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FoZZtoneがFoZZtoneに贈るレクイエム
束の間のさよならを灯した儚き『Return to Earth』
活動休止前に遺したラストメッセージ
渡會将士(vo&g)インタビュー&動画コメント

 結成10周年に5thアルバム『Reach to Mars』(‘13)から始まった壮大なストーリーは、“10年目の大型新人”として盟友と結成された“セカイイチとFoZZtone”という祝祭のプロジェクトと、ミニアルバム『Stomp the Earth』(‘14)という名の衛星を経由して、昨年6thアルバム『Return to Earth』として見事着陸。だが、そこに収められたのは、ここ数年の生命力溢れるマッシブでポップな楽曲群から一転、彼らがインディペンデントで活動する狼煙の1枚となった名盤『NEW WORLD』(‘11)を彷彿とさせる、内省的かつ映画的なストーリーテリングに導かれし11曲だった。そして、そのリリースツアーの開幕を待つことなく、年明け早々に突如発表されたFoZZtone活動休止の報…。このインタビューはその発表前に行われたものだが、図らずしもその予感をふんだんに含んだ内容となっているのは、神様のいたずらか。ツアーも残り僅かとなり、記録より記憶の前人未到を更新し続けるこのクリエイティブなバンドワゴンが、シーンからいなくなる束の間の喪失感とそろそろ向き合わなければならない。FoZZtoneがFoZZtoneに贈るレクイエム、渡會将士(vo&g)が遺した活動休止前最後のメッセージを受け取って欲しい。

 
 
ちょっとね、メンバーから新しいアイデアが出てこなかったんですね
 
 
――去年は、セカイイチとFoZZtoneとして動いていた頃はワイワイ賑わってたけど、FoZZtone自体はちょっと鳴りを潜めてる感じがしたんやけど。
 
「確かにその感じはありましたね。新しい事務所に移って密にシステムも出来上がってない中で、レコーディングも然りですけど、とりあえずすぐに出来ることをぶん回して、それでチームを急増していくみたいな感じで」
 
――前作『Reach to Mars』(‘13)を出して、結成10周年もあってツアーを廻って、セカフォズもあってっていう流れ以降のFoZZtoneは、思ったよりもいろいろあったんやね。
 
「移籍前からミニアルバム『Stomp the Earth』(‘14)を出そうとレコーディングはしてたんですけど、そこでうまく焦点が合ってなくて。ちょっとね、メンバーから新しいアイデアが出てこなかったんですね。10周年を終えて、そのときのバンド年齢が小学校を卒業したようなものだとしたら、これからは中学校1年生みたいなテンションで行こうぜ!みたいな話し合いもみんなでしたんだけど、その『Stomp the Earth』のレコーディングが“あらら?”みたいな感じで。その後、移籍云々の問題もあってレコーディングが中断して、移籍後にまた新しいチームで再開して。とりあえずそのときはやれることは全部やろうみたいな感じで、調整のために振り幅デカくいろいろやったというか」
 
――『Stomp the Earth』が出た当時も思ってたんやけど、内容的などうこうじゃなくて流れ的に“これはどういうタイミングの、どういう役割の音源なんだろう?”って、ちょっと思ったんよね。FoZZtoneのストーリー的なところで言ったら、立ち位置が曖昧な作品やなとは思ってて。
 
「そうですね。後々『Stomp the Earth』に“Earth”って付いてるから、スタッフの方から“3部作にしませんか?”みたいな提案があって。こっちはこっちで、それで一連の作品が全部売れるんだったらそうしましょう、みたいな」
 
――FoZZtoneってアルバムを出すときの作り込みというか、出すことに対する準備も大袈裟ですごいやん?(笑) オーダーメイドとかは顕著な例やけど、いろんなストーリーを汲んでリリースすることが多い。だから余計に、何か割とツルッと出た感がね(笑)。
 
(一同笑)
 
「そうですね(笑)。多分移籍がデカかったのかなぁと思うんですけど、『Stomp the Earth』を出すための伏線があんまり用意出来ないまま、本当にツルッと出した感じで」
 
――事務所の移籍は想定外ってこと?
 
