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日々の小さな決意や覚悟を軽やかに鳴らすニューウェーブな最新作
『ナポリタン・レモネード・ウィー アー ハッピー』!
只今絶賛ツアー中のBUGY CRAXONEに迫る
すずき ゆきこ(vo&g)インタビュー&動画コメント

 今年、デビューから15年、バンド結成から18年目に突入したBUGY CRAXONE(ブージークラクション)。彼らの約1年ぶりのニューアルバム『ナポリタン・レモネード・ウィー アー ハッピー』が、とてもいい。何がいいって、おかしいと感じることも平気でまかり通る世界に絶望したり、醒めてNOを突き付けるのではなく、“Go Goシリアス これがせかいさ”(『GO GO シリアス』)と、まるで口笛を吹きながらスキップでもするように軽やかに、しなやかに歌い放つのだ。音楽を鳴らすことは特別な魔法でも何でもないよ、とでも言うような、その自然で自由なアプローチは、聴いているこちらの気持ちまでも自由に解き放ってくれる。今回は、バンドのメインソングライターであるすずき ゆきこ(vo&g)に話を訊いた。19歳でバンドを結成し、20代を駆け抜け、今は30代の真ん中あたり。日々の暮らしの中から音楽は生まれ、その音楽を語っていくと話は自然と生活の話へと帰結してゆく。何気ない毎日を生きるための、ささやかだけどハッピーなロックンロールが詰まったこのアルバムを携え、10月30日の千葉LOOKを皮切りに全国ツアーがスタート。関西公演は11月11日(火)の十三Fandangoだ。元気なときも、元気がないときも、ブージーのロックンロールをポケットに突っ込んで街へ出れば、世界はきっと明るい。

 
 
誰かにとっては意味があることだけど、自分にとっては意味がない
 
 
――アルバムのオープニングを飾る『いみがないから きこえない』(M-1)の歌詞にすごく共感を覚えました。音楽にも当てはまると思ったんです。たとえば街中でどんなに大きな音で鳴っていても、自分に必要ないものだったら全く耳に入ってこないし、入ってきても残らないなぁって。
 
「そうですよね。この曲は、新宿を歩いているときにたまたま私の耳の近くで、わーって突然大きな声で宣伝みたいなことが始まって。ビックリするわ、カチンときちゃうわで、“意味がないから聞こえないんだよ!”って歌詞にあるそのまんまを思ったの。大きな声で言っても、本当に全然耳に入ってこないんですよ」
 
――あっけらかんと歌っているようにも聴こえますが、それと同時に“このかわをわたって生きていく”、“道なき道を光あびてすすめ”の辺りに、自分の手で扉を開けていく感じが伝わってきます。
 
「うん。誰かにとっては意味があることだけど、自分にとっては意味がないとか、日々の暮らしの中で自分の生き方がどんどん決まっていくように思うんですね。どんな道もあるし、いろんな可能性がある中で、“私はこうする”とか、“これはいらない”とかいろんな覚悟や小さな決意が毎日あって。私はこの線を越えてここから先に行くし、そうじゃない人は違うところへ行く。それぞれそうやって選ぶ道があるなぁと思ったんですよね」
 
――『わかってきたよ』(M-5)でも、“ひとりひとりちがうってことを やっとわかってきたとおもうの”と歌われていますね。今こうして会話しているようなことが、そのまま歌になっているように感じます。
 
「それを心がけてるかな。と言うか、私の中のポップはそこなのかな。普段ボーッとしているときは歌詞になることなんてそんなにないんですけど、“よし、書こう!”って気合を入れて普段の暮らしを見てみると、書けることがいっぱいあるんですね。それを日常的な言葉で、暮らしの中にある言葉で書いてる。それは“ストレートに表現する”というよりは、根がひねくれてるから(笑)そういう自然なものの方が好きなんだろうなって感じ」
 
――飾り気がないですよね。“いいことを言おう”みたいな邪心がなくて。
 
「私が書いている詞って、ことわざになっているような当たり前のことばかりで、わざわざ詞に書かなくてもいいようなことなんだと思う。なんだけど、それを自分自身が体験していくことをバンドで残していきたいんでしょうね。“早起きは三文の徳”とか本当にその通りだと思いますよね。だって、絶対に早く起きた方がいいもん。やっぱり日に当たらないとね(笑)」
 
