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「大人の心に沁み入る歌を歌います!」
痛風にギャンブル…、人生の歌をしみじみと
俳優・六角精児のブルースバンドが大阪で初ライブ!

人気ドラマ『相棒』シリーズの鑑識・米沢守役をはじめ、さまざまな映像・舞台で活躍を見せる個性派俳優、六角精児。俳優業を中心に活動をする傍ら、自身のブルース・バンド、六角精児バンドを結成し、東京・下北沢のライブハウスを中心に音楽活動を行う彼が、5月4日(月・祝)、umeda AKASOにて初の大阪ライブを開催する。公演を前に、その意気込みや音楽に対する想いを聞いた。

――初めての大阪公演、楽しみにされているのではないですか?

そうですね。自分たちのライブは毎回楽しいですけど、東京の下北沢近辺でやることが多いんですよ。だから、全然違ったところでライブをすることに対しての免疫ができていないものですから、どうなるのか楽しみでもありますけど、不安でもありますね。呼ばれたら他の地方にも出て行くので、博多には行ったことがあるんですけど。

――博多では、お客さんの反応はいかがでした?

その時は同じレーベルのホームワークレコードの方がやっているライブスペースだったので、割とみなさん楽しく観ていただけたと思います。やり辛さはなかったです。観に来てもらうという時点で、敵ではないじゃないですか(笑)。昨年は東広島の『酒祭』というイベントに出させてもらったんですけど、そのときは周りの人たちがほぼ酔っ払ってましたから(笑)、それはそれで面白い雰囲気でしたね。

――独特な雰囲気ですね(笑)。

そうなんです。お酒で酔っている方たちがみんな観てる。それも自分たちのことを知らない人たちがね。

――六角さんも飲みながら弾かれたり?

そのときはしなかったですね。最初の頃は、ライブも飲みながらやってたりしてたんですけど、最近はなくなりましたね。

――飲むのをやめたというのは、何か理由があるんですか?

最初は、流れとかノリでいけるなら良いなと思って、飲んでたんですよ。だけどそれだけじゃなくて、自分たちが見せたいことをちゃんと表現しなきゃいけないなって思ったんです。それで飲むのをやめました。飲みながらやった方が良いようなライブもあると思うんですけども、あまり飲み過ぎると手元が狂ったりして音がバラバラになっちゃうので自分のスキルがもう少し上がるまで我慢しようと…。

――手元が狂うのは困りますね(笑)。

はい、ちょっとまずいなと思うので(笑)。ただでさえちゃんとしてないのに、それで手元が狂って“まぁいいじゃないか”って笑ってるわけにはいかない、と思ってきたんですよ。僕は、音楽のプロだというわけでは勿論ないですけども、ライブに関しては出来る限り誠意をもって尽くしたいと思っています。

――基本的には俳優活動を中心にされていると思うんですが、音楽活動についてはどういう位置づけですか?

自分の中では、大分大きな位置を占めていますね。ライブをやるのは月に一度くらいなんですけど、元々音楽が好きだったので僕にとっては、とても大切な時間です。そもそも、お芝居が好きでも、俳優になりたかったわけでもなかったんですよ。たまたま劇団の旗揚げに誘われて入ったところから今まで続いているだけで、高校時代もそれ以降も、音楽がすごく好きだったんですね。だからいつか何かの形で音楽に携われたらなと思っていました。昨年はひとつの集大成として『石ころ人生』というアルバムを出したんですが、これからも新しいジャンルの音楽に色々と挑戦していきたいなぁと思っています。俳優の仕事は“自分がこうやりたい”というよりは、依頼があってやらせていただいている部分が多いんですが、音楽の場合はそんなものはない。自分で切り開いていくしかないので、そういう意味では意欲的ですね、俳優よりも。

――なるほど。能動的に。

そうしないと仕方がないですよね。誰かがやってくれるのを待っているのでは成立しないですし。俳優の場合は事務所が窓口になって仕事を受けるんですけど、音楽の場合は仕事として成立しているわけではないですからね。売れて儲かっているわけではないし、どちらかというとほぼ持ち出しですから。でもその状況を楽しいと思っているから動けるのかな。だから音楽は“大いなる趣味”ですね(笑)。