「若干想定していた部分はありますけど、いざやりとりをしていく中で“あれ? 俺たちこれからどうなって行くんだろう?”みたいな。それまでもそういう不安は漠然とあったんですけど、いざその瞬間になったら“あ、結構不安なんだ”みたいな(笑)」
 
――まぁね、そら10年住み慣れた家から引っ越したらね、“ここのコンセント、こんなに少ないんだ”とか(笑)、そういうことが起こる。単純なことですね。
 
「アハハハハ!(笑) そうそうそうそう!」
 
――トイレの扉を引くのか押すのかとか、そういう細かなことでもね。
 
「何だかんだでその新しい家の調整を、フルアルバムのレコーディング中も続けてたみたいな感じですかね」
 
 
いい音楽をやってたら、踊れる以外の感動がもっといっぱいあると思うから
 
 
――こうやって話を聞いてると、DVDシングル『Stairway to you』とミニアルバム『Stomp the Earth』が出て、今回のフルアルバム『Return to Earth』が出て、YouTubeも毎週のようにアップしてって、すごいアクティブで情報量は多いんだけど、バンドは割と混乱期なんだなっていうのは意外でしたわ。
 
「うん。レコーディングは大変でした(笑)」
 
――REC優等生なFoZZtoneが。もうサクサク録っちゃっていつも感心するのに。
 
「まぁ、何でしょうね。やっぱり新しく入ってきた人たちとデビュー当時に俺たちがやってたやりとりを、改めてもう1回やらなきゃいけなくなったりして、普段のレコーディングで発生しない初歩的なやりとりが増えたのが、結構しんどかったっすね」
 
――なるほど。当然必要な過程やけど、そんなこと考えてもみなかったもんね。
 
「うんうん。新しいチーム的には必要な過程だけど、ミュージシャン側には必要じゃない過程だから(笑)」
 
――ミュージシャンとしての能力は高まっていってるからなおさらね。でも、そんな中でこういうアルバムになるとは思わなかったなぁ…結果、個人的には『NEW WORLD』以来の好きなアルバムになりました(笑)。
 
(一同爆笑)
 
「アハハハハ!(笑) 本当ですか!(笑) 嬉しいですわ。何か『NEW WORLD』のときは多分、根本的なジリ貧感がすごいあったんだなぁ…殺伐とした、いい暗さみたいな」
 
――メジャーが終わって、もう崖はすぐそこまで崩れてます。ここから本当に何とかしなきゃ、どうせ音楽をやっていくんだったら、好きなことやらなくちゃみたいな悲壮感というか必死な感じは、『NEW WORLD』には絶対にあっただろうし、だからこそのキレキレの作品だったし。
 
「そうなんですよね。でも、後々振り返ったときに、その感覚がちょっと恥ずかしいなっていう気もしたんですよ。要は何年もやってるバンドが“もうギリギリです”みたいなことを訴えても、ちょっとカッコ悪くね?って(笑)。だから、なるべく派手に派手にっていう発想になっていって、その後に『INNER KINGDOM(内なる王国)』(‘12)と『Reach to Mars』(‘13)を録った後、これもよく考えたら違うよね?って(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) あの頃はかつてないほどFoZZtoneがマッシブになっていった時期というか、ライブの筋肉もついてくるし、『LOVE』みたいな曲が生まれたのもあって、オーディエンスを引っ張って行くんだ!みたいなエネルギーも生まれていた時期やもんね。
 
「そういう中でライブをどんどんやっていくと、単純にお客さんとの関係値もすごく上がっていって、こっちが叫べと言ってワッと叫ぶみたいな初歩的なやりとりには留まらない、もっとレベルの高い…心のやりとりというか、このお客さんたちは頭がいい人たちだろうなって思ったんですよ。同時に、“俺たち明るいバンドですー! 元気ですー!”みたいなアピールばっかりしてるのも病的だなって気がしてきて。デビュー当時かそのちょっと前ぐらいの、“少し暗いね、FoZZtone”みたいな頃って、すごく素直だったと思うんですよ。それで今回のキーワードとして、メンバーみんなに“暗いアルバムを作ろう”とは言ってて。だから、意図的にちょっとサウンドを重めにしたりとか、リバービーに作ったり、バンドとしての技術力も上がったんで音数をとにかく減らそうと。それでも多分乗せられるから、ある意味もう乗せなくてもいいから、ぐらいの。いい音楽をやってたら、踊れる以外の感動がもっといっぱいあると思うから。踊れることは素晴らしいしこれからもやるんだけど、踊れるじゃない感動を、FoZZtoneは今引き出せるよね?っていうところに、もう1回立ち帰ろうかなぁっていう」
 
――そもそも音楽の提示の仕方自体をというかね。
 
「フロアを沸かせる、暴れさせる、踊らせるっていう音楽が、ちょっと流行り過ぎてるなって。しかもそれが全部4つ打ちだから。セカイイチを見てても、やっぱり彼らは他のバンドとは全然違う踊らせ方をするので。しかも音楽的に高度じゃないですか。そういうのって、ミュージシャンから見ても尊敬出来るなぁと思うんで。尊敬されるミュージシャンにはなりたいよねって」
 
 
FoZZtoneはステップアップしていくバンドですから!
 