 
曲や作品を作ってバンドが回転していくことの面白さを
だんだん思い出してきた
 
 
――ちょっと話は戻りますが、’09年にデビュー10周年のアルバム『Cheeseburgers Diary』が発売されて、その後に前任のドラマーが脱退されたんですね。
 
「メンバーが脱けたこともあってバンドがちょっとだけ止まってる間に、自分の中のハードルだけがどんどん高くなっていって、曲を作るより頭で考えるばっかりになってた時期があって。“そんなことより曲を作り続けること、行動し続けることが大事なんだよ”って怒髪天の増子(直純・vo)さんに言っていただいて、私もそうしてみようと思ったんですね。やってみて自分に向かないなと思ったら元に戻せばいいんだし、“これかな?”と思ったことは片っ端から試してみようって。それから、ちょっとずつですけど、曲や作品を作ってバンドが回転していくことの面白さをだんだん思い出してきて。今は年に1枚アルバムを出すことを目標にしているんですけど、バンドとしてそれぐらいのスタミナと元気があった方がいいよねってメンバーとも話していて」
 
――怒髪天は、すずきさんやギターの笈川(司)さんと同じ北海道のご出身ですね。
 
「いつも、遥か後ろの方から先輩たちを見ています。私、the pillowsの(山中)さわお(vo&g)さんにライブの打ち上げか何かで初めて話しかけたとき、“どうやったら煮詰まってる状態から抜け出せますか?”って聞いちゃって。まず返ってきた言葉が“質問が暗いよ!”って(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 切羽詰っていたんでしょうか?
 
「ねぇ?(笑) そのときも、“ダメダメ、止まっちゃダメ。とにかく曲を作った方がいいよ”って。“これはどうかな? と思うことだって、何だってやってみた方がいいんだから”って言われましたね。いろいろ教わりました」
 
 
考えて分かるほど人生甘くないなって(笑)
 
 
――前々作『Joyful Joyful』(’12)、前作『いいかげんなBlue』(’13)もそうでしたが、すずきさんの歌声や歌い方がとても自然で、聴いている自分もスッと曲に溶け込んでいけて、曲にも受け入れてもらえているように感じるんです。デビュー時や20代は、その頃なりの鋭い感じもあり、凍てついた印象の楽曲もありました。
 
「20代っていう年齢特有のものは絶対あると思うんですよね。わざとそうしていたわけじゃなく、自然に何か尖ったものを欲していたんでしょうね。以前は、常に真面目に考えていないと人生に対して誠実じゃないと思ってたところがあったけど、考えて分かるほど人生甘くないなって気付きました(笑)。部屋の中でずっと考えているよりも、のびのびと生きて暮らしていく方が賢明かなと思ったんですね。そんな風に自然に大人になって今ここにいます。自分でも、どんどん肩の力が脱けていっているように感じるし、よりリラックスしてやってるんじゃないかな。アルバムの収録曲のタイトルや歌詞に平仮名が多いのも、漢字が入ると妙に難しくなったり、印象が硬くなったりするのが何かイヤで。だから自分の名前も平仮名にしたし、歌詞も、暮らしの中にふわっと溶け込んでいたいんですね」
 
――音もどんどんシンプルになっていて。適度な隙間と、必要な音だけで出来ているロックンロールという感じで。
 
「今回のアルバムを作ってるときに、よく出ていた言葉は“ニューウェーブ”とか、“ふわふわしてる感じ”とかでしたね。ロックって、有無を言わさず大きな音でドーンッと鳴らすカッコよさもあるんですけど、自分の中のふわふわしてて行方知れずな心の動きとか、ドキドキする感じは、ニューウェーブの音と相性がいいと思うんですね」
 
――ニューウェーブも幅広いですが、特にどの辺りがお好きですか?
 
「笈川くんはクラッシュが好きなんで、クラッシュから派生してるニューウェーブが好きで、私はBUCK-TICKとか80年代の日本の音楽のギターの感じが好きですね。BUCK-TICKって、曲によってはオールディーズに通じるぐらいシンプルでポップなメロディラインを弾いているように思うんです。すごいバランスだなと思いますね」
 
――『ナポリタン・レモネード・ウィー アー ハッピー』(M-2)のうねうねしたギター音はニューウェーブな匂いを感じます。アルバムタイトルも含めて、“パインアイス”とか“バナナジュース”とか歌詞に美味しそうなものがたくさん出てきますね(笑)。
 
「何でそんなに食べ物を熱唱してるんでしょうね(笑)。ナポリタンとかレモネードって、10代20代の若者な感じとか、夏の切ない感じみたいな雰囲気が私の中ではあって、それを音楽と合わせて作っていくのは楽しかったですね」
 
――“若者な感じ”と言うのは、大人になった自分がかつての自分や若者たちを俯瞰で見ている感じ?
 
