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束の間のさよならを灯した儚き『Return to Earth』
活動休止前に遺したラストメッセージ
渡會将士(vo&g)インタビュー&動画コメント
FoZZtoneがFoZZtoneに贈るレクイエム 束の間のさよならを灯した儚き『Return to Earth』 活動休止前に遺したラストメッセージ 渡會将士(vo&g)インタビュー&動画コメント
結成10周年に5thアルバム『Reach to Mars』(‘13)から始まった壮大なストーリーは、“10年目の大型新人”として盟友と結成された“セカイイチとFoZZtone”という祝祭のプロジェクトと、ミニアルバム『Stomp the Earth』(‘14)という名の衛星を経由して、昨年6thアルバム『Return to Earth』として見事着陸。だが、そこに収められたのは、ここ数年の生命力溢れるマッシブでポップな楽曲群から一転、彼らがインディペンデントで活動する狼煙の1枚となった名盤『NEW WORLD』(‘11)を彷彿とさせる、内省的かつ映画的なストーリーテリングに導かれし11曲だった。そして、そのリリースツアーの開幕を待つことなく、年明け早々に突如発表されたFoZZtone活動休止の報…。このインタビューはその発表前に行われたものだが、図らずしもその予感をふんだんに含んだ内容となっているのは、神様のいたずらか。ツアーも残り僅かとなり、記録より記憶の前人未到を更新し続けるこのクリエイティブなバンドワゴンが、シーンからいなくなる束の間の喪失感とそろそろ向き合わなければならない。FoZZtoneがFoZZtoneに贈るレクイエム、渡會将士(vo&g)が遺した活動休止前最後のメッセージを受け取って欲しい。
――前作『Reach to Mars』(‘13)を出して、結成10周年もあってツアーを廻って、セカフォズもあってっていう流れ以降のFoZZtoneは、思ったよりもいろいろあったんやね。
「移籍前からミニアルバム『Stomp the Earth』(‘14)を出そうとレコーディングはしてたんですけど、そこでうまく焦点が合ってなくて。ちょっとね、メンバーから新しいアイデアが出てこなかったんですね。10周年を終えて、そのときのバンド年齢が小学校を卒業したようなものだとしたら、これからは中学校1年生みたいなテンションで行こうぜ!みたいな話し合いもみんなでしたんだけど、その『Stomp the Earth』のレコーディングが“あらら?”みたいな感じで。その後、移籍云々の問題もあってレコーディングが中断して、移籍後にまた新しいチームで再開して。とりあえずそのときはやれることは全部やろうみたいな感じで、調整のために振り幅デカくいろいろやったというか」
――『Stomp the Earth』が出た当時も思ってたんやけど、内容的などうこうじゃなくて流れ的に“これはどういうタイミングの、どういう役割の音源なんだろう?”って、ちょっと思ったんよね。FoZZtoneのストーリー的なところで言ったら、立ち位置が曖昧な作品やなとは思ってて。
「そうですね。後々『Stomp the Earth』に“Earth”って付いてるから、スタッフの方から“3部作にしませんか?”みたいな提案があって。こっちはこっちで、それで一連の作品が全部売れるんだったらそうしましょう、みたいな」
――こうやって話を聞いてると、DVDシングル『Stairway to you』とミニアルバム『Stomp the Earth』が出て、今回のフルアルバム『Return to Earth』が出て、YouTubeも毎週のようにアップしてって、すごいアクティブで情報量は多いんだけど、バンドは割と混乱期なんだなっていうのは意外でしたわ。
「そうなんですよね。でも、後々振り返ったときに、その感覚がちょっと恥ずかしいなっていう気もしたんですよ。要は何年もやってるバンドが“もうギリギリです”みたいなことを訴えても、ちょっとカッコ悪くね?って(笑)。だから、なるべく派手に派手にっていう発想になっていって、その後に『INNER KINGDOM(内なる王国)』(‘12)と『Reach to Mars』(‘13)を録った後、これもよく考えたら違うよね?って(笑)」