 
――そういう意味ではやっぱり、セカイイチとFoZZtoneをやったのは、すごくいい刺激になったね。
 
「うちの『LOVE』という派手な曲を、シュッとした綺麗なファンクサウンドにしてくれたり、そういうアレンジ面での影響もしっかり受けたし。特にキャノン(b)が、ハル.(セカイイチのサポートb)さんの横でベースを弾いて、相当勉強になったみたいで。キャノンはすごくマイペースなベーシストで、人から何を言われてもウンウン頷いてはいるけど、実は何も変わらないみたいなタイプ(笑)。ライブの度に俺が“もうちょっとこうして欲しい”とか言ってた時期もあるんですけど、こっちが強要したとか、周りが勧めたとかでもなく、多分本人も変わる必要があると思ってたタイミングで、出会うべくして出会ったんだなって。そこがバンド的には一番デカいのかなぁと思いますね」
 
――『Stomp the Earth』に入ってる『Morning Glory』を聴いたとき、これセカイイチっぽいなて思ったら。
 
「モロですね(笑)」
 
――でも、それがちゃんとFoZZtoneの血になって。あと、『Stairway to you』の前向きさも気になるというか。
 



「『Stairway to you』は、ぶっちゃけテイラー・スウィフトの『We Are Never Ever Getting Back Together』みたいな曲を作りたいなって(笑)。何となくループしながら、キラキラした80sポップみたいなシンセが入ってるサビみたいな。このときは、ちょっと嘘臭くてもいいからクサいことを歌いたいなと思ってて。そこに10年やってきたバンドのいい手垢も出たなぁという気はして」
 
――この曲、バンドマンがいよいよ結婚することになって、自分に喝を入れる曲かと思った(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) はいはいはい。そういうところもあると思いますし、あとはこのままだとダメだぞ、FoZZtoneという共同体は進化していくんだぜっていう中で、誰かの流れに乗っかろうとして、進化しようと動いてないんじゃないか?っていうヤツもいたりして。まぁね、うちのギターなんですけど(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 何か“波待ち”みたいな(笑)。
 
「そういう部分に対しても、いやFoZZtoneはステップアップしていくバンドですから! みたいな。内にも外にも自分にも、言うべきことを見付けて書いていたときですね」
 
――そう考えたら、10周年で結構やりきった感があったのかなぁ。何なんだろうな。落ち着いちゃったのかな? 常に攻めてきたバンドだから、休みたいこともあるかもしれない。ただリリースしてきただけじゃないもんね。常にシーンに対して何かしら、1回1回すごくエネルギーのいるアクションを起こしてきたもんね。
 
「そうなんですよね」
 
――今回ね、『Return to Earth』を聴いたとき、“あ、遂に売れるの諦めたな”って思ったのね(笑)。
 
「アハハハハ!(爆笑) そういう感情も若干はあります。でも、売れたい気持ちも絶対にまだありますし、けど今のシーンのもてはやされ方の中で売れたら、俺は音楽が完全に嫌いになるとは思う。ただ、聴いて欲しいだけなのに」
 
――だからか、よりディープに、どんどん人がやっていないところにたどり着く。
 
「はい。1つの個性の立て方として、“誰もいない海を泳ぐ”っていう(笑)」
 
――『Reach to Mars』でのスタジアムロック感というか、MVで崖の上でギターを弾いていた人たちが、今回は何て内省的な曲を作るんだろうっていうね(笑)。
 
 
“このまま曲を作り続けていたら、俺の先に行けないな”って
 
 
――実際の作業的にはどう進んでいったわけですか?
 
