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「大阪はお客様とのキャッチボールがうまくできます」
ダイレクトなやり取りに手ごたえを感じるという大阪
でのコンサートがまもなくNHK大阪ホールで開催!
秋川雅史が抱く歌うことへの思いを聞いた

昨年9月に愛媛県八幡浜市から始まり、全国各地を巡ったテノール歌手、秋川雅史のコンサートツアー「~一声入魂~」がまもなく、大阪はNHK大阪ホールで千秋楽を迎える。ツアー期間中にはカバーアルバム『GOLDEN VOICE』もリリース。クラシックから演歌まで、幅広いジャンルの楽曲を秋川雅史の世界観で歌い上げた本作は、タイトルに込められた思いも見事に反映された、自身にとって最高傑作となった。コンサートの魅力からアルバムについて、そして歌手として目指す高みとは? 秋川雅史に話を聞いた。

--7月25日(土)にNHK大阪ホールで「秋川雅史コンサートツアー~一声入魂~」の千秋楽を迎えられますね。
 
ツアーは去年9月から始まって。1年間かけてツアーをすると、プログラムは一緒なんですけど、表現が変わってくるんです。どんどん変化、進化していくんですよね。だから、7月25日は完成形、究極のコンサートになるんじゃないかと思いますね。
 
--大阪という土地で迎える千秋楽はいかがですか?
 
大阪は一番盛り上がるんですよ。拍手とか、歓声をダイレクトに返してくれるので、「あ、盛り上がってる」という実感がありますね。ほかの場所が盛り上がってないわけじゃないんだけど、大阪は盛り上がっている感じを客席からダイレクトに表現してくれるので、キャッチボールがうまくいって、すごく盛り上がるんですよ。なので、千秋楽には一番相応しいかなと思います。
 
--コンサートはピアノ1台と、シンプルな編成だそうですね。
 
これが結局、一番、表現の幅が効くスタイルですね。いろんなスタイルでやってきた中で、ピアノだけっていうのが一番盛り上がるんです。ピアノという楽器は、1台で100人のオーケストラも表現できるし、3人のカルテットも表現できるし、すごく幅が広いですね。
 
--コンサートでの秋川さんは、いつもどんな感じなんですか?
 
半分はしゃべってます(笑)。1曲1曲、限界に挑戦しながら歌っているので、連続して歌える歌い方じゃないんです。なので、1曲歌うごとにMC、トークを入れるんですけど、割と最近はトークを楽しみにされる方が多いんですよ。ツアーの初日に来てくださったファンの方が手紙をくださるのですが、「今シーズン、楽しみです。どんなことをしゃべるのか」って。曲じゃないの!?って(笑)。
 
--大阪では、MCに笑いの要素も求められそうですね。
 
大阪はそういうところも、“ここは笑う”というツボをちゃんと押さえてくれますね。冗談を言っても誰も笑わなかったら空気が寒くなるじゃないですか。大阪の人はそこをちゃんと理解してくれて返してくれるので、うまくキャッチボールができるんですよ。
 
――今回のツアーを通して、大阪だけの特別な企画などはあるんですか?
 
プログラムは一緒ですが、千秋楽にしかやらないことが、実はあるんです。毎年同じことをやるので、毎年来られている方はお分かりだと思うのですが、そこも楽しみにしていただきたいですね。
 
--ツアー期間中、3月にはアルバム『GOLDEN VOICE』にもリリースされました。様々なカバーをされていますが、選曲はどのようにされたのでしょうか?
 
