バンドって誰でも出来るからこそ、とてつもないバンドをやりたくて
結成、再会、人生、そしてハイスタ
ツアー真っ最中の難波章浩率いるNAMBA69に迫る
『21st CENTURY DREAMS』インタビュー&動画コメント
Hi-STANDARD(以下、ハイスタ)の’00年の活動休止以降(‘11年に復活)、様々な形態で活動していた難波章浩(vo&b)が、’10年にソロアーティストとして始動。同年にギターのK5が、’11年にはドラムのSAMBUが合流し、ライブにレコーディングにと活動を共にしていた3人が、3ピースロックバンドNAMBA69を’13年に結成。バンドという運命共同体になったからこそ鳴らせる音と見果てぬ夢を詰め込んだ、待望の1stアルバム『21st CENTURY DREAMS』が昨年12月にリリースされた。同作では、NOFX、メガデスetcなども手掛ける“4人目のメンバー”こと盟友ライアン・グリーンをプロデュースに迎え、パンクサウンドに留まらない幅広さと豊かさを取得している。不穏な現代を理解した上でなおポジティブな姿勢、そして、ハイスタという青春を振り返る言葉を残してくれたインタビューに、じっくりと耳を傾けて欲しい。
やはりガチな3人のバンドをやりたかった
――NAMBA69名義としては1stアルバムですが、ここ何年かK5さんとSAMBUさんとライブも音源含めて活動されていましたが、サポートとバンドとしてのそれは、やはり違うものですか?
難波(vo&b)「何よりも楽しかったですよ。ソロは過程として重要ではありましたが、やはりガチな3人のバンドをやりたかったんだなと思いましたね。マインドも曲も、ゼロから作った感じです。ハイスタ以降、テクノをやったりいろいろとしましたが、このアルバムは集大成的なアルバムになったね。音楽をやっていて良かったなと」
K5(g)「最初は難波さんを含めて4人編成だったのが3人になった変化は大きかったですね。“3人でバンドになろうぜ!”という想いももちろんあったし、足りない点も確かにありましたけど、奇跡的にバンドに導かれた感じです」
難波「本当に2人は頑張ってくれましたね」
SAMBU(ds)「難波さんに引き上げてもらったところも、もちろんあって。でも、本当にスムーズに進みましたね」
難波「バンドってある意味誰でも出来るからこそ、普通のバンドは絶対に嫌だったし、とてつもないバンドをやりたくて。サポートのときは2人に支えてもらっていたけど、今はバンドメンバーとして対等になれた。バンドをやる…生活をするということで2人は頑張っていて、そこに触発されたというか。運命共同体であり、同じ志のファミリーになれたんです。そこがサポートとして入ってもらっていたときとは全然違うところですね」
K5「ストイックなところは全く変わってないし、前以上にストイックになってますよ」
――難波さんの中で同じメンバーでやっていても、ソロとバンドが全然違うと感じられたのは大きいですね。
難波「バンドとソロは、本当に全然違いますよ。確かにステージに上がったら同じことをやっているように思われますけど、ソロはやっぱり1人でやっている感じなんです。でも、バンドはみんなで船を漕いでいるというか。だから、バンドになってなきゃ、こんな音源は出来上がらなかったと思うんですよね」
SAMBU「今までにニューヨーク・レコーディングも経験出来たし、それも含めて今バンドになるための必要な期間だったんですよ。だから、今回はとても満足しているし、今までやってきたこと、学んだことを出せたんです」
K5「特に4人のときは難波さんが曲を作って、ギターアレンジもされて、それを僕らがなぞっていくという感じで。でも、今回はゼロから3人で生み出しているんです。だから難波さんだけの曲じゃなくて、自分の曲とも思えるんですよ。でも、それはいきなりやろうと思ってもやれることではないので、サポートを経て…そこで経験を積んだからこそ出来たことだなと」
本当に夢のような時間でしたね。さらに導かれちゃう感じがありました
――今作にはハイスタのプロデューサーとしても知られる、ライアン・グリーンが参加しています。
難波「今回は今まであったデモ音源も使わず、1ヵ月間曲作りに徹して、ゼロから作って。いざレコーディングをしようとなったときに、ライアン(・グリーン)の名前が挙がって、音源を送ったんです。すごかったのが、この15年の間にライアンも進化していたんですよ。しかも“今回は日本に行きたい!”と言ってくれて、ロスから初めて日本に来てくれたんです。15年ぶりの再会でしたけど、互いに成長出来ていましたね」
――日本録音のこだわりは何だったのでしょう?