「僕は自宅とスタジオを往復したいと思ってたんですけど、何か合宿レコーディングしようって案が出て…(笑)。その前に、“みんな責任持ってやろうぜ、俺は人の曲にメロも歌詞も書かん! 君たちは立派なミュージシャンだから、リフだけじゃなくてメロディも付けて持ってこい”ってメンバーには言ってて」
 
――今作における1つの課題として。
 
「それは単純に俺自身が、“このまま曲を作り続けていたら、俺の先に行けないな”っていう気持ちもあって。だから、前作で武並(サポートds)さんが曲を書いてくれた『Stomp the Earth』を表題曲にしたのも、ある種“FoZZtoneを活かすためには俺じゃなくてもいいじゃないか”ぐらいの感覚でみんなで挑もうっていうのもあったんだけど。それもあって、じゃあそんなに合宿レコーディングをしたいというならやりましょうかと。でも、蓋を開けたら、みんながあんまり曲を持ってこなかったっていう(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「ちょ! 待ってくれやー! え、それはメロは考えてないの? おーっと!って(笑)」
 
――クレジットを見るとね、ここ最近は渡會曲とメンバー曲が半々とまでは言わんけどの配分だったけど、ほぼ渡會曲に戻ってるっていう(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) だからレコーディング前のプリプロ合宿の段階で、“どうする? 曲ないよ…あと1週間後だけどどうすんの!?”みたいな(笑)」
 
――今まではレコーディング話を聞いてても、“もうこの人たちは無敵な感じだから、その場でガンガン作っちゃうだろうな”っていう安心感があったけど、今回は全然そんな感じじゃないね(笑)。
 
「逆に言ったら、どんなときでも何曲でも作れるぜ!みたいなテンションで、まず俺が新曲を5~6曲ぐらいブワーッて出したけど、何かみんなの反応がイマイチで。じゃあみんなで書いていこうよ、というくだりがあってからの蓋を開けたら俺のストックしかない、みたいな(苦笑)。でも、そこで“分かった、じゃあ俺が責任取って書く”っていうのは違うなっていうのもあって、俺もギリッギリまで曲を出さずに」
 
――そんな中で今作は渡會色がとりわけ強くなったけど、この作風にたどり着いたのは?
 
「家ではそもそもカナダ人のファイストとか、ちょっとムーディーで暗い感じの音楽ばっかり聴いてて、元々それが好きなんだよなぁ俺って。だから暗いアルバムの方がもしかしたらより輝くかもって、何となく暗い曲を中心に事前に用意してたんですよ。さっき言った伊豆の方のプリプロ合宿で、“これはいかん、曲が足りん”ってなったとき、しょっちゅう散歩して海を見に行って、ちょっとテンションを上げて帰ってきがてら曲を作って。そういうやつはだいたい明るい曲なんですよ。だから、合宿先でフィジカルが伴ったものは明るい曲、その前から用意してた恨みつらみ系の曲は暗い、みたいな(笑)」
 
――今作では渡會くんが持ってるパーソナリティが出てるのもあるけど、本当に映画的な作品になったよね。その中に『溺れる鯨』(M-2)とか結構古い曲もあって。
 



「18ぐらいのときは本当に暗い子だったので(笑)。でも、何となく気に入ってたんで引っ張り出してきたんですけど、まんまやったら全然泣けないなぁと。若干リズム的には軽く聴ける方が、哀愁がすごいんじゃないかって」
 
――歌詞もね、世の中的には“ありのまま”とか“会いたくて会いたくて震える”って言ってんのに、FoZZtoneは“鯨が浅瀬に来てる”っていう(笑)。
 
「アハハハハ!(笑)」
 
――決して相容れない歌詞が出てくるという(笑)。それもすげぇなと。
 
「何かね(笑)。みんな個性的なミュージシャンなはずなのに、同じところにウワーッて寄ってきちゃうのが、見ていてちょっと恥ずかしくて。いちリスナーとしても、ちょっとつらいなって。この流れを止めて欲しいなぁみたいな」
 
――この曲にはPE’ZのOhyama“B.M.W”Wataru(tp)、シンガーソングライターの星羅が参加していて。
 
「トランペットいいわぁ…ってひたすら思ってましたね。あと、OhyamaさんがFoZZtoneの音楽をすごい気に入ってくれてて、ジャンルを問わず受け入れてもらえる音楽なんだなぁって嬉しくて。YouTubeライブみたいなのもやったんですけど、中国系のアメリカ人がすっごい気に入ってくれて。日本の今のバンドシーンとかのカテゴリの中では“売れそうにないことやってるね”ってよく言われるんですけど(笑)、ちょっと違うシーンに行くと、ベタ褒めしてもらったりすることも多くて。あぁ~イギリスかアメリカ行きてぇなって(笑)」
 
――星羅とはどういう接点?
 