とにかく幅広いジャンルから選ぼうと。カンツォーネばっかりになっちゃいけないし、映画音楽ばっかりなっちゃいけない。とにかくいろんなジャンルから選ぶということをコンセプトに、“今、自分が歌える曲”で、“一番自分の声と相性がいい曲”という観点で選びました。歌い手の声と曲の相性というのはすごく大事なんです。すごくソフトな声を持っている人がハードな曲を歌うと合わないというふうに、秋川の声で生きる曲もあれば、死んじゃう曲もあるんですよ。その中で、秋川の声で生かすことができる曲を選びました。
 
--そして各ジャンルの中から代表的なものを。
 
そうですね。このジャンルからこの歌を歌おうと決まっている曲もあれば、いくつも候補があってどれにしようと悩んだ曲もありました。ただ、演歌というジャンルで言うと、『まつり』は一番最初に決まっていた曲なんですよ。2年半前のアルバム(『You Raise Me Up』)の制作が終わったときに、この歌を次回のアルバムに入れようと決めていて。“映画音楽”というジャンルでは『ゴッドファーザー~愛のテーマ~』を歌っているんだけど、『ある愛の詩』とか『ロミオとジュリエット』も候補に挙がって、どうしようと迷って。迷った挙句、今回は『ゴッドファーザー~愛のテーマ~』にしました。
 
--『まつり』はなぜ、絶対歌おうと?
 
北島三郎さんの『まつり』はもう自分の歌声にもぴったりだし、『まつり』の歌詞自体も自分の生き方にぴったりだし、本当に自分らしさを表現できるんです。ものすごいお祭り好きなんですよ。ふるさとに西条祭りというだんじり祭りがあって、だんじり祭りと共に生きてきて。自分の人生を振り返ると、ほとんど祭りの思い出ばっかりで。『まつり』の2番に「男はまつりで男を磨くんだ」っていう歌詞があるのですが、この1行がたまらなく大好きで。自分自身も「そういや自分の人生、祭りで男を磨いてきたな」っていう思いがあって…。歌っていて歌詞にのめり込んでいくことってあんまりないんです。大体メロディとか、響きを重視するので。でも、『まつり』は歌詞も大好きだし、メロディも秋川の声にぴったり来るし、いつか歌おうと思いながら今に至ったという感じですね。
 
--時が来たという感じですか?
 
そうですね。時が来たという感じです。やっとこの曲を人前で披露するに至ったかなと思います。
 
--聴く前は、最も想像しがたい楽曲だったんです。どうなるのだろうと。
 
そうでしょうね。でも、実は演歌とクラシックはすごく共通性があって。日本の歌を歌うとき、自分が得意な曲をずらずらっと並べていくと、演歌の比率がすごく高いんですよ。どこに共通性があるのかなと考えると、両方のジャンルとも、自分の魂とか情熱を思いっきり歌声に込めることができる。演歌とクラシックは、そういうジャンルなのかなと思います。
 
--クラシック以外の歌を歌い始めたのは、いつ頃からなんですか? 
 
30歳の頃にコンサート活動を始めて。20代はクラシックの楽曲ばっかり歌っていたんです。クラシック以外の楽曲は歌わないと思っていたくらい、こだわりを持っていたんです。で、30歳くらいから歌手として活動を始めて。その頃から、自分の理想とするものとお客様が望むものとの間に隔たりを感じるようになってきたんです。30歳の頃にそれをどう埋めていこうかなと思って、未だに試行錯誤しながら歩いている感じです。その、30歳の頃に美空ひばりさんの『川の流れのように』をコンサートで歌って、その時、一番盛り上がったんですよ。それを機に「クラシックの曲はこうです!」とこっちから押し付けるのではなくて、お客様が望むこととこっちが聴いてほしいこと、その中間点を見つけながらやっていますね。誰もが知っているようなヒット曲や歌謡曲、ポップス、演歌と、いろんなジャンルの曲を歌う中で、クラシックの歌声の魅力を多くの人に伝えられたらいいなと思ったんです。
 
--それはガラッと変わった感じなんですか?
 
