続けろ、続けろ、楽しいと思えることだけに向かえ
魂を鼓舞する『続けろ / Please Mr.GUARD MAN』携えツアー中!
15周年を越え、感動を信じて音楽人生を疾走する
中島卓偉インタビュー&動画コメント
久しぶりにあったこの男は、何とも凛々しく、大人で、痛快だった。昨年デビュー15周年を迎えた中島卓偉が、2015年のパイロットソングとしてリリースしたシングル『続けろ / Please Mr.GUARD MAN』。小細工なしのハイボルテージでパンキッシュなバンドサウンドに乗せられたその歌詞の1行1行に頷かされ、魂を鼓舞するメッセージに背中を押されまくる『続けろ』、アーティストとしての奥行きを見せる映画的なストーリーテリングと、スウィートなソウルナンバーの黄金配合に心地よく裏切られる『Please Mr.GUARD MAN』、ロックンロール歌謡なフレイバーにとんでもないオチをぶっ込んでくる(笑)見事な作詞力に翻弄されるC/W『あいつがやって来る』。4月8日(水)にリリースがアナウンスされている2年ぶりのアルバム『煉瓦の家』を見据えて制作されたこの3曲といい、アイドルグループ・アンジュルムに楽曲提供した『大器晩成』といい、持ち前のボーカリストとしての圧倒的な歌唱力と存在感、ヒットチャートを視野に入れたメロディセンス、30代も半ばにして冴え渡る言葉のチョイス…15周年を経た中島卓偉が今、アーティストとしての充実期にいるのが伺える。現在は自らニューアルバムへの“ジャブ”だと語る(笑)全国ツアー中の中島卓偉の現在地。この男に回ってきたもう何度目かの勝機に、賭けてみるのも、これ一興か。
15年というと決して短くはないんでしょうけど
振り返るほどの長さでもないんですよね
貪欲に言うと、まだ何もやれてないっていう感情が強いですね、本当に
――昨年デビュー15周年を迎え、10月までアニバーサリープロジェクトが続いて、自分のキャリアに1つの決着をつけるタイミングではあったと思うんですけど、終えてみてどうです?
「15周年の1年間っていうのは、リクエストライブをやったりとお祭りイヤーだったのは事実ですけど、やっぱり何よりも1つ思うのはファンに対する感謝ですよね。あとは、15年というと決して短くはないんでしょうけど、振り返るほどの長さでもないんですよね。先輩たちを見たらキリがないわけで。やっぱり1つの通過点という気持ちが大きいですね。貪欲に言うと、まだ何もやれてないっていう感情が強いですね、本当に」
――今の話だと、音楽を辞めようと思ったこととかは、まだまだなさそうですね。
「いやいや! そういうこととなると、実はそんなことはないですね(笑)」
――アハハハハ!(笑)
「今でこそ笑い話に出来ているのはいいことですけど、やっぱり上手くいかないことの方が多いですから。でも、結局は音楽が好きだったので、諦める気にもならなかったというか、もう辞めようと思っても、“いや、かと言って辞めてどうするんだ?”みたいな気持ちにたどり着くというか」
――それこそさっきの、“まだまだ何もやれてない”感覚があるから。
「15年やって1回も売れてないですから、本当に(笑)。しつこく続けてるだけですよ」
――いや~バンドでもソロでも、続けているのは魅力あるアーティストがばっかりですよ。
「ありがとうございます。最近思うんですけど、解散せずにオリジナルメンバーで続いてるバンドってすごいなって。完璧な人間同士が集まってるわけないですから。僕は10代のときにとっくにバンドが解散してソロでやってるわけですけど、自分で曲を書いて、自分で歌って、自分でパフォーマンスするタイプなんで、結局は自分が動かない限り、始まらなかった15年なんですよね。だから、自分でエンジンをかけて、自分でアクセルを踏んでいるところがありますね。クラッシュしてしまうのも自分の責任と考えると、誰かに走らされた人生じゃないということに関しては、プライド持ってやれてこれたのかなぁと思いますけどね」
やっぱり少なからず15年経って芽生えたワードですよね
『続けろ』っていうのは
――それこそ今話してる表情も、2010年の『RENT』(エンジェル役として出演)ぐらいの頃にインタビューしたときとも変わったなと感じます。1つ突き抜けている感じというか。