「デビューしたときぐらいに、たまたまライブを観に来てて挨拶して。それからちょこちょこ飲んだり、イベントに出演してもらったり、彼女のラジオに出させてもらったりって何となく縁が続いて。女の子ボーカルを入れてみようっていうときに合うかもと思って呼んだら、本人もやりたいですって言ってくれて、実現した感じですね」
 
 
何かまた、業の深いアルバムになったなぁって(笑)
 
 
――いや~でも、いい曲多いなって思いました、今回。グッとくる。
 
「同年代のサラリーマンに一番聴いて欲しいなって思うんですけどね(笑)。会社内でもそれなりのポジションになって、かと言って全てを動かせるわけでもないみたいな」
 
――『Message from the front』(M-4)の“仕事を抱えながら 続けるだけじゃどこにも辿り着けない”の2行とかは、ミュージシャンにも言えるし、どんな職業の人にも言えることで。歌詞にも渡會節が色濃く出て、ソロ作品的な匂いもだいぶするというか。
 
「ただ、帯域的にはあんまり目立たないんですけど、キャノンは今までのどの作品よりもベースを弾きまくってるんですよ。今回は武並さんのリズムとキャノンのベースで土台がしっかりあるから、あんまりゴテゴテするのはやめようっていうのもあって、歌が際立って出てるのもありますね」
 
――諸々の調整はありつつも、作ってみてどうでしたか?
 
「レコーディングの最後に、“最後の1曲どうすんの?”みたいな無言の圧力をみんなが与えてきたとき(笑)、“大丈夫、明日作るから”みたいな感じで、作らずに取っておいた、って言うよりは作る時間がなかった(笑)『Fortune kiss』(M-11)を出してきて。いつもと違って弾き語りをまず録って、そこにリズムを乗せて、みたいな工程でやってみたら“これだ!”って。武並さんも、“歌がある状態にリズムを乗せるのめっちゃいいよ! すごく叩きやすいし”って言ってくれてたんで。次のレコーディングも、絶対この手法で録りたいなって」
 
――そもそも何でそんな順番で録ったの?
 
「みんなに説明するのが面倒くさかったんで(笑)」
 
――俺が弾いたやつに合わせてくれと(笑)。あと、今回は1曲目から曲順通りにレコーディングしていったのは?
 
「“これから壮大なお話を録っていきますよ”ってみんなに口で説明するんじゃなくて、“アルバムは今こういう状況なんだ”って何となく体感してもらいながら録りたいなぁって。あとは“Return”に引っ掛けて、遠い場所から段々近くに寄ってくるサウンドメイクにしたくて、最初はマイクをドラムに対して一番遠い位置に立てて、1曲録り終わるごとに寄せていく。そのセッティングもサックリいけたんで」
 
――FoZZtoneもキャリアが10年を越えてきて、年齢も30代で、中堅で、いよいよ本当に、どこにもいないバンドになったなって思いました、今回のアルバムで。
 
「まぁこのアルバムを録れるヤツは他にいないんじゃないかなぁとは思いますね。何かまた、業の深いアルバムになったなぁって(笑)。あと、インタビューとかでもどこまで言うべきなのか、それを受けてお客さんがヘンな心配したらかわいそうだなぁと思いつつ、やっぱり聞かれたら全部言っちゃう(笑)」
 
――バンド的にも、ヘンな話ここ数年って順調だったと思うのよね。メジャーが終わって自分たちの好きなことをやろうって決めてからは、ちゃんと評価も上がってきて、知ってる人も増えてきてっていう中で、まぁ来ますよね、そら何年かに1回はこういう倦怠期が(笑)。でも俺は、このアルバムで改めてFoZZtoneは信頼に値するバンドなんだって再確認しましたよ。『Return to Earth』っていうある種異質な空気感でしか生まれなかった作品を経て、ホントに次からやろうね。仕切り直してのFoZZtoneの第3期っていうのは。
 
「本当に録ってる内に、これは第2期の締め括りだなぁっていう気はすごいしてたし、イヤな意味じゃなくて“お葬式”みたいな雰囲気をちょっと出したいなぁとは思ってて。あとは、そんなに上手く気持ちを切り替えられるバンドじゃないんだなっていうのも、よく分かったので(笑)」
 