少しずつ変わってきたという感じですね。たとえば『オー・ソレ・ミオ』という有名な曲があって、この歌は100年以上前に作られたイタリアの流行歌、ヒットソングなんです。クラシックじゃないんですよ。だけど、その当時、世界規模で活躍していたオペラ歌手が世界中のオペラハウスでその流行歌を歌って回ったんです。そして世界中に広まっていって。そうすると、歌い手がクラシックの歌い手だから、100年経った今ではクラシックの人が歌う曲というイメージなんです。クラシックと思っている人もいるくらい。そういう意味で、今から100年後、その時に世界で活躍している日本人のオペラ歌手が北島三郎さんの『まつり』を歌っている時代が来ればいいなって。それが今の自分の活動の一つの目標だったりしますね。
 
--楽曲が全く違うところで歩いている感じですね。
 
最初にヒットしたときは、作者や原曲を演奏した人のイメージで曲が広がるのですが、何十年とか、100年とか経つと、曲が多様性を持ち始めるというのかな。こういう歌い手が歌ったらこうなるというふうに。それこそ、ベートーベンが作った曲はずっと演奏され続けていますが、当時演奏していたスタイルとは違う、もう変わっているんですよ。その時代、時代で多様性を持って残っているんですよね。
 
--歌謡曲を歌うことで、何か新たに発見されたことはありますか?
 
曲が持つ表情ってたくさんあって、それは歌い手によっても変わっていくと。で、秋川らしさ、秋川らしい表現とは、“ドラマティックに大きく盛り上がっていく世界”と自分で思っていて。ただ、壮大に盛り上がるものばっかり入れると、もしかしたら聴く方は疲れるんじゃないかなという心配もあって。だから今回のアルバムも、しっとりと、語りかけるような曲も入れなきゃなと思いつつ、どんどん壮大な方に寄っていって。たとえば中島みゆきさんの『時代』も、この曲は盛り上がる曲として選曲してないんですよ。だけど、アレンジャーの方が「秋川さんをイメージしてアレンジしました」と。それが壮大に盛り上がっていて。だけど、それで歌ってみると、“ああ、やっぱり秋川の歌はこうでなきゃいかんな”というのがありましたね。壮大に盛り上がる曲にバランスが偏っていったけども、結果、作品が出来上がって、今までのアルバムの中で一番秋川らしさを表現できた1枚になって、自分の中で非常に満足しています。
 
--10曲目の『心のキャンドル~Un Amore Cosi Grande~』は、1曲目の『Un Amore Cosi Grande』を日本語詞で歌われたものですが、原曲との違いはどういうところにありましたか?
 
歌い方を全く変えないといけなかったんです。同じ曲だから、同じ歌い方で日本語で歌えばいいかなって思ってたんですけど、全然違ったので最初はすごく苦労しましたね。『Un Amore Cosi Grande』はイタリアのカンツォーネですが、昔からこの曲を歌いたくて、挑戦したくて。でも、この曲を歌うにおいてテクニックに自信がなくて、今まで選曲してなかったんです。で、少しずつテクニックが身についていって、漸く今回、挑戦してもいいと思えました。登山家がエベレストの頂上を目指す感じですね。テクニック的に歌い手にとって究極に難しい。それを今回入れられることができて。イタリアの曲ですが、イタリア人以外にもこのメロディは絶対受け入れてもらえる曲だと思ったので、日本でもっと広まっていくといいなと思って日本語の歌詞をつけたんですけど、最初はイタリア語と日本語の違いにものすごく苦労しました。
 
--どちらを先に録ったんですか?
 
1曲目のイタリア語の方ですね。イタリア語の方はすんなり録音が終わって。録音は非常に順調にいきました。やっぱりもう、それだけ何年もかけて準備していたので。ただ、それを日本語に置き換えたときに、また違う難しさが出てきましたね。
 
--それはエベレストとは違う山でした?
 
違う山でした。表面では、日本語は日本語ですんなり、イタリア語はイタリア語ですんなり耳に入ってくるという世界観にしようと。裏ではえらい苦労がありました(笑)。『Un Amore Cosi Grande』と『心のキャンドル』はぜひ、聞き比べてほしいですね。
 
--ほかにも、歌ってみて意外だった楽曲はありますか?
 
そうですね…五木ひろしさんの『山河』も収録させていただいたのですが、難しかったですね。あれ、7分何秒かあるんですよ。後半に向けてどんどん盛り上がっていく情熱を表現しなきゃいけなくて、いろんな意味で肉体と精神の、後半に向けての持っていきかたが非常に難しかったですね。『山河』は秋川の声にぴったりのメロディなんです。だから自分の情熱だけで歌えるかなと思っていましたが、そうは行かなかったですね。
 
--カバーには、そういうところに醍醐味も感じられますか?
 
