(構えることなく)楽しめるのが彼らの魅力、なんだと思います」