――10周年で切り替わってないんだからね(笑)。
 
「なので、レコーディングをしながらみんなに第2期が終わるよ~っていうのを体感してもらいつつ、第3期の入口をどこで迎えるか。それがライブでもいい意味で伝わってくれればなぁって。本当は、失敗しても“みんなゴメン! じゃあ違うことやるか!”みたいになれるチームのはずなんですけど、タイミングはやっぱりズレたりもするんで。これからは気持ちよく音楽をやらないと、自分たちお客さんも喜べないなぁと思うので、そうなるように準備もしてるし、その準備になるツアーがやれるんじゃないかな」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2015年2月25日更新)


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Movie Comment

根暗と新作とライブを語り最後に!?
渡會将士(vo&g)からの動画コメント

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Release

内省的でダーク、そして美しい
3部作最終章にして孤高の最新作!

Album
『Return to Earth』
発売中 2778円(税別)
SPACE SHOWER MUSIC
PECF-3106

<収録曲>
01. Return to Earth
02. 溺れる鯨
03. 開きっぱなしの扉か俺は
04. Message from the front
05. Gloria
06. ベルティナの夜
07. 青い炎
08. Anomaly
09. Cry for the moon
10. 風によろしく
11. Fortune kiss

Profile

フォズトーン…写真左より、竹尾典明(g)、渡會将士(vo&g)、菅野信昭(b)。’01 年に竹尾と渡會が出会い、’03 年に菅野が加入しFoZZtoneを結成。’07年にミニアルバム『景色の都市』でメジャーデビュー。’10年秋からはサポートドラマーの武並“Captain”俊明がライブ、レコーディングに参加。一度聴いたら虜となる切ないメロディとひと癖あるアレンジで、洋楽を根底とした三者三様な音楽ルーツが交じりあった幅広い作品を作り出している。2ndアルバム『The Sound of Music』(‘09)では70年代クラシックロックをテーマに、3rdアルバム『NEW WORLD』(‘11)、続く4thアルバム『INNER KINGDOM(内なる王国)』(‘12)ではクラシックミュージックの構築美を追求し組曲を作り上げ、ロックオペラライブを演出するなど、独自の世界観を確立した。’13 年の結成10 周年イヤーには5thアルバム『Reach to Mars』を発表。さらには10年目の大型新人“セカイイチとFoZZtone”を結成し、翌’14年1月にミニアルバム『バンドマンは愛を叫ぶ』をリリース。所属事務所を移籍後、9月にはミニアルバム『Stomp the Earth』と初のDVDシングル『Stairway to you』を、11月12日には6thアルバム『Return to Earth』を発表。他にも、音楽をもっと楽しんで欲しいという想いから生まれた、購入者が選曲し曲順を選べるという業界初の“オーダーメイド・アルバム企画”、録音・録画OKの“REC OK! TOUR”、MV募集企画 “C’mon! MV”、学生バンドを公募しオープニングアクトに起用する“C’mon! U-22”など様々な企画を実施し、音楽の今を開拓し続けている。なお、ジャケットデザインは主に渡會がイラストを手がけている。

FoZZtone オフィシャルサイト
http://www.fozztone.com/

Live

日替わりメニューで贈る活動休止前
最後のツアーも残すは大阪&東京のみ!

Pick Up!!

【大阪公演】

『「Return to Earth」TOUR
“+追加公演! 新世界より後”』
チケット発売中 Pコード247-791
▼2月26日(木)18:30
Shangri-La
オールスタンディング3500円
夢番地■06(6341)3525
※5歳以上は有料。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


【東京公演】
『「Return to Earth」TOUR
“TOUR FINAL”』
チケット発売中 Pコード248-740
▼2月28日(土)18:00
赤坂BLITZ
1Fスタンディング3500円
2F指定3500円
ソーゴー東京■03(3405)9999

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 

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3+4=無限大の旅がいよいよ始まる
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大胆不敵なトライアルと
タフなメッセージ、前人未到の
前作『INNER KINGDOM
(内なる王国)』インタビュー

特設ページはコチラ!

“YES! GO!”の精神で生まれた
生命力溢れる新作『LOVE』
ユーストリームで実施された
公開生インタビューを掲載!

特設ページはコチラ!

革新的なオーダーメイドアルバム
に至ったバンドの危機と再生を語る
驚異の傑作『NEW WORLD』!
初登場インタビュー

特設ページはコチラ!