どこかで見た大型新人登場!?
引きの美学と音楽の歓びに満ちたアコースティックな新プロジェクト
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
デビューアルバム『LIGHT』インタビュー&動画コメント
ジャム~ポストロックな心地よくもダイナミックなサウンドで、満面の笑みをしたオーディエンスを沸かせ、踊らせるインストバンドSPECIAL OTHERS。そのメンバーによるアコースティック・プロジェクトSPECIAL OTHERS ACOUSTICが、デビューアルバム『LIGHT』をリリースした。新曲6曲に加え、『Wait For The Sun』『BEN』『STAR』などSPECIAL OTHERSの代表曲をカバー。アコースティックギターにアコースティックベース、マンドリン、グロッケン、メロディオン、カホン、パーカッションといった楽器が気持ちよく連なる、メンバーが楽しそうに演奏している姿が思い浮かぶようなカラフルな1枚となっている。別名義としてスタートさせたその想いを、又吉“SEGUN”優也(mand&b)と柳下“DAYO”武史(g&b)に話してもらった。
“SPECIAL OTHERSがアコースティック盤を出しました”だと“ヌルい”
――SPECIAL OTHERS ACOUSTICとして新人バンドという設定でデビューする、という形になりました。その狙いや、SPECIAL OTHERSとの関係性から聞かせてください。
又吉(mand&b)「そもそものきっかけとしては、4年くらい前に知り合いから“アコースティックでいいからライブしてくれない?”ってオファーがあったのがはじまりで。そこから徐々にアコースティックで頼まれるようになってきたんです。楽器を足したり引いたり試行錯誤しながら、今の形が出来上がったのが最近ですね」
柳下(g&b)「SPECIAL OTHERS名義で出すことも可能だったんですけど、“SPECIAL OTHERSがアコースティック盤を出しました”だと“ヌルい”というか。SPECIAL OTHERSがグレードダウンしたものじゃなくて、全く別のものだと思っているので、新人バンドという設定がしっくりきた。バンド名も分かれているから、(お客さんにとっても)“今日はどっちで出るのかな?”っていうのも、一目瞭然に出来るなって」
又吉「何でこのタイミングでリリースになったのかというと、SPECIAL OTHERSとして意識してきた日本武道館ワンマン(‘13年6月)が無事に終わったことが大きくて。そこで達成感もあって、次は何やろうかと」
柳下「武道館を経たことで、いろんなことがやりやすくなって。成人して、今までは門限があったけど夜遊び出来るようになって、さあ何しようか?っていう感じ(笑)」
――収録曲『LIGHT』(M-1)のMVにしても、4人が焚き火を囲んで演奏している光景が、根源的な音楽の歓びや演奏する楽しみを表しているなと感じました。“初心に帰る”感だったり。
柳下「楽器に対する接し方は初心に帰りましたね。今までエレクトリックでやってきて、どんどん足していってたものが、アコースティックの場合は引いていく必要があったので」
又吉「“引きの美学”というか、SPECIAL OTHERSでは、あまりそういうことはやってこなかったので新鮮でしたね」
柳下「シンプルな形で音楽を表現するっていうところでは、純粋に音楽を楽しみながら作れたなって。楽器も今回はかなりフレキシブルに演奏しました。メンバー全員楽器が好きだから、何でもやりたい」
――メンバーの皆さんは、楽器をマルチに弾けるんですか?
柳下「弾けないから、練習する(笑)」
又吉「とりあえず買うんですよ。買ってやってみる(笑)」
――いいですね(笑)。
柳下「初めての楽器って、いまだに楽しいんですよね。今年で35歳なんですけど、この歳でこんなにフレッシュな気持ちで楽器と触れ合えるなんて、何て幸せなんだ!って」
アコースティックだけど聴き応えがあって、踊れて、ちょっとお洒落で
そういうラフな雰囲気を作りたかった
――SPECIAL OTHERSとしての曲作りとSPECIAL OTHERS ACOUSTICのそれとでは、違いはありましたか?
柳下「普段とあまり変わらなくて、スタジオで楽器を鳴らして、こうしようああしようってみんなで言い合う、というスタイル。レコーディングに関しては勝手が違ったかな。SPECIAL OTHERSでは、いっせーのでバーンッって録るけど、アコースティックだと音のかぶりが出ちゃうので今回はバラバラで録って」
又吉「普段は音のかぶりはさほど気にならないんですよ。今回は生楽器で、マイクに余計な音が入らないようにしないといけないので、演奏するときにも気を付けましたね」
柳下「あと、アコースティックなことによって、“軽い”とか、“イージーリスニング”的な想像をされたくなかった」
又吉「だから別バンドって名乗ってるしね」
柳下「アコースティックだけど聴き応えがあって、踊れて、ちょっとお洒落で。そういうラフな雰囲気を作りたかった。音の作り方にしても、その辺りはこだわりましたね」
――新曲6曲に加えて、SPECIAL OTHERSの曲から『BEN』(M-6)『STAR』(M-7) 『Wait For The Sun』(M-10)などをアコースティックアレンジでカバーもしています。セルフカバーをする際に意識したことはありますか?