――さっき集大成と仰いましたけど、音楽活動始めて18年も経つんですよね。

18年といっても、最初の頃はほとんどやってなかったんですよ。こういうことができたら良いねって、年に1回ライブをやってたくらいですから。ちゃんとやりだしたのはここ最近のこと。43、44歳くらいからちゃんとやり始めたから、そこからの集大成ですね。

――アルバムをこのタイミングで出そうと思われたのはどうしてですか?

次の展開があれば良いなと思ったからですね。友達のバンドとかが、CDを売りながら全国のライブハウスを周っているのを見て、素敵だなぁと思ったんですよ。大きい会場で何万人も入るようなコンサートも良いですけれど、JASRACにも入っていないようなものを手売りしながらいろんな場所でやっていくのも良いなって。そういうことを目指すためにはアルバムが必要ですし、今ならなんとか自分で出せるなと思ったので作りました。他のレーベルから声をかけていただいたこともあるんですが、それだと自分たちの好きなようにはできないですしね。自分の大いなる趣味だし、好きにやってきたものだから、誰かが敷いたレールに乗らずにやりたかったんですよ。だから一からすべて自分たちでやりました。

――ちなみに、メンバーとはどういう繋がりでバンドを組まれたのですか?

このメンバーはね、その辺にいたんですよ(笑)。

――飲み仲間みたいな(笑)。

ギターの江上徹君は下北沢の飲み仲間で、元々ロッカーだったんですけど夢破れてその辺うろうろしていたんで、“一緒にやらない?”って誘って。パーカッションの有馬自由君は、僕の劇団の一つ後輩で、18年前の最初から一緒にやっていますね。ベースの高橋悟朗君は、僕の高校のひとつ後輩。高校時代からベースを弾いてて、ある日会ったらプロのベーシストになっていたので、彼に手伝ってもらおうと思って。基本メンバーはこの4人で、他にも俳優の大谷亮介さんとか相島一之さんがいるんですが、身体が空いているときに出てもらうという、友軍的な感じ(笑)。

――曲に関しては、渋いメロディに対して歌詞がユニークですよね。六角さんの人生経験を活かしたような…。

そうですね。できればオヤジ世代の方に聴いてほしい。またはオヤジ好きの女性に聴いてほしいですね。いろいろと経験したからこそ分かることがあるじゃないですか。だから、僕と同世代、またはその周りにいるような方に共感してもらえたら嬉しいなと思います。ちょっと疲れたな…というときに、余計に疲れる曲かもしれないけれども、なんか良いなって感じるような、身近にある存在であればと思っています。

――勇気がもらえる気もします。

世の中生きていても、おそらくそう大して良いことはないですから(笑)。その中で、自分で楽しいことや幸せを見つける。例えば、胡椒とか塩とか薬味みたいなものだと思って聴いていただけると嬉しいですね。

――痛風におびえるとかギャンブルにハマるという歌詞は、六角さんのことですよね。

そうなんですよ。そろそろ歌詞を変えなきゃいけないんです。痛風はあるんですけど、それより、ヘモグロビンA1cっていう糖尿の値の方がきつくなってきたんで(笑)。それを書くとすると、歌詞にインスリンとか入ってくるんですよね(笑)。そうなると、本当に笑えない歌になっちゃうから、痛風のままで良いのかなと思いながらやってますね(笑)。

――『石ころ人生』の曲はいつ頃作られた曲なんですか?

書いていただいた曲もあるんですけど、2~3年くらい前のものが多いですね。『ほんとうの歌』(M-6)は、大谷亮介さんの壱組印(いちくみじるし)という劇団がやっていた芝居の挿入歌で、それは10年くらい前になりますね。

――ライブではいつも何曲くらい演奏されるのですか?