――『Stomp the Earth』に入ってる『Morning Glory』を聴いたとき、これセカイイチっぽいなて思ったら。
「モロですね(笑)」
――でも、それがちゃんとFoZZtoneの血になって。あと、『Stairway to you』の前向きさも気になるというか。
「『Stairway to you』は、ぶっちゃけテイラー・スウィフトの『We Are Never Ever Getting Back Together』みたいな曲を作りたいなって(笑)。何となくループしながら、キラキラした80sポップみたいなシンセが入ってるサビみたいな。このときは、ちょっと嘘臭くてもいいからクサいことを歌いたいなと思ってて。そこに10年やってきたバンドのいい手垢も出たなぁという気はして」
「それは単純に俺自身が、“このまま曲を作り続けていたら、俺の先に行けないな”っていう気持ちもあって。だから、前作で武並(サポートds)さんが曲を書いてくれた『Stomp the Earth』を表題曲にしたのも、ある種“FoZZtoneを活かすためには俺じゃなくてもいいじゃないか”ぐらいの感覚でみんなで挑もうっていうのもあったんだけど。それもあって、じゃあそんなに合宿レコーディングをしたいというならやりましょうかと。でも、蓋を開けたら、みんながあんまり曲を持ってこなかったっていう(笑)」
――バンド的にも、ヘンな話ここ数年って順調だったと思うのよね。メジャーが終わって自分たちの好きなことをやろうって決めてからは、ちゃんと評価も上がってきて、知ってる人も増えてきてっていう中で、まぁ来ますよね、そら何年かに1回はこういう倦怠期が(笑)。でも俺は、このアルバムで改めてFoZZtoneは信頼に値するバンドなんだって再確認しましたよ。『Return to Earth』っていうある種異質な空気感でしか生まれなかった作品を経て、ホントに次からやろうね。仕切り直してのFoZZtoneの第3期っていうのは。
Album 『Return to Earth』 発売中 2778円(税別) SPACE SHOWER MUSIC PECF-3106
<収録曲> 01. Return to Earth 02. 溺れる鯨 03. 開きっぱなしの扉か俺は 04. Message from the front 05. Gloria 06. ベルティナの夜 07. 青い炎 08. Anomaly 09. Cry for the moon 10. 風によろしく 11. Fortune kiss
Profile
フォズトーン…写真左より、竹尾典明(g)、渡會将士(vo&g)、菅野信昭(b)。’01 年に竹尾と渡會が出会い、’03 年に菅野が加入しFoZZtoneを結成。’07年にミニアルバム『景色の都市』でメジャーデビュー。’10年秋からはサポートドラマーの武並“Captain”俊明がライブ、レコーディングに参加。一度聴いたら虜となる切ないメロディとひと癖あるアレンジで、洋楽を根底とした三者三様な音楽ルーツが交じりあった幅広い作品を作り出している。2ndアルバム『The Sound of Music』(‘09)では70年代クラシックロックをテーマに、3rdアルバム『NEW WORLD』(‘11)、続く4thアルバム『INNER KINGDOM(内なる王国)』(‘12)ではクラシックミュージックの構築美を追求し組曲を作り上げ、ロックオペラライブを演出するなど、独自の世界観を確立した。’13 年の結成10 周年イヤーには5thアルバム『Reach to Mars』を発表。さらには10年目の大型新人“セカイイチとFoZZtone”を結成し、翌’14年1月にミニアルバム『バンドマンは愛を叫ぶ』をリリース。所属事務所を移籍後、9月にはミニアルバム『Stomp the Earth』と初のDVDシングル『Stairway to you』を、11月12日には6thアルバム『Return to Earth』を発表。他にも、音楽をもっと楽しんで欲しいという想いから生まれた、購入者が選曲し曲順を選べるという業界初の“オーダーメイド・アルバム企画”、録音・録画OKの“REC OK! TOUR”、MV募集企画 “C’mon! MV”、学生バンドを公募しオープニングアクトに起用する“C’mon! U-22”など様々な企画を実施し、音楽の今を開拓し続けている。なお、ジャケットデザインは主に渡會がイラストを手がけている。