又吉「扱ってる楽器がエレクトリックとは違うので、自然とアレンジも変わりましたね。例えば『BEN』にしても曲の冒頭は原曲の雰囲気とかけ離れてたりもする。そういう変化はよかったなって」
柳下「アコースティックになると、音を詰め込み過ぎてもハマらないことが多くて。一音一音を大事に聴かせる、っていう方を優先しました」
――『Wait for The Sun』にしても、かなり印象が違いました。曲の解釈によってこうも違うのかと。カバーであり、リミックスであり、ですよね。
柳下「『Wait for The Sun』や『March』(M-2)がそうなんですけど、ベースレスで、ギターでベースラインも弾きながらメロディも弾いて、みたいな曲も多かった。それは新しい試みだったかもしれませんね」
又吉「今回、あまりベースを弾いてなくて。マンドリンの方が多かった。マンドリンはSPECIAL OTHERSにはない楽器なので、ほぼ新しいフレーズで入ってますね」
――『Galaxy』(M-3)『BEN』『Marvin』(M-8)などは4つ打ちになっていますが、これはカホンの音ですよね? ループさせているんですか?
又吉「ずっと生演奏です。ドラムに関して言うと、ペダルを使ってカホンをキックにして、タンバリンやコンガなどのパーカッションをドラムセットのように組んで、それを(宮原“TOYIN”)良太(perc&g)が1人でやってるんですよ」
柳下「珍しいドラムセットになってるよね。『Galaxy』では、良太がカホンのキックを踏みながらギターも弾いてたり。ライブで見るとおもしろいかもしれませんね」
――『Galaxy』のギターやグロッケンの反復は、ミニマルテクノっぽさもありますよね。
柳下「あのループ感は完全にダンスミュージックですよね。スティーヴ・ライヒみたいなグルグルした感じを出したいなって。運転中は聴かない方がいいかもしれない(笑)」
――時間感覚がおかしくなっていきますもんね(笑)。レコーディングのときによく聴いていた音楽はありましたか?
柳下「マイス・パレードの『カンデラ』っていうアルバムですね。彼らのライブを観に行ったときにヒントを得て。『Galaxy』とかはそこから出来たりしてますね。あと、今回は初めてマスタリングを海外に頼んだんです。SPECIAL OTHERSでずっとやってもらってるエンジニアの細井(智史)の薦めもあって、ライアン・スミス(スターリング・サウンド)っていうエンジニアに頼んで。その音がすっごいカッコよくて、アコースティックだけど、大人しくない、いい子ちゃんになってない」
又吉「楽曲に奥行き感がすごい出てるよね」
アコースティックのフィーリングをエレクトリックに持っていっても
おもしろくなるだろうし、その逆もそう
両者が影響を与え合っていくだろうから
――11月から来年2月にかけて、SPECIAL OTHERS ACOUSTICとして『アコースティック8都市ツアー 2014-2015』を、SPECIAL OTHERSとして『エレクトリック26都市ツアー 2014-2015』が同時期に開催されます。関西はSPECIAL OTHERS ACOUSTICとして1月18日(日)に神戸・月世界、SPECIAL OTHERSとして11月6日(木)に神戸SLOPE、8日(土)に京都磔磔、そして1月17日(土)になんばHatchです。
柳下「アコースティックの方は、場所にもこだわっていて。洞窟の中だったり(沖縄ガンガラーの谷 ケイブカフェ)、能楽殿だったり(福岡 住吉神社能楽殿)、エレクトリックじゃ出来ないような場所でライブします」
又吉「だから、雰囲気も含めて楽しんでもらえたらと」
柳下「アコースティックの方がよりシンプルに、音楽としては原始的な方法でライブをやっているので、あまり余計なことは考えずに演奏だけに集中出来るんです。SPECIAL OTHERS ACOUSTICとしては初めてのツアーなので楽しみですね。いちから作っていく姿を一緒に楽しんで欲しいです。スペシャルゲストでね、SPECIAL OTHERSの人たちも来るかもしれないから(笑)」
又吉「その設定は言い過ぎると苦しくなってくるからね(笑)」
柳下「アコースティックとエレクトリックの二足のわらじでツアーをする中で、アコースティックのフィーリングをエレクトリックに持っていってもおもしろくなるだろうし、その逆もそう。両者が影響を与え合っていくだろうから、自分たちとしても楽しみにしていますね」
Text by 中谷琢弥
(2014年11月 6日更新)
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