1バンドだけなら15~16曲くらいでしょうか。オリジナル曲はそんなにないので、ホームワークレコード系の仲間の歌で、バンバンバザールさんとかカンザスシティバンドさんの曲を1~2曲やったり、下田逸郎さんの曲をやったり…。あとは、昔のフォークシンガーの曲。最近は、なぎら健壱さんの曲もやります。

――ずっと昔からフォークがお好きで?

フォークやブルースが好きですね。最近は、バンドでやる曲も少しルーツ・ミュージック系に拘っていきたいと思っているんです。ただ、アメリカのルーツ・ミュージックと呼ばれるような、カントリー系とかブルーグラスは、テクニックがいるんですよ。今、僕はバンジョーを練習しているんですが、それだけでは楽器編成的に足りないので、他のメンバーにも僕が持っていた楽器を貸し与えて練習をしてもらっているんです。でも、メンバーはさほど乗り気ではないみたいですね(笑)。

――あははは(笑)。

カントリー系の曲調にしようよって言って、パーカッション担当にはフラットマンドリンを貸して、ギターの人にはドブロギターを渡して…。でも、手が痛いとか文句を言うから、これはまだまだ時間かかるなと(笑)。徐々にですけど、アメリカンルーツミュージックの色が強くなっていけばいいなという願いを持ちながら、これからも続けていくんじゃないかと思っております。

――六角さんの音楽への強い想いが伝わりますね。

好きですよ。舞台やドラマのことについてここまで思わないですからね(笑)。

――お芝居をするときは違う想いが。

お芝居ももちろん、これはどういうふうに演じたら成立するかって、いろんなことを考えてやっていますけどね。ドラマと舞台でもやり方が違ってきますし。音楽の場合は、楽器で表現するということもあるんですが、一つはっきり言えるのは、僕の歌は、役者が歌う歌であって、歌手の歌ではないんですよ。だから、歌声を伝えて人を気持ちよくさせるとかではなく、時には優しく時には感情的に歌を通して語りかけ、人の心を動かしたい。非常に舞台的でもあるし、ドラマ的でもあるのかもしれない。セリフみたいな形のものがメロディに変わってるっていう感じ?だから普通の音楽やバンドとは大分違うし、それで良いと思っているんです。それを、いろんな人の前でやってみたいんです。ただ、音楽好きとしては曲調とかをいろいろ変えていきながら、より聴き応えのあるものにしたいとは思っています。スキルアップもしたいとは思うんですけども、僕の歌はセリフみたいなものだからそのときの機嫌とかによって、曲調の感じも微妙に変わります。なので、そこに合わせていく能力の方が必要だったりするんです。僕の側がなんとなくやりたい方向性を歌いながら提示して、他のメンバーもなんとなくそれについて来てくれる、それが合わさっていく感じが一番良いのかな。だからメンバーに“こんな感じでやっていい?”ってよく言われるんですけど、“それはちょっと…”とか言ったことがない。それで何かが生まれるんだったら、一緒に生み出していこうって。作り方としては、舞台に近いのかもしれないですね。同じ曲でも歌っていくうちにいろんなことが変わるし、分かったりするから面白いですね。

――日によっても、お客さんの感じによっても、会場によっても…。

そうそう。微妙に違うからね、飽きないですね。ライブハウスによっても音の感じもそれぞれ違うから、楽しいです。こんな感じで今日は鳴ってるのかっていうのが毎回違うから、同じ歌を歌っていても毎回新鮮です。お芝居より楽しいかもね(笑)。

――お芝居は“仕事”という意識のもとでやられているからですかね?