「本当ですか!? 嬉しいです。歳をとるたび、いい意味で好きなこと以外どうでもよくなってきてるんですよ(笑)。何が大切なのか基準がしっかり出来てくるので、余計なことに疲れなくなったといいますか」
――分かります。好きな人とおもしろいことしかしたくないというか、もうそれ以外の時間がもったいないというか。結局、その方がいいものが出来ますもんね。
「その通りです! だから無駄がだんだん省けてきたのかな? どんな試練も、楽しかったことも、苦しかったことも、訪れるべくして訪れたと思えれば、全てが血となり肉となってるはずですよね。長く続けてらっしゃる先輩方は、30代40代になって楽になったとは言わないですけど、好きなことが出来るようになったと言われていて。その通りだなぁ!と思いますね」
――『続けろ』(M-1)とかはまさにそういうメッセージが宿った曲ですけど、曲自体は昔からあって、歌詞がなかなか書けなかったそうですね。
「曲自体はもう10何年も前からあった曲で、そんな曲がゴロゴロあるんですよ(笑)。“変える”ことって大事ですから、この5~6年は詞を先に書くようになったんですけど、その方が当然、言いたいことが言える。不思議なもので、“いい詞だ”と思えた瞬間に音が聴こえてくるというか、どういう曲調が合うかが見えてくるんですよ。何となく『続けろ』の詞が見えてきたときに、“あれ? ちょっと待てよ。これは昔書いた曲にピッタリかもしれない”って思い出して。昔は曲で判断しちゃってたんですけど、今はいい詞が乗ったらそれが正解っていうスタンスに変わってきたんで、ようやく1つにまとまった感じですね」
――それにしても、ちゃんとそこまで曲をストックしてるものなんですね。
「僕は曲を書いても基本何にも録らないんですよ。リリースがない限りは、作ったら作りっ放しというか。で、その曲の存在自体を忘れるんですよね(笑)。なんですけど、その都度思い出すんです。その繰り返しですね。やっぱり忘れるぐらいなら自分にとってキャッチーじゃないんじゃないかっていう気持ちはあります」
――そして、15周年イヤーを終えて、2015年の新しいスタートにこの曲が選ばれたと。
「歌詞もメッセージも含めて、ピッタリだなって思いましたね。やっぱりデビューしてすぐにこういう歌詞は出てこないですし、デビューしてすぐにこんなこと歌ってたら、お前どれだけ生意気なんだよ!って(笑)」
――お前そんな痛みまだ知らねぇだろ!って(笑)。
「なりますから(笑)。やっぱり少なからず15年経って芽生えたワードですよね、『続けろ』っていうのは」
――もうめちゃめちゃ共感しましたね。言ったら、この曲を聴かせる方が話すより早いですもん(笑)。
「アハハハハ!(笑) そう言ってもらえると嬉しいです、本当に」
――これはまさに自分にも向けて書いている感じもしますね。
「今言われた通り、自分自身が言われて説得力があるかって、すごく重要だと思うんですよ。仮に10年前の自分、15年前デビューした当時の自分になら言えることってあるじゃないですか。誰かに言うのはおこがましいですし、尖ってる時期は誰かに言われるほど悔しいものはないし、そんな意見は聞きたくない。あとは、人間として突っ張る時期も必要じゃないですか。どこまで行っても自分は1本のラインで生きているので、苦しかったときの自分に対して、あのときの山をどう乗り越えてきたかを伝える言葉として、何が一番説得力があるのか。誰かを励まそうっていう気はさらさらなくて、自分が伝えようとしている言葉、音楽なのにそこに共感してくれて、“同じものを感じるんです”って言われたら、こんなにハッピーなことはないじゃないですか。やっぱり自分に響かないものは人を感動させられない。自分が感動してるものしか、絶対に人を感動させられないと思うんですよ」
――やっぱり続けることでしか見えてこないものがあって。こういう話って音楽仲間とはよくしますけど、案外それをメッセージとして曲に仕立てた人はいないかもしれない。