「んー、どうなんだろう?『ナポリタン・レモネード・ウィー アー ハッピー』は最初にレモネードやナポリタンって言葉があって、タイトルがあって、それをイメージしながら曲を書いたんですね。年齢を重ねて大人になったって心はしょっちゅう揺れているし、いつも明るくなきゃいけないとか、強くなければいけないということはないと思うんですよね。私はバンドマンなので、その辺の心の動きみたいなものを曲で表現したいんですよね」
 
 
“いい気分”とか“ハッピー”とか
そういう日常使いな言葉の感じがしっくりくる
 
 
――『GO GOシリアス』(M-7)で“生きるのが得意”とありますが、逆に“生きることが不得意だなぁ”と思うことは?
 
「難しいなぁと思うことはありますよね。でも“(生きることが)好きだな”と思う瞬間もいっぱいあることに気付いたし、20代の頃は本当にいっぱい詰め込んで考えていたせいか、毎日起こる小さな楽しいことに目を向けてなかったように思うんですね。今になって思うのは、人と人も、チームとチームも“分かり合う”ことって絶対ないなということ。気が合うとか、意見が合うとかはあるけど、衝突は避けて通れないから、その点は難しいし寂しいなとは思いますけど、そこばっかり見ていても何も変わらないしね。だったら、自分が今いい気分でいられることをもっと楽しむというか、“いい気分だな”ってちゃんと思った方がいいなと思ったんですね。食べたいものを食べるとか、会いたい人に会いに行くとか、大したことじゃないけど、日々、自分の気分が良くなることってありますよね? そっちの方がすごく大事だなって」
 
――大きなことから小さなことまで、幸せを感じることっていろいろありますよね。
 
「うん。ただ、“幸せ”とか“幸福”って考えると、言葉のイメージが大きくて、何か軽率に答えは出さずにおこうって思っちゃう。“いい気分”とか“ハッピー”とか、そういう日常使いな言葉の感じが、私にはしっくりくるかなぁ」
 
――それでアルバムのタイトルも『(ナポリタン・レモネード・)ウィー アー ハッピー』?
 
「そうですね。“またねー!”とか “また明日!”みたいな軽い感じの“ハッピー”がいいですね」
 
――ラストの『bye-bye song』(M-10)は、いいライブを観た後の気分ってこんな感じだなと思いました。“Hey !  Thank you so much”とコーラスが聴こえますが、具体的な誰かへの感謝の気持ちを歌いたかった?
 
「何に対して言ってるんだろうね?(笑) ライブのことを思って詞を書いていたし、毎日の中で“ありがとう”と思う相手もいっぱいいますよね。自分に対しても思うし、メンバーに対しても思う。本当に詞の通りで、毎日が一瞬で、あっという間に消えちゃうんですよね。それはライブもそうだし、毎日の暮らしもそう。一緒なんですよね」
 
――『わかってきたよ』でも“Liveいきてるってこと Lifeたのしむってこと”と歌われていますね。
 
「いい歌詞を書いてますね(笑)」
 
――(笑)。もし今、20代のバンドに、以前すずきさんが“どうやったら煮詰まってる状態から抜け出せますか?”と、山中さわおさんにしたような質問をされたら、どう答えます?
 
「一応、“どうして?”ってちゃんと話は聞きます(笑)。前は、バンドをやってる時間はスイッチが入っている感じだったけど、今はどこにいても普段の私そのまんまでいるなって感じ。20代の頃はその日その日のことばかりで、こんなに長くバンドが続くなんて全然思ってなかったです。18年目に入ったのかな。こんな長寿バンドになるとは(笑)」
 
――(笑)。バンドを続けてきてよかったことというと?
 
「毎日やっていて楽しいなと思うし、辛いのは機材のセッティングのときぐらい(笑)。“今日のライブ、やり切ったなぁ”って時とか、作品が完成した時とかは、なかなか他では味わえない特別なものを感じますね」
 
――11月11日(火)は十三Fandangoでライブですね。関西のファンはいかがですか?
 