そうですね、やっぱり人の曲に挑戦するわけで。そうすると、聴く人はオリジナルのイメージを持っているので、そこに秋川の色に持っていかないといけない。そこに一つのやりがいがありますね。
 
--これから歌ってみたい歌はありますか?

『まつり』が何で今回のアルバムに収録されたかというと、前回のアルバム『You Raise Me Up』を作ったとき、『天城越え』を歌わせていただいたんですよ。アルバムには意外だと思われるような曲をメインに1曲、入れようと。その前のアルバム『Fantasista~翼をください~』でいうとアリスの『チャンピオン』だったりとか。この3曲は、これまでのコンサートツアーでも自分にとって核になった曲なんです。前作で『天城越え』を録ったとき、『まつり』も入れてしまうとかぶってしまので、次の作品では『まつり』を入れようと考えていました。で、今回、レコーディングをし終えて。実は次に入れたい曲はもうないんです。だから、次のアルバムでまた1から見つけていこうと思っています。
 
--『GOLDEN VOICE』はいわば集大成なんですね。
 
そうですね。『Un Amore Cosi Grande』もいつかは挑戦したいと思っていて、やっとできた。『まつり』も、“次に次に”と思いながら自分の中でどんどんイメージを膨らませていって、究極の作品が出来て。今回のアルバムは自分の中でも本当に自信持って、「これが秋川雅史です」というものを表現できたと思います。タイトルも、『GOLDEN VOICE』とつけて。タイトルは最後に決めたんです。タイトルを決めた上で選曲したわけでも、ジャケット写真を撮ったわけでもなくて。全部を通しで聴いてみて、このジャケット写真を見て、「さて、どんなタイトルにしよう」なったとき、もうこのタイトルしかなかったですね(笑)。
 
--すんなり出てきましたか?
 
すんなり出てきましたね。まあ、黄金という言葉に対する自分の憧れもあって。毎日、毎日トレーニングして、究極の歌声というものを作り出そうとしているわけです。究極の歌声とはどんな歌声かというと、“黄金の歌声”なんですよ。「“黄金の歌声”ってどんなの?と聞かれたら、これはもう説明できない。今の自分の歌声が“黄金の歌声”というより、自分が目指している歌声が“黄金の歌声”という感じですね。で、まだ自分は成長しているし、進化している。1年後はもっと“黄金の歌声”に近づいているだろうし、多分、現役でいる以上、ずっとそこを追い求めて、歌って、自分自身を成長させていっていると思います。
 
--今でも成長、進化をされている。
 
してますね。1年前の自分の歌を聴くと、恥ずかしくなったりします(笑)。何でこんなに未熟なんだろうと思って。10年前のアルバムなんか聴けたもんじゃないです。10年前の昔のアルバムは、若い頃に書いたラブレターを今になって見せられるような感じですね。
 
--それはめちゃくちゃ恥ずかしいですね。
 
めちゃくちゃ恥ずかしいでしょう(笑)。そんな感じがあるんですよ。「うわ~、あの頃は若かったな」と。でも、今回はある意味、今までの人生の中で究極の作品ができたと思っています。だけど、また5年経ったら、あの頃の自分は若かったと言えるようでありたいと。常に成長して、進化していたいなと思いますね。
 
--まだまだですか。
 
まだまだ。よく「いつからプロという意識を持ちましたか?」と聞かれることがあるのですが、自分はプロになったという意識がずっとないまま、今まで来ているんです。自分の気持ちは、歌を勉強している学生という感じです。毎日、毎日、練習して。そして上手になって出来ないことが出来るようになる。だから、自分は何でこんな歌へたくそなんだろう、何でこんなこともできないんだろうと思うときがいっぱいあります。
 
--ご自身は、今どのあたりにいらっしゃると思いますか?
 