「嬉しいですね。30代も半ばになると、やっぱりどんどん客観的になってくる。音楽業界然り、自分の同世代でいろんな職業に就いている人然り。例えば歌詞1つにしても、やっぱりメッセージが欲しいなって思うんですよね。自分は洋楽どっぷりで音楽を始めたものだから、最初はアタックの弱い言葉=英語っぽいワードとか、英詞自体を多めにしたりしてきたんですけど、あるとき、さっき言った自分に対する説得力にイマイチ欠けるなと思ったんですよ。たどり着くのはやっぱり自分自身に語りかける言葉=日本語になってくるんですよね。日本語って角ばっててなかなかロックに乗せづらいって、いろんな人が言ってますよね。自分にも確かにそういう壁はあったんですけど、そこからさらに頑張って探せば、案外そんなことはないって言えるところにようやく行き着いたんですよ。何となくですけど、それが客観的に見えてきたところはありますね」
自信を持って“いや、こういう切り口だってあるんだよ”って思えるなら
それをやってのける人に俺は拍手を贈りたい
――今回はどれも歌詞がすごくいいですね。さっき言ったメッセージであるとかストーリーがどの曲にもあって。
「嬉しいです。特に『Please Mr.GUARD MAN』(M-2)は、やっとこういう曲が書けたなっていう」
――とても映画的というか。
「こういう曲って洋楽にはいっぱいあるんですけど、日本人はどうしてもラブソングを乗せてしまうというか。世の中にこんなにいっぱいの切り口やストーリーがあるのに、いざ歌になると全部ラブソングになっちゃう。それがもったいないなって。何かこの曲にはこの詞、このスープにはこの麺、みたいに(笑)」
――何で麺が出てくる(笑)。
「裏切れない国なんですよね、どうしても。でも、それはやっぱり我々の責任なんですよ。みんなが同じフォーマットに乗っかって曲を書いてるがために、聴く人もそれで安心感を得てると思うんですよね。変える=裏切ることとも言えますし。でも、自信を持って“いや、こういう切り口だってあるんだよ”って思えるなら、それをやってのける人に俺は拍手を贈りたいんですよね。それを自分でもやりたくなってきたところです」
――15周年を経てそれをどんどん実践していってますよね。曲調自体も『続けろ』からのギャップもありますし。
「いきなりブラック・ミュージックになりますからね(笑)」
――この辺はルーツ的にもあるんですか?
「元々ブリティッシュソウルとか60年代の音楽から入ってるんで、やっぱりビートルズ、ストーンズ、キンクス、ザ・フーとかから始まって、そのルーツをたどっていくと、クラシックとロックンロール=黒人の音楽、この2つにしかならないんですよ。クラシックは、こう言ったらあれですけど不良の音楽ではない。もちろんモーツァルトとかバッハは天才でキチ●●ですから(笑)、あれを不良と言わず何と言うというところもあるでしょうけど、決してグロテスクではないですし、不良性がある音楽ではないと思ってるんです。ブラックミュージックやソウルは、ストーンズも憧れたところにヒントがあって。結局、僕からすると教科書なんですよね。こういう音楽がやっぱり大好きですから。R&Bが好きな人にはぜひ聴いて欲しいですね」
――中島卓偉=ロックのイメージはありますけど、この曲を聴いて、この辺りの引き出しがしっかりあるんだなぁって思いました。あと、この歌詞の物語はどこから来たんだろうと思っていたら、福岡に住んでいたときの図書館の駐車場の警備員さんの話らしいですね。
「僕が子供の頃は、街に名物おじさんみたいな人がいて、話もおもしろくて人気者で、親とか学校の先生以上に、子供たちが親近感を覚えていて。今は人件費削減とかセキュリティが発達することによってそういう人が少なくなって、何か寂しいと思う部分もあるんですよね。少なからずガードマンと言われる人たちは今でも街にはいるわけで。そういう人にスポットを当てた歌なんて、日本人はやらないんですよ。だから書いてみたいと思ったんですよね」
遊び心を本気でやるところに、美学を見出せた
――最後の『あいつがやって来る』(M-3)も、途中までヤバいなこの歌詞!って(笑)。今の時代、すぐにあれこれクレームが入るのに大丈夫かなと思ってたら、すげぇオチが待っているという(笑)。
「結局、ドラッグの歌なんて誰も、俺も興味ないんですよ。のように臭わせといて、実は花粉症のことを歌ってるという(笑)。切り口としてはコミックまでいかないギリギリのラインというか。こういう遊び心を本気でやるところに、美学を見出せたんだと思いますね。『続けろ』みたいな曲を3曲やる気は全然ないんですよ。遊び心があってのロックンロールだし、自分の振り幅っていうところなんですけど」