完全に仕事というわけではなくて、楽しむ余地もあるんですけど、きっとそういうことなんでしょうね、仕事として携わっている中での楽しみ方と、仕事として成立していないからこその楽しみ方だと思う。音楽が本当に仕事として成立して、たくさんツアーとかもやらなきゃいけなくなったら…、それはそれで非常に嬉しいし、なってほしいですけど、息苦しく思うことも出てくるかもしれないですね。できればそうなりたくないからね。だからきっと今くらいのスタンスが良いんだなと思います。

――劇団活動にも似ているような気がしますね。

そうなんですよ。少人数の劇団で、“今回はこういうふうにするか!”って自分たちで決めていくのに似ていますよね。だからこそ、本来やるべき劇団の活動は少しおろそかになっている(笑)。こっちの方が面白くて…。

――あははは(笑)。

いろいろ好きなものがありますから(笑)。

――鉄道好きな一面もあり。

好きですね。あと、ボクシング観戦とか。これはどんなスタイルなのか、どういう人なのかって分析したりしますね。先日もくりぃむしちゅーの上田さん司会のテレビのボクシング番組に、村田諒太さんというオリンピックの金メダリストと一緒に出演しました。

――好きなことが仕事になるっていいですね。

そうなんですよ。自分が好きでやるのと、仕事で関わるというのは気持ち的な違いはありますけど、仕事になるまでやれるって幸せじゃないですか。だからそれは目指したいものではあるんですよ。でも一番大切なことって割とお金にならないというか(笑)。小さな劇団で活動していたときもそうですけど、好きにできるからこそ、やりたいことを見つけようとする。その時期が一番面白かったなと思います。それが、いろんな人が関わる分だけ大きなことはできるけど、いろんなものの価値もそぎ落とされていってつまらなくなったりする。夢を持って何かを目指してやるということは、夢が壊れるものに対して進んでいくことと同じなんですよね。僕は、すべてにおいて未だ夢の途中であると思うんです。お芝居もそうだし、鉄道も好きだけど行ってないところもいっぱいあるし、音楽だって、ライブを大阪で初めてやれる。どうなるかは分からないですけど、始まったばかりじゃないですか。これからいろんなことが待っている52歳って幸せだなって思う。

――では改めて、ライブへの意気込みをお願いします。

役者の歌を歌います。聴いて共感できることをいくつか発見して頂けると良いなと思っています。自分は華々しい俳優でもないし、派手なものは歌えないんですけども、心に沁み入る、大人の心に沁み入る歌を歌います。一緒に、楽しいひとときを一緒に過ごしましょう。

――ゴールデンウィークですしね。

ゴールデンウィークだけど、どこにも出かけるあてのない方にこそ観にきてほしいライブです。予定がある方は別にかまわないですよ、どこかに出かけていただければ(笑)。でもそうじゃない人もきっといるはずだから、何か楽しいことがあるかもしれないなっていう気軽な気持ちで来ていただけたら、恩返しをしたいと思います。

――楽しみにしています。ありがとうございました!

 

取材・文:黒石悦子




(2015年4月10日更新)


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六角精児
ろっかくせいじ●1962年6月24日生まれ、兵庫県出身。善人会議(現・扉座)創立メンバーとして主な劇団公演に参加。俳優業の傍ら音楽活動も行う。ドラマ『相棒』シリーズ(テレビ朝日)、映画『超高速!参勤交代』ほか、舞台、映画、ドラマなど多数出演。2015年4月は音楽劇『ザ・フルーツ』で千葉、山形、名古屋、東京、大分、都城、厚木を巡り4月29日(水・祝)の盛岡劇場で千秋楽を迎える。同劇中でGSバンドのベースを担当する。また、2015年9月19日に公開される人気少女漫画の実写化映画『ヒロイン失格』

Release

    

俳優六角精児のデビューCD
転がり続ける人生を歌う!

Album
『石ころ人生』
六角精児バンド
発売中 1,944円(税込)
ホームワークレコード

<収録曲>
01.ディーゼル
02.愛のさざなみ
03.お父さんが嘘をついた
04.ギリギリの歌
05.人生二番底
06.ほんとうの歌
07.早く抱いて

Live

六角精児バンド
ライブツアー2015 ~石ころ人生~

発売中 Pコード:254-406

▼5月4日(月・祝) 14:00

umeda AKASO

全自由-4820円(ドリンク付、整理番号付)

※未就学児童は入場不可、小学生以上は有料。

[問]サウンドクリエーター
[TEL]06-6357-4400

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