今、47歳ですが、少なくともまだ上向きという感じですね。いつがピークなのかは全然、分かりませんが。人によって個人差があって、60歳、70歳ぐらいまで進化している人もいるし、50歳ぐらいでピークを迎えて衰えていく人もいます。自分のピークはおそらく、世の中一般のオペラ歌手のピークよりは後ろだろうなと思っています。遅咲きというかね。
 
--大体何歳ぐらいを?
 
60代半ばぐらいまでは、多分、肉体的にも成長、進化するだろうなと思ってます、漠然と。自分の一つの信念というか「遅咲きの花は大輪になる」と。早くに咲かせて小さい花にするよりは、時間かけてゆっくりと大きな花を作っていこうという感じで、若い頃からずっと勉強してきて。まだ、大きな花になっていない気がします。
 
--毎日、どのようなトレーニングをされているんですか?
 
肉体トレーニングは、2キロの走りこみと腹筋、背筋、懸垂。これをセットにしています。発声練習や曲の練習は、大体1時間半ぐらいやります。
 
--日によって声のコンディションは違いますか?
 
違いますね。毎日の練習で調子がよかったら、もう一日、気分がいいんですよ。調子が悪かったらものすごく気分が滅入るというか…。自分は歌の調子で人生左右されてるなって思いますね。調子悪いときは本当に落ち込みます。秋川雅史という楽器を秋川雅史が使って演奏している感覚ですね。例えば、バイオリニストがどんなにうまく弾いても、湿度や気温でどうしようもないことがありますよね。それが自分の体で起こるんです。自分自身で操作できることと、できないこと、両方あって。毎日格闘しながらやってますね。
 
--日々の鍛錬が大事なんですね。
 
先ほどもお話しましたが、“黄金の歌声”という究極の目標があるので、そこに近づいていこうと。この目標、夢があるから頑張っていけるんですよね。その“黄金の歌声”は、年齢と実力が上がるごとに逃げていくんですよ(笑)。高校生のときに歌を始めて、あの頃に見ていた将来の自分は、今ぐらい歌えていたら多分、十分なんですよ。あの頃からすると。だけど、今の実力になると目標地点が上がるんです。ずっと追いかけている感じですね。ただ、そこに追いついたら、そこがピークになるだろうなとも思うので、あえてピークを作らない。目標地点を先に先に、置いていこうと思います。
 
--コンサートでも、お客様の前で歌われることが鍛錬に繋がりますか?
 
コンサートって本当にお客様と一緒に作り上げるんです。リハーサルはリハーサルで全力で歌って、本番も全力で歌います。でも、本番の声の方が圧力が断然強いらしいんですよ、スタッフに聞くと。自分は全力を出していて同じなんです。何で圧力が上がるかというと、本番ではお客様から受けるエネルギーをまた自分の中で倍増させていってるんですね。そこに循環ができてくると、さらにパワーが上がってくるんです。これは完全にお客様と自分で作り上げているんです。そうしていることで、知らないうちに自分が成長していて。人間って、やっぱり一人じゃ生きられないじゃないですか。年を重ねるごとに人間関係が広がっていって、その中で成長させてもらっている。同じように、歌い手もいろんなコンサートをして、いろんなお客様と接していくことで、知らないうちに成長させてもらっているんですよね。だから、コンサートは本当にお客様と一緒に作り上げている感じです。そう感じられることは、歌い手としてすごく幸せだなと思います。
 
--一期一会という関係性の中で、同じものを作り上げていくという時間は奇跡的ですね。
 
そうですね。だから、CDの良さと、コンサートの良さと、両方あるんですよね。CDはその時のパーフェクトな自分を作ろうとするんです。コンサートは、その時の情熱をぶつける。だから、ある意味でコンサートは失敗を恐れないんです。その分、勢いとか情熱、パッションを優先させるんですよね。そういったものが出れば出るほど、お客様も盛り上がるんです。両方、それぞれの魅力があると思います。
 
取材・文/岩本和子
 



(2015年7月17日更新)