――卓偉さんの歌唱力とかメロディの評価はあったと思いますけど、今作での“作詞力”というか、言葉の力を痛感させられましたね。あと、『続けろ』とかもそうですけど、ドラム以外は自分で弾いてるんですね。
「そうです。元々ギターは弾いていたわけなんですけど、今は完璧主義になってるわけじゃないので、曲を作った段階で自分の中で鳴っている音を“ここはこう弾いて”って頼むより、自分で弾いた方が早いのが1つ。あとは30代になって、自分で出来ることは自分でやっておきたいというか、やってもいい時期なんだと思うんですよね」
――そして、4月8日(水)にはニューアルバム『煉瓦の家』もリリースされるということで。
「今回の3曲はアルバムに向かうジャブっていう発想が強かったんですけど、前作の『BEAT&LOOSE』(‘13)は15周年に向けて作ったアルバムで、それを作ってるときから、ビートルズで言う『ラバー・ソウル』(‘65)と『リボルバー』(‘66)のような関係性の、続編を作ろうという気持ちがあって。『煉瓦の家』をひと言で言うならば、今まで作ってきたどのアルバムよりもブリティッシュテイストが強いです。本当に自分の好きなテイストが散りばめられたアルバムで、より詞のメッセージも強くなった印象ですね。今回のシングルのジャケットもそうですけど、イギリスはこういう煉瓦の街並みが多いっていうところと、煉瓦って1つずつ積み上げていくものじゃないですか。15年間積み上げてきたものはまだ未完成ではあるけれども、1つの家となっているということを伝えたかったんですよね」
続ければ続けるほど野郎が増えていく(笑)
――2月末からツアーも始まりましたが、ここに向けては何かありますか?
「去年の10月に赤坂BLITZでリクエストのトップ30ライブをやったんですけど、元々ファンはハードな曲を求めてるのかなとずっと思ってたところ、その30曲が意外とバラードが多かったりして…」
――ライブでガンガン上げてるのに、案外バラードの引きが(笑)。
「“お前ら求めてくる曲がなんてナイーブなんだ!”って(笑)。そのときに、じゃあ今改めて自分が本当に歌いたい30曲って何だろう?と。あとは、少なからず“あの曲が入らなかったのが意外”みたいな声が上がっていたので、アナザー・グレイテストヒッツじゃないですけど。かつ、発売前ですけどアルバムの新曲も踏まえつつ、進化した中島卓偉を見せたいなと思ってます。あと、大阪でもそうなんですけど、続ければ続けるほど野郎が増えていく(笑)。最近はだいたい半分ずつぐらいになってきて、この間の15周年のBLITZなんか、6割男だったんですよ(笑)」
――すごい! 超えたんや(笑)。
「それもすごくありがたいことで。やっぱりロックに憧れた少年だった自分のことを考えると、野郎に愛されるような活動が出来ているのは誇りですし。もちろん女の子にも来て欲しいんですけど。ライブ好きにも伝えたいですね」
――今は楽曲提供もされていて、次のアルバムにも卓偉Ver.が収録される、アイドルグループのアンジュルムに提供した『大器晩成』の評価もすごく高いですよね。そういった作家活動は、自分の中でどういったチャンネルですか?
「元々作曲者として認められたい気持ちも結構あって、職業作家になるわけじゃないですけど、曲を書いた時点で“これは自分が歌わなくてもいいな”と思う曲は、もう随分前から出来てるんですよね。別にそれはアイドルに限ったことじゃなくて、どんなジャンルの人たちにも曲を提供出来る体勢でいたいなって。だから、声を掛けてくれることがすごくありがたいことですし、オファーには応えていきたいなと思ってます」
――2015年もまだ始まったばっかりですけど、今後に向けては何かありますか?
「4月にはアルバムも出て、尚且つそのジャブとなるツアーもあって、とにかく充実した16年目にしたいっていうのと、今はまた新たに作曲モードのスイッチが入っていて。今年1年、どんどん曲を書いておきたいなって」
――今後の展開も楽しみにしています!
「はい! よろしくお願いします。ありがとうございました!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2015年3月 6日更新)
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