難波「今回は日本で録りたかったんです。それは向こうへ行くと、生活環境も違ってきますから。それにライアンもあれからポップスやヒップホップも経験していて、要はパンクをあんまりやっていなかったんですよ。だからこそ、今回のデモを聴いたときに彼は“スケールがデカいものにしたい”と思ってくれたみたいで。だから、パンクサウンドなんだけど音がふくよかになっているんです。それは、ライアンのセンスと耳が良いからでもあるんですけど」
K5「本当に夢のような時間でしたね。さらに導かれちゃう感じがありました。僕がもらった言葉で印象的だったのは、“お前が出したい音を出せ!”ですね。音にすごく厳しいんですけど常に楽しいし、レベルを上げてくれました」
難波「絶対に妥協しようとしないのが嬉しかったし、その姿勢は学びが多かったです。普段はめっちゃ優しいんですよ。だからこそ怖いところでもあるし。本当に人柄が良くて、ハイスタもこの人にデカくしてもらったんだなって、改めて思いましたね」
SAMBU「ライアンの音を聴いていた世代ですし、彼はドラマーなんですよね。ドラマーに音源を録ってもらうのが初めての経験だったんですが、分かりやすいしスムーズでしたね。案を出しながらやってくれるのはライブっぽかったですし、すごくやりやすかったです」
難波「ライアンが“曲がすごく良い!”と言ってくれて、その上で“自分のキャリアの中でもすごい音になった!”と言ってくれたのが、本当に嬉しかったですね」
誰かが傍にいてくれるのは、とても素晴らしい
――『THE WORLD IS YOURS』(M-8)もパンクサウンドに留まらない伸びやかさを感じて、たまらない曲でした。
難波「あんな幻想的に鳴らしてくれるとは思わなかったですね。『INTRO』(M-1)もそうですけど、全体的にライアンがいろいろと音を入れてくれたのも大きくて。だからライアンは4人目のメンバーなんです。パワーをとても注いでくれましたから。本当に、このレコーディングは迷いがなかったですね。歌もとても抜けた感じがあったし」
――アルバムタイトルでもある『21st CENTURY DREAMS』(M-2)という言葉の力強さも感じます。
難波「20世紀を生きていて、21世紀はもっと平和でクレバーな世界になると思っていたら、そうはならなくて人間の豊かさもなくなっているし。だからこそ、みんな夢を持っていこうぜと。夢はイメージするものだし、これからは特に頭を使っていかないといけない。アルバムタイトルになるかなと思ってはいましたが、最後に決まりましたね」
――リリックをOhno Toshiyaさんと共同作業しているスタイルにも驚きました。
難波「サウンドを2人やライアンとジャムりながら作るように、リリックをOhnoさんと作っていると言葉が降りてくるんですよ。煮詰まることもなかったし、求める意識も高かったからか、神懸かってましたよ。僕は最近ずっとOhnoさんとリリックを作っているんですけど、言葉を人と一緒に作るのが特に好きなんです。ハイスタのときもそうだったし、誰かと作るのが好きなんですよ。人生だってそう思うし。だから、ソロのときは本当にいろいろと辛かった。誰かが傍にいてくれるのは、とても素晴らしい。だから、音楽をやっているんだろうし。みんなで作ることで、多くの人に共感してもらえるんじゃないかな」
――お2人はどのように歌詞を感じられましたか?
K5「曲によって“僕”と“俺”を使い分けて表現されていて、カラーをとても感じました」
難波「自分だけではなく、誰かの話であるかもしれないしね。共鳴してもらえたら嬉しい」
SAMBU「前回のアルバムまでは怒ったり悲しんだりしていたけど、今回は特にカラッとしているなと」
難波「元々悩むタイプじゃなくて能天気だからね。でも、大人になって震災が起きて、原発や戦争の恐怖があって、それさえなければね…。でも、それでも前向きにみんなでバンドになれたのが今回はデカくて。このアルバムの前までは、ハイスタじゃないものを…ハイスタも自分なのに…過去を否定しているわけじゃないけど…何かハイスタじゃない自分にならないとと思っていて…。今はそこから解放されている。逆にこだわり過ぎていた小ささを感じるし。横山(健)も同じようなことを言っていたみたいで。互いにそこへのこだわりがなくなったのかもしれない」
――ハイスタは、青春ですよね。
難波「うん、青春ですね。今はいろんなものから解放されたし、もちろん原発とか細かいことはたくさんありますけど、それ以外に悩みはないんです。今はめちゃくちゃ、何だかな…幸せですよ。生きていて、楽しいです」
――よくライブでダフト・パンクの『ワン・モア・タイム』(‘00)をカバーされるじゃないですか。去年の『京都大作戦』でも感じたんですけど、有り得ないくらいお客さんがハッピーに踊っていて。あれは素晴らしいなって。
難波「そういうことが出来るのが音楽だからね」
――ラストナンバーの『FOREVER KID』(M-13)の底抜けに前向き明るい感じも、湿っぽくなくて最強だなと。
難波「大人になっちゃって分かることもたくさんあるけど、そこでつまんないと思いたくなくて。それを踏まえて楽しみたいし、“俺の方がキッズだぞ!”みたいな(笑)。単純に人生を楽しもうぜって。いろいろな想いは胸に秘めてさ。だってさ、グチャグチャ言い過ぎたくないから。キャッキャッ言ってる人が昔から好きだからさ、チャップリンや志村けんとか。グチャグチャ言わない人の方が渋いじゃん。それが俺なりのアート」
――本当にお話が聞けて嬉しかったです。ツアーも楽しみです。ありがとうございました!
難波「本当に良いインタビューだった。ありがとうね」
Text by 鈴木淳史
(2015年1月27日更新)
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