Check
秋川雅史
あきかわまさふみ●1967年生まれ、愛媛県西条市出身。4歳よりバイオリンとピアノを始め、後に声楽へ転向。国立音楽大学、国立音楽大学院で中村健氏の指導を受け、その後4年間、イタリア・パルマで、デリオ・ポレンギ氏に師事。帰国後、様々なコンサートに出演する中、1998年にカンツォーネコンクール第1位、日本クラッシック音楽コンクール声楽部門最高位を受賞。2001年には「パッシオーネ~復活の歌声」で日本コロムビアより日本人テノールとして最年少CDデビューを果たした。2004年にはJOC(日本オリンピ

Release

初回限定盤(アルバムCD+DVD)
TECG-36105
¥3,400+税
通常盤(アルバムCD)
TECG-311065
¥2,900+税

Album
『GOLDEN VOICE』
発売中

<収録曲>
01.Un Amore Cosi Grande
02.マッティナータ
03.ゴッドファーザー~愛のテーマ~
04.夜明けのうた
05.まつり
06.空に星があるように
07.気球に乗ってどこまでも
08.時代
09.お祭りマンボ
10.心のキャンドル~Un Amore Cosi Grande~
11.山河
12.ありがとう

Live

秋川雅史コンサートツアー~一声入魂~

発売中

Pコード:260-920

▼7月25日(土)15:30

NHK大阪ホール

S席-6500円

A席-6000円

※未就学児童は入場不可。

[問]キョードーインフォメーション
[TEL]0570-200-888

チケット情報はこちら


Movie Comment

テイチクレコード・神谷顕太郎さんがレコメンド!

秋川雅史というテノール歌手。

『千の風になって』という大ヒット曲を持つクラシック系の歌い手、という以外に、みなさんまだまだ秋川雅史というアーティストを知らないと思う。

秋川雅史は根はまじめだ。こと、歌ということになると、体調管理も含めてかなりストイックな一面を持ち合わせる。これこそまさにプロ! 彼の歌に対する情熱、姿勢には脱帽してしまう。

その反面、普段の彼はホントに気さくで少年のような目を持った、優しい人柄の持ち主。食事なんかもホントにこだわりがない。僕らスタッフが心配になるくらい(笑)。でも大好きなシュークリームは必ずコンサートの度に食べている。シュークリームは、彼の歌の源になっているかも知れない(笑)。

3月にリリースされた待望のNew Album『GOLDEN VOICE』は、インタビュー中にもある通り、カンツォーネあり、映画音楽あり、POPSあり、演歌ありと、様々なジャンルに挑戦した秋川雅史の意欲作にて最高傑作だ。みなさんご存知の、北島三郎さんの代表曲『まつり』は、クラシカルな壮大なアレンジの中に秋川雅史の迫力ある声がうまく絡み合って、意外に“ハマっている”と誰もが思う力作だ。

また、アルバムの一番最後に収録されている『ありがとう』という曲は、SNSなどで“泣ける歌”として密かに話題になっている隠れた名曲で、秋川雅史が本来持つ力強さとは全く異なる優しい歌い方でこの歌の持つ力、意味を問いかける。クラシックが苦手な方、抵抗感のある方でもぜひ一度聞いてみてほしい。

もちろんコンサートもぜひ見てほしい。こちらもみなさん意外に思うが、本当に曲半分、トーク半分の構成で(笑)、でも約2時間、決して飽きることなくあっという間に終わってしまう、素晴らしいステージだ。演歌の歌い手さんのMCを勉強してトークがうまくなったそうだ。お客様にコンサートを楽しんでもらって、もっとクラシックを身近なものにしたい、そんな彼の想いがひしひしと伝わってくる。

昨年9月から始まったツアーが、7月25日(土)のNHK大阪ホールで千秋楽を迎える。その後、9月からは次の新しいツアーがスタートする。一年中、歌のことばかりを考えているかと思いきや、仏像制作にはまっている彼もいたりする。最近は書道にもはまっている。どちらも中途半端な腕前ではなく、作品を見ると本格的だから驚いてしまう。

実は、僕らもまだまだ、秋川雅史というテノール歌手をよく知らないのかもしれない。