「その場のリアクションがとっても素直。いいものは“いい!”って盛り上がるし、つまんないものにはつまんなそうな反応。とってもいいことだと思う。私はクールに見られることも多いんですけど熱いのは好きだし、ライブはやっぱり気分が晴れるしすがすがしいですよね。私もそうなりたいし、観てる人にもそうなってもらえたら嬉しいです」
 
 
Text by 梶原有紀子



(2014年11月 8日更新)


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カッコカワイイすずき ゆきこ(vo&g)
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Release

飾らない言葉と最小単位の音の粒が
しっかりと胸に沁み込む優しき新作

Album
『ナポリタン・レモネード・
 ウィー アー ハッピー』
発売中 2500円(税別)
Northern Blossom Records
BNBR-0008

<収録曲>
01. いみがないから きこえない
02. ナポリタン・レモネード・
ウィー アー ハッピー
03. ナイス・ナイス・ナイス
04. のー ふらすとれーしょん
05. わかってきたよ
06. パレードだよ
07. GO GO シリアス
08. クレイジーがいっぱい
09. なんとなく Be happy
10. bye-bye song

Profile

ブージー・クラクション…写真左から旭 司(b)、ヤマダ ヨウイチ(ds)、すずき ゆきこ(vo&g)、笈川 司(g)。`97年5月に結成。`99年にシングル『ピストルと天使』でデビュー。同年12月に1stアルバム『blanket』をリリース。デビューから現在まで一貫してUKロックやパンク、オルタナティブロックを昇華したソリッドなロックンロールを奏で続けている。`02年のアルバム『This is NEW SUNRISE』ではオーディオ・アクティブやチバユウスケ(現The Birthday)らとコラボレートした楽曲も収録。`03年には自身のレーベル、ZubRockA RECORDSを設立し、`05年に満を持して自身の名を冠したアルバム『BUGY CRAXONE』を発売。`07年より怒髪天の増子直純が主宰するレーベルNorthern Blossom Recordsで活動を開始し、翌’08年に『Good morning,Punk Lovers』『Hello,Punk Lovers』を連続してリリース。`09年に新曲を含むデビュー10周年のアニバーサリーアルバム『Cheeseburgers Diary』を発売。`10年にthe blondie plastic wagonとのスプリットシングルをライブ会場と通販限定で発売。`12年に4年ぶりのオリジナルアルバム『Joyful Joyful』を発売。今年、ドラムにヤマダ ヨウイチが加入。6月18日に最新アルバム『ナポリタン・レモネード・ウィーアー ハッピー』10月30日の千葉LOOKを皮切りに『ウィーアー ハッピー ツアー』がスタート。関西公演は11月11日(火)の十三Fandango。

BUGY CRAXONE オフィシャルサイト
http://www.bugycraxone.com/

Live

リリースツアーも中盤戦に
大阪公演がまもなく開催へ!


『BUGY CRAXON
“ウィー アー ハッピー ツアー”』

【千葉公演】
▼10月30日(木)千葉LOOK
【名古屋公演】
▼11月5日(水)池下CLUB UPSET
【高松公演】
▼11月6日(木)DIME
【熊本公演】
▼11月8日(土)熊本Django
【福岡公演】
▼11月9日(日)福岡Queblick

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード234-506
▼11月11日(火)19:00
Fandango
オールスタンディング2000円
[ゲスト]GLIM SPANKY
夢番地■06(6341)3525

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【新潟公演】
▼11月16日(日)新潟CLUB RIVERST
【福島公演】
▼11月18日(火)CLUB #9

【仙台公演】
チケット発売中 Pコード247-289
▼11月19日(水)19:00
仙台HooK
オールスタンディング2000円
[共演]SILVER TREE/SIMPSON CLUB HOUSE/他
G・I・P■022(222)9999

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【札幌公演】
チケット発売中 Pコード246-457
▼11月21日(金)19:00
COLONY
オールスタンディング2000円
[共演]THE BOYS&GIRLS
WESS■011(614)9999

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【東京公演】
チケット発売中 Pコード237-763
▼11月28日(金)19:30
SHELTER
オールスタンディング2800円
SHELTER■03(3466)7430

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